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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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何とキャットな日 笹山ぱんだ GM

ジャンル ハートフル

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-09-12

予約期間 開始 2020-09-13 00:00
締切 2020-09-14 23:59

出発日 2020-09-20

完成予定 2020-09-30

参加人数 2 / 8
●それはとある日のことでした  残暑厳しい太陽が眩しいとある日のこと。居住地域にあるお店のお話。 「ま、待って、待ってったらー!」  街中を走っていくのはヒューマンの少女、その前方には猫が一匹、二匹、三匹……十数匹。  少女の目の前から方々に散らばっていく。 「ど、どうしよう……。店長に怒られちゃう……!」  立ち止まり、少女は周りを見る。そして、貴方をみつけた。 「ねぇ、あなた! ちょうどいいところに!」  嫌な予感? いえいえ、そんなことはありません。 「私は【カナリア】、ここの猫喫茶でバイトしてるの!」  貴方と少女、カナリアは近くにあった喫茶店へと入った。しかし、カナリアが言う猫は一匹も居ない。  それを問いただすとカナリアは苦笑を浮かべる。そして貴方の手をがしっと握った。離さない、そんな言葉が表情から伝わる 「今日は店長が初めて、お店を任せてくれた日なの! ……でも、その……うん、猫達が逃げちゃって、ね…?」  お店で飼っている猫だ。そんなに遠くには行かないだろう。だが逃げてしまった猫達を一人で探すというのも困難なものだ。 「それで、おねがーい! お礼はちょっとだけだけど……出すから! 私と一緒に、猫を探してください! 猫皆見つけたら、一緒にここで遊んでもいいから!」  猫を全て見つけたら、猫喫茶にて猫達と遊んで良いらしい。カナリアは一生のお願い! と言わんばかりに貴方の手をぎゅうう、と握って頼んだのだった。  猫の居る場所は、君は知っているだろうか。  高い場所や、涼しい日陰、もしかしたら街の住人が餌をあげていたりするかもしれない。  あらゆる方法で、猫達を見つけ、猫をもふもふしなければいけない。
豪雨収める鞘 七四六明 GM

ジャンル 戦闘

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2020-09-09

予約期間 開始 2020-09-10 00:00
締切 2020-09-11 23:59

出発日 2020-09-19

完成予定 2020-09-29

参加人数 5 / 8
 台風一過。過ぎ去ればまるで夢幻。残すは破壊の爪痕のみ。  雨と共に現れ、剣士を襲う災禍が如き怪物、驟雨(しゅうう)。奴を打倒するため幾人もの学生が挑み、戦い、返り討ちにされてきた。  が、学園は驟雨との戦いで回収に成功した驟雨の刀剣の欠片から、驟雨を打倒し得る可能性を秘めた刀剣の制作を開始し、遂に完成間近にまで迫り来ていた。 「――せやけど肝心な鞘がない、言うんやからお粗末な話やわぁ」 「仕方ない。私達とて、失念していたんだからな」  鋭利な刃物が表に出ていることほど危ないことはない、というのが【白尾・刃】(しらお じん)、【黒崎・華凛】(くろさき かりん)、【灰原・焔】(はいばら ほむら)を鍛えた師匠の持論だった。  だから刀に合う鞘を作れる鞘師と連携し、鞘を作って貰うことにした学園の判断には大いに賛成なのだが、鞘師が出した条件とやらが面倒だった。  近頃、鞘師が工房を構えるシュターニャの墓地にグレイブスナッチが棲みついてしまったので、それを退治して欲しいと言うのだ。  夜しか現れないものの、日中もキラーバットを使って集落を監視しているらしく、いつ人を襲うかわからない状況下。  早めに手を打っておくことに越したことはないのだが、相手はグレイブスナッチだ。  死と生の狭間に住み着き、大鎌を振るう死神。驟雨ほどではないにしても、かなり手強い相手だ。苦戦は強いられるだろう。 「にしても久し振りだなぁ、おまえ達と組むの。姐さんも居れば完璧だったのにな」 「まぁ、すぐに組むことになるかもしれないけれどね」 「まぁま。今は鞘師の要望に応えようやありまへんの。グレイブスナッチなんておっかないの、放ってもおけんもんなぁ。みんなでパァっとやったりまひょう」  そんなわけで、鞘を作って貰うため、皆で鞘師の住む傭兵達の街、シュターニャへ。  鞘を作って貰うため、倒すべき相手は墓場の死神グレイブスナッチ。キラーバットを使役する死の化身。 「お、これで全員集まったか? よっしゃ、行こうぜ! 目指せ、シュターニャ!」  死神退治に、いざ参る。
夏のアニキたち~ビキニは終わらない~ 江戸崎竜胆 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-09-06

