;
はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



絞込
ジャンル 難易度 GM メモピン
キーワード検索

春のハイクはダンジョンで 桂木京介 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 ほんの少し

公開日 2019-03-11

予約期間 開始 2019-03-12 00:00
締切 2019-03-13 23:59

出発日 2019-03-20

完成予定 2019-03-30

参加人数 8 / 8
 引率はゴドリー先生――と聞いた瞬間、げっ、とか、しまった! とかいう声がいくつか上がった。  その名を知らない生徒は、なんで? という顔をしている。  いずれにせよ、あまりふさわしい反応ではないだろう。  だってここは、『たのしい春のハイキング』の集合場所のはずなのだから。  広大な学園の敷地内、まだ新入生たちが足を踏み入れたことのない一角。  岩ばかりで殺風景な場所ではあったが、これからさぞや風光明媚なところへ移動するのだろうと誰もが思っていたのだ。最初は。  『きたる春の好日、たのしいハイキングを開催します。お弁当不要! お菓子も不要! ぜ~んぶ学校が用意しちゃうゾ☆ 通常装備で来てね♪』  と、いうのが募集時のポスターに書かれていた文字だった。  だから大半の参加者は、わくわく気分でありこそすれ、不安とか戸惑いとかとは無縁のはずだった。  しかし不安や戸惑いは、もやっとした予兆からカチっとした確信へと変わった。 「……どうやら歓迎されてない様子だが、待たせたな」   ぬっと岩陰から、どうにも不景気な様相の男性教師が現れたからである。  それなりにハンサムではある。しかしそれは彼が、伸び放題の無精髭を剃って不揃いの黒い長髪を切り、充血しっぱなしの目と目の下の隈をどうにかしたうえ、さわやかな笑みのひとつでも浮かべた場合に限られよう。 「おはよう……初級魔法術の教師、【ゴドワルド・ゴドリー】だ」  ニヤリという幻聴が聞こえるくらいゴドリーは唇を歪めた。  皆、恐る恐る、おはようございます……と返すほかない。  でもこの男に似合うあいさつは、『このたびはご愁傷様でした』ではなかろうか。毎度授業と称しては、厳しい難関に生徒たちを放り込む自称実践主義教師が彼なのだ。 「これからハイキング場に引率する。ついてこい」  と言うなり、ところどころに黄金の意匠をほどこした黒いコートをひきずるようにしてゴドリーは歩き出す。生徒たちは、カルガモの赤ちゃんのように一列になって彼に従った。そうするほかなかった。  ゴドリーの名を告げた用務員は、ひらひらと手を振って見送っている。  行軍は十分ほどで終わった。 「ここだ」  数人が乗れそうな大きな岩のところまで来ると、ゴドリーは突然立ち止まり、右手にもった樫の杖を無造作に振った。  杖の先に着いた赤い石が警告灯のように鋭くと光った。  すると岩が真横に動き、その下から地下へと降る石の階段が姿を見せたのである。 「今日のハイキングはこの階段を下りた先で行う。もとは洞窟を改造したものだから……一種の自然公園だな。自然光も入るし、深いところなら光る苔がむしている。ちょっとした迷路になっているが、アトラクションと思えば楽しかろう」  いえそれ自然公園じゃなくて『ダンジョン』じゃないですか――と異論が上がったがゴドリーは無視した。 「迷路ばかりで退屈しないように、土塊(つちくれ)で作った『ご当地キャラ』にうろうろしてもらっている。一緒に遊んでもらうといい」  ご当地キャラ? という声に、 「……まあ、ダンジョンのご当地キャラだから、『ゴーレム』と言ったほうが適切かもしれん」  平然とゴドリーは答えた。ていうか早々に『自然公園』という嘘を放棄している! 「ゴーレムどもの数は忘れた。動きは鈍いし頭も鈍い、力もこの類いでは弱いほうだ。ただし集団行動が好きで、大声を出して仲間を呼ぶ習性があるので倒すときはスピード重視だな。あと、土でできているから風属性の魔法が効きやすい」  一旦ここで言葉を切って、おっと、と声を出してゴドリーは続ける。 「言い忘れるところだった。一体だけ石のゴーレムがいるぞ。あれはそれなりに強敵だ。なんとかしてしのぐように」  私の引率はここまでだ、とゴドリーは当たり前のように言った。 「一足先に出口で待っているから、慌てず騒がず春のハイクを楽しんでくるがいい。運が良ければ半日ほどで出てこれるだろう」  このとき生徒の一人が大急ぎで、あの募集メッセージを書いたのは誰ですか? と訊いた。  するとゴドリーはにこりともせず、 「あれか? 書いたのは私の脳内妻だ。かわいいメッセージだったろう?」  と言い切ったのだ。  脳内? と訊き返す勇気のある生徒はいない。  かわりに皆、口を揃えて、か、かわいい……と引きつった反応を返すのだった。  数メートルの階段を全員が下りたところで、入り口の穴の上にゴドリーは顔をのぞかせた。 「入り口を閉じる前に、希望者には短冊を渡す。俳句を詠むといい。私が預かっておこう」  俳句? と問う声に、 「わからんか? 辞世の句、ってやつだ」  全然ありがたくないお言葉である。……まさかハイキングの略『ハイク』とかけたのではあるまいな。  ひょっとして彼、自分ではお茶目だとか思っていないか――?  間もなく岩が動き、ぴったりと入り口は閉ざされてしまった。
保健室 雑用募集 駒米たも GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-03-09

