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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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メメル&スピッティの必殺技相談室 正木 猫弥 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-09-27

予約期間 開始 2020-09-28 00:00
締切 2020-09-29 23:59

出発日 2020-10-05

完成予定 2020-10-15

参加人数 8 / 8
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』の校庭。  授業中、多くの血と汗と涙が流れるこの場所では、放課後も修練に余念がない学生達が居残りを行っている。 「………………」  黙々と武器の素振りを続ける者。 「フン! フン!」  全身から大粒の汗を滴らせながら、筋トレに励む者。 「でやああああっ!」 「はあああああっ!!」  そして、仲間同士で激しく組手を行う者――。  追い求める大切な『何か』のために、自分自身を鍛え続ける学生達を、校庭の片隅からじっと見つめる2つの人影があった。 「今日もやっとるな~。感心感心!」 「めぇ~」  学園長【メメ・メメル】。そして、客員教授【メッチェ・スピッティ】。校庭を見守る彼女達の眼差しは限りなく優しい。  しかし、それと同時に彼女達の目には、最近学生達の中に『迷い』を抱える者が多く映るようになっていた。 「皆キラキラしてるめぇ~。でも……」 「そうだねえ……」  学生達が、とてつもない素質を持った金の卵である事は間違いない。学園で会得した技能を、己だけの『必殺技』へと昇華させる者が出始めているのもその証拠だろう。  しかし、誰もが目指す道を最短で往けるとは限らない。  時にもがき、苦しみながら進まなくてはならないのが人生の常であり、そんな悩める学生に手を差し伸べる事こそが、教師の本分であるだろう。 「高みに至るには、『技』と『体』だけでは不十分だねぇ。『心』を解き放ち、迷いの霧を晴らす事ができれば、きっと道が開けるはずだめぇ」 「メッチェたん、良い事言うねえ! そのために、ちょっと一肌脱いでみよっか!」  そんな会話を交わした2人は、何やら相談しながら校舎へと引き返していった。  数日後、学園の掲示板に奇妙な貼り紙がされた。  文面はたった一行、『必殺技の相談乗ります』。後は日時と、開催場所が保健室である事だけが記されている。  大半の者が素通りしていくその貼り紙に、不思議な引っかかりを感じた一部の学生は、書かれた内容を心に留めてその場を後にする。  メメル&スピッティの不思議な修行は、こうして開催される運びとなったのだった。
死に臨むもの 海太郎 GM

ジャンル シリアス

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2020-07-20

予約期間 開始 2020-07-21 00:00
締切 2020-07-22 23:59

出発日 2020-07-27

完成予定 2020-08-06

参加人数 6 / 8
●生を摘むもの  その日【ノエル・アトキンズ】は修道院を訪れていた。  腰まで伸びた、赤い真っすぐな髪。黒いタイトなドレス。名前は男のものに違いないが、どこか物憂げに翠緑の目をすがめる彼女は、一見すると華奢な、美しい女性だった。  到底、百戦錬磨の学園教師に見えはしない。  辺りの墓石はぱっくりと斬り開かれ、烏や野犬の死骸が散らばっている。 「……ああ、やはりな」  ノエルは低い声で呟き立ち上がった。 「先生……」  修道女が不安げにノエルを見つめる。 「すぐに人払いを。この修道院に誰も近づけてはならない」 「……やはり、魔物の仕業でしょうか。人の悪戯、ではなくて……」 「人間だとして、どちみち暴徒だ。墓石を大鎌で斬り倒し、むやみに魔法を使うような連中を、修道院が迎え撃つ必要もあるまいよ」  ノエルは修道女に向かって薄く笑った。 「日が暮れる頃までに、お嬢さんも逃げるんだよ」  その姿はどこか、楽しげにも見えた。 ●命を賭して  原始生命理論。  長ったらしく埃臭い本講義が『何を』取り扱っているのか、はっきりと答えられる生徒はほとんどいないだろう。 「それが言えるようになれば、教祖・聖職者として私から教えてやれることはない」  ときっぱり言い放つノエルの、人を煙に巻くような講義は、それでも不思議と生徒が途絶えることはない。  なぜ生きるのか。  それはすなわち、なぜ死ぬのかに直結する。 「死に方はすなわち生き方。死はすべて生に起因する」  それをすべての原理とした本講義が生徒に選ばれる理由は、他ならない『課題活動』の独特さによる。  ノエルいわく。 「魔物が死ぬ様を、つぶさに観察し、死と対面すること。すべての死と、死に至るまでの生命へ敬意を払い、送ること」  課外活動に出たあとの1万文字近いレポート課題は苦痛だが、それでも死と向き合って得られるものは大きいと、コアな人気を誇っている。  その日、授業の最後に告げる課題にノエルが選んだのは、アーベント修道院の怪奇事件だった。  怪奇事件の謎を探り、その元凶を始末し、7500文字のレポートを提出せよ。  それが課外授業の内容だ。 「おそらく『グレイブスナッチ』だろう」  とノエルは言った。 「奴らは知能も高い。狡猾で、好戦的で、相手の命を摘むことだけを目的としている。十分な戦闘経験が無い生徒にはあまり勧めない」  そう告げつつ、ノエルはにやりと唇をゆがませる。 「……もっとも、ここで『死に瀕する』体験をしてみたいというのなら、私は諸君らの蛮勇を止めやしない。最低限の手助けはするが、諸君らの探究心は称賛に値するものだからね」  授業の終了をつげる鐘がなる。 「諸君らの命に、学びが溢れんことを」  約束の言葉を口にして、ノエルは教室を後にした。
ある一族のはなし 樹 志岐 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2020-09-20