予約期間 開始 2020-09-07 00:00
締切 2020-09-08 23:59

出発日 2020-09-14

完成予定 2020-09-24

参加人数 3 / 8
「アツい! アツいぜ! アニキィ!」  むきぃ! 「うおおー! その筋肉が光り輝く!」  むきむきぃ! 「感涙だぁ! 俺の上腕二等筋がむせび泣く!」  にっかり! 『うおおおおおお~!!』  暑苦しい会場。夏の真っ盛りかと見まごう程のきわどいビキニに、てかってかに光る小麦色の肌。肉肉、筋肉、筋肉、ときどき贅肉、とにかく肉の波。  其処は漢(おとこ)と漢女(おとめ)が集う魅惑の常夏。  そんな光景を目の当たりにしたあなたに、ステージの上に立っていた見事な褐色肌の筋肉だるま、にっしゃりと白い歯をきらめかせた【マッスル・タロウ】(28歳)が話しかけてきた。 「君にも聞こえるだろう……筋肉の喜びの声が。さあ、僕達と共に、ひと夏の筋肉バカンスを楽しもう! 大丈夫、筋肉は君の味方だ!」  あなたはなにをしたと言うのだろうか。前世でなにかしでかしたような悪夢――人によっては天国かもしれない――に迷い込んでしまったかのようだった。此処では筋肉が全て。筋肉が命。筋肉が至高。  夏も終わりの頃、此処は灼熱の熱気に包まれていた……。  あなたは此処でなにをする? ただ筋肉に怯えているだけの存在ではあるまい。  筋肉を鍛える?  筋肉を披露する?  筋肉を愛でる?  其処にはただ――筋肉あるのみ。
我が故郷は水面(みなも)の下に 海無鈴河 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-09-04

予約期間 開始 2020-09-05 00:00
締切 2020-09-06 23:59

出発日 2020-09-13

完成予定 2020-09-23

参加人数 3 / 8
◆  その昔、伝説の魔王の脅威にこの世界が脅かされていた頃。  八種族はそれぞれの方法で脅威へと立ち向かったのだという。  たとえば、ドラゴニアは果敢に魔物討伐へ乗り出し、ヒューマンは勇者として立ち上がる……といった具合に。  その中でローレライは、多くの者が海の底へと身を隠した。自分たちを守るために。  僕はその頃生まれていなかったけど、近所に住むじい様から話をよく聞いたものだ。  ここは当時のローレライが築いた海底の街なのだ、と。  海の底から天を見上げると、水面が揺れ、陽光は帯となって差し込んでいた。  泡沫に反射したその美しさは、今でも時々夢に見る。   ◆ 「遺跡の調査、ですか?」  フトゥールム・スクエア、廊下にて。考古学の教師である【エヴァン・テール】は、自分の胸くらいの位置にあるとんがり帽子に首を傾げた。 「そーそー。なんでも最近、遺跡周辺の精霊の元気がないみたいでね。ちょっくら行って解決してきてほしいのだよ」  帽子の主は【メメ・メメル】。彼女にしてはいくらか真面目な口調だった。  エヴァンは少し皴の寄った目元に苦笑を浮かべた。 「この老体になかなか酷なことを言いますね」  思わずメメルは彼の体を上から下までじっと眺めてしまった。  少し年の行った印象はあるものの、彼の風体は30代後半のそれである。 「その見た目でなにを言っとるか」 「いやあ、メメル先生には負けますよ」  永遠の14歳と永遠の30代が顔を見合わせる。  ははは……。  廊下に乾いた笑いが響いた。事実には触れない方が幸せだと二人は察した。 「で、その遺跡はどこに?」 「んー。エヴァたん向きの場所だぞ☆ ちょっと待ってー……」  メメルはどこからともなく写法筆を取りだすと、空中に大陸地図を描き始めた。  中心にはフトゥールム・スクエア。  筆をとん、と学園の位置に置くと、メメルはそのまま真下に線を引っ張る。 「学園から真南にずーっと、ずーっと……」  いくつかの街を越え、川を越えてもなお線は伸び続ける。 「あの、そのまま行くと――」 「ここだ!」  筆が止まったのは、大陸の端を少し飛び出たところ。エヴァンが察した通り海の上だった。  エヴァンのハシバミ色の瞳がわずかに揺れた。 「そこは……」 「な。エヴァたん向きの場所だろ?」 「ええ……よく知ってます。それに、精霊の元気がない原因も覚えがあります」  だってそこにあるのは。 「僕の故郷ですから。よく、知っています」  メメルはそうだった、と笑うと、ぽんとエヴァンの背中を叩いた。 「久しぶりの里帰りだと思って、満喫してきたまえ☆」   ◆  その翌日、エヴァンは考古学の授業で生徒たちに呼びかけた。  フィールドワークとして、海底に沈む遺跡の調査へ向かうこと。  そこで課題を1つこなしてもらいたいこと。 「向かう遺跡は、かつてローレライのとある部族が住んでいた集落です。五百年ほど前には住む者も居なくなってしまいましたが、住居や道具などは現存しています。皆さんにとって珍しいものもあるかもしれませんね」  生徒の一人から質問の手があがる。  エヴァンは穏やかな口調で丁寧に答えていった。 「呼吸の心配はいりません。僕の調合した魔法薬を飲めば、陸地と変わらず呼吸ができ、体が浮くことも無く海底を歩くこともできます」  高度な魔法に生徒たちから驚きの声があがる。今の自分たちには到底届かない芸当だ。 「とはいえ水の中なので、体は重たくなりますし、ある程度の制限はありますが……」  さて、とエヴァンは一度言葉を切る。 「みなさんにこなしていただきたい課題は、『水霊の涙(すいれいのなみだ)』という魔法道具の作成です」  水霊の涙は濁ってしまった水を綺麗にすることができる魔法道具なのだという。 「あの遺跡では数百年に一回、水流が滞り水が濁ってしまうことがあるんですよ。水が濁ると精霊も我々も暮らしづらいですからね、早めに解決したいところです」  作り方と材料は紙にまとめました。  エヴァンはそう告げると、生徒たちに羊皮紙を配り始めた。
ミラちゃん家――あちらもこちらも探り合い K GM