予約期間 開始 2019-03-10 00:00
締切 2019-03-11 23:59

出発日 2019-03-16

完成予定 2019-03-26

参加人数 6 / 8
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の保健室は『室』というにはあまりに広すぎる。  例えるなら、街の病院がそのまますっぽりと、城のなかに仕舞われているようなものだ。 学園の生徒数や授業の危険度、先生たちのチャレンジ精神を考えれば、それなりの医療施設があっても不思議ではないのだが……それにしたって『立派な保健室』であるのは確かだ。  保健室には担当の治療師が常駐しており、授業中の怪我や軽い体調不良はここで治療される。もしかすると既にお世話になった者もいるかもしれない。  そんな保健室にちょっとした危機が訪れていた。  常駐する治療師たちが揃って流行病に臥せったのだ。  幸いにも、感染した治療師たちは即座に隔離状態となったため学園内での感染拡大は免れた。  しかし怪我人や病人は待ってくれない。毎日、様々な学科、種族、生徒、先生が重傷軽傷まとめてやってくる。  腕の良い治療師は重傷者が運ばれる集中治療室にこもりきり。保健室は最低限の人数で業務をこなしている。おかげで保健室はここ一週間、慢性的な人手不足に陥っていた。  何事にも限界はある。集中力だってきれる。ハイにだってなる。だってここは戦場だもの。そうだ新兵募集しよう。そう思う程度には、みんな疲れていた。  学園の掲示板にこんな張り紙が出されたとしても誰も止める者はいなかったのだ。 『保健室 雑用募集』  詳細はない。潔く、縦書き七文字。ダイイングメッセージのように語尾が紙外にはみ出している。ように、ではなく本当にダイイングメッセージなのかもしれない。 「よくきてくれた新兵、もとい新入生諸君! 薬の材料となる薬草をもらいに『植物園(リリー・ミーツ・ローズ)』へお使いを頼む!」 「いえ、溜まっていたシーツやタオルの洗濯物をお願いしては?」 「人手が来たぞ逃すな囲め仕留めろ!」 「足りない備品を補充してもらいましょう」 「脱走兵だ、脱走兵がでたぞー!」 「ねぇ、患者さんの付き添いをお願いできない?」  扉を開けた瞬間待っていました! とばかりに押し寄せる要望。  張り紙には放課後だけと書いてあったが……。 「放課後か。つまり日が暮れるまで使っていいってことだな。よし、ミッチリ付き合え新兵ども!」  みんな、顔は笑っているのに目が血走っている。  叩かれた肩からギリギリと音が鳴る。  ど、どこから手をつけようか。
第一回学園一厨二病決定戦開催のお知らせ くそざこあざらし GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-03-11

予約期間 開始 2019-03-12 00:00
締切 2019-03-13 23:59

出発日 2019-03-18

完成予定 2019-03-28

参加人数 3 / 8
 前略。  私は【セカンド・エージェント】。言うまでもないが、偽名だ。  この度我々『機関』は新たなる『適合者』を求め、この『機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)』を発動するに至った。  まずは珈琲でも飲みながら、落ち着いて読んでほしい。  機械仕掛けの神(デウス・エクス・マキナ)によって創造されたこの文章は、『ミーム汚染』と『ラグナマグナ』を防ぐために、『第九暗号化術式(コードゼロゼロナイン)』と『削除済み(表示されていないかもしれない)』によって改変を施し、『完全非適合者』および『学園統率者の犬共』には認識出来ないようになっている。彼らには、まったく関係のない違う文章に見えているはずだ。  つまり、この文章を解読している君には適合者としての素質がある。もしくは『宵闇に選ばれし者』かもしれないが……。どちらにせよ、君は『知っている』はずだ。  ……前置きはこのぐらいにしておこう。我々には時間がない。  我々は新たなる適合者を、組織を救済する『鍵』となり得る人物を捜し求めている。  次の『マギステルの夜』までに、複数の『扉』を開かなければ、我々に未来はない。我々は『常闇の魔動書(ダークシナリオ)』に基づいて、今までいくつもの扉を開き、いくつもの『ミーム災害』を防ぎながら、学園統率者の犬の眼をかわし続けてきたが、ついに『特異点』を見つけられてしまった。  『ルベラミエの悪魔』を使ったとしても、もはや我々の『贖罪(ちから)』だけではどうにもならない。君達が――すまない。ここも安全ではないようだ。  我々は扉を開ける鍵(ちから)を持つ適合者を『選別』するために、審判の日、『久遠の舞踏会』を開くことにした。この文章が読めているのなら、頼む、久遠の舞踏会に参加してくれ。もう時間がないんだ。多少の報酬は支払う。  結果的に君が『すべての罪を背負う者』だとしても、組織に所属しろとは言わない。一時的に、我々に手を貸してくれるだけで良い。  久遠の舞踏会にはカバーストーリーとして『第一回学園一厨二病決定戦』を適応している。犬共に嗅ぎつけられることはないはずだ。心配するな。  それでは、『会場』でまた会おう。  ラ・メメタン・フトゥールム。
勇者流?雪合戦 vurebis GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-03-07