予約期間 開始 2020-09-21 00:00
締切 2020-09-22 23:59

出発日 2020-09-27

完成予定 2020-10-07

参加人数 2 / 8
●ワタシは悩んでいた。  ――やれやれ、揃いも揃って困った者達ばかりだ。  背もたれに体を預ければ、木で作られた古い椅子はわずかばかり悲鳴を上げた。  階下では親族が、……血が繋がっていると言うだけで偉くなった気でいる無能共が甲高い奇声や怒号、罵声を浴びせていた。 「おじさま」  そんなワタシに話しかけるのは姪だ。親族のなかで数少ない、資産に興味をあまり持たない彼女は確か魔物を研究する仕事をしているとか。 「お疲れのご様子ですね、お茶はいかがです? それともお酒の方がよろしいかしら」 「ははは。医者にはあまり飲むなとは言われているが……、少し酔いたい気分ではある」  ワタシのわがままを聞いた姪は、困ったように笑って戸棚を探る。  そこにワタシ秘蔵の取って置きの酒を用意してあるのは、ワタシと彼女だけのひみつなのだ。  透明なグラスにそれをほんの少し注いで、舐めるようにして少しずつ味わっていく。  あぁ、やはりこれはいい酒だ。 「どうぞ」  そういって彼女が差し出したのはからり、と揚げられたフォーク状のなにか。つまみのようだ。  ひとつつまんで口の中にいれれば、老いた身にはやや硬いがこの酒に合う。 「旨いな」 「ありがとうございます。『フォークナイト』の足の唐揚げ、お気に召していただいたようで何よりですわ」  なにやら聞こえてしまった不穏な言葉に目を背けるようにして、再びグラスに口をつける。  あぁ、そうだ。確か姪はぶいえすえむ? という魔物を研究していたが、研究し尽くしたとかで最近では別の魔物の研究をしているそうじゃないか。  しかしこれが本当に研究している魔物なら、人生初の魔物食だ。そう考えると実に感慨深い。  そういえば、姪もワタシも『フトゥールム・スクエア』の学生に助けて貰ったことがあった。  あの未来ある学生達は、元気にやっているだろうか……。 「そうだ!」  あの日あった彼らに想いを馳せていると、不意に思い至った。  いまの状況を打開するには、これが良い方法かもしれない。  ワタシは机に向かい、筆を取った。 ●それは遠縁の僕のもとにも届いた。 「っ、はぁぁ……」  溜め込んでいた息を大きく、長く吐き出す。  いっそため息と一緒にこの『問題』も消えてしまえばいいのに。そんな儚い望みが頭を過った。  どうした? と。誰か(学園生)が声をかける。 「いえ、その、……いきなり遠い親戚から無理難題をふっかけられたといいますか……」  言葉を濁して答えるのは【咲良・佐久良】(さくら さくら)で、その手には封蝋のされた手紙が握られていた。 「親戚は努力を重ねて今の地位に上り詰めた資産家なんです。けど、お歳がお歳なので家督を譲るという話になったのですが、彼には子供がおらず……」  そこでやってきたのが親戚のそのまた親戚たち。今まで当たらずさわらずだった者達が、いきなり資産目当てで集まってきたものだから嫌になってしまったらしい。  そして彼のSOSは、遠い親戚であり学園に通っている咲良の元に来たのだそうだ。 「『揉め事が起きないように平和的に解決する方法』、なんて僕が思い付くハズないじゃないですか……」  再び大きいため息をついて、机に突っ伏す咲良。  暫しして、上体をゆっくり上げて彼は貴方達を見た。 「お兄さんお姉さん、お願いですから手伝っていただけませんか? 報酬は依頼した親戚が支払ってくださると思うので……」  これより7日後に開催される親族会議。その場で新たな家長を決めるので、会議前に選定基準を決めてしまいたいのだそうだ。  旅費も寝床も食事も出してくれるし、報酬もしっかり払う。  これはなかなか……いや、だいぶ……悪い話ではなさそうだ。 「ちなみにその親戚は昔お兄さんお姉さんに助けて貰った、と話していましたが……この名前に覚えのある方はいらっしゃいますか?」  咲良が持っていた手紙を開くと、文末の署名にはこう書かれていた。  ――【ナ・ポールタ=スパゲティーニ】
我思う、故に我あり。 鶴野あきはる GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 ほんの少し