ジャンル 推理

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-09-03

予約期間 開始 2020-09-04 00:00
締切 2020-09-05 23:59

出発日 2020-09-12

完成予定 2020-09-22

参加人数 5 / 8
●フトゥールム・スクエアの外  黒いマスチフの姿をした魔物【黒犬】は現在、とある山間の村から山を四つ超えた先にある、坑道の奥に潜んでいる。  坑道は数年前大規模な落盤事故が起き、放棄されたものだ。多数の死者が出た場所として忌避され荒れ果てたその場所は、ここ一年ほどゴブリンの群れの住処となっていた。黒犬はそのゴブリンたちを軒並み丸焼けにして、所有権を奪った次第。  坑道に散らばっている岩また岩。黒犬はそれをガリガリやっている。歯ごたえのいいものを噛んでいると気分が落ち着くのだ。なにしろ根は犬なもので――骨があれば一番よかったけど。  闇の中黄色い目をらんらんと光らせ、炎交じりの鼻息を吹く。  そこに十数匹の犬たちが入ってきた。謁見でも受けるような調子で、黒犬の前で伏せをし、尻尾を振る。  黒犬は彼らに犬語で尋ねた。 「俺が言い付けたとおり、フトゥールム・スクエアに行ってきたか?」  犬たちもまた犬語で答える。 「イッテキタ」 「キタ」 「俺が教えた小僧の匂いを、追いかけたか?」 「オイカケタ」 「オイカケタ」 「それはフトゥールム・スクエアのどこに行った?」 「ヤマノナカ」 「ヤーマ」  この犬たちは全て普通の犬だ。知力は乏しい。だから、問いに対して断片的な言葉しか返せない。  黒犬はそれがまどろっこしくてならなかった。もっと細かい情報が知りたいのに、と不満げな唸りを上げる。  犬たちは脅え、尻尾を股の間に挟んだ。 「もういい、行け」  と言われたのを幸い、逃げるように来た道を戻って行く。  黒犬は一人、フンと鼻息を吹き出した。そしてまた岩を噛み砕き気を落ち着け、現状を整理する。 『呪いを解くカギを知っている【カサンドラ】は、間違いなくフトゥールム・スクエアにいる』 『新しく手下にした【トーマス・マン】は、問題なくフトゥールム・スクエアに潜入している』 (あの小僧、うまくカサンドラの居場所を突き止めてくるといいんだが……)  黒犬がトーマスに期待しているのは、今のところそれだけだ。どう考えてみても、彼が戦力になるわけはないから。なればなお便利だったのにとは思うが。 (全くもって、忌ま忌ましい。なぜ俺がちまちまこんなことをしなきゃならんのだ。本当ならもっと、やりたい用に出来ているはずなのに。そもそもは【赤猫】が。あの飲んだくれのろくでなしが――)  思い出し怒りで、黒犬がうおおと吠えた。その振動で天井がちょっと崩れ落ちてきた。  だが、黒犬はびくともしない。首をうるさそうに振って、脳天に落ちてきた岩を落としただけである。 ●フトゥールム・スクエアの中  保護施設。  隠し部屋に潜んでいるカサンドラは、訪ねてきた面々を前に、思いつめた顔で言った。 「……私、トーマスくんに会って、ちゃんと話をするべきなのじゃないかなと思うんです」  【アマル・カネグラ】は、慌ててそれを止める。 「駄目ですよそんなことしたら。トーマスくんはあなたを狙っている黒犬と繋がりがあるかもしれないんですから」 「……だからこそ、話をした方がいいように思うんです……もしかしたら、私、自分では忘れているけれど、あの魔物との間に、何か約束みたいなことしたんじゃないかって……『呪いを解くカギ』についての。そもそも、黒犬の言う呪いというのが何なのかさえ、まだ分かっていない状態で」  この際だから、一度その内容を把握したい、とカサンドラは言う。 「そうすれば、この状況を打開するためのヒントが得られるかも……黒犬があの子を送り込んできたとするならば、私の居場所は大体分かっているということになります。もし黒犬が学園に乗り込んできたら、被害が出るかも知れませんし……黒犬の目的が呪いを解くカギにあるとするなら、それさえ見つけ与えてやれば、以降こちらにつきまとわなくなるのではないか……と」 「どうでしょうねえ。一度言うことを聞いてやったらあの魔物、また何か別の要求をしてきそうじゃないですか? 執念深いとか言われているみたいですし」  保護施設運営顧問教諭【ドリャエモン】は頭を悩ませる。 「まあ、トーマスが黒犬から一体何を聞かされたのか。そこのあたりは是非とも確かにゃなるまいな。そもそも、呪いの内容を知らぬ限り、それが解いていいものなのかどうかも見当がつかんで」  場に集まっている者は三者のやり取りを聞きながら、それぞれ考えを巡らせた。  トーマスから黒犬についての話を引き出す、というところまでは賛成だ。  問題はそのために、どうするかというあたりなのである。  彼はまず間違いなく、カサンドラについて知っている。  彼女がこの施設にいるのではないかと疑っている――だが、確証は掴んでいない。  保護施設内図書室。  トーマスは図書室で妹の【トマシーナ・マン】に、本を読んでやっていた。  お話はグラヌーゼを舞台にした創作童話だ。  ノア一族を倒した若き勇者の一人が、その手柄を認められ王女と結婚し、幸せに暮らしましたという、まあ、どこにでもよくある筋書き。 「――こうして白馬に乗った勇敢な若者は、王様にほめられ、きれいなお姫様と結婚し、立派な王様となり、国を末長く栄えさせました。めでたし、めでたし」 「わあ、すてき」  無邪気に目をキラキラさせているが、トーマスは浮かない顔だ。 「どちたの、にいたん。このおはなしおもちろくなかった?」 「いや、おもしろいよ。でも、作り話だから。グラヌーゼには王様もお姫様も、最初からいやしないし」 「ゆめのないこと、いうのね」  そこで、ワン、と声がした。  外に出てみれば施設の入り口に、貧相な野良犬がおすわりしている。  トーマスが投げてやったパンに食いつき、千切れんばかりに尻尾振り振り。 「にいたん、あのわんたん、ときどきくるのね。どこのわんたんかしら」 「さあ。野良犬じゃないかな。トマシーナ、あの犬のこと、ここの人に言っちゃ駄目だよ。追い払われたら可哀想だろう?」 「うん、わかった」
勇者を憎む町にて 正木 猫弥 GM