予約期間 開始 2019-03-08 00:00
締切 2019-03-09 23:59

出発日 2019-03-15

完成予定 2019-03-25

参加人数 4 / 8
 季節は冬。窓の外に見える景色は白銀の世界。勇者の学校ことフトゥールム・スクエアも例外ではなく雪が積もった。  今日の授業は終わり、降り積もった雪を踏みしめ、この後何をしようか。と学友話しながら屋外練習場を歩いていると、一人ポツンと猫耳の少女が立っていた。あんなところで何をしているのだろう。  少し気になり防寒着に身を包んだ少女を眺めていた。すると突然、屋外練習場の端まで届くような、しかしウキウキとした声色の大音声で叫んだ。 「みんな! 雪合戦しよう」 「私は【ニット・グルード】。気軽にニットって呼んでね。君たちは新入り君かな」  雪の上に座り第一試合を眺めていると、こちらを向き笑顔で駆け寄り声をかけるニット。周りには同じように興味本位で集まった生徒もいる。 「もう第一試合が始まってるけど、試合を見ながらこれからルール説明をするね!」  テニスコートほどの大きさのフィールドの上では、生徒達が二つのチームに分かれ雪玉を投げ合っている。中には雪の壁に隠れている生徒もいるようだ。 「まずはフィールドから。自陣と敵陣の二つに分かれていて、両陣地とも、雪でできた壁が四つずつあるのは見てわかるかな」  ニットが指を指す横長のコートを半分に区切るように引かれた赤いライン。それを基準に左右対称に壁が設置されている。  壁はラインと並行する向きで、ラインの近くに二つ一直線上に並んでいる。その後方、自陣のエンドラインの近くにも同様に設置されている。  シールドというらしい壁は、一般的な体型の者なら二人は楽に隠れられるような大きさで、試合中の生徒はうまく隠れて雪玉を避けている。 「それで、攻撃方法は雪玉をぶつけるだけなんだけど、普通とは違うところがあるんだけどわかるかな」  そう言われコートを見ると、ひとりが木製のような片手剣で雪玉を弾いている。その向かい側、敵チームの中にはリーチの長い両手槍を持った選手もいる。飛んできた雪玉を弾いたり、地面に突き刺した両手槍を軸に移動をしたり用途は様々なようだ 「みんなに使ってもらうのは競技用の武器で、叩いても痛くないけど、ちゃんと技能は使えるから安心してね。それから、普段使ってる武器の種類から選んでね」  持っている武器を指さしながらこちらを見るニット。コート内には武器を持っていない生徒もいる。持ち込みは自由なようだ。さらに解説が続く。 「今の子みたいに、武器は防御、回避、のために使ってください! 攻撃したら即負け扱いです! 妨害とかできたら試合はもっと楽しくなるかも! もし雪玉に当たっちゃったら、あの子みたいに雪玉づくりでチームを支えてあげてね!」  再び指さした先にはコートの外で雪玉をひたすら作り続ける生徒が数人確認できる。作った雪玉は投げて渡しているようだ。 「ルールはこれくらいかな。さぁ、君たちは第二回戦であの子たちと戦ってもらうよ!今回は四チーム参加のトーナメント戦だ。二回勝つと優勝! 私からほんのささやかな景品が出るよ」  目線の先には大柄の男がこちらに向かって歩いている。すでに競技用の武器を手にしている様子だと、初心者ではないようだ。  男たちはニットの前まで歩くと笑った。 「こいつらが俺の対戦相手か! よろしくな。俺は【ビルダ・ケプラー】。ビルダって呼んでくれ。見たところ初心者か? こりゃ万年負けチームも負けてられないな!!」  ガハハハと豪快に笑うビルダにニットが近寄る。 「またまた来たんだねー。待ってたよ! 今回は勝てるかな?」  挨拶をしに来ただけなのだろう、「お互い頑張ろうぜ」と手を振りながら去っていった。それを見送ったニットがこちらに振り返って小声で話す。 「君たちは初めてだから少しだけヒントあげちゃうね。ビルダ君は体格がいいから、シールドに隠れていても少しだけはみ出ちゃうんだ。武器で防がれない限りしっかり狙えば倒せるよ。それと、彼のチームはビルダ君がひとりで指揮を執っているから彼を先に倒すと簡単に勝てるかもね!」  更に今対戦を終えた第一試合の勝利チームを眺めながらこうも呟く。 「勝ったチームのリーダーは【ソニック・ローレンス】。ソニックのチームはみんな素早い動きが特徴だから上手く妨害できれば勝機はあるよ! さあ試合だ。私がレフェリーをするから一緒にコートに行こうじゃないか」  ニットについていくようにしてコートに入る。  各自シールドに身を隠したり、コート上で準備運動する。ホイッスルが試合開始を告げた。
夜闇の双風 土斑猫 GM