公開日 2020-09-21

予約期間 開始 2020-09-22 00:00
締切 2020-09-23 23:59

出発日 2020-09-28

完成予定 2020-10-08

参加人数 2 / 8
 夏の日差しが落ち着き、夕方には涼しい風も吹くようになった頃。  教室はいつにも増して賑やかだ。それもそのはず。なんとこんな時期に転校生ならぬ、新人教師がやってくる、というのだから。 「どんな先生かなぁ」 「男かな、女かな?」 「種族は何だろう?」 「どんな授業をするんだろう?」  ワクワクが止まらない。新しい出会いというのは、季節関係なく心浮き立つものだ。  ホームルームの鐘が鳴る。生徒たちは一斉に着席し、教室の扉が開くのを待つ。  ――ドクン!  急激に重苦しい空気が教室に満ちた。重苦しい――いいや、違う。これは、殺気だ。全てをねじ伏せる、圧倒的な力。国王に拝謁するような煌びやかな緊張ではなく、全てを力で支配する、その圧力。  冷や汗が噴き出す。全身が凍りついたように動かない。急に喉を締め上げられたように、呼吸がうまくできない。  ある者は両手を握りしめ、ある者は全身が震え、ある者は今にも気絶しそうだ。  教室の扉が開く。それは律儀に扉を閉め、重いブーツの足音が教壇に上がった。誰もが机の上に視点を固定していた。とても頭が上げられない。  それは畏怖だ。圧倒的な力の前に、それに抗う術など、今の生徒たちは持ち得なかった。  永遠にも等しい数十秒。それは始まりと同様、唐突に消え去った。 「ほう……なかなか骨のある者たちのようだ」  ドッと緊張の溶けた教室に、男の声が響いた。なんとか視線をやれば、そこには漆黒の髪が美しい男が立っていた。  古木のような威厳のある二本の角。ゆったりと閉じられた漆黒の翼。陶器のような肌には、龍の鱗。光を透かしたルビーのような真紅の瞳。ゆったりとしたマントにも見える外套で全身を覆っている為か尻尾は見えないが、間違いなくドラゴニアだった。  蒼白な顔をした生徒たちを見やり、男は淡々と口を開いた。 「我が名は【エイデン・ハワード】。本日から魔法学園『フトゥールム・スクエア』魔王・覇王コースを主に担当する」  淡々として、それほど大きな声を出しているとは思えないのに、教室中に響く声。反発心よりも崇敬を抱かせるようなその存在感に、生徒たちは直感した。  ――魔王。  ドラゴニアのエイデン・ハワードは、魔王・覇王コースを専攻する者に、魔王のなんたるかを間違いなく伝える存在となるであろう。 「私のことは『ハワード先生』と呼ぶように。軽々しく名で呼ぶ輩を、私は生徒として認めない。私を名で呼べるよう、日々精進するが良い。それでは、授業を始める」  言うや否や、ハワードは漆黒の翼を広げた。ただそれだけなのに、教室の空気が一段重くなる。顔を上げていられる分、初めの威圧よりは随分と楽なような気もする。 「これから行うことは、己の魂を解放することである。魔王・覇王、及び勇者たりうる者、どんな威圧の前でも堂々と立ち、己の真実を語り、体現する力を持たねばならない。答えよ。己が何のために、その力を得んと欲するか?」
サーブル城周辺調査隊、募集 K GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-09-17