ジャンル 推理

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 多い

公開日 2020-08-30

予約期間 開始 2020-08-31 00:00
締切 2020-09-01 23:59

出発日 2020-09-09

完成予定 2020-09-19

参加人数 6 / 8
「そんな悪い子は、『フトゥールム・スクエア』の怖い魔女に連れていかれるよ」  傭兵の町『バルバグラード』の子供達は、夜更かしや悪戯をすると母親からそう叱られるのだという。  バルバグラードの住民達が、かの魔法学園をそこまで敵視するのには理由がある。  辺り一帯を荒らし回る『バルバグラード盗賊団』が、フトゥールム・スクエアの学生達の手により壊滅させられたのは、今から30年程前の事。  盗賊稼業を捨てる羽目になってからも、彼らのフトゥールム・スクエアに対する畏怖と嫌悪の感情は残り、世代交代を経た今もそれは続いている。  荒くれ者の血を引いた町の若者は、その多くが傭兵となり、己が腕一本で栄光を掴み取る日を夢見る。  フトゥールム・スクエア何するものぞ――バルバグラードは、そういう雰囲気が漂う場所であった。 ◆ 「――早速だが本題に入ろう。傭兵の町バルバグラードに、『ドッペルダケ』が発生した可能性がある」  フトゥールム・スクエアの会議室。集められた学生達に、緊張した面持ちの教師が説明を始める。 「ドッペルダケはヒューマンにのみ寄生する特殊なキノコだ。寄生された宿主は、自分でも気付かないままドッペルダケの繁殖に利する行動を取るようになる。寄生された身体の部分を隠したり、部屋に閉じこもりがちになる等が初期の症状だ」  ドッペルダケは寄生が進むと全身が変異し、最後には理性を失った『歩くキノコ』と化して周囲に爆発的に胞子を撒き散らす。その状態になるまでは、宿主は徹底的に寄生されている事実を隠そうとするらしい。  幸いにもドッペルダケの治療法は既に確立されており、初期段階であればフトゥールム・スクエアでの治療が可能だという。 「これまで宿主の足取りを追跡し続け、どうにか初期症状の段階で対処できていたのだが、今回は場所が悪かった」  バルバグラードに、ドッペルダケの宿主がいると考えられるようになった理由。それは、町に長期滞在をしていた行商人の1人が、町を出立後にドッペルダケの感染が判明した事がきっかけだった。  香水や宝飾品など、高級品を取り扱うその行商人が接触した人数は決して多くはない。状況から考えて、バルバグラードの住人からドッペルダケの菌が感染したと考えられる。 「こちらもバルバグラードに事情を説明し、宿主特定の為に協力を依頼したのだが、にべもなく断られてな。……今はそんな場合ではないのに」  苦々しく呟いた教師だったが、自分を見つめる学生達の視線に気付いて話を続ける。 「お前達にはこれからバルバグラードに潜入し、ドッペルダケの宿主を特定して連れ出してもらいたい。事態は一刻を争う。頼んだぞ」  バルバグラードの隣町にはフトゥールム・スクエアの医療班が待機しており、宿主をそこまで連れていくことができれば治療が可能になるとの事だった。  一気に話を終えた教師は、厳しい表情を崩さないまま学生達に出立を促すのだった。
【体験/新歓】フェスティバル・オブ・チキン oz GM

