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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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無人島に何か1つ持っていくとしたら? くそざこあざらし GM

ジャンル コメディ

タイプ EX

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-03-30

予約期間 開始 2019-03-31 00:00
締切 2019-04-01 23:59

出発日 2019-04-07

完成予定 2019-04-17

参加人数 7 / 8
 ――とある休日。 「無人島でサバイバルするとしてさ」 「うん」 「何か1つだけ持っていけるとしたら、何持っていく?」  学園内のカフェで、2人の男子生徒が雑談をしていた。  無人島に何か1つだけ持っていけるなら何を持っていくか。  それは永遠のテーマであり、この世にある正解のない問題の1つだ。  ある者は自分にとって大切なモノを。  またある者は水や食料など、生き残るために必要そうなモノを。  サバイバルに自信のある者であれば、ナイフなどを持っていくだろうか。  しかし――ほとんどの者は真面目に答えないだろう。  実際そんな状況に陥るわけがないのだから、当然である。  無人島に何か1つだけ持っていけるなら何を持っていくか。  それは永遠のテーマであり、大喜利のお題のようなものだった。  質問をした男子生徒も、質問をされた男子生徒も、そんなことは理解している。  だから、質問をされた男子生徒はふざけて答えたのだ。 「俺は『ちくわ』かなぁー」 「おい真面目に答えろよ。ふふっ……おまっ……。ちくわでどうすんだよ」 「お前ちくわバカにすんなよ。武器にも……ふふっ。武器にもなるし、エサにしたら魚とか捕れそうだし、ストローにしたらどんな水でもちくわ味になるし、いざとなったら食えるし、最強だろうが」 「あー……確かに最強だわ。じゃあ俺もちくわかな」 「ふふっ……。だろ? ちくわで余裕だって」 「ならば貴様らには、ちくわだけでサバイバルをしてもらおう」 『えっ』  そんなふざけた答えに鉄槌を下すのが、『無人島クラブ』の部長、【エド・ディスカバリー】の使命である。  エドは一瞬にして男子生徒達を気絶させて、周りに隠れていた無人島クラブの部員達に運ばせた。  どこに運ばせたのかは、言うまでもない。 『ど……どこだよ!? ここ!』  目覚めた男子生徒達の目の前に広がるのは、海のように広い湖。そして足元には砂浜、背後には平地、平地の先には木々がうっそうと茂る森が見える。  ここは無人島クラブの『備品』である、学園内の湖のどこかにある無人島。 「貴様らには今から24時間! この湖に浮かぶ無人島で! ちくわだけを! ちくわだけを使ってサバイバルをしてもらう!」  無人島クラブの部員達が漕ぐ舟で仁王立ちをしながら、エドは男子生徒達に向かって叫んだ。 「はぁ!? ちょっと待っ……あっ! 俺の剣が……ちくわしかねぇ! おいてめぇ! 俺の剣をどこに――」 「黙れぇ! ちくわを望んだのは貴様らだ! 服とちくわ以外はすべて、こちらで回収させてもらった! 後で返すがな!」 「何でちくわなんだよ!? 意味が分かんねぇーよ!」 「ちくわでサバイバルが出来るのだろう!? ……これから俺が、貴様らの『サバイバル力(ぢから)』を評価してやる! 貴様らがちくわで見事なサバイバル力(ぢから)を発揮すれば! 俺は貴様らに謝罪し! ちくわを最強だと認め! いくらばかりの報酬を支払おう! ……さぁ! サバイバルスタートだ!」 「ちょっ……無理に決まってんだろ!? おい待っ……サバイバル力(ぢから)って何だよおい!」  男子生徒達を無人島に残して、エドは舟で無人島を離れていく。  残された男子生徒達はただただ呆然と、ちくわをかじることしか出来なかった。  ――また、とある休日。 「無人島でサバイバルするとしてさ」 「うん」 「何か1つだけ持っていけるとしたら、何持っていく?」  学園内のカフェで、2人の女子生徒が雑談をしていた。 「えー……私は釣り竿かなぁ。魚とか釣れたらさ、ほら。何とかなりそうじゃない?」 「じゃあ……私はマッチを持っていくわね。魚を焼けるように」 「なるほどぉ……。って、一緒に行く感じなの? ふふっ」 『その話はやめろぉぉぉ!』  女子生徒達の話を耳にして叫んだのは、あの日、無人島に連れて行かれた男子生徒達。  これから何が起こるのか、男子生徒達は知っていたのだ。  しかし、もう遅い。 「ならば貴様らには、釣り竿とマッチでサバイバルをしてもらおう」 『えっ?』  女子生徒達の後ろに現れたのは、永遠のテーマの答えを探す、無人島クラブの部長、エド・ディスカバリー。  はた迷惑なエドの噂は、新入生達の間で、瞬く間に広がった。  ――その中には君達のような、わざと連れ去られようとする者達もいたのだ。
まだ見ぬ知識を求めて 瀧音 静 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-03-26