ジャンル 戦闘

タイプ EX

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-03-04

予約期間 開始 2019-03-05 00:00
締切 2019-03-06 23:59

出発日 2019-03-15

完成予定 2019-03-25

参加人数 5 / 8
「『ジーナフォイロ』ですか……」 「はい……」  対応した女教師の前で、カリナ村の村長は深く溜息をついた。  カリナ村は学園から北に数十キロ離れた場所にある、小さな村。そこの村長が、フトゥールム・スクエアを訪れていた。  彼は語る。  カリナ村は地理的に水資源に乏しい場所にあり、慢性的な水不足に悩まされている。僅かな河川も夏は日照り、冬は凍結によって使えなくなり、都市部から水を運ぶために毎年多くの労力と金銭を消費している。それでも村を廃棄しないのは、ひとえに住民達が先祖が途方もない努力の果てに作り上げた村を愛しているから。事実、どんなに厳しくとも、村を出ていこうとする者はここ百年、いないのだと言う。  そんな住民達の、心の支えになるものがある。  それは、『神の掌』と呼ばれる泉。  季節に寄る事なく、こんこんと水が湧き出るそれ。夏に干上がる事もなく、冬に凍る事もない、村の最後の生命線。  水が乏しければそこから汲み、食料に窮すればそこで魚を獲って凌ぐ。  長い年月、そうやって皆を助けてきた泉は名実ともに村の守り神。どんな苦難でも、この泉があれば乗り越えられる。ささやかな信仰心すらもって、村は泉と共に歩んできた。  しかし、ある日それが一変した。  一ヶ月ほど前から、件の泉に夜な夜なつがいのジーナフォイロが現れるようになったのだと言う。  『ジーナフォイロ』。  蝙蝠の身体と翼に、人と豚を足して二で割った様な顔をくっつけた様な姿をした体長2メートル程の原生生物。  あまり研究が進んでいない生物で、進出鬼没。生息環境も分からない。せいぜい夜行性らしいという事くらい。  空飛ぶ巨大ドブネズミとでも思えばいいのかもしれないが、ネズミにはない特性がある。それは『毒気』。これが、生物学的な研究が進まない最大の理由。身体から常に異臭と共に毒気を発していて、周囲の生物・環境に影響を及ぼすのだ。  所謂『魔物』ではないのだが、場合によってはそれの方がいくらかマシなんじゃないかと思える様な迷惑生物。  そんな輩が、村の希望である泉に居着いてしまったのだ。  件のジーナフォイロ達は日暮れと共に泉に現れては水を飲み、水浴びをする。その度に、身体から出る毒気が水に溶けて混じっていく。  結果、泉の水は毒水と化し、住む魚は死に絶えてしまった。  このままでは泉は死泉となり、村の生命線は絶えてしまう。  幾度か村の者で追い払おうとしたものの、自分達の強さに自信があるのだろう。全く逃げようとしないばかりか、逆に関わった村人が毒気にあてられて寝込む始末。  ここに至って、噂に高い学園の関係者に協力を仰ごうと言う意見が村人の総意となった。  村人が持ち寄ったなけなしの財産。それを依頼料としてテーブルの上に置きながら、村長は頭を下げる。  その頼みは、一つ。  何とか、ジーナフォイロがこれ以上泉に近寄らない様にして欲しい。ジーナフォイロさえ来なくなれば、泉は自らが吐き出す湧き水によって浄化され、いずれは元の姿に戻る筈。そうすれば、今は消えている魚や他の動物達の姿も帰ってくるだろうと。  確かに。  女教師は考える。  ジーナフォイロは、一般人でどうにかするには些かハードルが高い。とは言え、真性の魔物の様に敵対的存在でもない。関わりあっても、命に危険が及ぶ可能性は低い。正しく、これは勇者の修行課題として相応しい。そして、彼女がそう思う理由はもう一つ。  村長は、こうも言っていた。  件のジーナフォイロ達。追い払っては欲しいが、命までは取らないで欲しいと。  いかに有害な生物であろうと、自分達と同じ厳しい地で懸命に生きる者。無闇に殺める事は、忍びない。まして、件のジーナフォイロはつがい。何処かに、子供もいる筈。そうであれば、尚更。どうにか、追い払うだけで収めて欲しい。  それもまた、村人達の総意だった。  女教師はこうも、思う。  人の悩み苦しみを救うのは、勇者の努め。けれど、命を尊び、分け隔てなく守るのもまた勇者の努め。  この件は、それを学ぶにも相応しい課題となろう。 「頭を、お上げください」  彼女は、テーブルに置かれた金袋を村長に向かって押しやりながら言った。 「ご依頼、お受けいたします」  ジーナフォイロに関する案件。それに参加する生徒の募集が始まったのは、その日の午後の事だった。  それから数日後。国の北方、カリナ村は件の泉のほとりに、あなた達の姿があった。  本来は、澄んだ水で満たされているであろう泉。それは今、ドロリとした鈍色に濁り、異様な臭気を放っている。中を覗けば、漂うのは腹を見せて浮く魚と枯れて漂う水草の成れの果て。  被害は思いの外、甚大らしい。  視線を上げると、遥かな山峰に赤く染まった夕日が沈んでいく。  日が暮れる。じきに、『彼ら』の時間。  もう一度、持ってきた装備品を確かめる。  最後の視界を照らしていた、斜光が消えた。ゆっくりと、満ちていく闇。しばしの間。やがて、どこからともなく漂ってくる酢酸の様なすえた臭い。肌に感じる、チリチリとした刺激。空気が、澱んでいくのが分かる。そして、  聞こえた。  さほど遠くない、上空。羽が夜気を打つ音と、壊れたカスタネットの様な濁った声。  上を見上げる。掲げたランタンの、淡い光。その中を、何か大きな影が横切った。  道具を握る手が、汗で滑る。強くなる臭気。大きくなる羽音。身体を蝕む、不快感。  ゲタッ! ゲタゲタゲタッ!!  哄笑の様な鳴き声が、唐突に鼓膜を震わせた。  泉に舞い降りる、二つの影。赤く濁った眼光が、こちらを見て笑んだ様な気がした。  夜の宴の、始まりだった。
スノーウォックを狩り尽くせ GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-03-04