ジャンル イベント

タイプ マルチ

難易度 簡単

報酬 なし

公開日 2020-05-08

予約期間 開始 2020-05-09 00:00
締切 2020-05-10 23:59

出発日 2020-05-19

完成予定 2020-06-13

参加人数 16 / 16
 春がどんどん深まる。風の匂いが変わる。新しい季節を迎えようとしている。  今日がマジック・オブ・ディライト最終日。夜になっても華やかさは少しも薄れることはない。  祭りが終わってしまう一抹の名残惜しさを感じつつも、これは終わりではなく始まりなのだ。  広場では後夜祭『フトゥールム・ディライト』のメインである打ち上げ花火を見ようと人でごった返していた。  喧噪に佇むステージ。その中心に凛と立つのは【テス・ルベラミエ】だ。 「皆様のおかげでマジック・オブ・ディライトも最後を迎えます。初めての試みでしたが、楽しんでいただけたでしょうか?」  テスが音声拡張魔法でそう話し出すと、観客席からワッと歓声が上がる。 「それでは後夜祭のフィナーレ打ち上げ花火が始まります。では、学園長」 「うむ。チミたち楽しんでるかー! ヒック……楽しい時間ほどあっという間だな、それもよきかな。……だが、我々には後夜祭が残っとる!」  テスに促されて前に歩み出た【メメ・メメル】校長は酒の瓶をマイク代わりに演説を始めた。  すでに酔っぱらってるぞ、この学園長。  出来上がった声に、酒の匂いまで伝わってきそうな酔いっぷりだ。 「……学園長、こちらがマイクとなります。しばしお酒は預かっておきますね」 「ううん? おっとオレサマとしたことが間違えちった☆ ところでテスたん、今日は無礼講だ。お酒を飲みながらでもいいと思わないかね」  ダメに決まってんだろ、メメたん。  テスは駄目ですよ、と楚々たる微笑みで、メメルからさらりとお酒の瓶を取り上げて下がっていく。その手際の良さにさすがテス先輩! と拍手を送りたくなる。 「ちぇー、テスたんはお堅いな。そう思わんかね、チミたち?」  酒を取られふてくされた表情を浮かべたメメルは広場に向かって呼びかける。 「もおーメメたん分かってるんだからなあ。これから花火を背景にフィーバーしたり、イチャイチャしたりするんだろ♪ そう、それこそが若者の真のあるべき姿! こういうときこそハメを外すさんでどうする!」  そうメメルが握りこぶしを作りながら力強く訴えられると、なんだかそんな気がしてきてソワソワ。  だが、教職に就く者としてその発言はどうなのか。 「というわけでぇ、オレサマがとっておきの花火を用意したぞ☆」  メメルはまるで手品のように杖を取り出したかと思うと、 「いでよ、コッコたん!」  突如メメルの周囲に巨大な魔法陣が現れる。魔法陣は強烈な光を放った。夜だというのに眩くて一面が真っ白になった。  恐る恐る学生たちが目を開けるとそこには――。  あ、あれはもしや……!?  かの伝説のフェニックスでは!?  フェニックスといえば勇者の前に現れ試練を与え、ときには勇者の命すら救ったとされる伝説の存在。  炎が祝福するように舞い踊る。全てを灼き尽くさんとする炎はメメルの体を傷つけるどころか守っているようにさえ見えた。  幻想的なまでに美しい火の鳥はメメルの腕へ羽休めするように止まった。  新入生どころか在校生すらも固唾を呑んで見守る。  普段不真面目極まりないあの学園長がまともな魔法使いに見える!  まるで物語に登場するような偉大な魔法使いのようだ。あの学園長が! 