予約期間 開始 2019-03-27 00:00
締切 2019-03-28 23:59

出発日 2019-04-01

完成予定 2019-04-11

参加人数 6 / 8
 皆が昼食を終え、昼休みを満喫した後の事。  当然の如く迎えた午後の授業の場所に指定されたのは、この学園の誇る巨大な図書館だった。  第一校舎【フトゥールム・パレス】。  要塞にも見える巨大な城の中にある施設である大図書館『ワイズ・クレバー』――そこが、午後の授業を行う場所として指定されていたのだ。  グリフォン便を利用し、この大図書館へとやって来た生徒達がそこへ足を踏み入れると……。 「ようこそ、大図書館へ。みな優秀ですね。毎年何人かは迷子になっていましたのに」  突如として聞こえたせせらぎの様な声に生徒達は辺りを見渡すが、視界に入るのは無数の本棚と、どこまでも続いてるとさえ錯覚する図書館の広大さと。  誰の姿も見えない受付だけであり、皆が皆一様に困惑した。  ふと、受付の中に明らかに不自然な水たまりがある事を誰かが発見した。  そして、水たまりの周りには衣服が散らかっている事も。 「さて、そろそろ時間ですね」  その水たまりから先程と同じ声が聞こえたかと思えば、見る見るうちに水たまりであったものが人型に形を形成していく。  形成する過程で周りの衣服を巻き込み、すっかり人型をかたどる頃には、自然な着衣をした女性になっていた。  ローレライ種の人種。  それが生徒たちの目の前にいる教師の種族。  水の精霊王の加護を持ち、戦闘を好まず、多彩な魔法を操り、文字や芸術の文化を持つ水そのものの様な種族。  それを表すようにこのローレライの先生はおさげの髪の先端から絶えず水を滴らせていた。  水色を基調とした簡素なドレスに身を包み、片手に名簿と羽ペンを携えた彼女は、 「まずは自己紹介をしましょう。見ての通りローレライ種の【ライライト・アルスハウゼン】と申します。以後お見知りおきを」  柔らかな笑顔を生徒達へ向けながらそう言ってお辞儀をし、すぐに次の言葉を続ける。 「さて、もうすぐ授業も始まってしまいますし、今回の授業の説明をしておきましょう。この学園の誇る大図書館は見ての通り膨大な書物に溢れていて、全ての書物に目を通すのは気が遠くなるような年月が必要です」  持っていた名簿と羽ペンを傍に置いて感情を表すような身振り手振りを交えながらライライト先生は熱く話す。 「本来は学園から指定された図書委員の方が居て、その方に聞けば読みたい本は探せますが生憎今は授業中。ですので、皆さんには本を探していただく事にしました」  閃いた、とでも言いたげなジェスチャーの後、眩しい笑顔を見せたライライト先生の言葉を理解した生徒達は思う。  雑用か……と。 「探して貰うものは自由。皆さんが興味を持った本を持って来てください。ここにある本は皆さんの先輩方が集めて来てくれた文献なので皆さんの知識にも大いに力になってくれる事でしょう。それらを自分の力で探すのもいい経験です」  メガネを怪しく光らせて、そう話す先生の真意は果たして……。 「ですが、自由と言っても縛り無しにしてしまうと手近な所にある本を持って来られそうですし……。そうですね、今の私は液状化を行った事で大多数の魔力を消費していますし、現在の姿を保つだけで精一杯です」  生徒達を驚かせる為に行っていた液状化という行為は、先生と言えども魔力を大量に消費してしまうらしく――。  額に指先を触れさせ、疲れています。とでも言いたげに生徒達へ見せつけて。 「ですので、魔力回復に役立つようなものであれば先生は嬉しく思います」  生徒に隠れ、策士のような笑みを作った先生は、 「防犯魔法や禁書の棚などもありますし、何より授業です。気は抜かないように」  忠告とも取れるその言葉を生徒達に聞かせ、気を引き締めさせる。 「それでは、授業を開始します」  ライライト先生の言葉と、  キーンコーンカーンコーン  授業開始を知らせるチャイムが鳴るのが、同時だった。
4月1日 宇波 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-03-25