予約期間 開始 2020-09-18 00:00
締切 2020-09-19 23:59

出発日 2020-09-26

完成予定 2020-10-06

参加人数 5 / 8
●古城と荒れ野と二人の女  グラヌーゼでは、夏はいかにも早く過ぎ去る。  茫漠たる荒れ地には色を失った夏草と、今の盛りの秋草が生い茂るばかり。  その中を、二人の女が歩いている。一人はローレライ、もう一人はヒューマン。  ヒューマンの女は灰色の髪に灰色の瞳。鋭い目つきで煙草を咥え、ふかしている。ローレライは青い髪に青い瞳。口笛を吹き、銀の杖をくるくる手の中で回している。  双方、同い年程度に若く見える――しかしローレライはその形をいかようにでも変えられるから、本当のところは分からない。  この地方特有の薄曇りな空と、吹き渡って来るひんやりした風。草が波のようにざわめく。  ローレライの女が楽しげに言った。 「いいねえ、ここは。いつ来ても寂寥感が漂ってて。憂鬱な詩を書くにはぴったりな場所だよ――しかし、ねえ、これは相当にハイリスクな試みだよ?」 「知ってます。でも、やるだけの価値はある。私はそう思っています。あなたもそう思っているから乗ってきたんでしょう?」 「まあね。正直かなり、興味はある。何しろあの城は、長々魔物の巣窟になっている。だけに、盗掘の脅威にさらされていない。あなたが言うようにかなりの確立で、価値あるものが残っているはずだよ。で、それを発見したとしてどうするの? 売るの?」 「いいえ。展示して客を呼びます。入場料を取ってね。あの城は、とてもいい観光資源になるはずなんですよ。あそこから魔物がいなくなって、人が自由に出入り出来るようにさえなるならば」 「今でもほんの時たま、自由に出入りする人間、いるじゃない。大体そのまま戻ってこなくなるけど」 「金をろくに落とさずリピーターにもならない観光客なんて、何の意味もありませんが?」 「【セム】、あなたのそういうビジネスライクなところ、私すごく好きなのよー。結婚しちゃいたいなー」 「ご冗談を【ラインフラウ】」  女たちは足を止めた。  視線のはるか先には悪名高きサーブル城だ。捨て置かれた墓石みたいに、灰色の空の下、ぽつんと佇んでいる。  城の背面には、茶と、黄と、赤がまだらになった固まり――入れば出られぬという、幻惑の森だ。もう少し季節が進めば、紅葉した葉もすっかり落ち、黒い固まりに見えることだろう。 「秋草や、つわものどもが夢の後……ってね」  ローレライの女がそう呟いたとき、アア、と大きな声が聞こえた。振り仰げばカラスの群れが森に飛んで行くところだった――人間にとって有害な場所であっても、動物にとってはそうでもないのだろう。  ヒューマンの女は双眼鏡を取り出し、城に焦点を合わせる。  幾重にも巡らされた城壁と、天を刺すような高い塔の連なり。そして、それらを繋ぎ支える無数の橋脚。がらんとした正門――正門の両脇には以前ガーゴイルがいたらしいが、勇者達により討伐されてしまったそうだ。  城の周りには水を湛えた堀。水面に映るのは曇り空と、朽ちかけてきている跳ね橋。  とにかく何もかもが歳月の流れによって剥落しつつある。廃墟と呼ぶに相応しい有様……。  突然ローレライの女がヒューマンの女の腕をつかみ、自分に引き寄せた。  遅れてヒューマンの女は、草影に猫が数匹立ち止まって、こちらを見ているのに気づいた。  ローレライの女は唇を動かさずに言う。 「急に動かないように。目を合わせないように。向こうの興味をかきたてちゃうからね」  ヒューマンの女は言われたように、ゆっくり体を回転させ、猫たちと視線が合うのを避けた。  すると猫たちはふいと顔を背け、そのままどこかへ去って行ってしまった。 「……今のは魔物ですか?」 「違うよ。でも、普通だったら猫は、こんな何もない所うろうろしない……どうも今、城に親玉がいる臭いね」 「親玉というと?」 「あなたがチャリティオークションで購入した絵に描かれてた、アレだよ」 「と言うと、シャパリュ?」 「そう。であれば、私たちだけでは手に負えない」 「なら、出直しますか」 「それがいいね。どの道本格的に攻略するためには、もっと準備をしなきゃいけないし。あの絵が描かれたのがいつぐらいなのか、調べはついたの?」 「ええ。あの後、遺族に会いに行きましてね。そこで直接聞きました……なんでも、亡くなる2、3年前から製作に取り掛かっていたらしいです。グラヌーゼの歴史をテーマにして、連作を描きたいと言っていたそうで。サーブル城周辺もスケッチに行ったりしていたとか」 「そのスケッチ、残ってないの?」 「こちらには置いてなかったようです。恐らくどこか、本人しか知らない場所にあるのではと」 「それじゃ、探し当てるのは難しいか。なにしろ肝心の当人が、もうこの世にいないからねえ」 ●勇者募集  その日フトゥールム・スクエアにおいて、生徒達に、以下の告知が出された。  『サーブル城周辺の調査課題について参加者募集。今回調べたいのは、城の南側にある『果て無き井戸』のエリアである。魔物が出現した際は、短時間で始末がつけられない場合、無理をせず退くこと。なお、この調査には、依頼人であるセム、及びラインフラウが同行する。』  豚のルネサンスである【アマル・カネグラ】はその話を聞いて、首を傾げた。セムという名前に何か覚えがあるような気がしたからだ。  しばし丸い顔を傾け思案していた彼は、ぽん、と拳で手を叩く。 「あ、そうだ。思い出した。この人、チャリティーオークションで『踊る少女』を競り落としていった人だ。ねえ、【ルサールカ】そうだったよね」  水を向けられたカネグラ家専属の美術商は、ローレライ特有の端正な顔をしかめる。 「……どうしたの?」 「いえ、こういうところで身内の名は目にしたくないものだなと」 「へえ、このラインフラウっていう人、ルサールカのお姉さんか何かなの?」 「……いいえ。母です」 「へえ! どんなお母さん? きれい?」 「そりゃあ、当たり前です。ローレライなんですから。でも、信用ならない人ですよ。欲しいものを手に入れるためなら、平気で幾らでも嘘をつく」 「……ふーん。じゃあルサールカはお母さんに似たんだね」
ゴブリンジェネラル現る 橘真斗 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 とても難しい

