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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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デート日和のセプテンバー 桂木京介 GM

ジャンル ロマンス

タイプ EX

難易度 とても簡単

報酬 なし

公開日 2019-09-16

予約期間 開始 2019-09-17 00:00
締切 2019-09-18 23:59

出発日 2019-09-23

完成予定 2019-10-03

参加人数 8 / 8
 瞳は澄んだ菫色。水気を帯びた眼差しは、見つめる者自身の姿を鏡のように映し出す。  現在、そこに映り込んでいるのはこの学校の学園長、【メメ・メメル】だ。  「ラビーリャたんよ」  はい、と【ラビーリャ・シェムエリヤ】は抑揚を欠いた口調で答える。褐色の肌、銀色の髪、均整の取れたスレンダーな体躯、人形めいた印象を与える少女だ。 「学園生活には慣れたかえ?」 「慣れたといえば、慣れたような」  青い鳥でも探すように、しばらく視線を天井にさまよわせてから続ける。 「……でも慣れていないといえば、慣れていませんね」 「いやどっちやねんっ! っと、一応ツッコんではみたものの、どーもラビーリャたん相手だと勝手がわからんなぁ」 「すいません」  ラビーリャは頭を下げた。やっぱり調子狂うなァ、とメメルは口を『へ』の字型にしてしまう。 「いやいいんだよ、いいんだけど~、その、慣れたような慣れてないような、と思うのはなぜなのか教えてくれんかね、チミィ」  ここは学長室、豪奢な革張りのソファに向かい合って座り、メメルは定例の職員面談をしているのだった。いつも遊びほうけているように見えるメメルだが、代表者らしい仕事もするのだ。たまには。 「私は……用務員ですから……ふだん、あまり生徒に接することがないから、かもしれません」 「それだ!」  ぴょんとメメルは立ち上がった。急に立つとメメルの胸にはもれなく、わさっと揺れるというエフェクトがかかる。 「ラビーリャたん、チミに足りないのは生徒との交流だったんだよ!」 「交流……ですか。直流と交流……?」 「そういうボケいいから、マジでマジで。ともかくなラビーリャたん、資金はオレサマが太っ腹に出してやるから、男子生徒いや女子でもいいけれどもと、デートのひとつでもしてくるのだ!」  そうだそれがいい、となぜか満足そうなメメルなのである。 「デート? ……『日付』ですか?」 「だからそういうボケはいいって、話進まなくなるから! あー、デートというのはアレだよ、ふたりきりで手をつないで歩いたりして」 「はい」 「盛り上がったらチュッチュしちゃったりして♪」 「そうですか」 「イヤ~ンバカ~ンとかしたりもするかも☆」 「急に具体性がなくなりましたね」 「だー! そんなことオレサマに言わせんな! 具体的にアレしろコレしろというのはないけど、要はふたりで買い物なり遊びなりしてこい、ってことだっつーの! いまや夏の暑さも終わって、いいアンバイにおデートが盛り上がるセプテンバーの到来、行くならこのとき! ってやつなのだよ☆」  なんだか勝手に決められているように見えるだろうが、特に疑問をいだくこともなくラビーリャは従うことにした。  ところで、とラビーリャは言った。 「誰と行けばいいんです?」 「ま、誰かいい相手を見つくろっとくよ、オレサマが。誰と出かけるかは待ち合わせ場所までわからんことにしておこう」  当日をお楽しみにっ♪ となにやら嬉しげなメメルなのである。  こういうのを世間では『ブラインドデート』と言うとか、言わないとか。    ★ ★ ★  どうもこのブラインドデートという発想が気に入ったらしい。その後もメメルは、この話を次々と職員や学園上級生に持っていくのだった。 「私が学生と? それ問題になったりしません? 校長公認って……いいんですか? え、隠密指令?」  隠密指令と言われて、【ユリ・ネオネ】は満更でもなさそうな顔をした。 「オレがデート? 校長それマジっすか?」 「マジなのだ。マイたんにはなー、よき先輩として下級生を導く義務があると思うんだよオレサマは☆ な、頼むよ新入生のためだと思って」  当惑した様子ながら、メメルに新入生のためと言われ【サラシナ・マイ】は断りづらそうにしている。 「ヤローと遊んだりするのはいつもやってんだけど……」 「だったら女の子ちゃんとデートするがよい☆」 「オレ女の喜びそうな場所とか知らないんすよ、いやマジで! いや自分も女っすけど……」 「……校長、私は結婚しています」 「脳内で、じゃろ」  痛いところを突かれたらしく、【ゴドワルド・ゴドリー】はくるり振り向いて壁に頭をもたれさせた。 「お~ほっほっほ、どんと来いですわ!」  わたくしにかしずきたい者はどんどん来るといいですことよ、となぜか【ミレーヌ・エンブリッシュ】は自信満々である。  なお、箱入り娘だったミレーヌは生まれてこの方デートらしいデートをしたことがない。 「ごはんおごってくれるならどこでもいくの~! レストランとか」  どこでも、と言いながらレストランと言っているあたり、さすがの【キキ・モンロ】といえよう。 「……」  無言だ。全身甲冑の戦士【ネビュラロン・アーミット】は。 「いや~ん、ネビュラロンたん黙っててこわーい☆」 「そろそろアタシのところに来るって思ってましたっ」  腕組みして【コルネ・ワルフルド】はメメルを待ち受けていた。 「いーですけどアタシは健康的なチョイスにしますからねっ! マラソンとかクロスカントリーとか!」 「それデートか……?」    ★ ★ ★  ころはセプテンバー、涼しくなってきた季節。  メメルの思いつきによるブラインドデートがはじまろうとしている。  どこへ行くかはあなたの自由だ。街で買い物か観光地でピクニックか、まさかまさかのクロスカントリーか!?  お前もブラインドデートにしてやろうか……。  お前もブラインドデートにしてやろうか!! 
芸術の秋、食欲の秋、おもしろそうな秋? GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-09-13

