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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド
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波乱のBaby狂奏曲
鞠りん GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2020-01-01
予約期間
開始 2020-01-02 00:00
締切 2020-01-03 23:59
出発日
2020-01-09
完成予定
2020-01-19
参加人数
8 / 8
『ふぎゃーふぎゃー』と学園長こと【メメ・メメル】が乗り飛ぶ箒から、不思議な子供の泣くような声が聞こえる。 しかもメメルの懐の中から、その声は聞こえるよう。 「よーし、よーし。もう少しだからな、大人しくしちくり~」 片手で箒を掴み、もう片方の手は大事そうに己の懐を支えながら、メメルはフラフラと空を飛ぶ。 年明け早々、メメルは何をしているのだろう? フトゥールム・スクエアにたどり着いたメメルは、一目散に学生寮に飛び込む。 ……そう、懐の中に居る『なにか』を、学生たちに預けるために。 「チミたち聞くんだ~!!」 急に現れたメメルに、学生たちもビックリ! ……と思いきや、いつものことなので、驚くのは半々。それだけメメルが、毎回学生寮に飛び込んでいるということ。 「ほ~ら見て見て~、新しい新入生なのだ~!」 軽くざわつく学生などお構いなく、メメルは懐に抱いていた、その『新入生』を優しく表に出した。 「……はぁぁー!?」 「こ、これは!」 お騒がせに慣れた学生たちが驚くのは無理もない、メメルが『新入生』と言ったのは幼子。しかも産まれて数ヵ月であろう赤ん坊だった。 「少々ワケがあり、オレサマが連れて来た。チミたちは、この子の面倒を見る、OK?」 いきなり幼子を渡されても、学生たちだって赤ん坊の面倒の見方など分かりはしない。 『ムリ~!』と、不服を言う学生たち、だがメメルは、 「メメたん超多忙で、面倒はちょームリって感じぃ~。だから……ほ~い!」 渡すというより、赤ん坊を空高く飛ばしてしまったメメル。 「うっわわわーー!!??」 ポーンと宙を舞う赤ん坊を落とせば、怪我では済まないと、右往左往する学生たち。 だが、赤ん坊にはメメルの魔法がかけられており、赤ん坊は近くに居た学生の腕の中にフワフワと収まった。 「じゃあ頼んだよチミたち。あぁ、この子はライオンのルネサンスだ~か~ら~、力には注意なのだぁ~」 意味深な言葉を吐き、寮から出て行ってしまうメメル……と思ったら? 「その子はまだ名前すら無いのだ。チミたちが名前をつける。フトゥールム・スクエアの赤ん坊ってイメージで、超いいカンジぃ~♪ ではではなのだぁ~!」 『………………』 今度こそ本当に行ってしまったメメルと、赤ん坊を託されたまま唖然と残された学生たち。 ちょっと待て! 現実問題を忘れていないか? 「私、幼子の面倒なんてみたことがないわ」 「それよりミルクとかオムツとか、どうするんだよ?」 「誰があやして眠るの?」 「名前すらない赤ん坊。なんて呼ぼう」 次々と沸き起こる疑問質問。それに答えをくれそうな者も居なく、その場に残された学生たちは途方にくれるしかない。 だけど……。 「ふ……ふぁぁぁ~ん!!」 「……へ!?」 突然泣き出した赤ん坊。 泣くということは、なにかを欲求するサイン。 そこまでは分かる、そこまでは。 「ミ、ミルクかな? それともオムツ? ど……どうしたんでちゅかー?」 ――人というものは、なぜ赤ん坊相手になると自分も赤ちゃん言葉になるのだろうか? 「ふぁぁ~ん! ふぁぁ~ん!」 赤ん坊の心は理解しがたい。……そんなことを思っていた、メメルから赤ん坊を受け取った男子学生。 とりあえずオムツかと思い、赤ん坊が包まれている布を解こうとしたその時! 『ボスッ!!』 「……は? うあぁーー!?」 「危ないっ!」 な、なんと、赤ん坊の小さな拳が男子学生にヒットした途端、男子学生は赤ん坊を放り投げながらも壁まで飛ばされた。そのあり得ないほどの赤ん坊の一撃! これに慌てた女子学生がスライディングで飛び込み、落ちる赤ん坊をギリギリでキャッチし事なきを得る。 ……しかし今のはなんだ!? 「これって……祖流還り?」 黄金の髪と耳。新たに背中は金色の毛に覆われ、爪は鋭く長い。 「確かライオンのルネサンスだと……。だけど赤ん坊でこの力は凄い」 メメルは言った。『ライオンのルネサンスだから力に注意』と。 これがその理由? そしてフトゥールム・スクエアに連れて来られた原因? 「この種族って、どうなっているんだ?」 壁に飛ばされた……幸いにも魔法で激突だけは避けた男子学生が、茫然とつぶやく。 「ルネサンスの細かい種族までは、流石に分からないわ。この子だけが特別かもしれないわよ?」 「誰が分かる人は居ないだろうか?」 泣く赤ん坊を慎重にあやしながらも、寮内に居る学生たちに重い空気が走る。 この種族に通じる人。その人が居ない限り手に負えないのではないかと。 「……そうだ! フィンブル先生だ!」 「フィンブル……あぁー!」 学生たちが言うのは【フィンブル・リディル】先生。 魔王・覇王コースの教員であり、この子と同じライオンのルネサンス。 「でもフィンブル先生は、いつも鍛練でどこに居るか分からないのよね」 「授業はしているんだから、学園内には居るはずだ」 「探すといっても、赤ん坊を連れてだぞ? 俺たちだけでは手が足りない」 そこに通りかかったのは『あなたたち』。 ちょっとパワフルな赤ん坊を連れながら、フィンブル先生を探し出す。そして赤ん坊の名前もつけて欲しいと、面倒ごとを一度に頼まれてしまった。 「……どうするのよー!」 誰かの叫びが木霊する。 上手く赤ん坊をあやしながら、鍛練大好きフィンブル先生を探し、なおかつ名前も決めてあげなければいけない。 小さな赤ん坊に、メメルが託した想いを実行するのは君たちしかいないのだ。 赤ん坊を抱いて、学園中を駆けめぐれ!