予約期間 開始 2019-03-05 00:00
締切 2019-03-06 23:59

出発日 2019-03-11

完成予定 2019-03-21

参加人数 7 / 8
 寒の戻りという言葉がある。春、暖かく心地よい気候になりつつあったのに、一時的に冬の寒さがぶり返してくる現象のことだ。  真冬より幾分マシと言えど、暖炉に火をつけたってなかなか部屋が温まらない。マフラーでも巻かなければ薪を取りに一瞬外へ出るのすら厳しい。冬物の服を慌てて引き出しの奥から引っ張り出している者も少なくないはずだ。  暖かい中で急に寒さが戻ると、天気は崩れやすくなる。この日は冷え込みがかなり強まったので、空気中の水分は雪の結晶となって地表に散り積もった。雪かきをするほどでもないが、頑張って雪を寄せ集めれば雪だるまやかまくらが作れそうな様子だ。昨日までの春の陽気が嘘のようである。  雪は綺麗ではあるが、喜ぶのはある程度小さい子供くらいなものだ。雪の積もった路上は滑りやすく歩きにくい上、基本的な移動手段は箒であるため、休校や休講の理由にもならない。結局今日もまた、学生たちは白い息を深く吐いて、ブーツで新雪をきゅっと踏み鳴らしながら、キンキンに冷えた箒にまたがる。  当たり前だがグラウンドも真っ白で、射撃などを練習する道具も白化粧をしている。これらを使用する部活動の学生たちは、今日一日その雪落としに時間を取られるに違いない。グラウンドには何人かの暇な学生が雪で遊んだり、雪景色をぼーっと眺めていたりしている。  そんな中、一人の男が全速力で飛び出してきた。グラウンドの真ん中あたりまで突っ走って言ったかと思うとスライディング気味に急ブレーキをして、今自分が出てきた校舎の方を全力で振り返った。 「おいお前らー! 早く出てこーい! 『祭り』が始まってんだろーが!!」  男が両手を口に当てて大声を出すと、校舎の玄関から数人の学生たちがとぼとぼと出てきた。いずれも呆れたような目線を男に送っている。 「こんな寒い中に連れ出してきて何する気なんだあ?」 「お前らを外へ連れてきたのは他でもない、実践課題のためだ。動けばすぐに温まる。寒さなんか少しくらい我慢しろ」  この男の名前は【ランドルフ・メイスン】。いかにもマイペースで適当そうな男だが、一応は勇者にしてストゥールム・スクエアで講師でもあったりする。  ……つまり、今は授業中というわけだ。 「せっかくだしグラウンドにいるお前らも参加しろ! いい経験にはなると思うぜ! 俺が保証する」  ランドルフがそう呼び掛けると、興味を持ったのか、あるいは教員の命令だからしぶしぶ従ったのか、グラウンドにいた生徒たちも若干名ではあるが集まってきた。 「さてお前ら、今日は雪が積もった。これが何を意味するか分かるかー?」 「知りませんわよそんなの……」 「ああ? 分からないなんてのは世間知らずすぎだ。よく覚えとけ、雪が降ると『ヤツら』が来る」  ランドルフが指をさすので、寒さで縮こまった学生らは首だけそっちに向ける。 「あれは……」  そこでは、街中にも関わらず、何やら白い魔物らしきものと交戦している者たちがいた。彼らは飛び掛かってくる魔物たちを次々に斬り倒していく。 「確かにあれだけ動いていれば少しは温まりそうだぜ」  眉毛の太い男子学生、【リューク・フット】は拳を手のひらに打ち付けながらそう言った。現場を見てやる気が出たらしい。 「あいつらは『スノーウォック』。ジャバウォックの冬バージョンだ。流石にジャバウォックは分かるな? よく森に出る獣の姿をした魔物だ。だが、スノーウォックは雪が積もると、どこであろうと積もった雪から次々と湧いて出てきやがる。だから毎年雪が降った日にゃ街中で討伐祭りってこった。そういうわけでだ、お前らに授業時間全部をやるから、好きなだけスノーウォックを狩ってみな」  どうやらそれが今日の課題らしかった。寒いグラウンドへ無理矢理引きずり出されて不服そうだった学生らも、実戦と聞いて少しだけやる気が湧いたようだ。仮にも勇者の端くれだ。戦闘に興味がないわけではないのだから。 「でも、実戦となるとやはり危ないのではなくて……?」  お嬢様気質の学生、【フィリーネ・ダグラス】はそうはいってもまだ完全に乗り気というわけではないらしい。初めての実戦ともなれば緊張するのは当然だろう。 「なに、心配せずともそう強い魔物でもねえさ。もちろん氷系の魔物だから高熱に弱いと言えば弱いが、ジャバウォックと同じで基本的にはどんな攻撃も通る。初心者でも適当に突っ込んでりゃなんとかなるだろ。ただ、たまに口から冷気を発するからそれには気を付けろよ。凍傷にでもなったら治療に時間がかかるからな」  ランドルフが早口で説明している間にも、街の方からは剣の音や爆発音、スノーウォックの鳴き声が聞こえてくる。その騒がしさは、確かに『祭り』という喩えが似合う。  ……その騒がしさのせいで、ランドルフはいてもたってもいられない様子だ。 「まあものは試しだ。課題は好きなだけスノーウォックを狩ってくること。二時間後、またこのグラウンドに集合な。街中なんだから、何かあったら俺を呼べ! すぐに助けてやるからな。そんじゃ、一旦解散! っしゃー! 狩るぞ狩るぞ!! 年に一度のお祭りだ!!」  ランドルフは一方的に説明を打ち切って備品の剣を手に取って、さっきグラウンドに飛び出してきたのと同じように全力疾走で街に繰り出していった。 「まったく、今日も通常運転だなあいつは」  ランドルフのマイペースさに、無鉄砲が売りのリュークさえ呆れ顔である。  これは今に始まったことではない。しょうもないことで学生と喧嘩してたり、そうかと思えば自分のやりたいことを即時行動にのではなくて共にしたり……学内では割と有名な問題児である。 「なんだか、巻き込んでしまって申し訳ありませんわね……」  たまたま居合わせた学生たちに、ランドルフの教え子であるフィリーネが控えめな笑顔を浮かべつつ謝る。リュークも一緒になって、首だけで礼をして軽く謝った。 「ほんとすまねえな。でもあいつも根は悪いヤツじゃないんだぜ。大人だけど子供っつーか……普通は大人って上から目線だろ? でもあいつはあくまで俺らと対等なんだ。だから俺はそこまで嫌いじゃない」 「それに腐ってもこの学園の講師ですし、あれでも知識と技術の量はとても高いのですわ。馬鹿なところもあるけれど、私たちはそこらの下手な先生よりは彼を信頼していますの」  リュークとフィリーネが揃ってランドルフを褒めると、他の生徒たちも首を縦に振って同意の意志を見せた。 「半強制的に『祭り』に参加させられたわけだけどよ、どうせやるからには全力で『祭り』を楽しんでやろうぜ! なあみんな!」 「何かあったらあの馬鹿講師に助けを求めればいいのですわ」  リュークとフィリーネの掛け声で、学生らはかなりまとまりを見せた。  また、リュークたちがランドルフから教わったことをもとに、初心者でも戦いやすいように陣形を整えた。  相変わらず凍えるほど寒いが、文句は後で直接みっちり言うとして、今はとりあえず戦闘が始まっている街中へ繰り出すことにしたのだった。
第九校舎ノ闇ト戦ウ者 くそざこあざらし GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-03-07