予約期間 開始 2019-09-14 00:00
締切 2019-09-15 23:59

出発日 2019-09-21

完成予定 2019-10-01

参加人数 2 / 8
 芸術の秋、食欲の秋、スポーツの秋、読書の秋、紅葉の秋、実りの秋。秋と言えば色々な秋と言えば、その多くは外ででしかできないものばかり。つまり部屋の中でのんびりとしているのはもったいない!!  学園の西側に広がっているスペル湖という広大な湖では、特別授業という名目でスケッチ大会が開かれようとしていた。 「はーい、みんな揃ったかな? それじゃ、秋のスケッチ大会初めていこっか♪」  特別授業ということもあってか、引率は武神・無双コースで教師をしている【コルネ・ワルフルド】先生。  今でこそコルネ先生=干しぶどうというイメージが強いが、干しぶどうが関わらなければものすごく面倒見がよく、生徒からの信頼も厚い。  決してコルネ先生が食べようとしている干しぶどうを奪ってはいけないという暗黙の了解はあるが、こんな時に生徒たちをまとめてくれるのはいつもコルネ先生だった。 「それじゃ、審査員のメンバーを紹介していくね♪ まずは芸術の秋部門から。芸術の秋部門はみんなのアイドル、【エミリー・ルイーズム】ちゃんだよ♪」 「えへへ、なんだか改めて言われると照れちゃうな☆ みんな、綺麗な絵を期待してるよ☆」 「エミリーちゃん、元気のいい挨拶ありがとう。それじゃあ次は、食欲の秋部門担当の【キキ・モンロ】ちゃん」 「キキなの~。なんだかお腹が減ってきたからおいしそうな絵をいっぱい持ってきてくれると嬉しいの~」 「えっと……、絵は食べちゃダメだからね? それじゃあ最後に、我らがフトゥールム・スクエアの校長、【メメ・メメル】先生」 「はいは~い、メメたんだぞ☆ 今日は俺っちのために集まってくれてありがとうなのだ! 俺様の担当はおもしろそうな秋部門だから、とにかく面白そうな絵を描いてきてくれよな☆」  芸術の秋、食欲の秋と続いて次はスポーツの秋か読書の秋かなと思っていたが、ここで期待を裏切らないのがメメたん先生。最後はおもしろそうな秋部門である。  もはやそれは秋と関係なのでは? とも思ったりするが、メメたん先生が審査員を務めている部門なので仕方がない。メメたん先生が秋と言ったらそれは秋なのだ。  審査員の紹介を終えたコルネ先生は学園から持ってきた段ボール箱を開き、中に入っていた筆やパレッドを近くにいる生徒に一人一人手渡しで配っていく。  どうやらこのスケッチ大会では画材の指定はないらしく、鉛筆や絵の具、なんならその場に落ちていた石炭など、絵を描けるものであればなんでもいいそうだ。  今日は特別授業という名目でスペル湖に来ているが、絵の出来によって評価が決まるなんてことはない。メメたん先生がたまたま暇をしていて、天気が良かったからスペル湖に遊びに来ただけである。  スケッチ大会なんてものは、この時間を特別授業にするための名目でしかない。これがフトゥールム・スクエアの日常だ。  「それじゃ、みんな頑張ってきてね~。お昼までには戻ってくるんだよ~」  それぞれ好きな画材を持った生徒たちはコルネ先生の掛け声により、思い思いの場所に散っていく。  お昼ごはんを食べる頃には学園に戻らないといけないのであまり時間はないが、たまには外でのんびりとしながら絵を描いてみるのもいいかもしれない。生徒たちは何を描こうかと辺りを散策しながら、スケッチ大会を満喫することにした。
可笑しなお菓子クラブ 根来言 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-09-10