まだみたことのない、すてきなたからもの
樹 志岐 GM
ジャンル
シリアス
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
少し
公開日
2019-12-30
予約期間
開始 2019-12-31 00:00
締切 2020-01-01 23:59
出発日
2020-01-07
完成予定
2020-01-17
参加人数
4 / 8
わたしにはママがいる。 わたしにはたくさんのきょうだいがいる。 でも、わたしにはおかあさんがいない。 わたしだけじゃなくて、ここにいるきょうだいはみんなおかあさんをしらない。 あいたい、あいたい。おかあさん。 どうしたらあえるんだろう? 太陽が街の一番大きな時計台の屋根に昇る頃、店が開店準備をはじめる。 魚屋の女将が魚の頭を豪快に切り落とし、肉屋の店主が大きな声で呼び込みをし、パン屋の旦那が店をサボっている。 そんな街の片隅、いつものように佇む孤児院の子供達。 ――孤児院へ寄付金を。恵まれない子供達に施しを。 いつものように子供達は呼び込みをし、いつものように決して多くはない収入を得る。 いつもの街の光景。ここから街が動き出すのだ。 「なぁ、聞いたか?」 普段は難しくて、あるいは興味を惹かれなかったからかスルーしていた会話が今日はやけに大きくはっきりと聞こえた。 「あぁ、街外れのボロ屋に住み着いた女の事か?」 「そうそう。なんでも探し物をしているらしい」 「……あの身なりだぜ? 何を探してるってんだ?」 「金目のもんとか、住み家とかじゃねぇの?」 まるで禿げ鷹のようだな。そう笑っていた大人達の言葉の意味はわからなかった。 けど、もしかして。 はやる気持ちを押さえきれず、少女は駆け出した。 その日、学園にやって来た男は慌てた様子であなた達に助けを求めてきた。 曰く、彼は孤児院を経営しているのだという。 「実は私の院で暮らしている女の子が行方不明になりまして……」 少女の名前は【プリムリリィ】 彼女は『母』というものに強い憧れを常日頃から抱いており、それを周囲にも度々話していたという。 そしてこうとも話していた。 『おかあさんにあいたい』と。 「最近街では、街の外れに住む女性の噂があります。きっとプリムリリィはその女を自分の母だと思い込んで会いに行ったのだと思います」 しかし、その女は彼女の母親ではないと院長は断言した。 何故なら、少女の母親である人物は少女を預けたそのすぐ後に息絶えてしまったから。 院長はその場に立ち会って、母親を院内の墓所に埋葬したのだと語った。 「プリムリリィには言い出せませんでした。事実を受け止めるには彼女はまだ幼すぎる」 しかし院長の説得を聞き入れるほど彼女は素直ではなく、確固たる意思を持っているようだ。 「お願いです、わたしたちのあの子を探してください……!」 そして院に戻るように説得をしてほしいと院長はあなた達に頭を下げた。
始まりの一筆
根来言 GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
とても簡単
報酬
少し
公開日
2019-12-29
予約期間
開始 2019-12-30 00:00
締切 2019-12-31 23:59
出発日
2020-01-05
完成予定
2020-01-15
参加人数
4 / 8
深夜に響き渡るその音を。君たちはただ、静かに聴くことだろう。 欲望、雑念、心残りを過去へ置き去り。 不安と、それ以上の期待を胸に抱き。 「ハッピーニューイヤー! 今年も、素敵な年でありますように!」 最後の音が消えるが早いか、叫ぶが早いか。もう待ちきれない、と。誰かの声が遮った。 鐘が告げるは新たな年の始まり。 今年もきっと、充実で満ちた年になりますように。 人々は笑いあい、そして言い合う祝いの言葉があふれていく。 『あけましておめでとう』と。 ● 「今年の目標はー?」 「いっぱい、美味しいもの食べる! とか?」 その空間を一番初めに見つけたのは、少女2人組であった。 新年最初のご馳走を食べ終えた2人は、目的無く、校内をぶらぶらと散歩していた。 トークテーマは『今年の目標』。 「あんた、いっつもそればっかだよね、他には……。ねー、あんな教室あったっけ?」 苦笑する彼女は、ある違和感に気づき、足を止めた。 彼女の指さす先にあったものは、教室のドアとドアの狭い空間に収まった小さな扉。 少ししゃがまなければ入ることができないほどの不自然な扉。 ただの飾りにしてはやや、不格好。少し触れてみれば、厚めの紙を貼り合わせただけの粗末なつくり。ドアノブなんてものはなく、周囲の正月飾りから浮いていた。 扉の横には、ぐにゃぐにゃとした黒い墨で『書道室』。 『妖精用のドアかしら?』と、笑いながら、2人そろって中を覗くと、ふわりと漂う稲藁と墨の匂い。 作り物の扉では無かったようで、扉はからからと音を立てながら横に動いた。 中には。 「ショドー……? んんん? 中にあるのは、紙と筆と……」 「『1年の抱負を書いてみませんか』? だって」 2人入れば少し狭いその空間には縦に長い紙に筆、たっぷりとパレットのような入れ物に注がれた墨。 そして、文字が書かれた紙が壁に数枚。 よくよく観察してみれば、何やらそれぞれに抱負らしきものが書かれているようだ。 「彼女ができますよーに? こっちは、商売繁盛? 七夕みたいだねー」 「でもでも、健康! とか、家内安全? ってのもあるね」 「ホーフって、自分がこうするぞーっていう意味だったっけ? たしか」 「今年1年こうするぞー……? うーん」 顔を見合わせ、暫し考えた後。2人は筆をとった。 貴方の今年挑戦したいこと、期待したいこと。書いてみませんか?