報酬 ほんの少し

公開日 2020-09-14

予約期間 開始 2020-09-15 00:00
締切 2020-09-16 23:59

出発日 2020-09-22

完成予定 2020-10-02

参加人数 3 / 8
●狩りの始まり ―シュターニャ近郊のとあるゴブリンの巣― 「クイタリナイ……エサ、トラエル」  重厚な鎧を装備したゴブリンがペッと骨を吐き捨てた。  その骨は牛の頭蓋に当たり、カランとなる。  鎧を装備したゴブリンの周囲には牛や、豚の骨が多数散らばっていた。 『カリ! カリ!』  4体のゴブリンが声高らかに叫び、剣をぶつけてキンキンと甲高い音を立てる。 「イクゾ……カリノジカンダ」  ゴブリン達を率いるゴブリン、ゴブリンジェネラルは通常のハイゴブリンよりも何倍も大きな体を揺らしながら、先陣を切った。 ●ゴブリンの襲撃 「今回も貴方達には難しい課題を持ってくることになったわよ」  【ユリ・ネオネ】はすっと掲示板の前に現れると、まだ張り出されていない最新情報を話はじめる。 「やることはゴブリン退治。よって報酬は決して多くはない。リスクに合わないタイプの依頼ね」  ユリの話を聞く生徒が一斉に減った。  どうせ課題を遣るのであれば楽して稼げる方がいいと考えるのは当然のことである。  予想通りのリアクションに落胆するユリの耳によく通る声が聞こえてきた。 「ゴブリンが相手なら、やるわ。どんな依頼でも」  人込みの中かをかき分けて出てきた【アスカ・レイドラゴ】はユリの落胆しがちだった目を強い意志を持つ目で見返す。 「早く話なさいよ、張り出されてないという事は緊急性の高い依頼なんでしょ?」  数日前までは新入生と思っていたのだが、見違えるほどに成長したのだとユリは思った。 「ええ……でも、あなたではまず無理ね。どうやら敵はゴブリンジェネラル率いる殲滅部隊だから」 「ゴブリンジェネラル?」 「そう、まぁこっちで分類上そう呼んでいるだけで種族として強いゴブリンね。でも、知能があり人語も理解するわ」  人語を理解するゴブリンと聞いて、アスカは顔をしかめる。  ただの怪物ではなく、意図して殺しなどを楽しめるやつかもしれないのだ。 「確認数が少ないケースだから、同じかどうかはわからないけれど知能が高く、装備もいいものを持っているとされているわ」 「やっかいね……」 「ええ、本当に。もっと厄介なのは殲滅部隊として4体のゴブリンライダーも確認できていることよ」 「ゴブリンライダー……確か馬などに乗っているゴブリンよね?」  ゴブリンについて調べていたのか、アスカはユリが驚くほどの知識を見せる。 「ええ、そうよ。ただ、どうやら属性装備をもっているのか得意属性がある4体が確認されているわ」  面倒な相手だなと思った生徒がさらに減った。  報酬も低く、難易度が高い課題で怪我などしたくはない。 「速度は早く、馬の方はただの馬でなく麻痺を与える蹄を持っているわ」 「麻痺対策と……上に乗ったゴブリンは毒矢を持っている可能性もあるから毒対策も必要そうね」  アスカは顎に手を当てながらじっくりと考えていた。  普段は粗暴で手が付けれない問題児と他の教師からは聞いていたが、ゴブリンに関してはそんな様子はない。  その理由をユリは知っている。 「ええ、とにかく倒そうと思わないで、多少でもダメージを与えて撤退させれればそれで充分よ」 「分かっているわ……消滅したら……何にもならないもの……」  ユリの言葉に血濡れのロケットと、指輪をぎゅっと握りしめてアスカは依頼を受けることを決意した。
怪奇! 枕おとこ 桂木京介 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-09-17