予約期間 開始 2019-09-11 00:00
締切 2019-09-12 23:59

出発日 2019-09-18

完成予定 2019-09-28

参加人数 4 / 8
 テーブルクロスには、蝶をあしらったレースを。  家具のひとつひとつには、花をあしらったカバーを。  小鳥の描かれたティーセットの食器には、クリームたっぷりのケーキを。  『かわいい』ものをたんと集めた一室、2人の女性がただ、優雅に紅茶を啜っていた。  女性のうちの片方。長身のドラゴニアの女性【ローズ・スカーレット】は、この空間に合わせたように上品なドレスに身を包む。  そして、飲みかけの紅茶を置く。  辺りの家具、ケーキ、その全てに視線を流し、最後に、手元にあった紅茶を見つめ、はにかむ。 「……ふふ、ふふふ、『かわいい』! 流石、さっすが私! 超可愛いですわ!」  淑女にあるまじきその大声に、隣に座る執事服を着た女性が小さく咳払いをする。 「お嬢様、『良い淑女』になるからと言って、お父様に出資していただいた店でしたよね? ここ。何時でもボクは、お父様へ報告できる。ということをお忘れなく」  もう1人の女性はそんなローズを冷ややかな目で見つめる。  ローズとは対照的な小柄なヒューマンの少女【ラズニア・ホワイト】は、ただ冷静であった。 「うぐ……、も、勿論。私は淑女ですもの。はしたない真似も、そして悪だくみなども一切ありませんわ! そう、全ては私が領民、いいえ! 皆に慕われる後継ぎとなる、その為の店ですもの!」  『ドルチェ・ハウス』。学園内に新設されたばかりの、小さな建物の名前である。  貴族令嬢であるローズによって(無理やり)建てられたそこは、小さなデッキ席が付けられている、かわいらしいカフェのような構造をしていた。  建物の中も、ローズによって(無理やり)集められたかわいい物が、これ見よがしに使われている。  しかし、店のような外観をしてはいるものの、実は店として使う予定は毛頭ない。  ドルチェ・ハウスの表立っての目的……それは、新しくローズが設立予定のお菓子好きな生徒の集まるクラブ『ドルチェ・クラブ』の集会所として使うこと。  因みに、裏の理由は、ローズの『かわいい物に囲まれながら美味しいものを食べたい、作りたい』という欲望。それだけだ。  勿論、申請を行えば部活棟に部屋を準備することは可能だろう。しかし、ローズの『部活棟を改造しても、かわいくない』、という一言で急遽、新しく建てられたのだ。   「それはそうと、セバスチャン。広報活動は進んでいるかしら?」 「ボクはセバスチャンではありませんよ、お嬢様。クラブ設立に向けてのメンバー募集、ですよね。ええ、とても滞りなく順調に。……ただ」  顔色1つ変えず、淡々と話すラズニアであった。しかし、話が進むにつれ、言い淀んだ。 「うまくいっているのでしょう? なら、何故嬉しそうにしないの? もしかして、あまりよろしくない方々がいらっしゃったとか……?」  それはない。そう言いかけるローズであったが、彼女は一応、貴族の端くれである。  彼女の一族に恨みを抱く輩も、もしかするといるかもしれない。 「ええと、大丈夫、です。皆様お菓子作りやかわいいものに、非常に好意的です。ボクが言いたいのはですね。偏っている、ということです」 「偏っている?」 「えぇ、お嬢様の『甘味とお茶で、学園内の貴族や有力者、それから伸びるであろう勇者候補方とのコネクションを作る』、というお考えは大変すばらしいと思います。会話から情報を聞き出すことも、商談を行うことを考えての建物でございますし、お父様も期待されております。ゆえにボクもお力になりたいと考えています」 す」  淡々と語られる過去の嘘、出まかせ。ローズは思わず頭を抱えたくなった。 ラザニアの言葉は、以前父親へ、出資してくれるよう説得するべく、ローズ自らが言った言葉であったからだ。  勿論、そのような考えは今も持っていない。持っているのは欲望だけだ。 (あの時の私、なんでそんなに頭が回ったのかしら? あぁ、ラズニアの全てがわかっているって視線が痛いわ)  そんなローズの内心を知ってか知らずか、ラズニアは続ける。 「しかし、甘味という言葉からか。それともこの建物の外観からか。希望者は女子、そう。女子生徒ばかりなのです。男性がございません」 「……ええと、それに何か問題が?」  可愛らしくていいじゃない、ドレスの着せあいっことか、ガールズトークとかしてみたいわ。 「大ありです。貴方は女性とだけコネクションを結ぶおつもりですか? いずれお嬢様は、男性と親しい間柄になることもありましょう。それに、スカーレット家と縁の深い商人方、男性の方が多いですよね? 貴族として、皆に慕われる後継ぎとなるべく。男性に、今のうちに慣れておくべきかと。何時までも逃げるわけにはいきませんよ?」 「……、……ん、んん~……はぁ、分かりましたわ。ええ、そうですね、必要ですものね!」  昔、ローズの屋敷には父親以外の男性がいなかった。そのため彼女はあまり男性に免疫がなく、学園に入学した現在も無意識に男性を避けてしまうのである。  ラザニアをはじめとした『男装をした女性』や、『女装をした男性』とは会話をすることができるようになった。しかし、かといってこれから出会う男性の全てに女装を強要するわけにはいかない。 「で、では。こうしましょう。近日中にどういった活動を行っているのかを知っていただくため、体験会のようなものをしましょう。店……としても機能できるような構造に作ってもらいましたので、文化祭の出店のようにして。キッチンはもう使えますわね?」 「ええ、問題なく。問題なのはどうやって男性を集めるか、ですが」 「……男性が入りにくいというならば、男性がいるという安心感を与えるとよいだけですわ。男性何人かに頼んで、客や店員役になっていただきましょう。ツテで男性の客を呼んでいただければ一石二鳥ですわ」  女性しかいないから入れない、入りにくいというならば初めから男性を入れてしまえばいいのだ。 「しかし、お嬢様。このような店、もし女性しか手伝いの応募がなければどういたしますか?」 「……ラズニア、執事服の在庫。確認をしてください」 「……お嬢様?」 「男装女子は、男子のうち。ですわ。それに……かわいさの中にかっこよさが入って……最高じゃないですかっ! 私はそれが見たい、ですわ」 「お嬢様、願望が口に出ています」
ゆうしゃのなつやすみ。 白兎 GM

