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言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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犬は荒れ野で狩りをする K GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-05-28

予約期間 開始 2020-05-29 00:00
締切 2020-05-30 23:59

出発日 2020-06-06

完成予定 2020-06-16

参加人数 8 / 8
●兆候。  五月のある朝。学園にグラヌーゼに異変が起きたという一報が入ってきた。 「一晩のうちにグラヌーゼの居住地帯から、野良犬と一部の飼い犬が忽然と消えてしまったとか。加えて残りの飼い犬も様子がおかしくなっているそうで」 「どのようにじゃな」 「飼い主にも手がつけられないほど凶暴化しているんです。人が噛まれる事故が続出しているらしくて」 「ふむう、面妖な話じゃの。何か心当たりになるようなことは?」 「住民にも分からないそうです。ただ、先程言った野良犬と一部の飼い犬が、大群を作って北部方面に走って行くのを見たという情報が入ってきております」 「分かった。早急に勇者候補生を向かわせよう。グラヌーゼといえば、もとより魔の気配の濃い土地柄であるからの。あやしげなものが蠢き出しておらんとも限らんて」  かくして学園の生徒達は、グラヌーゼ南部の村々へ向かった。  実地に調査してみて分かったのだが、犬たちは聞きしに勝る荒れようであった。唇をめくれ上がらせ歯を剥き出し、敵意しかないような形相。人が近づこうとすると吠えまくり、食いついてくる。  仕方がないので飼い主は、犬を繋いだまま、もしくは檻に閉じ込めたままにしている。散歩はもちろん無理。エサや水も離れたところから棒で押しやってやらねばならない。  皆いきなり飼い犬が攻撃してきたことに戸惑い、やるせない気持ちでいる模様。犬をかわいがっていた者ほどその傾向が強い。特に子供は随分傷ついている。檻に閉じ込められている飼い犬を前に、泣いている幼い女の子を見た。 「スポット、あたちよ、どちておこってるの、きのうまで、いっちょにあそんでたでちょう」  このままでは人のためにも犬のためにもならない。そう思った生徒達は、いち早い解決を心に誓った。  ひとまずは――グラヌーゼ北部に向かう。犬の群れが移動した先に、原因を解明するカギがあると思ったから。 ●逃げる者、追う者。  グラヌーゼ北部。  乾風吹き荒れる不毛の地。生えているのは悪環境に耐え得るしぶとさを持った雑草だけ。その雑草さえも地をすべて多い尽くすとはいかず、至るところで荒れた地表が剥き出しになっている。  まさに地の果てといった情景。当然だが、こんな場所に住む人間はほとんどいない。  荒れ野。丘と丘に挟まれたとある窪みに、丸太小屋が建っている。短い夏の時期、羊へ草を食ませにこの地を訪れる羊飼いが使う、夜番のための小屋だ。  まだ羊を連れてくる季節ではないため、窓も扉も閉じられている。外から明かりは入ってこない。  木目の浮き出した床を野ネズミたちが動き回っている。床下に巣があるのだ。人間がいない時期、小屋は彼らのものである。  その野ネズミたちの動きが急に止まった。あやしむように耳を立て髭を震わせ、目にも留まらぬ早さで床穴へ飛び込んで行く。  数秒遅れて一人の人間が、閉じた扉を擦り抜け入ってきた。体が若干透けている――リバイバルの女だ。  至る所焼け焦げ擦り切れたローブに身を包んでいる。体の線を見る限り、随分痩せている。  ローブについた帽子を頭からすっぽり被っているので、顔がよく分からない。あせた金色の髪が肩口にこぼれている。  彼女は小屋に入るや力を使い果たしたように膝をついた。喉を吐き出しそうなほど激しい咳を繰り返した。  数分ほどして咳が落ち着いた後、両手を落ちつかなげに握り合わせ、周辺の気配をうかがう。何かに脅えている様子だ。  無数の犬の遠吠えが切れ切れに聞こえ始める。  遠吠えはどんどん近づいてきた。そして、殺気走った唸り声に変わった。  小屋の外から次々に、体当たりがかけられる。壁板が所かまわず引っ掻かれる。しかし小屋はそれなりに頑丈に作られている。その程度の攻撃で、破壊出来るものではない。  そこに一匹の筋骨隆々としたマスチフが現れた。破格に大きい。体高が2メートルはあるのではないだろうか。体色はつややかな黒。瞳は黄色。  他の犬たちがすみやかに、マスチフのため道を開ける。  マスチフは小屋に歩み寄る。口から猛烈な炎を吐く。  丸太小屋が一瞬で炎に包まれた。女が悲鳴を上げて飛び出してきた。  その姿を見たマスチフは口元に嘲りを浮かべる。女の前に立ちはだかり、人間のように喋る。 「さあ、教えろ。俺の呪いを解く鍵を。早く。お前は知っているだろう」  女は上ずった声をあげ、首を振った。 「知らない、分からない――覚えてないのよ、本当に! 本当なのよ!」  マスチフの目がぐわっと見開かれた。その口から炎と共に怒声が飛び出す。 「ならここでもう一度死ね、消え損ないのカス女!」  犬の群れがいっせいに女目がけて殺到する。  無数の牙がリバイバルの、魔力で再構築された体を噛む。歯形を付け、血を流させる。 ●救出。  グラヌーゼにしては、珍しく晴れ渡った月夜。  灰色の丘の彼方から風に乗って、たくさんの犬の鳴き声が聞こえてくる。切れ切れに。 「聞こえたか」 「ああ、聞こえた。向こうだ」  生徒達は音がする方へと足を進めた。紙みたいに乾いた草を踏み締め、針金のように痩せた木立を迂回して。  そして、とうとう犬の群れを見つける。  全部でざっと……100匹程度いるだろうか。燃え盛る小屋の傍らで、一人の女に襲いかかっている。
大図書館の休日~地獄の蔵書点検 桂木京介 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-05-24