心の夢を見せる森
宇波 GM
ジャンル
恐怖
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
ほんの少し
公開日
2019-12-22
予約期間
開始 2019-12-23 00:00
締切 2019-12-24 23:59
出発日
2019-12-31
完成予定
2020-01-10
参加人数
8 / 8
理解のできない、不可思議で恐ろしいものに惹かれるというのは、どこにでもある話だ。 現にそれは、肝試しや怪談話を娯楽遊戯として人々が行っていることからも明らかだろう。 それはここ、魔法学園『フトゥールム・スクエア』でも例外ではない。 放課後の教室。 そこには幾人かの男女が集まり、季節外れの怪談話で盛り上がっていた。 「それじゃあ、こんな話は知っている?」 場も温まってきたところで、一人が声を上げる。 日が暮れて、明かりを付けていない教室内は薄暗く、だれが声を発したのかは分からないが、仲間のうちの誰かであるということは、皆容易に思いつくこと。 しん、と静寂が教室内に落ちる。 その中で語りだされた物語は、どこにでもありふれたお話。 むかしむかし、愛し合っていた二人の男女がいた。 二人はとても仲睦まじく、結婚すればだれもが羨むほどいい夫婦になれそうな恋人で、なぜ結婚していないのかをだれからも不思議がられたという。 男は女の作った木の腕輪を、女は男が買ってくれた貝殻の髪留めを、それはそれは大切にしていたそうだ。 その二人は、お互いに愛し合っていたため、いつかは結婚をしようと思っていた。 しかし、それは永遠に叶うことはなかった。 あるとき、出先から町に戻って来た男が、見知らぬ女を傍に侍らせ、恋人である女に告げた。 「俺、この女性と結婚するから」 自分の何が悪かったのか分からず、女は男になぜ、と詰め寄った。 しかし男は、鬱陶しそうに僅かに眉間にしわを寄せただけで、何を答えることもなく女の元から去って行ってしまった。 その悲しみに耐えきれなかった女は、町の外れにある森の前で自ら命を絶ってしまった。 さて、ここまでならどこにでもある、ただの悲恋物語だよね。 本番はここから。 女が命を絶ってからしばらく。 その森から不気味な怨嗟の声が夜な夜な響いたというんだ。 怪しがった人々は、幾人かを集めて調査に向かった。 しかし、その調査隊は戻ってくることはなかった。 二回目も、三回目も調査に向かわせても、そのどれもが戻ってくることはなかった。 魔物の仕業か。 そう思い始めた頃、調査に向かった一人が、ふらりと戻ってきた。 「おい、今までどこにいたんだ」 そう問い詰めた住人に、彼はぽつりとこう言ったそうだ。 「死んだおふくろと、遊んでたんだ」 「はぁ?」 彼はそう言ったきり、黙り込んでしまい、二度とその話は聞くことは叶わなかった。 どういうことだと人々が集まって頭を悩ませているうちに、二人、三人とぽつぽつ、いなくなった人々が戻ってきた。 「助けてくれ、苦しんだガキの声が、耳にこびりついて離れねぇ!」 「久しぶりに、友人と会ってきましたよ。ええ、素晴らしい時間でした」 「いやだ、いやだいやだいやだ、もうあそこに戻るのはごめんだ!」 「ああ、またあの森に行きたいなぁ」 戻ってきた人の証言は、まったく一致しない。 ある者はすばらしく幸福な時間を味わい、またある者は地獄もかくやという苦痛が与えられた。 その、幸福か苦痛かの二択でさえ、大まかにも分類分けはできないほど、規則性がない。 明らかに悪人のような風貌で、本人の悪評も周りに知れ渡っているような者が、幸福そうな表情をしていたり、普段温厚で、悩みも何もなさそうな明らかに善人に見える者が苦痛に呻いていたり、また、その逆も。 曰く、我々は夢を見ていたのだ。と。 しかし、その証言には必ず、揺らめく女の姿を見たことも、付け加えられている。 「リバイバル、か?」 『リバイバル(魂霊族)』であるのかという疑問は、否と首を振られる。 「リバイバルとは、あれは絶対に違う。理性がなくて、彷徨っているような感じで。あえて言うなら、怨霊……かな」 帰ってきた内の一人は、そう言って口を噤んだ。 「お前は何を見た?」 調査隊に入って、そして戻ってきたある男は、ぼんやりと焦点の合わない眼差しで問いかけた人を見た。 「彼女を見た」 男は以降、口を開くことは一切なかった。 後日その男一人で森に入ってしまったきり、行方が分からなくなったという。 その男が行方不明になってから、森から響く怨嗟の声はぱたりと止んだというよ。 曰く、その男とは、恋人を新しい女ができたからと振った男で、怨嗟の声はその恋人の女が発していたものとかいう話だよ。 男が女の元へ戻ったから、怨嗟の声も止まったっていうお話。 でもね、それからも森から不思議な声は度々聞こえて、その度に一人、また一人と森に吸い込まれるように消えていくんだって。 もしかすると、連れて行った男で足りなかった女が未だに残って、誘っているんだろうね。 夢を見せてさ。 教室内はしん、と始まる前と同様に静まり返る。 ふと、誰かが自身の腕を、寒さに耐えるように摩った。 「ねえ」 声は楽しそうに続ける。 「その森、近くにあるらしいし、行ってみない?」