予約期間 開始 2019-03-26 00:00
締切 2019-03-27 23:59

出発日 2019-04-01

完成予定 2019-04-11

参加人数 6 / 8
 嘘つき羊飼いは言いました。 「オオカミが来たぞ!」  しかし村人はだれも信用しません。  羊飼いはこれまで何回も嘘を吐き続けてきたためです。  信用されなくなった羊飼いの羊は、本当に来たオオカミに食べられてしまいました。 「……というお話があるのよ。だから、嘘はついちゃいけないって言う戒めね」  【アリス・サミサミ】は絵本をぱたんと閉じる。  音が寝室に響いた。  それを静かに聴いていたのは彼女の愛猫である【マダニャイ】。 「にゃあ」 「うふふ、ちょっと分からなかったかしら? まあ、マダニャイ、あなたは猫だものね」  くすくすと笑うアリスはマダニャイの頭を撫でる。 「でもね、一年に一度だけ、例外があるの。それが、明日。『エイプリルフール』という日よ」 「にゃあ?」 「あら、興味があるの? エイプリルフールはね、嘘をついても特別に許される日なのだそうよ。午前中の間だけね」  だから、明日は午前中の間、平民として過ごしてみようと思うの。  楽し気に笑う主人に、マダニャイはくぁ、と欠伸を返した。  夜はカンテラの灯とともに更けていく。 「わがはいはケットシーではなかったのである! 実はわがはいは犬だったのである!」 「はあ」  いきなり学園窓口にやってきて、ふんすと胸を張り訳の分からないことを言い出すケットシー、マダニャイ。  目が点となっている職員に、マダニャイは昨晩聞いたばかりの知識、エイプリルフールを語りだす。  職員も聞いたことのあるイベントであったのか、合点がいったという顔をした。 「それで、今日はわが主人が平民として市井を練り歩かにゃいので、護衛の依頼はいらにゃいのである!」  職員はしばし沈黙をし、翻訳:エイプリルフールを脳内で行う。 「ああ、つまりご主人様の護衛依頼を出したいのですね」 「出さにゃいのである!」 「はい、かしこまりました、受理いたします……受理しません」  対応はまるで駄々をこねる子供へのそれではあるが、マダニャイは満足そうに頷く。  職員は着々と依頼を提出する準備を始めた。  市井は本日も活気づいている。  しかし今日に限っては、普段とどこか違うことが分かる。 「さー! 高いよ高いよ! 古めの魚! ひとつどうだい!」  と客を呼び込む店先に並ぶのは、通常より安めの新鮮な肉であったり。 「君のことが嫌いだ!」 「あ、あたしだって嫌いよ!」  と言い合っているカップルが、傍から見てとても仲睦まじくハグをしていたり。  市井は今日ばかりは嘘で活気づいている。  度が過ぎない嘘は、こういう時ばかりは娯楽のひとつとして楽しまれているようだ。  今日はどうやって過ごそう。  嘘で溢れる午前中へ、胸を高鳴らせて足を踏み出した。
黒猫と20本の尻尾 くそざこあざらし GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-03-26

予約期間 開始 2019-03-27 00:00
締切 2019-03-28 23:59

出発日 2019-04-01

完成予定 2019-04-11

参加人数 3 / 8
 細い月が、夜空から少女を見下ろしていた。  少しの夜更かしなら黙認されるとはいえ、【ルーナ・レイニーデイ】は初めての夜の外出に不安が隠しきれていない。  迷うような足取りで、月の視線に怯えながら、ルーナは夜の居住区域を往く。  ルーナの姿を見れば、誰しもが『こんな時間に無理をしなくても』と思うだろう。  しかし、ルーナは『こんな時間に無理をしてでも』行きたい店があった。  ルーナが住んでいる寮の南口から真っ直ぐ進み、67個目の街灯を左に曲がり、王冠が描かれたパン屋の看板を目印に右へ曲がった先――。  路地裏に潜む猫の看板が、月と同じように目を光らせていた。  ルーナが重たい扉を開くと、暖かい空気が彼女の頬を撫で、木の香りが彼女の頬を緩ませた。  ルーナの視界に飛び込んできたのは、艶やかなカウンターテーブルと、いくつかのテーブルセット、赤い木の木目。  まだ人のいない、静かな店内はまるで小さな図書館のようだが、壁に並べられているのは本ではなく酒瓶。黄味がかった間接照明に照らされて、彼らは手に取られるのを待っている。  ――夜の酒場。  本を読むように酒と時間を楽しむ。その行為に少女が憧れていたとすれば、それは少女が背伸びをする理由になるだろう。  しかし、そうではない。  ルーナには別の目的があった。 「こ、こんばんは……」 「あら、いらっしゃい。……見ない顔ね。初めてかしら?」 「は、はい」  カウンターテーブルの向こう側に立つ少女。実際には少女ではないのだが、ルーナより年下にしか見えない、黒猫の特長を持つルネサンスの女。彼女がこの店の店主である【シャオヘイ】だ。  ルーナと目を合わせて、シャオヘイは黒い猫の耳を動かし、4本の黒い尻尾をゆらゆらと揺らす。  ルーナを警戒しているのか、それとも興味を示しているのか、シャオヘイの読めない表情にルーナがおどおどしていると、シャオヘイは『ふっ』と笑った。 「そんなに怯えなくて良いわよ。学園の生徒さんよね? それで、今日はお客さんとして来てくれたのかしら? それとも、お手伝いに? それとも――」  シャオヘイの言葉に合わせて、ルーナの足元で黒猫が『なー』と鳴く。  黒猫達は1匹や2匹ではなかった。同じような見た目をしながら、微妙に表情の違う黒猫が8匹、いつの間にかルーナを取り囲むようにして、黒猫達は集まっていた。  その黒猫達の数に対して、尾の数はさらに多い。  1匹につき2本、計16本の尾がゆらゆらと、ルーナを誘うように揺れていた。  その不思議な黒猫達を見て、ルーナは思わず笑顔になる。 「――その子達と遊びに……来てくれたみたいね」  ルーナの表情を見て、シャオヘイはそう言った。  ここは学園のどこかにある、小さな酒場『小黒(シャオヘイ)』。  猫の姿をした魔物である『ネコマタ』と戯れられる酒場である。
おふざけな食事会にようこそ! 夜月天音 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-03-19