予約期間 開始 2020-05-25 00:00
締切 2020-05-26 23:59

出発日 2020-05-31

完成予定 2020-06-10

参加人数 8 / 8
「あー、諸君、図書館は人類の英知の結晶と言われておる。英知な、エッチの結晶ではないぞ☆」 「学園長、駄洒落は求めていません」  ブ~、と【メメ・メメル】はたちまち渋い顔をした。 「エミたん、あのな、そういうときはだな、たとえ面白くなくても『ちゃうやろー!』とかツッコんでおくのが礼儀だぞ」 「そうですか」 「『赤ちゃんのことですか?』とか高度なツッコミを入れるのもアリ☆」 「意味がわかりません」  いつも通りのメメル学園長に決して乗らないこの女性は、エルフタイプのエリアルで、名を【エミ・バナーマン】という。  おそらくこの世界最高峰ともいえるエッ、もとい、英知の結晶、それがこの場所、フトゥールム・スクエアが誇る大図書館『ワイズ・クレバー』である。君たちはそのエントランスホールに集まっている。  図書館はあまりに大きく、その書庫ともなれば並大抵のダンジョン以上の広大さだ。噂では内部には川が流れ谷があり、行方不明になった学生たちが、共同生活している集落まであるといわれている。  当然これほどの規模の図書館だから司書は何人もいる。そのひとりがエミなのだ。  エミの特徴はそのメガネにあるだろう。フレームが大きく、蝶みたいにつり上がった独特の形状をしている。暗い桃色の髪で、前髪の一部を縛ってヘアバンドで巻いていた。一部では『バタフライメガネ』とあだ名されているらしい。 「えー、エミたんが冷たいのでそろそろ本題に入るが、実は今日、わざわざ図書館の閉館日にみなに集まってもらったのはだナ、今日が年に何度かある蔵書点検の日だからなのだよ。ストレートに言うと点検の手伝いをしてくれという話だ」  君たちは『臨時休館日』という札のさがっている図書館に呼び出されたのである。エミとメメルは司書カウンターの向こう側にいる。 「といっても、毎回全部の書籍を点検しているわけではありません。今回は、都市近郊に出没する初級モンスター関連の書籍です」  エミは君たちにリストを配った。 「ここに掲載されている書籍をチェックしていって下さい」  リストの紙束は、えっ! というくらい分厚い。点検対象は図書館の本すべてではなく、モンスター関連の蔵書だけ、しかも都市近郊かつ初級に限られている。それなのにこれだけの人数が必要なのだ。 「見つかったものにはリスト横の四角覧にチェック(『〆』みたいな印)を、ないものにはバツ(『×』)をつけます。簡単ですね」  なるほど、と君たちはうなずいた。アルバイトとしては楽なほうかもしれない。 「バツ印が13個たまるたびに、その本に関連したモンスターが襲ってきます」  なるほど、と君たちはうなず……くはずがない! 「安心してください。本物ではなく、長年図書館に蓄積した紙の精がイタズラをしているだけです。強さは本物と同程度ですが倒せば消えます」  安心できるかー! と声が上がったがエミは無視している。 「中級や上級じゃなかっただけ良いではありませんか」  良くないし! 「大丈夫です。死んだ人はいません。私がここに就職してからは」  最後のそれ付け加える必要ある!?  「本来図書館では大声での会話、食事、戦闘は御法度です。しかし点検日はそれが許されるのです。大いにどうぞ。ただし、他の書籍を傷つけたり書架を倒したり本を燃やしたりはしないでくださいね。それではよろしくお願いします」  それだけ言うとエミは歩き出したのである。 「ついてきて下さい。書庫の該当部に案内しますので」  エミと、問答無用気味に連れて行かれる生徒たちの背を見送ってメメルはしみじみとつぶやいた。 「毎度思うが……あの子には勝てんなあ……」
絶対にスベってはいけない魔法学園24時 じょーしゃ GM