流血の匠
革酎 GM
ジャンル
サスペンス
タイプ
ショート
難易度
難しい
報酬
通常
公開日
2019-12-22
予約期間
開始 2019-12-23 00:00
締切 2019-12-24 23:59
出発日
2020-01-01
完成予定
2020-01-11
参加人数
8 / 8
漁業と観光で潤う都市アルチェ。 温暖な気候と豊かな水産資源、そしてミルトニア家の合理的且つ革新的な統治体制により、かつてはただの小さな漁港に過ぎなかった集落が、今や巨大な湾岸都市として多くのひとびとを呼び込み、活況を呈するまでに至っている。 ヒト、モノ、カネがとめどなく流れ続ける常夏の楽園。魔物による脅威も比較的少なく、観光地としても大いに成功を収めた町。 それが、アルチェである。 死ぬまでに一度は訪れてみたい町として憧れの眼差しを受けるようになったのも、当然の話であろう。 しかし、一見すると豊かさばかりが目に付く町だが、ひとが多く集まれば当然、犯罪の芽も無数に萌す。 ある日、ひとりの犯罪者の名がひとびとの口端に上るようになった。 通称ブリードスミス。これまでに多くの犠牲者を出し、未だにその正体すら掴めていない、謎の連続殺人犯である。 今から10年前、罪無き少年少女ら13人がブリードスミスの手にかかって命を落とした。そのいずれもが、フトゥールム・スクエアの生徒達だった。 アルチェ司法警察は全力を尽くしてブリードスミス捜索に当たったが、現在に至るまで逮捕はおろか、その行方を掴むことすら出来ていなかった。 ブリードスミスは13人を殺害した後、完全に息を潜めて闇の奥底へと身を隠してしまったのである。 ところがここ最近になって、再びブリードスミスの名が取り沙汰されるようになった。 切欠は、一週間前の週末の夜。 アルチェの商店街に遊びに来ていたフトゥールム・スクエアの女子生徒が突然、行方不明となった。 当初はただの夜遊びだろうと高をくくっていた学園運営部だったが、翌日になっても寮に戻ってこなかった事実を受け、改めて捜索に着手した。 ところが、その女子生徒は翌日の夕刻、アルチェの裏通りの一角で血まみれの惨殺死体として発見されたのである。 その殺害方法や遺棄現場の様子から見て、ブリードスミスの手管に極めて酷似していた。 本人が舞い戻ってきたのか、或いはコピーキャットか。 事態を重く見たフトゥールム・スクエア学園運営部はアルチェ司法警察と協議の上、この問題を公表せず、極秘裏に捜索を進めることとなった。 しかし、敵は間違いなく魔法学園の生徒を標的にしている。 学園運営部と指導者達は、生徒達に対しては真実を告げ、警戒するよういい渡さざるを得なかった。 多くの生徒達はその指導に従い、アルチェの訪問を自粛するようになった。 だがひとりだけ、その指導に従わない者が居た。 彼女の名は【エリスティア・ハンメル】──殺された女子生徒の幼馴染であり、無二の親友だった。 フトゥールム・スクエア学園長室に、背の高い中年紳士が渋い表情で姿を現した。 アルチェの司法警察組織を束ねる【ジェラルド・ミルトニア】男爵である。男爵は眉間に皺を寄せて、応接卓の反対側のソファーに腰かけている【メメ・メメル】学園長に厳しい視線を送っていた。 「何とか、おたくの生徒をアルチェには来ないように徹底指導して頂けませんか」 「それはもう間違いなく、そのように指導はしておるよ」 メメル学園長は威圧的な態度で迫ってくる男爵に対し、こちらも負けじと胸を張って低く応じた。 だが実際のところは、メメル学園長も多少困ってはいたのである。 幾ら指導しようにも、本人──即ちエリスティアがこちらのいうことを聞いてくれなければ、結局は馬の耳に念仏のようなものなのだ。 勿論、幼馴染の親友を殺されたエリスティアの気持ちも、痛い程によく分かる。分かるだけに、彼女の意志を無理矢理抑え込ませようとする指導者としての立場にも、ジレンマを感じざるを得なかったのだ。 「ミルトニア家としても魔法学園に対しては敬意を払っているつもりです。しかしこれは、我がアルチェ司法警察の管轄下で起きた事案だ。魔物や魔王の眷属に蹂躙されたという話ならばまだしも、個別の刑事案件にまで学園側に介入されては、アルチェ司法警察の権威に関わります」 男爵の糾弾に、メメル学園長はまるでどこ吹く風といわんばかりに明後日の方向に視線を流している。 相手はアルチェの司法警察長官ではあるが、メメル学園長の前では小物に過ぎない。それでも建前上は相手のいい分を聞き入れる体を取っている。フトゥールム・スクエアの学園長としての立場を考えての、大人の対応をしているのだろう。 「兎に角、お願い致しますぞ。ブリードスミスは我々の事案です。10年前にあなたが奴の組織を壊滅させた功績は認めますが、同時に、奴を取り逃がしたのも事実ですからな。これ以上の介入は御免被りたい」 それだけいい残し、男爵は肩を怒らせて学園長室を辞していったが、メメル学園長は応接卓上のティーカップに手を伸ばし、熱いお茶を旨そうに啜っていた。 男爵がメメル学園長に手出し無用と釘を刺しに来た事実は、噂として魔法学園内に瞬く間に広まった。 多くの生徒達が、男爵の態度やいい分に強く反発したのはいうまでもない。 指導者達は飽くまでもアルチェ訪問禁止を通達するしか出来ないが、通達以上のことは何もしなかった。つまり、生徒達を監視、或いは束縛するような真似は一切しなかったのである。 そこにどんな意図が込められているのかは、解釈はひとそれぞれだ。 だが少なくともエリスティアは、メメル学園長からの無言のエールだと確信した。彼女はその夜、自室に無期限停学届を残し、女子寮レイアーニから姿を消した。