予約期間 開始 2019-03-20 00:00
締切 2019-03-21 23:59

出発日 2019-03-27

完成予定 2019-04-06

参加人数 5 / 8
 放課後、魔法学園フトゥールム・スクエア、ファンタ・ブルーム大講堂内特設スペース。 「本日は、我ら御巫山戯クラブのお披露目兼最初の活動にようこそ! 俺は【ルタン・リー】。信条は、“おふざけは最高”だ」 「御巫山戯クラブは、おふざをして毎日笑って楽しく過ごそうってクラブだよ。相手に怪我をさせなければ、何をしちゃってもいいもんだから、部室は第八校舎にあるよ。魔法とか色々使うから。あたしは【鹿山 美夏】(しかやま・みか)。他に部員はいるんだけど、みんなおふざけ作りに忙しいから今回はあたし達二人だよ。よろしくねっ!」  15歳の少年フェアリーと17歳の女性ヒューマンが、大講堂の特設スペースを訪れた学生達を大量の料理で盛大にお迎えをしていた。 「おかずやお菓子にお酒や紅茶と色々あるぞ。普通に美味しかったり不味かったりする以外に、口に入れた途端、色んな効果が発揮するおふざけ料理があるから楽しんでくれ! 俺のオススメは壺いっぱいの大盛りカレーだ! 気を付けないと壺に落ちてカレーまみれになるからな。もちろん、未成年はお酒と煙草は駄目だぞ!」 (試作段階では壺じゃなくてプールだったけど、本番で材料が足りなくなったからなぁ。色々やり過ぎた料理もあるけど、怪我はしないだろうから黙っておくか)  ルタンは、梯子が必要なほど巨大なカレー入り壺の周囲を、自慢げに飛び回りながら説明をした。  そして 「あたし達、部員が心を込めたおふざけ料理をご堪能あれっ!」  美夏が大仰な挨拶で締め、愉快な食事会が始まった。
馬をウマく無力化せよ! はまなたくみ GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-03-19

予約期間 開始 2019-03-20 00:00
締切 2019-03-21 23:59

出発日 2019-03-27

完成予定 2019-04-06

参加人数 4 / 8
「えーいっ!」  草原は今日も晴れていた。さわやかな春の空気が心地よく吹き、あたたかい春の日差しがあたりを包んでいる。そんな中響き渡るのは、気合の入った少女のかけ声。  【コリーン・デイビー】の斬撃がスライムナイトに吸い込まれる。雷を帯びたその一撃は弱点を突き、たまらずスライムナイトは倒れこんだ。 「ふう……これで終わり、っと!」  コリーンはひとつ息をつくと、ポケットからハンカチを取り出す。ひたいににじんだ汗をぬぐっていると、仲間たちから声を掛けられた。 「コリーン、調子いいじゃん」 「えへへ、まあね! みんなのおかげ、かな?」  コリーンははにかみながら答える。以前はスライムナイトにすら苦戦していた彼女だが、魔物の弱点を調べ、実戦経験を積むことで成長をとげ、今ではこの草原に出てくる魔物はほとんど倒せるようになっていた。 「それに新しい目標もできたし、こんなところで立ち止まってられないよ!」  彼女は思い返す。駆け出しだったころ、自分たちの仇をとってきてくれた8人の勇者たち。彼ら彼女らに負けないように、自分も精一杯頑張る。それが今の彼女を動かす原動力になっていた。 「じゃあ、そろそろ帰ろうか?」  コリーンと仲間たちは帰ろうときびすを返した。そこへ、 「ヒヒーン……」  何かのいななきが聞こえた。 「あれ? 何の声だろ?」 「皆さん宛てに依頼が来ています」  集められた生徒たちを前に、課外活動担当の職員は簡潔に切り出した。 「依頼内容は平原に出現したデスレイプニール1体の討伐、もしくは説得だそうです。モンスター生態学の教授から聞いた話によると、デスレイプニールは馬のような姿をした魔物です。高速で動き回るので、勢いを乗せた突撃に気を付けてくださいとのことです。それと……」  そこまで言うと彼は一息いれた。紙をぺらりとめくり2枚目の内容に移る。 「その魔物はどうやら毒を持っているみたいです。魔物にやられたと思しき生徒たちがみな毒に冒されていたので、皆さんも十分に注意してください」  魔物にやられた生徒たち? 生徒の誰かがいぶかしげな顔をした。その顔色を読み取ったのか、職員は次のように付け加えた。 「この依頼を持ってきてくださったのは武神・無双コースの生徒、コリーンさんです。彼女は今保健室で手当てを受けています。詳しい話は彼女から聞いてみてください」
お花見DEバトルロイヤル 鞠りん GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-03-19