予約期間 開始 2019-03-08 00:00
締切 2019-03-09 23:59

出発日 2019-03-14

完成予定 2019-03-24

参加人数 8 / 8
 魔法学園フトゥールム・スクエアの『第二』から『第九』までの名がついた、大きな八つの校舎。それらはすべてクラブ活動のために存在しており、運動系や文科系や戦闘系や魔法系など、クラブ活動の種類によって割り当てられる校舎は異なる。  しかし、厳密に区分が存在するわけではない。例えば『魔法を使う球技』であれば、運動系にも魔法系にも割り当てることが可能だ。  その八つの校舎の内、最も『異端』と呼ぶべきは『第九校舎』。  第九校舎は『どの系統にも属さないクラブ活動』が割り当てられる校舎である。  七つの校舎でほとんどの系統をまかなっておきながら、それでもなお、どの系統にも割り当てることの出来ないクラブ活動――。  把握することが出来ないほど、数多のクラブ活動が存在する魔法学園には、誰も想像だにしないクラブ活動が存在する。  だからそれは、一部の生徒しか知らない。  第九校舎に存在する、ひとつの『闇』の存在について。  第九校舎のとある一室の扉の前。  ひとりの男子生徒が扉を叩くと、中から声が聞こえた。 「合言葉は?」 「学園長は合法ロリ」 「よし、入れ」  扉が開かれると、そこには闇が広がっていた。  男子生徒は大きな革袋を握りしめながら、息を飲んで、ゆっくりと闇に足を踏み入れる。  男子生徒が数歩進むと、扉が閉じて、闇の中に炎が現れた。  その炎は聖火台のような、小さな台からあふれている。  そして、炎の前では男がイスに座っていた。 「また君か。諦めが悪いというか、なんというか、懲りない男だな。君は」  男はそう言って、男子生徒をあざ笑う。  男子生徒はギュッと、革袋を握る手に力を込めた。 「お前らのような存在を、俺は認めるわけにはいかない」 「ふむ……。君の使命とやらか? 君はよほど、自分の生まれを気にしているようだ。そんなもの、焼き過ぎた肉ほどの価値もないというのに」 「黙れ! 俺は焼肉屋の息子として! お前らの存在を認めないぞ!」 「御託はいらない。食材は持ってきたのだろう? ならば始めよう。『闇焼肉』を」  炎があふれる小さな台の上に、少し大きめの鉄板が乗せられる。  ここは『闇』のクラブのひとつ。『闇焼肉クラブ』の部室だ。  男子生徒は焼肉屋の息子として、『闇焼肉』などというふざけた存在を認めることが出来ず、こうして何度も闇焼肉クラブの部長である『闇焼肉マスター』との戦いに挑んでいる。 「ルールは覚えているか? 焼肉屋の息子よ」 「お互いに用意した食材を焼き合い、それを相手に食べさせる。タレは好きなものを使って良い。『相手の食材を食べきれず、先にギブアップした方が負け』だろ?」 「食べれないものを焼くのはナシだぞ?」 「分かってる! それはむしろ俺の台詞だ!」  男子生徒は革袋からぶ厚いステーキを取り出し、それを鉄板の上に置いた。  それに対して闇焼肉マスターは、すぐさま『平べったい何か』を鉄板に置き返す。  もうすでに、闇焼肉は始まっているのだ。 (くそっ……。相変わらず暗くて、相手が何を焼いてるのかよく分からないぜ!)  闇焼肉はその名に恥じぬよう、真っ暗で、鉄板の上がかなり見え辛くなっている。  食材の形は辛うじて分かるが、何を焼いているのか、どれぐらい焼けているのか、それらを見分けるのは、よほど目が良くなければ不可能だろう。 「さて、そろそろ頂こうか」 「なに……っ!? まだ一分も経ってないぞ!?」 「君の用意する肉は良い肉だからな。……くくっ。聞くまでもないが、覚えているだろうな? 闇焼肉では相手が食い始めると同時に、自分も食わねばならないというルールを」 (しまっ……! わ、忘れてた……っ!)  闇焼肉マスターはぶ厚いステーキにフォークを伸ばして、タレもつけずに思い切り噛み千切って、『うまっ』と呟く。  男子生徒は平べったい何かにフォークを伸ばして、甘辛いタレをつけて、それを口に運んだ。 「ぼぇっ! 甘っ!? 何焼いたんだよ!?」 「くはははっ! 『スライスしたバナナ』だっ! バカめ! 匂いで気づかなかったのか!」 「バナナ……だと!? 貴様……俺が甘いものが苦手だと知っていて……っ! まさか……バナナがトロトロになるのを避けるために速攻を!?」 「その通りだ。トロトロになるとフォークで刺せなくなるからな」 「このっ……邪道が!」 「おっと……その台詞は聞き捨てならないな」 「な……に……!?」 「このステーキ……食感や味は牛に近いが……私の舌は誤魔化せん。……魔物の肉だな、これは」 「そ……それは……!」 「貴様は以前! 一緒に昼飯を食っていた時に言っていたな! 『俺は焼肉で牛肉しか焼かない』と! 今まではその通り、牛肉しか持ってこなかったようだが……」 「や、やめろ! それ以上は!」 「私に勝つために! 闇に落ちたな! 焼肉屋の息子よ!」 「あぁ……ああぁぁぁ! うわぁぁぁ!」  男子生徒はイスから転げ落ち、闇の中に消えていく。  魔物の肉であることを言い当てられて、心が折れてしまった男子生徒は、もう戦うことが出来なかった。  あと、男子生徒はバナナが普通に嫌いだった。  闇焼肉マスターはステーキをむしゃむしゃと食べながら、闇に溶け込んでいたクラブの部員に命令する。 「その負け犬を外に放り出しておけ」 「はい。……本当に放り出して良いんですか? 部長」 「今回からそういうルールに変わった。あっ、お前忘れんなよ。次に俺が勝ったら、お前んちの焼肉奢ってもらうからな。部員全員分」 「えっ……俺そんなに負けてたっけ?」 「甘いものに弱過ぎんだよ、お前は」 「……い、嫌だ。部員全員分は嫌だ!」 「そういう約束だっただろ? まぁ頑張れよ。次に俺が負けたら、逆に奢ってやるからさ」  男子生徒は闇焼肉クラブの部員に肩をつかまれて、無理やり立ち上がらせられる。 「無理だ! せめてバナナなしにしてくれ!」 「んん……私も相応の闇を背負っているのだ、そういうわけにはいかんな」 「いやほんと! 演技とかじゃなくてマジで! バナナだけは! バナナだけは!」 「部長」 「……さっさとそいつを連れて行け」  男子生徒は闇焼肉クラブの部員に引きずられて、第九校舎の外に放り出された。  男子生徒は泣いていた。  闇焼肉クラブの部員は20人以上いる。全員に焼肉を奢れば、かなりの出費がかかってしまうのだ。 「ちくしょう……ちくしょう……。何でこんなわけ分かんねぇクラブに……何でそんなに部員がいるんだよ……!」  その第九校舎の前で悔しがっていた男子生徒の姿を、君達は発見する。  君達が思わず『大丈夫ですか?』と手を差し伸べると、男子生徒は顔を上げて……。  そして、男子生徒は閃いた。  男子生徒は君達の手を掴みながら、懇願する。 「頼む! 俺の代わりに『闇焼肉マスター』を倒してくれ! 焼肉奢るから!」
裏報道部を潰せ! GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-02-27