雷鳴と烏鴉
水無 GM
ジャンル
戦闘
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2019-12-19
予約期間
開始 2019-12-20 00:00
締切 2019-12-21 23:59
出発日
2019-12-26
完成予定
2020-01-05
参加人数
4 / 8
「俺たち不死身の『雷鳴と烏鴉(サンダークロウズ)』!!」 大中小。 それぞれ気合の入ったパンクロッカー風の恰好をした男が三人、学園の受付に陣取っていた。その光景に少し圧倒されたのか、受付嬢は眉の端をひくひくさせながら続けた。 「は、はあ……サンダークロウズさんですね。本日はどういったご用件でしょうか」 「依頼だァ!」 三人の中で一番身長が高い男が言う。 「それもとびっきりイカしてる、クレイジーなやつだ!」 三人の中で二番目に高い身長の男が言う。 「ヒャッハー!!」 三人の中で一番背の低い男が、両手を胸の前で交差しながらシャウトした。 「そ、そうでしたか……では依頼内容をお聞かせいただけますか?」 「俺たちがいつも世話ンなってる姐さんがいるんだがよ」 「ちなみにその人はここの生徒なんだ」 「……えっと、では今回はその方へのお礼参り、という事でよろしかったでしょうか?」 「ば!? ち、ちっげえよ! 世話になったってそういう意味じゃねえ!」 「色々と俺たちの助けをしてくれたってことだ!」 「ちなみにその人の名前は【雷鳴】と書いてカミナリ・メイだ!」 「カミナリメイ……カミナリメイ……もしかして『武神・無双コース』のメイさんの事で……」 受付嬢はその生徒の名前を出すと、黙り込んでしまった。 「……あの、ほんとうにメイさんがあなた方と知り合いなんですか?」 「どういう意味だ」 「い、いえ……なんというか、メイさんは優等生で品行方正で、あと箱入り娘のような感じで……とてもあなた方のようなガラの悪い方とお付き合いがあるようには見えないのですが……」 受付嬢がそう指摘すると、男三人は胸を押さえ、苦しそうに呻き出した。 「ぐぬおッ!? こ、こいつ……めちゃくちゃ言うじゃねえか……!」 「俺たちの心をえぐりに来るとは……この女、大した野郎だぜ……!」 「だがしかし、俺たちももう改心したんだ。この格好は単なる趣味だぜ!」 「……ちなみに普段はイチゴ農家なんかをやってます」 三人はそう言うと懐から名刺を取り出し、受付嬢に丁寧に手渡した。 「あ、これはご丁寧にどうも……」 受付嬢は名刺を受け取ると、手元に三枚きっちり並べて置いた。名刺にはそれぞれ【コルニクス・カラス】【ヴァローナ・カラス】【レイヴン・カラス】と書かれていた。 「……ところで、質問なのですが、あなた方とメイさんとのご関係は……?」 「それはメイ姐さんの名誉のために言うことは出来ねえ!」 「姐さんが地元のワルをまとめ上げてた総長で、俺たちはその舎弟だなんて言えるわけがねえ!」 「素手喧嘩で無敗伝説を打ち立てたなんて決してな!」 「あの……全部言ってますけど」 「はッ!?」 「い、今言ったことは聞かなかったことにしてくれ!」 「でないと俺たち……あわわわわ! た、頼む! この通りだ!」 三人はそう言って、何度も机に頭を打ち付けた。 「わかりました! 言いませんから! ……ですから、受付カウンターを血で染めるのはやめてください……!」 受付嬢がそう懇願すると、三人はガバッと顔を上げた。 「さあ、話を戻すぜ!」 「き、切り替えが早い……」 「メイ姐さんの事についてだが」 「俺たちはまだメイ姐さんに恩を返せてねえんだ!」 「そこで何かできることがないか俺たちなりに必死に考えてみたんだが……」 「これがさっぱり思い浮かばねえんだ!」 「そこで知恵を貸してもらおうとここまで来たわけだ!」 「ここには色んなやつらが集まる」 「だから、色々な意見を聞けるんじゃねえかって思ったわけだな!」 「要するに、メイさんに何をプレゼントしたらいいか……を聞きに来たわけですね?」 「そういう事だ!」 三人が元気よくそう言うと、受付嬢はため息をつき、わかりやすく頭を抱えてみせた。 「……ひとこと、よろしいですか?」 「おう」 「さっそく何か思いついたか!?」 「――ご自分たちで考えてください!!」 受付嬢がバン、とカウンターを叩く。 「あなた方は腐ってもメイさんの舎弟なワケですよね? なら、あなた方が一番メイさんに詳しいはずでしょう?」 