予約期間 開始 2020-09-18 00:00
締切 2020-09-19 23:59

出発日 2020-09-23

完成予定 2020-10-03

参加人数 4 / 8
「抱き枕?」  と教師【ゴドワルド・ゴドリー】は言った。 「普通に使うぞ。あれは腰痛にいい」  なぜか得意げに腕組みする。生徒たちがヒソヒソと、先生の脳内嫁っていうのはまさか……! とささやきを交わしていることには気付いていないようだ。  放課後、たいていの生徒が下校して、ガランとした教室に夕日が差しこんでいる。  教卓のところにゴドリー、最前列にわずかな生徒たちというのが現在の図式だ。  五十人は入る広い教室なだけに物寂しいものがあった。  赤葡萄のような太陽を浴びながらゴドリーは軽く咳払いした。 「脱線してすまん。枕の話だったな。話のまくらではない。枕が本題だ。枕は枕でも枕にまつわる怪奇現象だ」  このときゴドリーは『怪奇』の部分にアクセントを置いていた。 「フトゥールム・スクエアの敷地内に、使われなくなって久しい合宿所がある。『カブト虫荘』という。炊事場なども付属しているがメインは畳敷きの広い部屋ひとつだ。中央がふすまで仕切られており、外せばちょうどこの教室ほどになる」  それなりに広く、設備のととのった場所のようだ。なぜ使われなくなったのだろうか。 「使われなくなった理由か? 簡単だ。建物の周囲に何もないからだな。グランドは遠くトレーニング設備もない。校舎から遠いわりに風光明媚でもないし夏は蚊が多い」  つまり利用価値がないということだろう。 「ゆえに教職員の一部以外には忘れられた場所だったのだが、このところカブト虫荘に妙な噂が立つようになった」  一拍おいて、ゴドリーは声をひそめて告げた。 「……出る、らしい」 「カブトムシがですか?」  という生徒の回答に、おいおい、とゴドリーは言ってゼスチャーまじりに告げた。 「これだ、これ」  こういう場合のポージングは、肘を曲げ、両手を揃えてたらりと垂らし手の甲を見せるというものになりがちなのだが、この人は両手をパーにして左右のこめかみに親指を当てるという、オリジナルならぬ俺ジナル感強めの姿勢であった。 「変質者が出るという話ですか」 「いや見ればわかるだろう! おばけだ、おばけ! 怪異現象! ホラー!」  いないいないばあっ、ってやってるようにしか見えないが、これがゴドリー流なのだろう。つっこんではいけない。 「どうもなこのカブト虫荘には、リアルが充実しているやつ、つまりリア充を許せないという怨念がうずまいているらしく、宿泊者が夜中、リアリア充充的な行動をしていると怪奇現象が襲ってくるというのだ」 「質問、リア充的行動ってなんですか?」  すかさず飛んできた質問に、うぐっ、と一瞬ゴドリーは固まったがやがて言った。 「男子ならほら……す、好きな女子の話とかするんだろ? 寝床で」  皆まで言わせんな、とでも言いたげなうつむき加減だった。頬が赤いように見える。黒いロン毛に青白い肌、鋭い眼光のゴドリーの照れ――イチゴをシチューに入れるような不気味さがあった。  じゃあ女子なら、という質問には、うってかわって即答だ。 「好きなアイスクリームの種類の話でもすればいいんじゃないかな」  それリア充ですか? という疑念を投げかける勇気のある者はいなかった。  怪異現象はふすまがすべて消失することからはじまる。  つづいて押し入れががらりと開き、大量の枕がこぼれ出てくるというのだ。 「西側の押し入れが諸君サイドだとすれば反対の東側が怪異サイドだ。東側からは枕だけではなく、温泉旅館の浴衣を着た怪物たちがぞろぞろが出てくる。ぜんぶ人間大だが頭だけは甲虫だ。しかも口々に『おのれリア充』『成敗してくれる』などとわめきながら枕を投げてくる」  どうやら全部オスらしいな、とゴドリーは言う。 「さしづめ『枕おとこ』とでも呼ぼうか。こちらも枕を投げて対抗するのだ」  怪奇とか恐怖とかいうより楽しそうなのだけど……と言う生徒がいたが、遊びではないぞ、とゴドリーはたしなめるのである。 「怪異現象を鎮めるのがお前たちの使命だ。ゆめ、あなどるなかれ。武器や魔法を使うのも自由でありそれを躊躇しないなら簡単だが、相手が枕でくる以上、こちらも枕で対抗したいものだな」  たくさん枕を受けるとカブト虫は気絶してしまう。特に顔面へのヒットはダメージが大きいらしい。なおこの条件はこちらも同じだ。 「最後まで立っていた側が勝利だ。枕おとこたちを見事倒してみせろ」  なお朝日が差すとタイムオーバーで強制終了となる。その場合は失敗とみなされるだろう。  くわと鋭い眼光でゴドリーは言う。 「なんにせよ疲れることだろう。枕だけにピロー(疲労)というわけだな!」  これがギャグだと伝わるのに、何秒か必要だった。  伝わったところで受けるわけでもなかった。
鉱石を採って採って採り尽くせ! 夜月天音 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-09-12

予約期間 開始 2020-09-13 00:00
締切 2020-09-14 23:59

出発日 2020-09-20

完成予定 2020-09-30

参加人数 2 / 8
 朝、トロメイア、エーリの滝の裏に存在する洞窟群の前。 「よく来てくれた、魔法学園の学生さん!」  集まった魔法学園『フトゥールム・スクエア』の学生達を迎えたのは、50代の山羊のルネサンスの男性だった。 「学園の方から説明はあったと思うが、もう一度説明をさせて貰うよ。私は【グローブ・ブゥ】だ。鉱石を販売している者だ。さらに希少な鉱石の収集を趣味としている。採掘を頼んだ者達が私用や体調不良などで断られてしまってな。それで、魔法学園の学生さんなら頼りになるんじゃないかと思った次第だ。採掘道具はこちらで用意したから自由に使ってくれ」  グローブは人手を得るために魔法学園に依頼した内容を念のためにと、再度話し始めた。 「洞窟には蝙蝠とかの動物や魔物などの危険はあるが、鉱石に群生する植物は美しく心が和むはずだ。時間は決めてはいないからのんびり採掘してくれ」  グローブは、学生達の身を案じて警告と少しでも楽しんでくれたらという思いを込めて言った。 「鉱石は高価な物や無価値の石、動植物が入った物や魔法が含まれていて、七色に輝いていたり傷を治したり甘い香りを発する物や夜にしか変化を見せない物もあるらしい……とにかく私の商売と趣味のために協力をお願いする」  続けて採掘出来る鉱石の例を挙げてから、丁寧に学生達に頭を下げた。  そして、いよいよ鉱石採掘が始まった。
暑い日こそカレー! 江戸崎竜胆 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 ほんの少し