実力はあれどメメ・メメルという人物を知るものならばどれだけの異常事態か分かってもらえるに違いない。  おぼろげだった火の鳥がより明確に姿をかたどっていく。  生徒たちのざわめきが大きくなる。  メメルの腕にいたのはフェニックス――ではなく、燃えさかる鶏だった。そう燃えるチキンだ。 「コッコたん整列☆」  いつの間に現れたのだろう。メメルに従うようにずらりと並ぶ鶏が並ぶ様は圧巻だった。さながら軍隊のような規律正しさで並ぶ鶏。なんだか鶏がゲシュタルト崩壊を起こしている。  この鶏、目つきが悪い。まるでマフィアの眼光だ。一般人がいればひと睨みで逃げ出してしまいそうだ。  コッコッコッコ……、と鳴いているが、鶏の鳴き声と言うよりも猟犬の唸り声のようだった。  え、あれが伝説のフェニックスなの!?  勇者を助けたという伝説の不死鳥が鶏……。  心なしか会場のテンションが下がった。  その反応を見て燃えさかる鶏が憤慨するように炎をまき散らす。 「チミたち素直でよろしい! コッコたんはな、フェニックスの一種なんだぞ。キング・オブ・チキン! 弱肉強食を乗り越えたニワトリの中のニワトリ! そう、君の名はフィニクスコッコなのだ☆」  とはいっても、伝説のフェニックスとは別物だがな、とのメメルの言葉に生徒たちは胸を撫でおろす。  夢が壊されなくてよかった。  不機嫌そうなフィニクスコッコは鶏と思えぬ尊大な態度で睥睨した。 「どーどーコッコたん。チミの素晴らしさはこれから見せつけてやればいいのだ」  メメルが勢いよく燃える鶏を宥めると、 「行け、コッコたん1号! 発進だ☆」  その号令に勇ましくコケッコッコー! と鳴いたかと思うと、鶏は燃える羽を威嚇するように広げ空へ羽ばたいた。  え。鶏って空を飛ぶっけ?  そんな疑問が頭によぎりながらも呆気にとられたように空を見上げる。  そして、鶏は空のお星さまとなった――自爆したのだ。  美しい花火だ。これが鶏の生命の輝きだと知らなければ文句なく美しい。  赤や黄や緑の色とりどりの光をぶちまけて消えた後、しんと空が静まりかえった。ついでに地上も静まりかえった。 「なんだなんだ揃いも揃ってお通夜みたいな顔をしおって。安心せい、コッコたんは空からチミたちを見守っておるぞ」  鬼かよ、メメたん! 「ふーむ、チミたちは素直な花丸良い子だな! 安心ちたまえ! 種明かしするとだな、コッコたんは明日の朝になれば蘇っとる。コッコたんにとって爆発は新陳代謝みたいなもんだからな」  メメルの言葉を聞いてホッとした空気が流れる。そもそもの元凶は目の前にいる学園長なのだが。 「話は終わりじゃい。さあて酒飲むぞ! テスたん返しとくり」  メメルはステージから立ち去ろうとして、不意に何かを思い出したように振り返った。 「おっと言い忘れとったな。逃亡したコッコたんがあっちこっちで爆発するかもしれんが、メンゴ☆」  チミたちなら大丈夫だ、と取って付けた言葉を吐き、メメルは誤魔化すようにウィンクを決めた。  ドカンッ! という大音響とともに丸く大きな花火が夜空に開いた。  次々と絶えることなく鶏が空を飛び、花火となって消えていく。  つまり花火があがる度に燃えさかる鶏が自爆しているということを意味している。  夜空に咲く刹那の大輪の花。それとは裏腹に地上はいろんな意味でざわめいていた。
夏の夜空に悲鳴を響かせ 海太郎 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-07-26