予約期間 開始 2019-03-20 00:00
締切 2019-03-21 23:59

出発日 2019-03-27

完成予定 2019-04-06

参加人数 5 / 8
●  桜も満開になりそうなほどの、春うららかなフトゥームル・スクエア学園の広大な校舎内。  その日、学園の学生たちに、耳よりな情報が入って来た。  情報酒場スタリウムが、今年も大々的にお花見をやるらしい。  ――待ちに待っていた、お花見シーズン到来!  我がスタリウムも今年も参加だぞ?  今年のテーマは、その名も!!  『川の上の小さなおうちでお花見ちまちょ☆』だ。  スタリウムお手製の、梅と桜のお酒付き。  更に、更に、舟の甲板には『こたつ』を完備!  まだ少し寒い川の流れに身をまかせ、各自持ち寄った料理をつまみながら、名酒「梅の心」と「桜の力」で、1杯やろうじゃないか!  なお、川流しは昼夜1回ずつ、10隻運航、各10名定員になる。以上。 ――情報酒場スタリウム 「よっしゃぁぁぁぁー!! 来た、来た、来た、来たぁー! 今年も待ってたぜスタリウム。これは絶対に行かねばならん!」  この話を聞いた上級生は、すでに行く気はマンマンの状態。人目をはばからず酒が飲めるチャンスを、みすみす逃す上級生でもないらしい。  こんなイベントが行われる時は、学園もうるさくは言わないだろう。なにせ酒が付いているのだから。 「俺は夜に行きたい」  周りで聞いていたルネサンスの上級生も、もふもふの耳をピクリと動かし、少々小さめで、もふっもふの尻尾がパタパタと振り回すように動いていて、このお花見に期待を込めているのが、よく分かる。 「私は昼のリリー・ミーツ・ローズの桜並木を、川から見たいわ」  昼の運航で見られる、リリー・ミーツ・ローズの満開の桜並木を見ながら、ゆったりと料理とお酒を楽しむのか。  それとも、夜運航での酒の酌み交わしを楽しむのか。これが一番の悩みどころ。  だがもう1つの問題もある。 「今年もあるんだろ、あの場所取り争いが」  そう、お花見うんぬんの前に、毎年熾烈を極める場所取り争い。  舟は10隻、各10名定員、すなわちお花見舟に乗れる人数は100名。これはスタリウム式なのか、入れるかどうかは早い者勝ち……なのだが。 「あれはズルいわ。私たちフトゥールム・スクエアの学生は別ルートなんですもの」  レゼントに住む街人と学生とでは、初めから5キロ以上の差があり、街人は障害物だけのルートを走破すればよいが、学生は障害物の他に、魔法トラップもあるルートを走破しなければならないという決まりがある。 「だけどな、持ち武器や魔法が使える俺たちと、なにも持たないレゼントの街人が一緒に争えば、勝敗なんて丸わかり。 「だからこそのハンデなんだろ。そりゃ仕方がないさ」 「ほんの一部だけど、僕たちと街人が交差する場所はあるんだから、公平だと思うけどなあ」 ルートの中に数ヵ所は、街人ルートと学生ルートが交差する場所があり、ケガさえさせなければ、なにをしても良いというのが毎年のルール。  街人と言っても、冒険者なども含まれているのだから、公平と言われれば公平だと、街人も学生も思ってはいる。 「桜バトルロイヤルか、去年は知らん街人をジャンプで飛び越えた」 「ホウキは使用禁止ですもの。飛び越えるとか、すり抜けるみたいな技しか使いようがないのよね」 「攻撃魔法を使いケガをさせてしまえば即失格。毎年何人もの学生が失格しているんだよ。僕も危なかったけど」  攻撃魔法自体は使用禁止とは言われていない。でも、それにより街人や学生にケガをさせれば、その場で捕まり失格退場。学園もしっかりと見張っているというわけ。 「障害物は自力走破だが、交差する場所に街人が大量に魔法トラップを仕掛けるのがな」 「あれは絶対に魔法符よね。学園もグルなんだから」  確かに街人に配られている魔法符は、学園がスタリウムへ提供している物。しかも、街人は引っかからないように防御符まで渡している念の入れよう。 「俺は『危険回避』でかわしたけどな」 「僕は石をばらまいて発動させてから、安全な道を通ったけど」  上級生たちも、このトラップ回避が最大の悩み。ケガをさせることなく、自分の能力だけでくぐり抜けなければならないのだから。 「バトルロイヤルがメインなんだか、お花見がメインなんだか……ね?」  呆れるルネサンスの学生に、他の学生はただ笑うだけ。 「どちらも……でしょう? だってレゼント総出のお祭りみたいなものだもの。  そのご褒美が、舟でのお花見とお酒と思えばいいのよ。私は参加するわ、今年も負けないんだから」  それに頷く学生は多い。  この障害物競争じみたバトルロイヤルを勝ち抜いて、優雅に川からのお花見がしたい。その気持ちはみな同じなわけだ。  このおバカのようなイベント名とはうらはらのバトルなお花見は、あなたたちは初参加になるが、一風変わったお花見には興味を示したよう。  学生寮で当日の料理を考えながらも、同時に己の武器や魔法を確認しだした。
懐疑せし迷霧の薬毒 機百 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2019-03-15