ジャンル 日常

タイプ EX

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-09-06

予約期間 開始 2019-09-07 00:00
締切 2019-09-08 23:59

出発日 2019-09-16

完成予定 2019-09-26

参加人数 8 / 8
 時は流れる。それは必然だ。  この世に生まれ落ち、『人生』という砂時計をひっくり返されたその瞬間から。さらさらと砂は零れ行き、嵩(かさ)を増していく。  その無常さを、夢想論者は『運命』などと表現するのだろうが、つまり私たちは、この砂の流れの上を歩き逝く存在にすぎないのだろう。  いつ訪れるかもわからない、終わりに向かって。着実に。  時が流れる。それは有限だ。  ならば、大切なのは。時折振り返り、砂の上に残した足跡を、拾い集めることなのかもしれない。  忘れないために。憶えているために。『わたし』が生きた、その証を。 ◆  夏も過ぎ去ったとなれば、吹き行く風は肌寒い。  今日も忙しなく時間割通りの授業を終えた『きみ』は、中庭に備え付けられているベンチに座っていた。  何をするわけでもない。ただのんびりと、青と赤が混じり合う夕空のグラデーションを眺めていただけだ。  けれど理由はあった。単純に、疲れていたのだ。ふぅ、と息をつく動作ですら、体が重く感じられる。  そんな『きみ』を見かけ、思うところがあったのだろう、ひとりの男性教諭が声をかけた。 「さすがにそう簡単には、戻りませんか」  思わぬ声に『きみ』が視線を向けると、声色通りの柔らかな微笑みと目が合う。  ハーフリムタイプの眼鏡をかけた金髪の男性教諭……【シトリ・イエライ】は、魔導士らしいローブに身を包み、やけに分厚い本を抱えていた。  しかし、戻らない、とは何をさしているのだろう。 『きみ』が答えに迷っていると、シトリはベンチの空いている空間、つまりは『きみ』と少し距離をあけた隣に、腰を落としながら、 「夏休みが明けてから、そんなに日も経ってはいませんからね。授業や課題に追われる生活に、まだ体が戻れていないのでは、と思いまして」  あぁ、なるほど。彼はこう言いたいのだろう。長期休みを終え、これまでの生活に戻っただけなのだとしても、その差に体が追い付いていないのではと。 『きみ』はそれに対し、なんと答えただろうか。すぐに戻れると自分自身を叱咤した? それとも夏休みに戻りたいと冗談を言ったか、それとも。  なんにせよ、シトリは笑って聞いただろう。膝の上に乗せた書物――表紙には、『毒を持つ魔物の対処法』と書いてある――を撫でながら、 「空も、風も。葉の色さえも、もうすっかり秋めいてしまいましたね。あんなにも避けていた夏の暑さが、少し懐かしく思うほどです」  確かにそうだな、と『きみ』は思う。少し前ならば、この時間の空はすっかり夜の帳を広げていたし、夏の暑さのせいだろう、風も涼しく感じられた。  けれど今は違う。空はまだ夜には遠いし、風はひたひたと冬の寒さを連れてくる。  あぁ、確かに。夏は終わったのだ、と『きみ』は思う。  アルチェで行われた臨海学校を筆頭に、『フトゥールム・スクエア』で過ごした初めての夏は、なかなかに騒がしかった。  だからだろうか、あっという間だった気がする。期間にしてひと月半なのだから、けして短くはないはずなのに。 「とはいえ、学生の希望次第で特別授業も開かれますし。課題に関しては通常通りですから、ひとによっては夏休みのほうが忙しかったのかもしれません」  そういったシトリは、ゆったりとした声で『きみ』に尋ねた。 「あなたはどうでしたか? この夏休み、どのように過ごされました? 私は特に、平常時と変わりありませんでしたが……」  ゆるりと吹いた風が穏やかな問いかけを運ぶ。その言葉に、『きみ』はどんな時間を思い浮かべたのだろうか。  久しぶりに帰った実家で、のんびりとした時間を?   それとも『ゆうしゃ』の卵らしく、課題や修練に明け暮れた日々だろうか。 「ひと夏の思い出などは、できました?」  興味深げにこちらの返答を待っている男性教諭に、他意は見られない。であるならば、これは彼の完全な興味による質問だろう。  成績や評価が関係ないのなら、体裁を取り繕う必要はない。それならば、『きみ』は。  どんな夏の思い出を、口にするのだろうか。
急募! 秋モノ私服コーディネーター! じょーしゃ GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-09-09