「そ、それは……」 「そうだけど……」 「それに、こういった贈り物は他人の意見を取り入れるより自分で選ぶべきです。他人が選んだものに心は籠りません。自分たちで悩み、選んだものに心が籠るのです。たとえば私がブランド物の香水を送ってくださいと言って、あなた方が実際に買ってメイさんに贈ったとしましょう。それで、メイさんになぜこの香水を選んだのか、と問われたらあなた方はどう答えるつもりですか? 私の言う通りにした……とでも答えるつもりですか? そんな喜ばせるだけの目的でモノを貰ってうれしいはずがないでしょう?」 「た、たしかに……!」 「あんたの言う通りかもしれないんだぜ……!」 「でも、姐さんが何を贈られて喜ぶかなんて……」 「では……たとえば、メイさんの好きなものってなんですか?」 「姐さんの好きなもの……」 「拳と血と暴力と殺戮と……」 「あとは強者か……」 「……あの、しつこいようですけど、本当に私の知ってるメイさんと同一人物なんでしょうか?」 「雷鳴なんて滅多に聞く名前じゃないだろ」 「ですよね……」 受付嬢が項垂れるようにして答える。 「……ともかく、他にもっと情報はないですか? 別に強者との戦いとかもいいですけど、もっとこう……なんというか、物! 物でいきましょうよ、物で!」 受付嬢は半ば投げやりな感じで話を続けた。 「物か……」 「武器とかどうよ?」 「いや、姐さんのスタイルは裸拳での殴り合いだ。余計な武装をすると狙いが狂うと言っていた」 「じゃあ武器の類は一切ナシだな……」 「いや、あの、私が言っているのは指輪やネックレスとか小物系なんですけど……」 「余計にダメだな」 「指輪は殴る時に邪魔になるし、ネックレスはフットワークで攪乱する時に揺れてうざったいと言っていた」 「じ、じゃあ服! 服でいきましょう! メイさんと言えば清楚な……」 「服……そうだよ、特攻服があるじゃねえか!」 「おお! そういえば、常に着てたな赤い特攻服!」 「赤は返り血が目立たなくていいって言ってたしな!」 「ど、どんな理由ですか……でも、いいのかな?」 「よし、贈るものは決まったな!」 「それと布よりも本革のほうがいいよな! 丈夫だし」 「あとはどう調達するかだけど……」 三人はそこまで言うと、揃って受付嬢の顔を見た。 「……わかりました。革の調達でしたらお任せください。衣類の革であればアーラブルなんかがオススメかと」 「そこらへんは任せるぜ!」 「とりあえず、皮を用意しておいてくれ!」 「わかりました。では、そのように手配しておきます。……気持ち、伝わるといいですね」 受付嬢はこそっと悪戯ぽく、三人に言ってみるが――。 「ん? ああ、そうだな」 と、三人からそっけない返事が返ってきた。 「……あれ? 今回の贈り物って告白的なアレじゃないんですか?」 「告白ぅ?」 受付嬢の言葉を聞いた三人は目を丸くすると、その場で大笑いしだした。 「な、なんですか? 私、なにか変な事言いましたか?」 「ムリムリムリ」 「たしかに姐さん、顔はいいけど」 「付き合ったりしたら殺されちま――」 ――ビュウ、と突然風が吹き荒れる。受付嬢はたまらず目を閉じてやり過ごすが、目を開けた時にはすでに三人の姿はなかった。 得も言われぬ緊張感の中、受付嬢は額に滲んだ汗を拭うと片手を上げた。 「つ、次、お待ちの方……」
クリスマスダンスパーティのお誘い
GM
ジャンル
日常
タイプ
ショート
難易度
とても簡単
報酬
ほんの少し
公開日
2019-12-20
予約期間
開始 2019-12-21 00:00
締切 2019-12-22 23:59
出発日
2019-12-28
完成予定
2020-01-07
参加人数
7 / 8
「おーっほっほっ! 皆様ごきげんよう!!」 それは紅いドレスを身にまとう王様・貴族コースへ通う【ミレーヌ・エンブリッシュ】の挨拶だ。 「皆様に集まっていただきましたのは他でもない、クリスマスに関するお誘いをするためですわ!」 よくよく話を聞けばどうやらミレーヌはクリスマスにかこつけて学園でダンスパーティを開催することを学園へ申請し許可を得たのだという。 「いずれ王となるわたくしが開催するパーティですもの、どのような方でもつまらない思いなど絶対にさせませんわ!」 まずは誰かしら誘い合わせてみてはどうかとミレーヌはいう。 それは友人でも良いし、恋人などでも良いだろう。 もちろん1人で参加しても十二分に楽しめるパーティになるとは断言する。 そして参加を決めれば次に行うのは衣装選びだ。 ドレスやタキシードなどはミレーヌが商人たちに交渉してレンタルで提供してくれる約束になっている。 どのようなサイズでもデザインでも必ず揃うことだろう。 次に行うのはやはりダンス。 希望者には事前に教諭たちの協力によってダンスレッスンも行ってくれるということで恥をかく心配はないだろう。 ダンスパーティの会場となる学園ホールでは芸能・芸術コースの生徒たちによる盛大な生演奏が鳴り響く。 誰かの手をとって踊っても良いし、1人で音に合わせてくるくると踊りを楽しむのもまた一興である。 そしてパーティというからにはやはり食事もつきものだ。 食堂の方々によって用意されたちょっと豪華なパーティ料理は立食形式で楽しめるようになっているので是非美味しい食事も楽しんでもらいたい。 「というわけで一日を通して、人によっては事前準備から楽しめるダンスパーティの開催ですわ! おーっほっほっほっ!」 ダンスパーティの開催日などを伝えた後、ミレーヌは高笑いを上げながら立ち去っていくのであった。