予約期間 開始 2019-02-28 00:00
締切 2019-03-01 23:59

出発日 2019-03-09

完成予定 2019-03-19

参加人数 8 / 8
 新入生が入学して数か月。  ここ、魔法学園『フトゥールム・スクエア』にも、新入学生があふれかえっていた。  君たちもその一人。君たちは、たまたま、偶然、この場所に立っていた。ええ、偶然ですとも。 「きゃー!」  たまたまこの場にいた君たちは、一人の少女の叫び声を聞き、その場所へ向かった。  そこには、更衣室から慌てて飛び出したであろう少女が一人、一枚の紙を握りしめうずくまっていた。  その顔を直接確認することはできないが、その口から漏れ出てくる歯ぎしりや、低いうめき声は怒りに満ち満ちているようだ。因みに、まだその少女は自分が下着姿であることに気がついていない。 「す、少し見苦しいところを見せてしまったわね……」  少し顔が赤くなっている少女は、きちんと服を着てから君たちに向かって改めて語りかけた。 「最近、『裏報道部』って言う非公認の団体が動き回ってるらしくてね……。この学園に関してあること無いことを面白おかしく記事にして勝手にばらまくという極悪非道の集団よ……!」  周囲をよく見てみると、 『○○先生は実はヅラだった!』だの、 『生徒Yは実はでべそだった!』  等と言ったゴシップ記事の書かれた新聞が壁に貼られていることに気がつく。  なお。ここに書かれている情報は全てガセネタである。ええ、ガセネタですとも。 「こんなゴシップを出すなんて許せない……! ねぇ、裏報道部を一緒に懲らしめましょう! わたしは、裏報道部の情報を徹底的に洗い出すわ。この眼鏡にかけてね!」  そう言い残し、眼鏡をキラッと光らせたその少女は脱兎の如く駆けだしていった。  その少女の手から滑り落ちた新聞には、 『女生徒E、実はパッドだった!』  と言う見出しが躍っていたのだった。
わびさびわさび 宇波 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-03-04

予約期間 開始 2019-03-05 00:00
締切 2019-03-06 23:59

出発日 2019-03-12

完成予定 2019-03-22

参加人数 8 / 8
 早朝、まだ日も昇り切っていないころ。  寝ぼけ眼の朝を告げる鳥が、仰天して飛び起きるような怒号が鳴り響く。  発生源はシュターニャにあるとある宿屋。 「ちょっと、どうするのよこれぇーっ!!」 「うわ、ごめ、謝るから! 花瓶は! 花瓶は投げないで!!」  そこは年若い夫婦が切り盛りする宿屋、名前を『朝告鳥(あさつげどり)』。  異国の珍しい食材を扱った料理が売りで、値はやや張るが、評判のいい宿屋であった。  若夫婦も仲睦まじく、旦那は料理を、妻は経営を分担し、バランスの取れた経営を行っていた。  だが、時折波が立つのは、旦那の無計画な浪費癖。  珍しい食材に目がない彼は、味も見ずに大量購入を決めてしまうことが度々あった。  その度、妻がその大量の食材を捌くのに苦労をしていた。  今回の怒号も、また旦那の悪癖に対してであった。 「どうするのよ! この大量の根っこ! 緑色で見た目がなんだか不気味だし、齧ってみたら、なによこれ! 唐辛子のような辛さならまだしも、鼻にツンとくる辛さ! これでどうやって料理を作ればいいの?!」  そう言って指される木箱の中に入っている、緑色のごつごつした茎のような根のようなもの。  外皮は乾燥し、見た目はからからに乾いた緑色のショウガのようだった。  それにしてはやけに真っ直ぐ揃いすぎのような感じもするが。  それが大量に詰められた木箱が、1、2……3桁箱。  どうやら、10箱程度で収めるつもりがこの旦那。  うっかり間違えて、桁をひとつ多く注文してしまったらしい。  東の方の珍しい食材であるということで、値段もそこそこ高かったようだ。  妻が怒るのも無理はない。 「これが全部売れる目処が立つまで、あんたの大好きな晩酌は禁止!」 「そんなっ!?」 「……と、いうことで、なんとか売れるようにしたいんだ」 「まぁ……。それは自業自得ですねぇ」  さくっと切り捨てたのは、魔法学園『フトゥールム・スクエア』の教師の一人、【アキ・リムレット】。  旦那と妻の共通の友人である彼女は、しばらく思考に耽る。  やがて、妙案を思いついたかのように、ぽん、と両手を合わせる。 「ではぁ、こんなのはどうでしょう?」 「ではぁ、授業を始めますぅ」 「……あの、アキ先生、この格好は……?」 「エプロンとぉ、髪の毛が落ちないための三角巾ですねぇ」 「……この場所はどう見ても台所のようですが……」 「はい、授業用キッチンを貸し切りにしましたぁ」 「……これは授業ですか?」 「はぁい、授業ですぅ」  困惑顔の生徒たちの格好は、エプロンに三角巾。  場所は学園内にある、調理授業用の広めのキッチン。 「……今日は、連携の訓練だと伺っていましたが……」 「はい、これはぁ、未知のものに遭遇したときにぃ、いかに連携して対応できるかの訓練になりますぅ」  最早訓練と名が付けば、なんでもありだと思っているのではないだろうか。  生徒たちの視線をものともせず、アキは木箱からひとつ、食材を取り出した。 「本日はぁ、この食材をどれだけ協力して、美味しく調理できるかの授業になりますぅ。ここで考案されたメニューはぁ、材料を提供してくださった宿屋『朝告鳥』で採用されるかもしれないのでぇ、みなさん張り切って調理してくださぁい」  生徒たちは食材を見て、首を傾げた。  内、ひとりが恐る恐る挙手をする。 「アキ先生、この食材はなんという名前ですか?」 「はい、これはぁ、わびさびブランドの『わさび』と言うそうですぅ」
ドールズ・フェスティバル くそざこあざらし GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2019-02-27