予約期間 開始 2019-09-10 00:00
締切 2019-09-11 23:59

出発日 2019-09-15

完成予定 2019-09-25

参加人数 2 / 8
 季節は、夏。  いや、夏も終わりに近づき、秋が訪れようとしている。  半袖では少し肌寒さを感じるようになってきたこともあり、【ティア・リューシャ】は上着をクローゼットの奥から取り出そうとしていた。  扉を開けて、綺麗に畳んである秋モノの洋服たちの中からお気に入りの一枚を引っ張り出す。  アイボリーを基調としたニット素材のアウター。  特徴といえば、木で作られた可愛い丸ボタンが五つ付いていることと、袖周りが膨らむように作られているビッグシルエット型というところか。  久しぶりに袖を通してうきうき気分になる……と思いきや、ティアはがっくりと膝を落として地面を見つめる。 「嘘……そんな……」  『ビッグシルエットで可愛く着こなすぞ!』と、昨シーズンにワンザイズ大きく購入したはずのアウター。  そう、ワンサイズ大きかったはずなのだ。  それを今のティアは、なんとぴったり着こなせているではないか。 「嘘嘘嘘嘘っ! 絶対そんなことないもん!!」  衣装部屋を抜け出し、脱衣所へ猛ダッシュする。  目指すはただ一つ、体重計。  念のためできるだけ薄着になり、体重計の神様を怒らせないように一礼してから、そーっと足を乗せる。  針が指した数字を見て、一瞬天を仰ぎ、涙ぐみながらそこを降りた。 「あは……あははー……」  誰もいない脱衣所で一人、微妙な笑いを漏らしながら、頭の中では走馬灯のように夏の楽しかった思い出がよみがえる。  友達と海水浴に行って、豚肉の脂とソースの香りが絶品の『海の家特製焼きそば』を食べたり。  夏祭りで浴衣を着て、りんご飴を二個も頬張ったり。  はたまた、『女子会スイーツ巡り!』と題して王国中の目ぼしいスイーツ店を丸三日かけて回ったり。  そんな日々を思い出しては、『あぁ、夏、めっちゃ楽しかったなぁ……』と。 「いや!! 食べてばっかりじゃん!!!!」  自らの思考に適切なツッコミをナイスなタイミングでクリーンにヒットさせた。  いや、こんなスキルいらねぇよ。  もう一度衣装部屋へと戻り、昨シーズンに買った洋服たちとにらめっこしながらポツリと、声を漏らす。 「洋服、買わなきゃなぁ……」  思い立ったと同時、週末空いてそうな友人に片っ端から声をかける。  ぴったりになってしまったアイボリーのアウターを羽織り、王国トップクラスの大きさを誇る市場に足を運ぶのであった。
土産物屋の苦悩 海無鈴河 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-09-08

予約期間 開始 2019-09-09 00:00
締切 2019-09-10 23:59

出発日 2019-09-15

完成予定 2019-09-25

参加人数 4 / 8
 アルチェの街。  様々な店が軒を連ねる、フィオレモールの一角に人だかりができていた。  店の名前は『フォルテ』。最近できた土産物屋だった。  通りを歩き、何気なくその店に近づいた男性観光客2人組は、人だかりの熱量に思わずぎょっとして後ずさった。 「すげぇ……キラキラしてる……」 「俺には眩しいよ……」  人だかりは全て女性で構成されていた。  まだ10歳にもならないような小さな女の子から、腰の曲がったおばあ様まで。ありとあらゆる世代の女性が揃っている。  彼女たちはうっとりとした表情を浮かべ、店内を一心に見つめていた。  その視線の先には。 「いらっしゃいませ、お嬢様」  そう笑顔で言い、女性客をエスコートする見目麗しい店員。 