ジャンル コメディ

タイプ マルチ

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-05-19

予約期間 開始 2020-05-20 00:00
締切 2020-05-21 23:59

出発日 2020-05-30

完成予定 2020-06-09

参加人数 16 / 16
 勇者暦2020年6月某日、早朝。  日が昇りはじめて間もない、薄暗い空の中。  学園正門に集められた『不幸な』生徒が5人いた。 「妾はまだ眠いのじゃ……」 「そうなの……キキおなかすいたの……」  【フィリン・アクアバイア】と【キキ・モンロ】がまだ眠気まなこを擦りながら。 「リーエルは楽しければなんでもいいよーっ!」 「つよいまものかな! なんでもこーい!」  【リーエル・アムフィリム】と【ルシファー・キンメリー】は、いつだってマイペース。 「ね、ねえみんな、なんでそんなにいつも通りでいれるの?」  そんな中【パルシェ・ドルティーナ】一人だけが、何らかの違和感を察知していたようで。  そしてその違和感にも似た緊張感をぶち壊すように。  5人の目の前に一筋の光魔法が、天から地面へと降り注いできて。  神が地に降り立つような音が、どこからともなく聞こえてくる。 「な、なにこれ! な、なにがおこるの〜っ!?」  パルシェが見上げた空の先に、人影。  その『何者か』は、徐々にその高度を下げ、近づいてくる。 (聞こえますか……魔法学園の誇り高きゆうしゃたちよ……)  頭の中にエコーする声。 「誰じゃ、妾の脳内に直接語りかけてくるのは」  何者かから発せられる『声』は、少しずつ反響を増して。  皆の思考を釘付けにする。 (本日はあなたたちに試練を与えにきました……)  その言葉と同時に、その影が地へと降り立ち。 「しれん! つよいまもの? それともぼーけん!?」  ルシファーがその影に尋ねた瞬間。  あたりが、閃光に包まれる。 「なにもみえないのーっ!」 「うわーっ! み、みんなだいじょうぶー!?」  キキとリーエルがパニックを起こす中。  フィリンだけは冷静だった。 「おぬし、メメル学園長じゃな?」  てん、てん、てん、と。  すっとんきょうな間が空いて。 (ち、ちがうのだ! メメたんじゃないのだ!) 「そのエコーをやめるのじゃ……さっきから頭が痛い……」  頭を押さえながら、しっしっ、と手を払うフィリン。  先ほどまで派手に輝いていた光の海は、嘘のように消えて無くなる。 「もー、フィリンたんどーしてわかったのだ?」  いつもの、聞き慣れた声。  ぶー! と不満そうな顔をしている学園長に、フィリンが答える。 「あれだけの見事な光魔法をつかうのじゃから……声ぐらい変えられるじゃろうに……」  あーっ! とメメルが納得し。 「だまされたーっ!」 「リーエル分からなかった!」 「おなかすいたの……」  と、マイペース代表の三人が答える。 「そ、それで……学園長先生の言う『試練』って、何なんですか……?」 「そうだったそうだった☆」  てへ、と可愛く舌を出すメメル学園長(年齢不詳)。 「今回の試練は、メメたんからのスーパーなプレゼントだぞ☆」  題して……とすこしだけ溜めてから。 「絶対に笑ってはいけない魔法学園24時なのだ!」  ——あぁ、いつものメメたんだ。  この場にいた全員がきっとそう思ったことだろう。 「妾は帰る……昨晩は徹夜で本を読んでいた故にまだ眠くての……」 「わ、私も今日は友達と遅ぶって決めてたから〜」  フィリンとリーエルが校門をくぐろうとした、その時。 「すとーーーーーっぷ!!!!」  メメルが、叫ぶ。  駆け出したリーエルの足元には、白線が一本あって。 「その線を超えたら自動的に魔法がかかってゲームスタートだぞ☆」  フィリンから、大きなため息。  呆れた顔でメメルを見る彼女を代弁するように、ルシファーが尋ねる。 「これって、もうアタシたちはにげられないってことだよね?」  メメルの目がキラーンと光って。 「そのとーり! 24時間笑わずに学園生活を過ごすことができたら、魔法は解除されるのだー!」 「魔法……って、なんですか?」 「よくぞ聞いてくれたパルシェたん! この魔法というのはだな!」  そう、これが最大にして、唯一のルール。 「ルールを破って笑ってしまったら、きつーいお仕置きが待ってるぞ☆」  ええええええええええええぇぇぇぇ!?  と、学園生の声がこだまする中。 「チミたちのかわいーい後輩が、全力を出して笑わせてくれるだろうからな! 楽しみにしてるぞ☆」  メメルの気まぐれにより、5人にとって最悪の一日が、始まろうとしていた。
【新歓】きみと僕らの即興曲 白兎 GM

ジャンル イベント

タイプ マルチ

難易度 とても簡単

報酬 多い

公開日 2020-05-19

予約期間 開始 2020-05-20 00:00
締切 2020-05-21 23:59

出発日 2020-05-27

完成予定 2020-06-06

参加人数 16 / 16
●こんなハレの日、だからこそ  ひらひらと。快晴の空を、桜の花びらが舞い遊ぶ今日。  メメル校長の一声で唐突に始まり、賑やかに続いた『Magic of Delight』――マジック・オブ・ディライトも、終わりへと向かっていた。  三日目ともなれば来場客は減り、学園関係者(在校生や新入生、職員など)が主な参加者となる。  とはいえ、入学に年齢制限もなければ、卒業も本人の希望により延期されるフトゥールム・スクエアでは、そもそも在校生の人数が桁外れなのだ。  ゆえに、最終日であっても新入生歓迎会の熱気は健在で、むしろ『明日からは通常授業だし』、『ハメを外すなら今!』なんて強い意志(しかもこれが生徒に限らず、教職員達も混ざっているのだから、この学園らしいともいえるのかもしれない)が爆発しているこの日、予想外の出来事(事件ともいう)が至る所で頻発するのは、仕方のない事だった。  そして、そんな事件に『きみ』が巻き込まれるのもまた、当然のことであろう。 ●始まりの鐘は、突然に  事件は、唐突に起こった。  ガシャーンッ! キャーッ! 人が倒れたぞ! 誰でも良いから、先生呼んできてっ!  そんな騒々しさが耳に届き、『きみ』は急いで足を向ける。  すると、そこには死屍累々といった表現が似つかわしい光景が広がっていた。  どうしたんですか、と思わず尋ねた『きみ』に、彼等は答える。 「スペル湖で開かれている、『激辛カレー大食い大会』には、気を付けろ……」  ガクッ。残された遺言に、間違いなくそれが、この状況の理由だろうと気付いた『きみ』は、安堵の溜息をひとつ。  蹲っている面々は痛みに苦しんでいる様子ではあるのだが、原因がただの刺激物の食べ過ぎであるのなら、いずれ時間が解決してくれるだろう。  ならば、誰か先生がやってくれば大丈夫だな。……と思っていた『きみ』の思考は、すぐに引っ繰り返されることとなる。 「おや、あなた達は。もしや『即興劇』を申し込まれていた、有志のかたがたでは?」  騒ぎを聞きつけてやってきた【シトリ・イエライ】(賢者・導師コースを担当する教員の一人である)が尋ねると、弱々しいながらも『そうです……』なんていう言葉が聞こえてくる。  それを確かに聞き届けたシトリは、『公演前に激辛カレーは駄目でしょう』、『舞台はどうするのですか』、と質問を続けながら、介抱にあたっている。  そんな様子を見ていた『きみ』へ、蹲っていたひとりが手を伸ばした。 「たのむ……舞台を……成功させてくれ……!」  えっ。突然の申し出に驚きを隠せない『きみ』に、倒れていた面々の視線が集う。 「たのむ……! 俺達の代わりに……! この日の為に、たくさんの衣装を、芸能・芸術コースの奴らが作ってくれたんだ……!」  『いや、ならば尚更、ご自分のコンディションには気を付けなければ』と教育的指導をしているシトリの言葉は最もなのだが、『きみ』は引っかかることがあって、質問を返した。  もし、このまま中止になったら、どうなる? 「衣装代とかは、全部俺達でなんとかするから、大丈夫。ただ、手伝ってくれた奴らは、たぶん……悲しむ」  ――悲しむ。それはこんなにも賑やかな晴れの日に、とても似つかわしくない言葉だ。 「元々台本のない、即興劇の予定なんだ。だから、何をしてくれても良い。いやもういっそ、劇じゃなくたっていい!」  俺達の代わりに、用意された衣装を使って、好きにやってくれ!  真っ直ぐな瞳で懇願されて、『きみ』は思う。自分に何かできることはあるだろうか、と。  即興劇という題目を見て客席が埋まるのなら、やはり劇に即したものがお客さん的には違和感はないのだろうが。 「いっそアイドルライブなんていうのも楽しそうですよね。ようは、用意された衣装をお披露目できれば良いのですから」  『きみ』の考えに気付いたのだろう、シトリが微笑んだ。  人差し指を唇にあて、どこか悪戯にウインクした男性教諭は、 「あなたが挑まれるのでしたら、私も出来る範囲で応援しますよ。派手な演出の魔法とか、舞台映えするでしょう?」  なんて言いながらも、どこか楽しそうなのは、意外にそういったものが好きなのかもしれない。  さて、ならば、――『きみ』はどうするのだろう。  時刻は刻々と迫っている。まずは用意された舞台に向かい、並べられた衣装から、自分に何ができるかを考えなければならない。  そして、必要であれば、友人・知人に声をかけ、『きみ』の思い描いた舞台の構想を話す必要もあるだろう。  繰り返す。時刻は刻々と迫っている。  ゆえに台本もなければ、練習時間だってない。ないない尽くしのこの状況で。  この空白ばかりのステージを、『きみ』はどんな色に染め上げるのだろうか。
助っ人募集! グリフォンコンテスト! はまなたくみ GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