公開日 2020-09-10

予約期間 開始 2020-09-11 00:00
締切 2020-09-12 23:59

出発日 2020-09-18

完成予定 2020-09-28

参加人数 3 / 8
 残暑の厳しい学園内――。 「そうだ、炊き出しをしよう。暑い時期だ、みんなの食欲も落ちている。カレーかトン汁でも良い」  そう誰かが言った事から悲劇が始まる……。  大図書館『ワイズ・クレバー』から言いだしっぺの誰かが取り出した、学園の記録。  そこには学園伝統の炊き出しの作法がいくつか載っており、なんと炊き出しのカレーにマンドラゴラを使うとか書いてある。 『マンドラゴラを使ったカレーは滋養強壮に良く、古くから愛されている家庭料理であるカレーに応用が利く。ニンジンのような甘みがあり、筆者も試してみたがとても美味しい。夏バテ解消、美容にも良い万能の食材である』 「これは……トン汁の方が……」 「でも俺はカレーが良い……」 「俺もカレーに一票」  試しにトン汁の項目を開いてみた生徒がそっとページを閉じた。カレー以上の無理難題だったらしい。 「マンドラゴラは何処で確保する?」  炊き出しと言う慈善行為のため、植物園『リリー・ミーツ・ローズ』のマンドラゴラを使わせてもらう事になって、問題は解決したのだが……。  植物園の奥深くに眠っているマンドラゴラは群れをなしていて簡単には引き抜けない。しかも手入れをされているマンドラゴラは野生よりも巨大で生徒の手には余る。ような気がしなくもない。  どうする? 炊き出し班!
命知らずの冒険少年 ことね桃 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-09-11