なんでもない貴重な休日
海無鈴河 GM
ジャンル
日常
タイプ
EX
難易度
とても簡単
報酬
少し
公開日
2019-12-17
予約期間
開始 2019-12-18 00:00
締切 2019-12-19 23:59
出発日
2019-12-26
完成予定
2020-01-05
参加人数
5 / 8
その日の朝は、普段よりも冷え込みが激しかった。 今日は休日。学園の授業もお休みだ。 いつもの制服ではなく私服のセーターを着こみ、とある男子生徒は寮の自室の扉を開けた。 すると、向かいの部屋の扉も同じように開く。髪に寝ぐせを付けたままの同級生が姿を現した。 「おはよう。今日は冷えるね」 「ああ……。おかげでいつもより早く目が覚めちまったよ」 「寝坊しなくてよかったじゃない」 そんな軽口をたたきながら、二人は廊下を並んで歩く。同じように、朝食をとろうと部屋を出てきた生徒たちで廊下は混雑していた。 ふと、寝ぐせのついた生徒が隣を歩く彼を肘でつついた。 「おい、見ろよ。どうりで寒いわけだ」 窓の方を顎で指す。つられて視線を向け、彼は驚いて窓に駆け寄った。 「わあ……!」 窓越しに見えるのは、白く染まった街並み。見慣れたパン屋の赤い屋根、広場の噴水、公園の木々。すべてが真っ白に染められていた。 わずかに雲間から覗く太陽の光を受け、白い粒はキラキラと輝く。彼の目はその景色にくぎ付けだった。 「雪が降ったんだ……!」 ● 学園中がどこかキラキラしていた。生徒も先生も関係なく、みんながこの貴重な休日を満喫しようと心躍らせていた。 雪の積もったグラウンドでは、雪合戦をしようと生徒たちが雪壁を作っている。片隅では雪遊びに興じる女子生徒の姿も見える。 一方で、スコップを持った先生があわただしく正門の前を走り抜けていった。なにかあるのだろうか。 寒さの苦手な者は、校舎の中で銀世界を楽しんでいるようだ。ほかほかと紅茶の湯気が立ち、教室の窓を曇らせていた。 湖には氷がはり、レゼントの街からスケート靴片手に子供たちがやってきていた。 夜にはグラウンドにかまくらを作り、鍋なんかもするらしい。 このなんでもない貴重な休日。君たちはどう過ごすだろうか?
サンタクロースバウト
秀典 GM
ジャンル
戦闘
タイプ
ショート
難易度
普通
報酬
通常
公開日
2019-12-12
予約期間
開始 2019-12-13 00:00
締切 2019-12-14 23:59
出発日
2019-12-19
完成予定
2019-12-29
参加人数
4 / 8
子供にプレゼントをくばるサンタという存在は誰もが知っているだろう。 恰幅の良い白いヒゲを生やした老人が赤い衣装を着ているのが有名だ。 しかしサンタと言えど、一人で世界中を回っている訳ではない。 各地に点在する仲間と一緒に働き、子供達に夢と希望を与えている。 この男【サンタクロース・バトルロード】もサンタの名を持つ一人だった。 「ぐふぅ、この間の黒王クマと格闘した傷が痛むわい。これでは今度の試合にも勝てぬかもしれぬわ。前回王者であるワシが棄権するわけにはいかぬ。どうしたものか……」 背中と胸に傷を負ったサンタクロースだが、その肉体は老人のそれではない。 分厚い大胸筋、六つに割れた腹筋、丸太のような両腕と、はち切れんばかりの大腿四頭筋。 バッキバキの筋肉美は二十歳のものと言っても過言ではないだろう。 「こうなったらもっと鍛えねばならぬな。ぐふぅ……」 赤い帽子と赤い服は、サンタの職業に就く者にとっての憧れである。 とある地域のサンタクロースは、サンタクロースバウトで優勝者しなければ赤い服は着られない。 とても栄誉なものなのだ。 「赤い衣服はこのワシが身に着けねばならぬ。だがこのままではサンタクロースバトルロワイヤルに負けてしまう。ぐふぅ、ワシの相手になれる戦士を見つけなければ。だがどこにいるものか……ぐふぅ……」 サンタクロースは考える。 「ぐふぅ、あの学園に頼んでみるのもありか? ぐふふぅ、ワシを倒せる者が居るのか楽しみだわい。ぐふぅ……」 サンタクロースは自身の傷を筋肉の締め付けで止血している。 「ぐふぅ、まずはトレーニングだ。それを終えてから学園に依頼を出すとしよう。そして生徒達に我が肉体の仕上がりを見せつけてやろう」 サンタクロースは自分の背丈よりも大きな岩を背負い、腕立て伏せを続けている。 回数を行うごとに彫刻のような肉は切れ味を増し、汗でテカテカと光り輝く。 「ぐふぅ、楽しみだわい。若い力を吸収してこの身に力が宿るのをな! グワハハハハハハハ!」 学生が来るまで、サンタクロースはトレーニングを続けた。
翼の杖ケリュケイオン
鞠りん GM
ジャンル
冒険
タイプ