公開日 2020-05-03

予約期間 開始 2020-05-04 00:00
締切 2020-05-05 23:59

出発日 2020-05-12

完成予定 2020-05-22

参加人数 5 / 8
「クゥー!」  フトゥールム・スクエア第四校舎のわきには、厩舎が建っている。ここでは主にグリフォンが飼育され、部活の生徒たちがグリフォンの世話をしていた。  その厩舎の一角で、グリフォンの元気な鳴き声が、厩舎の中に響く。 「よしよし。いっぱい食べろよ」  ルネサンスの少女、【リサ・ストーンズ】が餌皿に飼料を入れる。真っ先に駆け寄ってきたのは体の白いグリフォンだ。彼がおいしそうに食べだしたのを見て、他の2頭も寄ってくる。 「クゥー!」  最初に食べていたグリフォン……【シロ】がほかの2頭を威嚇する。手足だけが白いので【クツシタ】と呼ばれている体の小さいグリフォンはパッと飛びすさった。だが、餌皿に体が当たってしまい餌がこぼれる。 「クゥー」  それを見逃さず、【ブチコ】と呼ばれているぶち模様のグリフォンがこぼれた餌をおいしそうに食べ始めた。 「こらこら、いっぱいあるんだからケンカせず仲良く食べろよ」  リサが苦笑いしながら別の餌皿を差し出す。グリフォンたちが美味しそうに食べだしたのを確認して、目を細める。 「しっかし、困ったことになったなあ……」  リサは頭をかきながらぼやいた。視線の先には2名の男女。男のほうは右足を、女のほうは左足をギプスで固め、包帯でぐるぐる巻きにしていた。 「まさか二人とも転んで足を折っちゃうとはね……」  ヒューマンの少女、【コーナ・トーデン】はため息をついた。髪の短い、いかにも活発そうな少女だ。 「どうしよう……俺たち、このままじゃ今年のグリフォンコンテストに参加できないぞ」  同じくヒューマンの少年、【オース・ケイン】も肩を落とす。こちらは眼鏡をかけ、温和な表情の少年だ。以上の3名が、『グリフォン愛好会』のメンバーだった。 「そうだよなあ……オレだけじゃあ、コンテストには参加できないしな……」  そこまで言ったところで、リサは名案を思いついたかのようにポンと手をたたいた。 「そうだ、あいつらに頼んでみるとするか!」 「あいつら?」  オースとコーナはそろって首を傾げた。 「グリフォンコンテスト?」  次の日の放課後。教室に集められた生徒たちは、リサが発した単語に首を傾げた。 「そうそう。みんなで育てたグリフォンを自慢するお祭りなんだぜ!」  リサが大雑把にまとめる。 「いや、それじゃ何もわからないだろ」  オースがツッコミを入れ、説明を引き取った。 「グリフォンコンテストは2つの部門があるんだ。まずはグリフォンと一緒に歩いて、美しさやどれだけ人になついてるかを競う。今年は俺がグリフォンと一緒に歩くつもりだったんだけど、この足じゃ無理だから……みんなに頼みたいんだ。動物が好きだって気持ちがあれば、きっとグリフォンも応えてくれると思うんだ」 「その後、みんなでグリフォンに乗って速さを競うの」  続いてコーナが話し出す。 「うちのグリフォンは人懐っこいから、初めて会う人でもちゃんと頑張って飛んでくれると思うんだ。私もグリフォンと一緒に飛びたかったんだけど、しょうがないよね……」  生徒の一人が質問する。その2つの部門とも、リサが出るわけにはいかないのか? 「このコンテストはグリフォンを連れて歩く人とレースに参加する人は別々の人でないといけない、って決まりがあるんだ」  オースがその疑問に対して答えた。  「だからみんなに手伝ってもらおうってワケさ。なあ、手伝ってくれないか?」  リサは両手を合わせて頭を下げた。コーナとオースも頭を下げる。さて、それにたいして生徒たちは……。
霎雨(しょうう) 桂木京介 GM