予約期間 開始 2020-09-12 00:00
締切 2020-09-13 23:59

出発日 2020-09-19

完成予定 2020-09-29

参加人数 2 / 8
●それはちょっとした好奇心から  グラヌーゼの地に残る悲劇の痕跡――サーブル城。  そこはかつて苛政にて民を苦しめた魔族の居城。  今なお魔王との戦いの名残でまともな商業がなりたたず、困窮しているグラヌーゼの民にとっては何とも苦々しい建造物だ。  しかし城の周辺は幻惑の森をはじめとした危険な区域に囲まれており、解体しようにも手を付けられない状況でもある。  今日も今日とて年老いた民は畑の手入れをしながら忌々しい城へ視線を投げかけた。 「ああ、何とかあれを壊せないもんかねえ」 「本当にねえ。ノア一族が死んだとはいえ、噂では新しい魔族が棲みついたとか……嘘か真かわからないけどサ」 「それは困る。ただでさえ近づけないってのに、そこに棲みついたなら……例え学園に優れた学生を送ってもらっても対応しきれないかもしれないじゃないか……」  城も怖いが幻惑の森もまた恐ろしい。  ノア一族の幻惑魔法は今もなお怨念のように森に残留し、入り込んだ者をたちまち幻惑の虜にし――いつしか森の贄の如く死に追いやると言われているのだから。 「あれだなァ、もし本格的に解決するなら森ごと燃やすしかないンかな」 「それじゃ『グラヌーゼの悲劇』の再来になるだろうよ。ただでさえ乾燥してんだ、これ以上の火種は勘弁してほしいよ。それより学園や勇者様達が幻惑魔法の解呪法を探してくれる方が間違いないさ」 「だな。俺達は余計なことはせず、子供達が帰ってくる村を守るしかねえな」  ざく、ざく。  夏の終わりに刈り終えた麦畑に鍬を振るう老人達。今の彼らにはそれが精一杯だった。  ――そんな老人達の話にそっと聞き耳を立て、にんまりと笑うのはグラヌーゼのやんちゃな子供達。  彼らは祖父母や両親から常々『森にだけは行っちゃいけないよ』と言い聞かせられていたが、その奥に見える城がなんとも魅力的に思えていたのだ。 「なぁ、ノアの魔法ってアレだろ。城にまだすげぇモンが残ってるから奪われないようにかけてあるんじゃね?」 「それは俺も思ってた。だってノア一族ってすごく強い魔族で、強い魔物も連れてたんだろ? きっと普段からとんでもない価値のある食器とか飾り物とか使ってたんだろうなって」 「もしかしたら城の奥には金とか宝石がぎっしり入った宝箱があったりして……」 「馬鹿、宝箱なんてもんじゃないだろ。きっと部屋そのものがお宝みたいな場所があんだよ。絶対!」  額を突き合わせてごにょごにょごにょ。  ――そうしているうちに彼らはひとつの結論に辿り着いた。 『サーブル城に行ってお宝を見つけるぞ!』  何しろこの地は今も貧困にあえいでいる。  子供達の両親が1年のほとんどを出稼ぎに費やしているのは魔物達が豊かだった麦畑を焼き払った――過去にこの地を手酷く荒らしたからなのだ。  だったら今度はこちらが仕返しにお宝を奪っても問題はあるまい。  集めたお宝を裕福な貴族や骨董商に売り払えば大人達は出稼ぎに行く必要がなくなり、祖父母が重い鍬や鋤を持って働く必要もなくなる。  何よりも両親が帰ってきてくれるのなら子供達にとってそれ以上の喜びはない。  彼らは早速打ち合わせをすると食糧と思いつくかぎりの冒険道具を用意して、翌日に森の東部からこっそりと忍び込むことにした。 ●陽が高くとも目が昏く眩む世界  子供達はいつものように老人達が畑に向かうのを確認するや、ぼうぼうと生えた草の中を手を繋いで駆け抜け森へ向かった。  それは子供にとってかなりの距離ではあったが、好奇心と使命感に満たされた彼らにとっては疲労などあってないようなもの。 「よし、全員腰にロープをつけたな。城にはここからまっすぐ北西に向かえば着けるはずだ。幻惑魔法だの呪いだの大人達は色々言ってるけど、まっすぐに歩くだけなら迷うはずなんてない。大丈夫だろ」  リーダー格の少年はそう言うと太陽の方向を確認した。太陽はしっかりと南の空に高く上がっている。視界もよし、迷う道理などない……はずだ。 「とりあえず陽が翳ってきたら帰ろうね。一応ろう石を拾ってきたから、目立つ木に印を書いておくよ」 「あとは魔物……いるのかなぁ、本当に。いたらどうしようか」 「そしたら全員ダッシュで逃げりゃいい。今までだって平原で獣を追いかけたり、悪戯しては逃げて無事だった俺達じゃんか。どうにかなるって」  慎重な仲間達に対して妙に強気な態度を示すリーダー。その様子に彼の参謀役が小さく俯く。 (そういやリーダーの兄貴も去年から出稼ぎに出てるんだよな……煉瓦職人のとこに奉公に行ったって聞いたけど。あれがやっぱり辛かったのかな……)  自分もできることなら父親と一緒に遊びたいし、存分に母親に甘えたい。  それに――あの城の怪異を乗り越えたなら村の勇者と褒められるかもしれない。  そんな虚栄心が参謀の胸を疼かせる。 「……ま、冒険は今日だけじゃないんだし。少しずつ進めていこうぜ」  参謀の提案に少年達は頷くと薄暗闇の空間に足を踏み入れていった。  それからどれだけの時間が経ったのだろう。  陽はまだ高いはずなのに子供達は既に考えることもできないほどの距離を歩いた感覚に陥り、疲労も露わに巨木の根へ腰を下ろした。 「おっかしーな……森の入り口と城の距離感からするととっくに着いててもおかしくねーのに」 「どこかで道、間違えた?」 「まさか。北西に一文字に進むだけだろ。間違えようがねえよ」  リーダーは飴玉を口に放り込み、周囲を見回す。  すると異常なことに気がついた。  同行する仲間が記していた、ろう石の白い線が彼らを囲むようにびっしりと書き込まれている。 「おい、お前! 何やってんだ!! 目印をあちこちに書いたら意味ねーだろっ!!」 「そ、そんなことないよ。僕、リーダーのすぐ後ろにいただろ!? この通り体を縄で繋いでるんだからそんな変なことできるわけないよっ」 「だったらなんだよ、これは最初から書かれてたっていうのかよ!」  リーダーは錯乱したのか仲間達に当たり散らし、縄を地面に叩きつけた。  城の影はまだ遠く、陽は怪しげな光で彼らを照らしている。  いや、あれは本物の太陽なのだろうか?  もしかしたらあれもノア一族の呪いの幻惑魔法の断片なのかもしれない。  少年たちはたちまち心が不安に揺れ――大声で泣き出した。 ●老人達の懇願  学園にグラヌーゼの老人達から縋るような文言が綴られた文書が届いたのは翌日のことだった。  彼らによると村でも選りすぐりのやんちゃ小僧達が突然姿を消したらしい。  馬が残されている一方で、食糧とランタンやフック付きの縄など遠出の際に使う道具が一通りなくなっていることから『もしかしたら幻惑の森に探検しにいったのでは……』と老人達はただひたすらに案じ、近辺を徹夜で探索までしたという。  だからこそ――教師は生徒達を集めて声を張る。 「幻惑の森は危険な場所よ。噂ではまた魔物が棲みつき始めたのではとも言われているの。だから一刻も早く子供達を救出して」 「そんなに危険なところなんですか?」 「昔あそこに棲んでいた魔族の魔法が今も侵入者の五感を惑わせ、死ぬまで森を彷徨わせると言われているわ。もし獣や魔物がいたとしても、まずは子供達の救出を最優先にして。空腹と疲れで動けなくなっているかもしれない……そこを襲われでもしたらおしまいよ」  教師の声は切実だった。  だからこそ【メルティ・リリン】はその思いに答えようと――救済の誓いを小さく口にした。
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