予約期間 開始 2019-03-16 00:00
締切 2019-03-17 23:59

出発日 2019-03-25

完成予定 2019-04-04

参加人数 6 / 8
●そいつは廊下の寒気と共に  とある冷える日の放課後のこと。  フトゥールム・スクエアのとある教室の中は穏やかな陽光が差し込み、暖かな空気が満ちていた。  そこであなたは級友と談笑していたり、またはまだ授業から抜け切れず教科書と睨み合っていたり、または物思いに耽っていたり、もしかしたら最後の授業から机に突っ伏してずっと寝ていたかもしれない。  今日もこうして解放感に満ちた放課後を過ごせている。今に至るまでの授業が大変だったりすることもあるのだが、過ぎてしまえば辛さや苦しみも忘れてしまえる。特に、まだ冬が抜けきらないこの時期は陽光が肌を撫でてくるから更に心地いい。  実に緩く弛んだ時間が流れていた。と、誰もがそう思っていたところだった。  何の前触れもなく、ピシャっと音を立てて教室の扉が勢いよく開かれ、そいつは現れた。何事かと教室の皆が思わず、扉を開けた人物を一斉に注視した。  扉を開けたのは、女性の教師だった。だが、あなたが入学してからこの教師の授業を受けたことがないような気がする。それどころか、これまでに廊下ですれ違ったことすらあっただろうか……? 「ふむ、可能性の辰星に不足はないなァ」  何故か少し愉快そうに彼女は言った。一体何を言っているのだろう。  その教師は短剣を左の手の平でくるくる玩びながら、扉にもたれかかって教室中にいる生徒の一人一人を見つめていた。それはまるで品定めのようであり、時々肉食獣のようなほっそりとした目で見つめてはほくそ笑んでいた。  あなたは思わず体が震えるのを感じた。この教師が扉を閉めないから、だけではない。彼女からは何か不穏というべきか邪というか、どこか教師に似つかわしくない異様な気配を感じるのだ。 「おっと、そんな顔をしてくれるな。喜ぶといい。可能性に満ちたお前たちに、一つ課題を与えようではないか」  残念! あなたの束の間の平穏はここで終わってしまった。 ●悩める四重苦  今、その女性教師は教壇にもたれかかりながら、異様に嬉しそうな眼差しであなたたちを見つめながら説明を始めた。尚、扉はちゃんと閉めたが、部屋が陽光で暖まるのに少し時間がかかりそうだった。 「さてお前たちには、エルメラルダにいる薬師の手伝いをしてもらう」  エルメラルダ。この大陸の東の方にある、湖に面した村だ。あの辺りは特に自然が豊かとされているが、そんなところでの薬師の手伝いとは? 「果たすことは簡単だ。村から一時間ほど歩いた先にある森で、『クレリマ草』という薬草を10株ほど集めに行ってほしい」  少々数は多いが、確かにそれなら簡単そうだ。多くの生徒が安堵しかけた時に、彼女は言葉を続けた。 「但し、この時期の件の森は濃霧に覆われる。見通しが悪く現地の者でも遭難することが偶にあるそうだ。次に、クレリマ草によく似た『似せ赤葉』というのも生えている。これは毒草だから間違えないでくれよ? 後、ゴブリンを目撃したという情報もある。何匹いるか分からないらしくてな、深追いすれば怪我では済まないかもしれないなァ?」  前言撤回。課題というにはあまりにも条件が厳しすぎた。それだけの条件を簡単なように喋るこの女性教師に、生徒たちは頭を抱えた。  それでも生真面目な生徒が、クレリマ草と似せ赤葉の見分け方を教えてください、と訊ねた。 「ふむ。クレリマ草と似せ赤葉は共にシソに似た植物で、大きいもので約45cmほど伸びる。一目でこれと分かるくらい赤い葉が最大の目印だろう。主に、リンゴの木の根元に生えやすいようだ。さて、クレリマ草と似せ赤葉の違いだが、これは掘ってみないと分からない」  掘る? 思いがけないキーワードが飛び出て、生徒たちは目を丸くした。 「ああ。傷つけないように掘って、根の臭いを嗅ぐのだ。クレリマ草なら根から微かに甘酸っぱい匂いがするが、似せ赤葉は無臭だ」  採取するにしても一手間かかるとはなかなか厄介だった。手間をかけて探したはいいが徒労に終わることもある、ということでもある。  だが、ここで一つの解決策が思い浮かぶ。  クレリマ草をリリー・ミーツ・ローズから分けてもらえばいいのではないかと、ある生徒が言った。 「残念だがそうもいかなくてなァ。かつて、リリー・ミーツ・ローズ産のクレリマ草で薬を試作したこともあったそうだが、品質はエルメラルダ産のそれには及ばなかったのだそうだ。この原因は、エルメラルダ付近の例の森という環境の違いに起因すると考えられている。それに、だな」  まだ何かあるというのだろうか。 「クレリマ草は非常に弱い植物でな。一度摘み取ってしまえば2時間ほどで傷んでしまう。言い忘れていたが、現地で採取する時もあまり遊んでられんということだな」  どうあっても現地の森でクレリマ草を採取しなければならないようだ。しかも時間制限付きときて、多くの生徒が嘆息しかできなかった。尤も、何か抜け道があるようなら課題になっていないのかもしれないが。  これだけ厄介な条件が重なっているのだ。生半可な覚悟で挑んでは、間違いなく上手くいかずに終わってしまうだろう。それだけに、あなたも少し不安を覚えてしまった。 「最も優先すべき目標は、クレリマ草を採取して村の薬師に渡すこと。ゴブリンに関しては心配無用だ。後日、お前たちの先輩が討伐を果たすだろうからな。さて、あらかた説明は終えたな? 己の力量に見合わないと思ったのであれば、この課題は辞退してくれても構わん」  ここでまさか、逃げ道をこの教師の方から出してくれるとは思わなかった。何人かの生徒が、逃げ出すように席を立っていく。だが、それを咎められる者はここにはいなかった。 「とは言え私は、お前たちの可能性に期待してみたいのだよ。眩いばかりの、可能性というヤツになァ」  さて、あなたの答えは――?
命がけのいたずら 瀧音 静 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 とても難しい