ジャンル ハートフル

タイプ EX

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-05-19

予約期間 開始 2020-05-20 00:00
締切 2020-05-21 23:59

出発日 2020-05-26

完成予定 2020-06-05

参加人数 8 / 8
 霎の字はこの一文字で『小雨』『通り雨』を意味し、転じて、『ごく短い時間』『またたくま』を指すこともある。  小雨の意味に限定するなら、『霎雨(しょうう)』とあらわすこともできる。  外はまさしく霎雨だった。  さっと降って、もうやみつつある。  けれど空は薄曇りのままだ。  もう一度、降るのだろうか。晴れ間は見えるのだろうか。 「そうか」  腰に回した両手を結んで、【メメ・メメル】は窓の外を見つめている。 「生後まもなくか……あまり聞かない話だが、古来、例がないわけではない」 「ええ、以来、ほとんど外の世界に出されることなく育てられました」  メメルは窓に背を向けると、【メアリ・レイン】をもう一度見た。  白に近いプラチナの髪、整った――いささか整いすぎた容姿、頭上には金の輪。そして、背の翼。  精霊から祝福と呪いの両方を与えられた存在、アークライトであることは明白だ。  メアリは微笑を浮かべている。その笑みはあまりに無垢で、人を疑うことを知らないかのようだ。育ちがよかったのだろうと想像がつく。  けれど、現在メメルが学園長室に飾っているハエトリグサの鉢植えの横に立っていると、ひどく不釣り合いに見えた。  その鉢植えが小玉スイカほどの大きさで、両手の指全部を合わせたよりたくさんあるだけに、なおさら。 「相次いで両親が亡くなったことをきっかけに私は家を出ることにしました。そして、憧れていたフトゥールム・スクエアへの願書を出したんです」 「そんなイイもんじゃないぞ。訓練の名目で、猛牛怪物が襲ってくる鉄の檻に放り込まれたりするし」 「楽しみですわ」 「ハイキングといっては、カビ臭い地下迷宮に閉じ込められたりもする」 「望むところです」 「泥沼に腰までつかった状態で、ソーセージをかためて作った巨大ゴーレムと殴り合いをさせられたりもするぞ」  「ぜひ私も挑戦させてください、その泥沼とゴーレムの試練に!」  メアリは胸の前で両手を握りあわせている。目がきらきらしていた。  そうか、とため息をつくようにメメルは言った。 「ならば……入学を認める」 「ありがとうございます!」 「学園でやってみたいことを教えてくれ」 「訓練ですね。うんと厳しく鍛えていただきたいです。勉強もいっぱいやりたい。掃除などの奉仕活動もがんばります」  ためこんでいた想いがあるのだろう。メアリは勢いこんで続けた。 「広大な学園内の施設も探索したいです。学食でご飯も食べたい、名高き図書館『ワイズ・クレバー』にも行ってみたいです」 「そうか、うん」 「私、お屋敷育ちだったので同年代の知り合いがいないんです。学園でお友だちをいっぱい作りたい。寮の部屋に集まっておしゃべりしたり、お酒を飲んだり……」  もちろん、勇者のつとめも忘れていません、とメアリは言う。 「ジャバウォックを追い払うとか、ゴブリンの襲撃から橋を守るとか……力なき人たちの力になるような依頼も積極的に受けてみたいと思います」 「そうだな。学園におれば、いずれ全部体験できるだろうよ」  だがな、とメメルの口調が重くなった。 「チミは一歳にならんうちにアークライトになったという、つまり……」 「わかっています」  これまで前のめり気味に話していたメアリは、静かに深呼吸した。にこりとほほえんで口を開く。 「現在わたしは二十歳、もう長くありません」  アークライトはヒューマンの変異種である。多数派の人類、とりたてて特長のない種であるヒューマンが、光の輪と白い二枚の翼を授かってアークライトへと姿を変える。一度変化してしまうと、二度と元には戻らない。  この変異は、なんの予告もなく訪れるという。予知夢を見たとか、お告げを聞いたとかいう話もないではないが、大多数にとっては突然のものだ。地域性や家系的なものがあるわけでもない。双子の姉妹であっても、妹だけが覚醒したという例もある。  一種の運命と言えよう。この運命をアークライトは受け入れるほかはない。  アークライトはヒューマンを超えた存在だ。精霊の力を解放することで、一般的なヒューマンとは比較にならない能力を発揮する。長時間ではないが空を飛ぶことも可能だ。これが、アークライトへの変異が祝福と言われるゆえんである。  しかし同時に、アークライトは呪いでもある。  ほとんどのアークライトは、変異してから二十年前後で寿命を迎える。アークライトへの変異は、緩慢だが確実な死の宣告なのだ。 「もってあと一年、長くても二年は残されていないはずです。残り短い人生を、私は学園生活でしめくくりたいのです」  新品の制服を受け取ると、メアリはこれを抱きしめるようにして言った。 「勉強したい。鍛えたい。楽しい思い出を作りたい。誰かの役に立ちたい……これが私の最後の望みです」  それに、と言葉に詰まったものの、うっすらと頬を赤らめてメアリは続けたのである。 「できることなら……素敵な殿方とふたりで、どこかに……デ、デートに行きたく……経験がないので……」 「うむ、わかった。寮の部屋に行くがいいぞ。何人かに、新入生が来たと声をかけておく。みんな協力してくれるよ」  メメルはまた窓を振り返った。 「晴れてきたな」  メメ・メメルは、この地上の誰よりも多くアークライトを見てきた。  だから気付いている。常人ではわからない徴(しるし)に。  ――メアリ・レインは、あと数日で天に召される。  どこがどうと明確に指摘できるわけではない。ひらたく言えば予感でしかない。  けれどメメルの予感は当たるのだ。  こういうときは特に。悲しいくらいに。
墓場まで持って行けなかった思い 瀧音 静 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-05-14