予約期間 開始 2020-07-27 00:00
締切 2020-07-28 23:59

出発日 2020-08-02

完成予定 2020-08-12

参加人数 3 / 8
●夏といえば 肝試し 「お前らが大好きな夏が来たぞ」  開口一番、学園教師の【ジョー・ウォーカー】は楽しげに言い放った。 「夏といえば何だ?」 「海?」 「花火?」 「長期休暇!」  口々に答える生徒に、ジョーは穏やかに首を振る。 「夏といえば、肝試しだ」  ニヤニヤと楽しげなジョーを前に、生徒たちは顔を見合わせる。 「今年はヴェリエーダ街の夏祭りに協力することになってな。他の先公どもにもいろいろとヴェリエーダの夏祭りに協力してるやつもいるんだが、このジョー・ウォーカーの担当はお化け屋敷ってわけだ。それでお前たちの手を借りたい」  この教師の『手を借りたい』が意味するところは『実働はお前らだぞ』だと理解している生徒たちは、あぁまたか。と察しの良い顔をした。 「一等怖い仕掛けや演出を思いついたやつが優勝だ。夏休みどうせ暇してるんなら、ひと夏の思い出作りでも兼ねて俺に手を貸してくれよ」  生徒の一人が手を上げた。 「それってチームでもいいんですか?」 「もちろん」 「なにか条件はありますか?」 「良い質問だ。ヴェリエーダに伝わる悲恋『湖の君』をモチーフにする必要がある」 「どんな話ですか」 「ドラゴニアに恋したローレライの悲恋話だ」  『湖の君』の筋書きはこうだ。  昔々、ヴェリエーダの街で暮らしていた、メリエルという名の美しいローレライが居た。  彼女は知恵も深く魔力も強かった。そして惜しみなく街の発展に深く寄与した。  今も街に残る文化の多くは、彼女が伝え教えたものとされている。  だがある日、彼女は街へやってきた旅人のドラゴニアに恋をした。  長命であるメリエルにとって、ドラゴニアとの確執はそう古い記憶ではなかった。  その葛藤を、恋心が上回ってしまった。 「ドラゴニアの旅人が何者だったか。メリエルをどう思っていたのかはわからない。だが、ドラゴニアに焦がれたメリエルがとうとう、その腕の中で蒸発しちまうのを村人が見た」  ここまでは悲劇だ。  だがそれからが怪談だった。  それからヴェリエーダの街には、雨が降るたび、メリエルの亡霊が出没するようになったという。  誰かを探すようにウロウロとあたりをさまよい、時には人を連れ去ってしまうこともあるとの噂も流れた。  これはいけないと、メリエルが暮らしていた湖のそばに祠を建て、年に一度鎮魂の祭りを開き始めたのが、そもそものこの夏祭りの起源だという。 「皮肉にも、その祭りのやり方も、教えたのはメリエルだって話なんだけどな。とにかく、今度やるお化け屋敷も、その物語をある程度踏襲しなきゃならん。要するにお題付きってわけだ」 「優勝したらなにかいいことあります?」 「俺の担当してる試験を今期分免除してやる」 「それだけですか?」 「それだけ、って何だよ。十分嬉しいだろうが」 「先生がこんなにやる気ってことは、ヴェリエーダ街からなにかもっといい景品がかけられてるんじゃないんですか?」  どこか非難するような口ぶりの生徒たちに、ジョーはチッと舌打ちした。 「お前らもそろそろわかってきてるな」 「何が景品なんです?」 「賞金あるなら山分けですよ」  矢継ぎ早に言う生徒たちに、ジョーは待て待てと手を広げてみせた。 「お子ちゃまのお前らに言っても仕方ねえんだが……1967年に作られた蒸留酒『エーダ・ガッティ』が上がってる。知ってるやつもいるかも知れねえが、ヴェリエーダは酒の名所でな。いろんな催し物の中で一番集客につながった出店のオーナーに贈呈されることになってる。……まぁそういうことだがお前らにはまだ早いから」 「先生、学生にも成人済みの人はいます。黙っているのはアンフェアだと思います」 「先生、勇者歴1960年ものの『エーダ・ガッティ』ならどの年代のものでも時価総額はかなりのものだと思います。飲めなくても転売できます」 「先生」 「先生」  やんややんやと口にする生徒たちを、ジョーはちっと睨みつけた。 「わかったわかった。いいか。他の出店を差し置いてお化け屋敷に人を誘導することが必須条件だ。お化け屋敷の演出に関して優れたアイディアを出したやつは今期の俺が受け持つ試験を免除してやる」  生徒たちは同意するように頷いた。  ジョーはぐっと腕組みをする。 「いいか。今年のヴェリエーダの夏祭りを絶叫で染め上げるんだぞ」 「おー!」  かくして、最恐のお化け屋敷計画の火蓋は切って落とされたのである。
【体験】夏の夜の肝試し☆驚くのはキミだ! あまのいろは GM