「とてもお似合いです、お嬢様」  女性客に髪飾りをつけてやりつつ、優しく褒める見目麗しい店員。  そう。『フォルテ』はイケメン店員による丁寧な接客で、女性客のハートをつかんでいたのだった。  そんなきらびやかな店内の様子を、静かに見つめる男が居た。 「はぁ。相変わらずお向いさんは盛況なことで」  男の名前は【リンツ・シュライデン】。  サビアビーチに昔からある土産物屋『海猫』の3代目の店主だった。  『フォルテ』ができてからというものの、向かいに位置する彼の店は閑古鳥が鳴きっぱなしだ。  今も店内には1人の客も居ず、彼はこうして店の扉の隙間から向かいのライバル店ウォッチングにいそしんでいたのだった。 「しっかし、眩しいな……ウチとは大違いだ」  彼は棚の商品にハタキをかけつつ、ちらりちらりと向かいの様子を盗み見る。  丁度、店員がお土産を購入した女性客を見送りに出てきたところだった。 「またいらしてくださいね、お待ちしております」  青年の優雅な一礼にきゃあ、と黄色い声があがる。  リンツのところにまでその声は聞こえてきて、彼はうーんと唸った。 「……ウチも『いらっしゃいませ、お嬢様』って接客すればいいのか?」  その問いかけに答える声は当然無い。 「俺イケメンじゃないし無理か」  リンツは自分でそうオチをつけると、ふと棚の商品を手に取った。 「ウチの商品も悪いわけじゃないんだよなぁ」  リンツは『珍味・ジェムフィッシュの干物』と書かれた袋を見つつ、つぶやいた。ジェムフィッシュの干物は見た目こそアレだが、美容に良い成分がふんだんに含まれているという。  他にも店内には、海産物の加工品や工芸品など様々な商品が並んでいる。そのどれもが、リンツが店を継ぐ前から扱われていた物だ。 「いい加減古くさいのか……? 新しい商品も開発しないと……」  今度は『海猫のランプ』を磨きながらぼやいた。色ガラスが使われているランプを慎重に手に取り、柔らかな布で磨いていく。  このランプも先代が開発した商品だった。  リンツはここで、今まで考えていた内容を指折り数えて、頭を抱えた。 「無理! やることが多すぎる!」  もともと身内だけで経営していた店のため、リンツの他には時々手伝いに来てくれる近所のおばさまくらいしか店員はいない。  作業を行おうにも、手が足りないのは当たり前だった。 「……一旦落ち着こう」  はあ、と息を吐いたリンツはそう言うと、店の奥に引っ込んだ。  店の奥は居住スペースになっている。  キッチンでお茶を淹れ、お茶請けに余り物のクッキーを用意しようとして、リンツは手を止めた。 「皿、洗ってないなあ」  キッチンには朝食の皿がそのままの状態で置かれている。今朝は寝坊をしてしまい、片付ける間もなかったのだ。  仕方なく、リンツは海で拾ってきた『鳥貝』という貝殻を皿代わりにして、クッキーを載せた。  そしてリンツは店のカウンターの中へと戻って行く。相変わらず、店内には誰の姿も見えなかった。 「……何とかしないとだよなぁ。店の存続がかかってるんだ」  リンツはポリポリとクッキーをかじりながらつぶやいた。  このまま何もしないでいれば、いずれ店はつぶれてしまう。  先祖代々続いてきた、歴史のある店だ。なんとなく継いだ店だが、リンツにも思い入れはあった。  リンツは覚悟を決めると、店の一大改革に乗り出すことにした。    手始めに彼は、手伝ってくれる人材を募集することにした。  最近よく噂を聞く、魔法学園の生徒達。 「若者の意見も取り入れたいしなぁ、一回尋ねてみるか」  こうしてリンツは学園へ相談を持ちかけたのだった。
黒き卵の孵化 秀典 GM