予約期間 開始 2020-05-15 00:00
締切 2020-05-16 23:59

出発日 2020-05-21

完成予定 2020-05-31

参加人数 8 / 8
「多分……出来た」  一枚のカードを手にし、まじまじと見つめる『フトゥールム・スクエア』の用務員。魔法道具の修理や修繕担当のカルマ【ラビーリャ・シャムエリヤ】は。  軽く伸びをしながらふぅ、と息を吐く。  どうやら集中して作業を行っていたようで、結構疲れているようだ。  そんな彼女を疲れさせた道具とは果たして――――。  ……手にしていたカードには、『メメペイ』と書かれていた。  *  『メメペイ』。それは魔力による遠隔決済を可能にする支払いシステム。  しかしそれは現在は試用期間中であり、持っている生徒はごく僅かだった。  ――が、試用中に大きな問題は見られない、と判断されたらしく、さらに枚数を、範囲を拡大して第二試用期間となることが決まった……らしい。  歯切れの悪い言い方なのはこの事を説明したラビーリャに問題があったわけで……。 「みんなで使って……ボンッ?」  ふんわりとしか理解出来なかったのだ。  とはいえ珍しさもあり渡された生徒は好奇心に心躍らせて購買部へ。  適当に商品を見繕っていざ決済! と白狐のルネサンスの男子生徒がカードを専用の魔法具に翳(かざ)したときである。  ――本来は……というか、初期のカードは決済時に、その時の【メメ・メメル】学園長の気分に応じて言葉が変わるはずだった。  ……が、しかし。  聞こえてきたのは――、 「自分の半分くらいの身長のエリアルの女の子に頭をなでなでされたいのでおじゃる」  という、その男子生徒の声での決済音で。  ――周囲が、凍った。  空気が……いや、空気だけでなく、皆の動きが。  男子生徒の思考が。  ――そして……、 「イケメンドラゴニア様にあーんして貰いたい~」 「ぼ、僕より大きなお姉さんに『壁ズダァァァッン(注:壁ドンの最上位)』して貰いたい!」 「素敵なお姉様に寝るまで耳元で愛を囁いて欲しいですわ!」  それぞれの生徒が手にした『メメペイ』カードが共鳴するように。  その持ち主の性癖を暴露し始めたのである。  上がる悲鳴に購買部は大パニック。  ……そんな騒動に巻き込まれた生徒の皆は、果たしてどのような反応をするのだろうか。
私をその事件の 樹 志岐 GM

ジャンル 推理

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-05-11

予約期間 開始 2020-05-12 00:00
締切 2020-05-13 23:59

出発日 2020-05-21

完成予定 2020-05-31

参加人数 8 / 8
 ――学園長と話がしたい。  その日、何人かの男を連れて現れた【囚人服の男】はただ一言、そう言った。  なぜこんなところに? 何のために?  偶然その光景を目の当たりにした学園生は、誰ともなくそんなことを囁く。 「ほら、道をあけてください!」  好奇心や野次馬で様子を見にきた学園生の山をかき分け、ようやく現場に到着した学園職員に男はにこりと笑いかけた。 「ご苦労様です。学生さんたちをまとめるのはさぞ大変でしょう」 「あぁどうも……ではなく! ここに何の用でしょうか!?」  独特の空気感を感じさせる男の空気に飲まれまいと、問いかけるも男はただ『学園長と話がしたい』と繰り返すただけだった。  それはそれは、とても柔和な表情で。  学園応接室に古い羊皮紙が広げられている。  日付は十年ほど前のもので、紙面には小さな田舎町の片隅で凄惨な殺人事件が起きたということを知らせるというもの。  この世界において、殺人事件など滅多に起こらないものだ。  ――ましてや、それが人為的なものであるならなおさら。  故にそれを覚えている学生もいたのだろう。そんな誰かが吐いた小さな溜め息がやけに大きく聞こえた。 「ってぇわけで、チミたちにお願いしたい事があるんだぞっ」  そんな状態であっても学園長【メメ・メメル】の声は底抜けに明るく、良くいえば安心感のある、悪くいえば空気をぶち壊していた。  まぁメメたんだし。今日も彼女は通常運転だ。  そう、通常運転。……ということはトンデモな出来事が舞い込んでくるに違いない。 「いやぁ、流石彼の有名な『フトゥールム・スクエア』の学生だ。聡明そうな方達ばかりですね」  その部屋の片隅から聞こえた声に振り返れば、そこには学園長と生徒の他に数名の人影があった。  優しい言葉遣い、柔らかな微笑み。その青年はモンスターどころか虫の一匹も殺せないような雰囲気の青年だった。  ただ、彼の纏う衣服と手首にはめられた枷。彼を取り囲む屈強そうな男たちだけが異彩を放っていたが。 「諸君らの中には初めて見る子もいるだろう。彼はその新聞に書かれている人。数十年前の殺人事件を起こした犯人その人だ」  そんな人物が一体なんのために。危険ではないのか。何故学園長はこのような男を学園に招き入れたのか。  静かな水面に落とされた石のように生徒たちの間に騒めきが起こったところで、メメルが手を叩く。 「はいはーい静かに! コイツがキミたちに何かすることはない。不穏な動きを見せようモンならそこの看守たちが即座に取り押さえるし、それが破られたとしてもオレサマがすぐに対応するから安心したまえ!」  屈強そうな男たちは看守だったらしい。二重の防衛システムを用意しているならば安心だろう。  さて、そうとなれば……この男は何故ここにやってきたのだろう。 「ではその説明は私が」  そんな疑問を誰ともなくこぼせば、青年は学生の前に歩み出て話し始める。 「数十年前に起こった凄惨な『殺人事件』……、」  ――私をその事件の『犯人』にして欲しい。  空き教室の一つに家具やインテリアの類が用意されている。  聞けば、簡略化はされているものの事件現場の状態をほぼ再現されているのだそうだ。  暖炉があり、ベッドがあり、机がある。机の上にはティーポットとカップが並べられている。 「部屋のちょうど中央に、彼女は倒れていた」  被害者が倒れていたとされるそこを男が指差すと、そこには人形が代わりに置かれている。 「私は彼女のすぐそばに立っていました。手には血塗れのナイフを持って」  彼女が倒れ、その姿が消えて無くなるその時まで、ただ呆然とその様子を眺めていた……らしい。  彼はその瞬間を覚えていない。彼が自分の意識を取り戻した時、彼は自警団に現行犯で取り押さえられていた。  だから本当に自分がやったのかわからない。わからないが、周囲はみんな自分を指差して言うのだ。  ――お前が犯人だ。  ――お前が彼女を殺したんだ。  ――犯人はお前しかいない。 「皆、私が犯人だというのです。しかし私にはわからないのです」  だから、どうか。この事件が忘れ去られてしまう前に。 「私をこの事件の犯人にしてください」
芸術クラブ放置施設――リフォーム進行中 K GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-05-14