予約期間 開始 2019-02-28 00:00
締切 2019-03-01 23:59

出発日 2019-03-06

完成予定 2019-03-16

参加人数 7 / 8
 ――ひな祭り。  それはとある国の女子の健やかな成長を祈る祭りである。  そのひな祭りについて、異国の者が知らないのは当然として、とある国の者であっても、深く理解している者は少ないだろう  しかしながら――あの人形の存在だけは知っている者も多いはずだ。 「あっ、『ひな人形』だ」  魔法学園フトゥールム・スクエアの女子寮レイアーニ。  複数あるレイアーニ寮のとある寮で、ヒューマンの女生徒が共用スペースに置かれていたひな人形を指差してそう言った。  それを聞いて、女生徒の横にいたドラゴニアの少女は『ふむ』と声を漏らしてから続ける。 「これが……ひな人形というやつか。初めて見たが……聞いていたより小さいな。人形の数も少ないような気がする」 「これは3段飾りだからねぇ。本当は人形も……えーっと……何体だったっけなぁ。まぁここには10体しかいないけど、もうちょっと大きいやつだと、もっといるんだよ!」 「……曖昧だな。お前の国の風習じゃないのか?」 「しょうがないじゃん! 私だってあんまり詳しくないし!」  女生徒の言うとおり、女生徒の目の前にある赤いひな壇は3段飾りであり、小道具よりも人形を重視するタイプなのか、みっちりと10体の人形が並べられていた。  1番下の段には『五人囃子(ごにんばやし)』の5体。  真ん中の段には『三人官女(さんにんかんじょ)』の3体。  そして1番上には『内裏雛(だいりびな)』の2体。  その並びを見て、ドラゴニアの少女はもう1度『ふむ』と声を漏らす。 「こいつらが1番偉いのか」  そして躊躇うことなく、ドラゴニアの少女は内裏雛の1体を片手で掴んで、ひな壇の上から持ち上げた。 「……えっ!? 何してんの!?」 「ん? 1番上にいたから1番偉いと思ったんだが、違ったか?」 「そうだけど! そうじゃなくて! 何で掴んでんの!?」 「ん? 近くで……見るためだが。どうかしたのか?」 「そこ掴むところじゃないし! 雑だし!」  内裏雛のお殿様の方、『男雛(おびな)』の冠から伸びる角のようなものを、ドラゴニアの少女は握りしめていた。  女生徒はひな祭りについてあまり詳しくなかったが、男雛の冠のそれが、人形を持つためのモノではないことぐらいは分かる。  それに何やら、女生徒は嫌な予感がしていた。  ひな人形は雑に扱って良いモノではない。そう刷り込まれていた女生徒は、タタリのようなモノに怯えていたのだ。  男雛を持つドラゴニアの少女を、他のひな人形達がにらみつけているように、女生徒には見えなくもない。  ――というか、にらみつけていた。 「ひぃっ!?」  叫び声を上げて、女生徒は思わずその場にへたり込む。  先ほどまで正面を見ていた五人囃子と三人官女が、首を回してドラゴニアの少女を見ていた。 「おい、どうしたっ……うおぉっ!? なんだこれ!?」  驚いて思わず、ドラゴニアの少女は男雛を放り投げてしまう。  その様子を見て、五人囃子と三人官女、合わせて8体の人形が、『カカカカカカ』と一斉に笑い声を上げる。  そして、三人官女の1体が『喋った』。 「龍の子よ、礼を言う。彼奴(きゃつ)が消えた今、我らは自由の身となった」 「おい! なんか喋ってるぞ! そういう機能があるのか!?」 「あるわけないじゃん!」 「けど喋ってるぞ!?」 「しかし、だ。童(わらし)らよ。そちらがこの城の主であるならば、そちらを生かしておくわけにはいかぬ。この城はたった今より、我らのものであるからして。生かしておくわけには――」 「って! なんかやっばいよ! 早くさっきのお殿様を――」  三人官女の台詞から何かに気づいた女生徒が、お殿様を元の位置に戻すため、ドラゴニアの少女にそれを伝えようとする。  その時、『ポン』という軽い音が辺りに響いた。 「はっ……ぐっ……!? から……だ……がっ!?」 「不味い……これは……ッ!」  女生徒達の体が痺れて、身動きが取れなくなる。  その瞬間を狙っていた三人官女の1体が、『長柄の銚子(ながえのちょうし)』と呼ばれる、長い柄のついた器を振り上げ――。 「動くなッ!」  三人官女が振り上げた長い柄のついた器が巨大化したその時、凛々しい女の声が共用スペースに響き渡った。  その声を聞いた人形達はピタリと動きを止めて、女生徒達は『麻痺』から開放される。  そしてその声の主、男雛と対の存在、『女雛(めびな)』はひな壇を降りて、女生徒達に声をかける。 「早く外へッ! ここにいてはなりませぬッ!」 わけも分からぬまま、女生徒達は女雛と共に、寮の外へと飛び出した。  立ち入り禁止の看板が置かれた、とあるレイアーニ寮。  そこで女雛に正座をさせられて、女雛に『人形の扱い方が雑すぎる』と説教を受けていたのは、件のドラゴニアの少女。  その光景を見て、立ち入り禁止の看板を置いた『とある教師』はにやりと笑う。 「せ……先生。あの……ひな人形は何なんですか?」  とある教師に近づいて、件のドラゴニアの少女と一緒にいた女生徒が聞いた。 「ん? そうだな……古代の人工的に作られたモノか、途方もない時間の祈りが人形に魔法的な効果を与えたか……。どちらにせよ、アレは研究室の奥に転がってた、古いモノだからね。何があっても、おかしくはないさ」 「よ、よく分かりませんが……そうなんですか……」  とある教師の台詞はおかしいのだが、女生徒はそれに気づかない。  そしてそのまま、とある教師は微笑みながら続ける。 「幸い、寮の中には君達しかいなかったようだ。それに、あの女雛も協力してくれると言っている。……この件は僕の方から依頼として、教室に張り出させてもらおう。このままじゃ、たくさんの女生徒が困ってしまうからね」 「……えっ!? せ、先生達でなんとかしてくれるんじゃ……?」 「ここは『フトゥールム・スクエア』だからね。この学園の生徒達ならきっと、解決できるさ。……と言っても、君やあのドラゴニアの少女の技量では厳しいか」 「き……厳しい?」 「君達2人は学園で待機……および、他の女生徒達を学園に誘導しておきなさい。寮のことは、学園の仲間達に任せると良い」 「わ、分かりました……」  女生徒はぺこりと頭を下げて、何とも言えない表情をしながら、ドラゴニアの少女の元へと駆けて行く。 「ふふ……面白いことになったな」  人形達の城と化した寮を眺めながら、とある教師は呟いた。
500