ジャンル 戦闘

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2019-09-02

予約期間 開始 2019-09-03 00:00
締切 2019-09-04 23:59

出発日 2019-09-10

完成予定 2019-09-20

参加人数 4 / 8
 大陸のあまり人には知られていない隠された何処か。  地下深くかもしれないし、異世界の果てなのかもしれない。  海の底にあるのか、川の中にあるともしれない封じの神殿と呼ばれる場所。  神殿と呼ばれるだけあって外見は神殿である。  その内部はかなり広く、大きな柱が幾つも立ち並らんでいた。  柱と柱を繋ぐように、赤いカーテンのような布が道を作っていた。  年に一度の清掃のおりに、聖女達の力が込められている。  初めてみる人間は、不思議な感覚を感じるかもしれない。  その作られたの赤い道の奥には、多くの卵が並んでいる。  白や青、色々な色があるのだが、それこそがこの神殿に封じられている何かだろう。  卵の中に何が入っているのか、今は誰も知る術がなく、生まれて見なければ分からない。  その中に詰まっているのが、人の希望であるとは限りはしないのだ。  この夜、護られている黒い卵の一つがドクンと鼓動を始めた。  揺れて、殻にヒビが入り、その内からは何者かの瞳が覗く。  それに初めに気付いたのは、今宵の見回り役であった聖女見習いの、【ミレイズ・リレイズ】と、【モリガリア・モリモリ】の二人だった。  二人は今年この神殿に来たばかりの、同い年の少女達である。  適当に話しながら神殿を見回っているのだが、ミレイズの足が止まって道の横を見ていた。  何事かとモリガリアがそれを覗くと、ミレイズが大きく叫び出した。 「あ~、割れてるううう! どうしよどうしよどうしよどうしよ!」 「おおおおお落ち着くのよミレイズ、まずは水を飲みに行きましょう。それから一晩寝てグッスリ考えてからもう一度寝るのよ!」 「違うよ、それは落ち着きすぎだよだよ! ていうか寝たら駄目なんじゃないかな?! 何もしなかったら不味いんじゃないの。まずいんじゃないの?!」 「まず一度深呼吸をしましょう。ゆっくりすって~」  二人は大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出して行く。 『す~~~~はぁ~~~~~!』  もう一度卵を見るも、やはり卵は割れていた。 『やっぱり割れてるうううううううう!』  急ぎ走るミレイズとモリガリアは、神殿に居る一番偉い大聖女の【フラベルタ・アイズベルタ】へ報告をしたのだった。 「なにぃ、黒い卵が割れてだとぉ! 急いで封印を施すのだ。一週間は徹夜を覚悟せよ!」  フラベルタの命令で二人は強制的に卵の封印を任された。  三人で封印に挑むのだが、張られた結界の内側で卵が暴れ回っている。 「きゃあああああああああ!」 「いやああああああああああ!」  卵は封印に挑む聖女達にぶつかり、詠唱の邪魔をして上手くはいかなかった。 「ぬうううう、落ち着かぬか二人共! 封印するには我等だけでは無理だ! 他の者達も起こしてくるのだ!」 『はい!』  二人はフラベルタを残し、寝ている聖女達を片っ端から起こして行く。  起こした聖女と共に総出で封印を始めるのだが、それでも上手くは行かなかった。  