予約期間 開始 2020-05-15 00:00
締切 2020-05-16 23:59

出発日 2020-05-23

完成予定 2020-06-02

参加人数 8 / 8
 学園某所。なにがし山。  そこには、かつて芸術クラブの関連施設として使われていた建物がある。  新施設建造に伴い長年放置されていたこの建物、つい最近その存在が見直され、大々的な清掃が行われた。  その見直しのきっかけを作ったとある委員会は当初、この物件を資材室の一つとして使う方針だった。  だが清掃を請け負った生徒達から『何らかの事件に巻き込まれた人間を保護する施設として活用出来ないだろうか』という提案が行われたのを受け、改めて審議。その結果方針を転換。建物は資材室ではなく、人身保護施設として生まれ変わることになった。  とはいえ現段階で完了しているのは、敷地の除草と建物の清掃。加えて建物内部に残されていた学園OB製作の美術作品整理だけ。  やらなければならないことは、まだまだたくさんある。  保護施設としての本格的な運用を始めるまでには、今しばらく時間がかかりそうだ。 ●施設に住まう光の精霊  真夜中。  保護施設(予定)の中を、ゆらめく光が行き来している。  光は精霊だ。【蜃気楼(ミラージュ)】という名の精霊だ。  といっても、本人はその名にまだ馴染んでいない。何故ならそれがつい最近、つけられたものだから。とある学園女子生徒によって。  これまでずっと『精霊』と言う大ざっぱな属性で自己を認識していたものが、急に固有名詞を得たので、かなり戸惑っている次第。 (……私は、ミラージュ? ……ミラージュ……ミラージュ……)  呟きながら磨かれた床の上を跳ねていく。美術作品が一括収容されている大部屋に舞い込む。立体、平面、多種多様な作品を眺め、きれいに拭きあげられたステンドグラスの窓を通り抜け、庭に出る。  庭は前回の清掃作業によって、雑草が取り除かれていた。ミラージュはそれを、非常にさっぱりし過ぎてしまって寂しいと感じる。  しかしよくあたりを巡ってみれば、草が残っている場所もぽつぽつあった。  ミラージュはそこへ重点的に力を注ぐ。早く大きくなるように。それから、露になったオブジェ――高く低く右に左に傾いて並ぶ、柱の列――を眺める。 (これ、何かな?)  彼はオブジェが本来どんな形をしていたか知らない。施設が放棄されてからずっと後にここへ来て、住み着き始めたのだから。 ●リフォーム参加する子豚ちゃん。  朝。丸々肥えた小柄な豚のルネサンス【アマル・カネグラ】は顔を洗う。眼鏡を拭いてかけ、寮の個室を、つぶらな黒い目で見回す。 「うん、今朝もいい感じ」  部屋は、床も壁も窓もぴかぴかだった。学園に入って最初に覚えたスキル『掃除』は、彼自身の役にとても立っているらしい。 「いただきまあす」  他人の三倍ほどある朝食をとった後、栗色の髪とピンク色の豚耳にブラシをかけ、自前の制服から屋外作業着に着替える。靴も屋外作業用ブーツに履き替える。  なんとなれば本日は、屋外作業の課題があるからだ。  前回同じものに参加して服をさんざん汚す羽目になった経験から彼は、事後似たような課題がある場合、ちゃんと汚れてもいい格好に着替えて行くと決めたのである。  世間的に誤解されやすいが、豚は実はきれい好きだ。 ●リフォーム参加する狼ズ。  黒目黒髪の【ガブ】、灰目灰髪の【ガル】、茶目茶髪の【ガオ】。魔王(志願)の狼ルネサンス三兄弟。三つ子だから年の差はない。皆大柄な体格で、きつそうな顔をしている。耳と尻尾はおそろいの灰色。  彼らは前回に引き続き今回も、施設のリフォーム作業に参加していた。今度はアマルの招集を受けたからではない。魔王・覇王コースの担当教諭であるドラゴニアの【ドリャエモン】(御年77・♂)から、強制参加させられたのである。  彼らについてドリャエモンは、常から頭を痛めていた。揃いもそろって座学がからっきし駄目な上に、素行が悪い。このまま行くとプリズン・スクエアどころか退学になるやも知れぬ、と。  なのでことあるごとに熱血指導をしていたのだが、世代間ギャップのせいなのかどうも空回りしがちで、成果が芳しくなし。  そんな最中、三兄弟が村人・従者コースの新入生アマルをカモろうとし、猛反撃を食らい、ついでパシらされるという事件を起こした。  ありとあらゆる情けなさに角も翼も折れそうな思いをしたドリャエモンであったが、その後清掃依頼におけるガブたちの言動を聞き及ぶに至り、これはむしろ連中にとっていい機会かも知れぬと考え直した。たとえ強制的でも他生徒と共同作業をすることが、意識の変化に繋がるのではないか、と……。  そんな親心が教諭にあるとも知らず三兄弟は、猛火を吐かれ追い回され課題現場に来させられたことを不服に思い、ぶつぶつ言っていた。 「ちっ、クソジジイのせいでだりーぜ」 「こんなの魔王がすることじゃねえよな」 「なあ」  本日彼らに与えられた仕事は、建物敷地に設置されているオブジェのリフォームを手伝うこと。  灰色の棒と成り果てているものたちの表面を削ってサビを落とし、傾きを正し、ついでペンキを塗って生まれ変わらせるのだ。 「おい、なんかあそこ、やけに花が咲いてねえか?」 「何? あ、本当だ。目茶苦茶伸びてんな」 「一月もたたないのに、あんなに茂るもんか?」 ●子豚ちゃんからの提案  アマルは前回さる先輩と一緒に整理した美術作品群を前にし、言った。 「僕はやっぱり、売った方がいいと思うんですけど。ここを利用していた美術クラブの関係者から、残して行った作品の処理については一任するという了承を、すでに得ているわけですし。こっちに集めているのは、現在市場で人気がある人の作品です。特にこの絵は」  と言って彼は、一枚の油絵を指す。  描かれているのは明かりの絶えた夜の町。  屋根の上でヒューマンの少女が、たくさんの猫に囲まれ、浮かれ調子に踊っている。  身につけているのはビーズを縫い込んだ絢爛なガウン。背中まで伸びた真っ赤なくせっ毛を振り乱し、頬を上気させ、緑色の目をきらきら光らせ、笑っている。いかにも楽しそう。  だけど注意深い人がよく観察してみれば気づくだろう。少女の表情に酩酊が見え隠れしていることに。足元に空の酒瓶が多数転がっていることに。  少女から少し離れた煙突の上には、彼女と同じ衣装を着たヒューマンの若い男が座っていた。真っ黒な髪に黄色い目。少女に向ける視線には、苛立ちと疎ましさが混在している……。 「すごく高く売れると思いますよ。これを描いた方はもう亡くなられていて、新しい作品が出ませんから。きっと、欲しいって言う人たくさんいます」  保護施設として整備されることになった以上、改良すべき点はいくらもある。  まずセキュリティの問題。  八つの隠し部屋と九つの隠し階段には前回の清掃以降、不審者が立ち入り出来ないよう防犯錠が取り付けられた。だが、本当に保護施設とするならばそれではまるで不十分。腕力、あるいは魔法の心得が一定水準以上あるものなら、錠を破壊することも可能だからだ。 「結界とか、そういう仕掛けが入り用では? それに保護施設というのなら、誰かが常駐していなければならないと思います。いつ助けを求める人が現れるか分かりませんから。後は、宿泊機能も必要ですよね。ここには机や椅子はたくさんあるけど、ベッドとか、置いてませんよね? 新しく調達しないといけないんじゃないでしょうか」  そういったもろもろをこれから整備していこうとするなら、何よりお金がいる。美術品の売買はその助けになるのでは、とアマルは言うのである。
嘆きの古城に踏み入りし者。 ユウキ GM