報酬 ほんの少し

公開日 2019-03-16

予約期間 開始 2019-03-17 00:00
締切 2019-03-18 23:59

出発日 2019-03-23

完成予定 2019-04-02

参加人数 5 / 8
 魔法学園『フトゥールム・スクエア』には、多くの先生達がいる。  様々な種族、老若男女問わずに大勢居るその先生達には、もちろんその数だけ様々な噂がある。  どの先生が実はカツラを被っているだとか、あの先生がとある生徒から告白を受けていた、というようなものであったり、ローレライ種の先生専用の井戸がある。等々。  そんな、僅かな話の種にしかならない噂もあれば、思わず確認したくなるような、好奇心をくすぐられるような噂も当然ある。  そして、そんな噂を聞いてしまったら、行動に起こしてしまうというのはこの学園の生徒であるならば、至極当然の事だった……。  「ふんふふ~ん♪」  上機嫌に鼻歌を歌いながら、廊下を歩いて行くルネサンスの教員が一名。  手には『お徳用干しぶどう! 期間限定200%増量中!!』と書かれた特大の干しぶどう入りの袋を持っている、茶髪のロングヘアーにもふもふの獣耳尻尾。  【コルネ・ワルフルド】というその教員は、どうやら残り一割程になった袋の干しぶどうを補充するため、行きつけの店に出向いている途中らしい。  袋を口に当て傾けて、腰に手を当て、風呂上がりの牛乳やコーヒー牛乳よろしく干しぶどうというフルーツを飲み物が如く消費した彼女は、カラになった袋をゴミ箱にダンクシュートし、次なる干しぶどうを摂取するため、お店へと駆け出した。 「おかしい」  店を数軒回り、その回った全ての店にお気に入りの大容量干しぶどうどころかぶどうのぶの字も見当たらず、今までに体験したことの無いモヤモヤとした感覚に襲われた。 「絶対に変だよ!!」  誰に言うわけでも無く、自分の中で疑問とした事を口にするコルネは、周囲に他の先生達が居るにもかかわらず、声を上げて取り乱す。 「だってみんな私が干しぶどう大好きだって知ってるんだよ!? 毎日しっかり私のために仕入れてくれてるし、それが今日に限って無いなんて有り得ないよ!!」 「コ……コルネ先生?」 「ハッ!? そう言えばお店の人はみんな私が今日買いに行ったらなんとも言えない表情をしていた!? ――もしかして……誰かが買い占めた? つまり……陰謀!?」  干しぶどうの摂取がままならない為か、色々と変な想像というか妄想を始めるコルネだが、先ほどコルネを心配するも無視された一人の教員から、この『消えた干しぶどう事件』に関する情報がもたらされた。 「コルネ先生? ……その――最近生徒達の中で噂になっている話があるのですが……」  関係ない話を振るな。私は今干しぶどうの事で頭が一杯で忙しいんだ。  そう言いたげな目でコルネは睨み付けてしまい、思わず話しかけた教員はヒィッと悲鳴をあげてすくみ上がってしまう。  が、話を続けてくれた。 「そ、その噂というのがコルネ先生に関するものでして……」 「何?」 「ヒィッ!? え、えぇと……コルネ先生が干しぶどうを一日摂取しないと大幅に弱体化するというもので……」 「つまり今の状況は……?」 「生徒達が買い占めている可能性が――」  教員がそこまで言ったとき、既にコルネの姿は、残像だけをその場に残し、どこかへと消えていた。  思わずへたり込んでしまった教員の耳に、学園中に響くコルネの慟哭が届く。 「私の干しぶどうはどこだ~!!! ……買い占めた生徒達はグラウンド千周は覚悟しておくんだね!!!」  放課後の夕下がり、いたずらで干しぶどうを買い占めた生徒達と、その干しぶどうを狩猟するコルネ先生の戦いが今――幕を開ける!
花粉死すべし慈悲はない 宇波 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-03-16