ジャンル イベント

タイプ マルチ

難易度 とても簡単

報酬 通常

公開日 2020-08-07

予約期間 開始 2020-08-08 00:00
締切 2020-08-09 23:59

出発日 2020-08-18

完成予定 2020-09-15

参加人数 7 / 16
●  夏と言えば。  新しい水着でプールに行ったり。海でスイカを割ったり、花火をしたり。浴衣で夏祭り、なんてのもいいかもしれない。  現にこの魔法学園フトゥールム・スクエアでも、水着のイベントで盛り上がったりしているわけで。 「今年の夏も盛り上がっていてよいことだな!」  そう楽しそうに言いながら。魔法で作った雲の椅子に乗って現れた【メメ・メメル】は、その背もたれに跨るように座り直すと、その場でくるくると回り始めた。 「でも、まだなーんか足りない気がするんだよな~……」  くるくるしている今の姿からは威厳だとか貫録が見てとれなくとも、メメルはこの魔法学園を纏める偉大な学園長様。  だから、そんな彼女の言葉は、ただの思い付きだったとしても、強大な発言力と実行力を持つのです。  そして学園長の言葉に振り回されることになるのは、この学園の教師と――――。 「……あ! オバケ! 夏なのにオバケが足りないな! よーしチミたち! 肝試しやるぞ☆」  ――――キミたち生徒なのです。 ●  夏のとある日、校庭のど真ん中に、朽ちた洋館が現れた。  まだこの学園に来て日の浅い生徒たちからすると、ちょっぴりホラーである。  ちょっとばかり学園に慣れてきた生徒たちからすると、日常茶飯事である。  ――こういうのはだいたい学園長の思い付きだよ。そんな言葉が囁かれ始めたころ。  ざざっと短いノイズが走ったあと、賑やかな校内放送が流れ出した。 「チミたちにもーっと夏を楽しんで欲しいオレサマからプレゼント☆ メメたん特製☆ゴーストハウスへご招待!」  校庭にいた生徒たちの視線が、朽ちた洋館に注がれる。うん、間違いなくこれだ。 「さてさて、一体全体どんなイベントなのか、気になっちゃってるよな~? オレサマ直々に説明してあげよう! しっかり聞くんだぞ☆」  マイクの向こうでふふんと踏ん反り返っているメメたんの姿が目に浮かぶ。どうしようもないことじゃないといいなあ。  メメルの言葉によれば、校庭に現れたゴーストハウスは彼女の魔法で作り出したものらしい。  一歩踏み込めばあら不思議。外見からは想像できないほど広大な墓地が広がっている。  洋風の墓石があると思いきや、その横には卒塔婆が立っていたりするという不思議空間だ。  思い付きでこんなものを造れるのだから、彼女の力は計り知れない、ということだろう。  もっと他のことに使わなかったの? とか思ってはいけない。考えてもいけない。大丈夫、そのうちこの光景をさらっと受け入れられるようになるよ。慣れって怖いね。  そしてゴーストハウスのなかでは、メメたんが造り出したゴーストや、ゴースト役を頼まれた教職員の皆さんが、既に生徒の訪れを待っているらしい。 「ただの肝試しだけじゃツマラナイと思ってな、ポイント奪取制のドキドキ仕様にしておいた!」  ――――なんて?  何を思ったか、どうやらゴーストたちが額に付けている白い布を奪うという、アクションとしてのドキドキ要素もプラスしちゃたらしい。  肝試しってひんやりするためにするんじゃなかったっけ。そのドキドキ、ちょっと違う気がするんだけどなあ。 「それじゃあ、れっつ☆肝試し! 素敵な夜を過ごしてくれたまえ☆」  その言葉とともに、どこからか小さな花火が打ち上がってぽんぽんと鳴って、校内放送はぷつりと切れた。ああ、今日は長い夜になりそうだ。
行方不明の旅人を見つけ出せ! はまなたくみ GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-08-01

予約期間 開始 2020-08-02 00:00
締切 2020-08-03 23:59

出発日 2020-08-09

完成予定 2020-08-19

参加人数 7 / 8
●  川のほとりに栄える町、シュターニャ。西大陸に向かう旅人たちは、この町で傭兵なり観光案内人を雇うのが一般的だ。  その観光組合『アイネ・フォーリチェ』での出来事。 「もうちょっと安くならないか?」  旅人の言葉に、組合の代表者【マチルダ・アベーユ】は顔をしかめた。  無理な要求をしてくる客は多い。特に多いのが値段交渉だ。当然旅人の側にも事情があるのだろうが、安全な旅を保証するにはどうしてもある程度の費用がかかってしまう。 「お客様、このお値段より安くはなりません」  ゆえにマチルダは旅人を説得にかかる。旅人の安全のためにも、譲るわけにはいかない一線がある。 「信頼のおける案内人と傭兵をつけると、このお値段になってしまいます。お客様の安全のためにも……」 「じゃあいい! もうあんたには頼まない!」  旅人はみなまで聞かず、怒鳴るとくるりと向きを変えて出て行ってしまった。それを見送ったマチルダは、ふうと一つため息をつく。 「大変だな、案内業というのも」  入れ替わりにすらりとした体型の女性が入ってきて、マチルダに声をかけた。傭兵組合の長、【ニキータ・キャンベル】だ。 「見ていたの?」 「いや、外まで声が聞こえていただけだ。それと出ていくときの不機嫌な態度で大方の事情はわかるというものだよ」 「まあ、よくあることよ。気にしないわ」  マチルダは手際よくお茶の用意をする。ニキータと自らの前に新たなお茶を出し、一口すすってから遠い目をした。 「……あの人、無茶しないといいけれど」  その後、風のうわさで旅人が独自に傭兵を雇い、西へ向かったという話をマチルダは耳にした。  そして、彼は戻ってこなかった。 ●  一週間後。  学園を訪れたマチルダとニキータは、学園生たちに依頼を出した。 「人を探してほしいの」  簡潔に言い切ると、マチルダは生徒たちを見回す。ひと呼吸置いて詳しい話を始める。 「一週間ほど前に、うちに来た旅人さんが行方不明になったの。皆にはその旅人さんを探してほしいのよ」  観光組合がそこまでする必要があるのだろうか? そんな一部の生徒の疑問を読み取ってか、マチルダが言葉をつなぐ。 「本来、うちを通さずに旅に出た人を探す義務なんてないのだけれど……なんとなく、寝覚めが悪いじゃない?」 「マチルダの話からすると、旅人は西へと向かったようだ」  ニキータが話をひきとり、シュターニャ地方の地図を取り出して説明を始める。 「彼らが向かった道中には、リザードマンの縄張りがある」  そう言ってニキータは地図の一点を指さす。道中には小高い丘がある。この近くにリザードマンの縄張りがあるのだろう。 「彼らはリザードマンの一団に襲われた可能性がある。十分に注意して捜索を行ってほしい」
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