ジャンル 恐怖

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-05-15

予約期間 開始 2020-05-16 00:00
締切 2020-05-17 23:59

出発日 2020-05-21

完成予定 2020-05-31

参加人数 4 / 8
 暗い古城に響く、湿った音。  ぺたり。  ぺたり。  ぺたり。  人など居なくなってどれほどの時が流れたろう?  されど、この古城に響く音が消えた試しはなく。  毎夜足音だけが木霊するのだ。  ぺたり。  ぺたり。  ぺたり。  そこは誰が呼んだか『嘆きの古城』。  昼間にすら高い木々が暗い闇を落とし、足を踏み入れれば帰る者無しと言われる古の城塞。  そこに、足を踏み入れる者がまた一人……。  ばいん。  ばいん。  ばいん。  その豊満な胸部を揺らし、【コルネ・ワルフルド】は教壇に立つ。 「やっほー!」  ばいん。  何か動作をする度に大きく揺れるそれに、男子達の目は釘付けである。 「今日はね~……」  資料を取り出そうと屈めばグッと息を飲む光景が広がる。  ……非常に集中力を削ぐ教師である。  これをただただ天然でやっているというのだから、尚質が悪い。 「あった! 今日は皆に古城探検をしてもらうよ!!」  そう言ってコルネは課題の説明を開始する。 「簡単に言うと、トロメイアの近郊の森の中にある薄暗いお城なんだけど……この辺りかな。みんな『嘆きの古城』って知ってる?」  黒板に貼り出された地図を指差すと、説明を続ける。 「実は、ちょっと前にこのお城に行くって言ってた男の人が行方不明になっちゃったらしくてね、恐らくこのお城に向かったんだろうって話にはなったんだけど……」  ふと、声を押さえてコルネは言う。 「実は……出るらしくてね……」  出るとはなんの事だろうか? 「……お化け」  教室は静まり返る。  ただし、恐怖というより何を言っているのだろうという困惑によってだが。  今更ゴーストが出てきた所で驚くような……。 「違う違う……ゴーストとか魔物の類いじゃなくて……お化け……♪」  こちらを怖がらせたいのだろうか……。  そもそもなにが違うのかは分からないし、ゴーストでないなら十中八九リバイバルだろうに。  まぁ、とりあえず面倒なので話の続きを促す。 「もう、つまらないなぁ。なんだか昔からそこに住んでいた貴族の女の子の魂が~……とか。そこで殺された召使いの怨霊が~……とか。そう言う話が後を絶たないんだって」  ……まぁ、よく聞く話ではある。  というか、そうだとすればやはりリバイバルではないか。 「ウソかどうかはともかくとしても、何かしらが居る可能性は捨てきれないわけだし、そんな場所にもし迷い込んじゃったんだとしたらほっとけないでしょ? 本当はアタシ達がやるようなことじゃないんだけど、どこも手一杯だし、それに……」  ふと言い淀む。 「え~と……実は、その男の人は旅の人らしくて……依頼をしてきた町の人達も、善意でお金なんか出せないって話らしくてね……」  つまり……。 「だから……学生なら……授業の一環で動かせるんじゃないかと……」  ……呆れた話である。  まぁ、行方不明で捜索願いを出してやるだけまだ有情と言った所か。 「でもでも、なんか随分羽振りの良い旅人さんだったらしくて、助ければ……その…………旅人さんが……お金は……出してくれる……カモ……」  どんどん声が小さくなっていく。 「ええい! お金お金と器量が小さいッ!! 勇者を目指す者が人助けぐらい無償でやって見せなくてどうする!!」  少々理不尽な事を叫び、がおーと吠える。  ならばなぜさっき脅かそうとしたのかと問いただしたくなったがぐっとこらえた。 「もちろん課題は課題! という事で、希望者は前に出るように!!」  こうして、古城探索の課題が始まった。  ゴーストが居れば討伐。  リバイバルなら今更恐れることも無い。  そんな軽い思いで生徒たちは立候補していく。  ……これからなにが起こるのか、それを生徒達はまだ知るよしもなく……。
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