予約期間 開始 2019-03-17 00:00
締切 2019-03-18 23:59

出発日 2019-03-23

完成予定 2019-04-02

参加人数 7 / 8
「くっ……! 俺はもうここまでだ……!」 「諦めないで! きっとまだ道はあるはず!」 「無理だ……! 無理なんだよ、俺にはできない!」 「なんてこと……! ああ、だれか、だれか!」  嘆く二人の男女の元に、ひとつ、ふたつと暗い足音が忍び寄っていた。 「えー、先ほど届いた依頼です」  学園窓口の受付のその目は心なしか赤い。 「どうしたんですか? 感動ものの映画でも見ていたんですか?」  生徒の軽口に、かゆいんですよ。と目を擦って返す。 「くしゃみも止まりませんし、うまく考えがまとまらないんですよ……。それはさておき、依頼内容の説明をしまっしゅん!」  くしゃみをこらえきれずに、可笑しな語尾でセリフを締めくくる受付。  ほんのりと頬を染め、誤魔化すように書類を捲る。 「依頼者は、街の外れに家を持つご夫婦。依頼内容は、彼らの住む家に魔物が住み着いてしまったそうなので、それらの退治をお願いしたいとのことです」 「魔物の詳細は?」  本題に入ったことにより、真剣味を滲ませたひとりが聞けば、受付も同じく真面目に返す。 「はい、住み着いた魔物は『ポーレンアニマル』。頭部に草や、人間のこぶし大程度の小さな木を生やした動物型の魔物です」 「攻撃手段は?」 「花粉を飛ばします」 「……それだけ?」 「はい。あとは体当たりもしてきますが、その攻撃能力は皆無に等しいと言っていいでしょう」  目を中々擦れないためか、大粒の涙を浮かべた受付。  彼の身を案じつつ、訝し気な表情を浮かべたひとりが質問する。 「とても嫌な予感しかしないのだけれど……。なにか、そう、なにか些細なことに思えて実はずっと重要だったことなんかを隠してない?」 「隠しているつもりはありませんが、そうですね、あえて付け足すとするのならばくしょん!」  すんすんぐしゅぐしゅ鼻を鳴らしながら、懸命に続けようとする受付の姿はいじらしく哀れを誘う。 「ポーレンアニマルはっくしゅん! 頭部に草や小さな木を生やした、『小』動物型の魔物です。頭部に生やした植物の種類も、イネやスギ、ヒノキなどの植物です」  生徒たちに冷や汗が流れる。 「ポーレンアニマルは物理的な攻撃力は皆無、加えて一般人でも、その辺りにある木の棒で一撃でも殴れば倒せる程度の脆弱さを持ちます。しかし、依頼人が対処できなかったその訳は――」  一瞬溜め、しかしその間にもくしゃみを止められなかった受付は、悪態をつきながら一枚の書類を見せる。  覗き込んだ生徒たちは息を呑み、あるいは頬を染め、うっとりと目を蕩けさせる。 「か、かわいいー!!」  そこに描かれていたのは、片手で掴めそうなほどの小動物たち。  頭部には確かに、小さな木々が生えてはいるが、その姿は愛らしい、その一言に尽きる。  生まれたばかりで、足をぷるぷると震えさせ、立ち上がろうとするマンチカン。  遊ぶのが楽しいと言いたげに、目を溌溂(はつらつ)と輝かせ、自分の尻尾を追いかける小さな柴犬。  餌でも探しているのか、ぴんと耳を立ててふこふこと鼻を動かしているウサギ。  頬袋一杯に餌を詰め、きょとんとした顔を向けているリス。  そのほかにも、カワウソやモルモットなどなど……。  アニマル天国かと勘違いするような風景が、そこには広がっていた。  事実、頭部から木などが生えていなければ、動物園の小動物ふれあいコーナーだ。 「ポーレンアニマルは、その愛らしい容姿と花粉を飛ばして身を守ります。依頼人はこの可愛さにやられ、対処ができなかったようです」  ほう、と熱っぽくため息を吐く受付に、何かを感じた生徒は一歩後退る。 「ころんと転がるぷにぷにボディ、仕草はまるでボールのよう。体当たりなんてされた日には、もふもふの感触に翻弄され、その日の仕事が手につかなくなること必至、なんてうらやまけしからん!」  もふもふ好きなのかな。  生徒たちの生暖かい視線に、こほんと咳払いをして取り繕う。 「ポーレンアニマルの放つ花粉は、たちまちのうちに鼻をむずむずさせ、くしゃみを引き起こします。人によっては目もかゆくなります。やがて酸素が行き渡らなくなり、思考能力が低下します。可愛いように見えて、凶悪な魔物なのです。けして、けっして許してはなりません!」  どっちの立場で応援しているのかと問いたくなる受付の熱の籠った演説は、彼の私怨も含まれているようにも感じた。 「ぶえぇっくしょん!」  生徒たちは彼の盛大なくしゃみを背後に聞きながら、件の家へと出立したのだった。
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