ショート
難易度
簡単
報酬
少し
公開日
2019-12-09
予約期間
開始 2019-12-10 00:00
締切 2019-12-11 23:59
出発日
2019-12-17
完成予定
2019-12-27
参加人数
6 / 8
● 本日も快晴! フトゥールム・スクエアは平和なり! ……と、思ったら、少し様子が違うよう。 放課後になる夕方、1人の街人が学園の門を叩いた。 「……依頼ですか?」 「はい。『トロメイア』、百神殿街から来ました。私たちではダメなんです。どうか、どうか、勇者様を……お力をお貸し下さい!」 その必死な形相に、学園の事務員は彼を応接室に通すことに決めた。 「では、お話をお聞かせくださいませんか?」 「は、はい」 彼はフェアリータイプのエリアル【スペンサー・フロックハート】という名前で、『トロメイア』にある百神殿街で観光業を営んでいるようだ。 百神殿街とは、街の東側に広がる遺跡群のことで、アルマレス山に集うという百の聖霊それぞれを祭った神殿が集められている、古代より続く落ち着いた雰囲気を感じられる地域のこと。 「――ほとんどの神殿や神殿跡は、その大部分が調査を終了しており、施設として使用されております」 神殿とは言うものの、神官などはおらず建物だけが残っていたり、スペンサーのような商人が買い取り、観光地化をしているところも多いのが、今の百神殿街の現実である。 「ですが最近、未だ調査中であった神殿の一つに、地下空間の存在が発見されたのです」 調査隊が発見した地下空間に、街も百神殿街に残る神官たちも色めいたが、現実問題として誰が地下空間を捜索するかは揉めたのだと言う。 最終的には神官たちに押し切られ、街の方で調査を行う事になった。 「街を代表して、私たちが中に入りました。地下は迷路で迷うこともあり、何日もかけて漸く最奧まで辿り着きはしました」 ですが……と、スペンサーは続ける。 最奧まで行き着いたが、部屋の前の両脇には石のゴーレムが守っていて、部屋に入ろうとすれば動き出し攻撃するというのだ。 「ゴーレム?」 「ええゴーレムです。人と同じ形をしていますが、高さは私の倍近くあり、1歩でも近づくものなら、動き出し石の腕を振り下ろして来ますので、私たちでは手に負えません」 スペンサーに対応している学園の事務員は思う。古代に作られた神殿のゴーレムが、今も動くものなのかと。 「新しく置かれた可能性はありませんか?」 「それはあり得ません。あの神殿跡は、最近まで半分土に埋もれていましたから。そして古い噂があります」 「噂……ですか。あらゆる知識がある、このフトゥールム・スクエアでも、百神殿街にまつわる噂は少ない」 古すぎて埋もれてしまった記憶は、フトゥールム・スクエアをもってしても、なかなか事実関係の裏は取れないもの。 それなのに、街に伝わる噂があったのかと、事務員も少しだけ驚いている。 「――『百の神殿のどこかに、当時の権力者が使用していた杖、ケリュケイオンが眠っている』。今までの発掘調査では杖は見つかっていません。もしかしたら、ゴーレムが守っている部屋の向こうにあるのではないか。そう私たちは考えています」 ケリュケイオンとは、古代の魔法の杖の1つで、杖の頭部には翼が飾られ、柄には二匹の蛇が逆方向に巻き付いているという噂だけある品なのは、学園の書物で判明はしている。 ただし今まで誰も見たことはないが。 それを別の部屋で聞き耳を立てて聞いていた学園長こと【メメ・メルル】は、『欲しい、欲しい、その杖が欲しいー!』と大騒ぎ!? ついには勇者活動として、百の神殿の調査を学園長権限で断行してしまった。 周りの先生たちは『またか』とは思うものの、学園長の決定には逆らえず……。 そこで勇者活動と課外授業を兼ねて、あなたたちをトロメイアへと出すことに決めた。 ● トロメイアは、西側の商業地域であるオクトー広場と、街の東側になる百神殿街で構成されている。 あなたたちは、まずオクトー広場で探索の下準備を整えた後、案内役をかって出たスペンサーと共に、まずは一緒に神殿地下に入った街のメンバーに会うことにした。 「俺は覚えている。あの迷路は『右・左・左・右』に行けばいいんだ」 だが、隣にいた他のメンバーが言う。 「お前はゴーレムに驚き、闇雲に逃げただろ。そんな奴の言うことなんか信じられるか!」 「だが行くときは冷静だった!」 「なんだとぉ!」 あわやケンカになるところを、慌て仲裁に入った、あなたたちですが、彼の言った『右・左・左・右』が本当に合っているのかは怪しい限りとは思う。 「意外に逆じゃないのか? 必死だった時の方が記憶に残るからな」 最後の1人が呑気なことを言う。 さて、どれを信じていいのか……これは困った。 困りながらもスペンサーの案内で、目的の百の神殿跡に来たあなたたち。 これから迷路を走破し、ゴーレムを倒して、最奧の部屋に本当はな何があるのか確かめなければならない。 期待と不安を抱え、あなたたちは地下への一歩を踏み出した。
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