全力で頑張る聖女達だったが、結界の内側で黒の卵が進化を始める。  黒色の卵は大きく変化し、ひび割れの中からは卵よりも黒く、大きな左腕が現れた。  丸太のように太い腕、体毛は濃く、大きく伸びる爪は何者をも引き裂きそうである。  その腕を見たフラベルタは、内部に居るであろう何者かの姿を想像した。 「あ、あれはオーガの腕ではないか?! 絶対に出してはならん。なんとしてでも封印するのだ!」  大聖女フラベルタの発言で、周りの聖女達の顔色が変わっていく。  オーガとは、大きな体と巨大な腕、巨大な金砕棒を軽々と振り回し、その額には角がある人型の魔物のことだ。  個体によっては小さなタイプも存在しているのだが、これは明らかに違っている。  腕からオーガの本体を想像しても、全長五メートルは下らないものとなるだろう。  全てが出てしまえば、間違いなく強敵となる。  だが、暴れ回る今の状態では封印は難しい。  それを理解したフラベルタは、封印を諦めて、時間稼ぎへとシフトした。 「このままでは無理だ。ミレイズ、モリガリア、我等が時間を稼いでいる間にフトゥールム・スクエアへと走るのだ! ただし、この場所を知られてはならんぞ。絶対に見られぬようにして連れて来るのだ! 絶対だぞ!」 「な、なんか無茶ぶりな気もしますけど、緊急事態ですものね。じゃあ行って来ます! 待っていてくださいね皆さん! がんばってくださ~い! がんばってくださ~い!」 「い、行って来ます!」  そして二人はフトゥールム・スクエアへ向かい、彼の地で応援を要請したのだった。 ● 「お願いします、私達を助けてください。助けてください!」 「出来れば場所は内緒にしたいので、目隠しをお願いしたいのですけど」  ミレイズ、モリガリアが先生達に相談している。  その依頼や提案を加味され、先生達により相談が行なわれた。  そして教師の一人、【レインメース・シャロライン】に対応を任された。  二人の願い通りに場所の詳細を伏せられ、教師レインメースに生徒の編成を任せられたのだ。 「さて諸君、敵はオーガの一体だが、たかだか腕の一本だけだ。敵の封印が今回の依頼内容ではあるが、倒してしまっても問題はない。ただし、時間により相手も卵から出現してしまうかもしれない。全身が出現してしまえばハッキリと強敵と呼べる存在であるが、それまでにダメージを蓄積させれば倒せる可能性はある。相手はまだ視界さえ無いのだ。さあ、この依頼を受ける者はこの場で宣言するのだ!」
台本のない演劇舞台 宇波 GM

ジャンル ロマンス

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-08-31

予約期間 開始 2019-09-01 00:00
締切 2019-09-02 23:59

出発日 2019-09-09

完成予定 2019-09-19

参加人数 5 / 8
 街の端のさらに端にある、見るからに寂れた木造の建物。  両開きの大きな扉を開けた先にある空間は、観客席。  数十人入って一杯の広さのそこに置かれた椅子は、折り畳みの椅子が20脚。  その正面にあるのは、これもまた木製の軋んだ舞台。  元は鮮やかな赤色であったと思われるカーテンは見る影もなく煤けている。  その舞台上でたった一人。  白いワンピースをはためかせ、くるくると回り踊るヒューマンの少女。  短い静かな曲を一曲、踊り終わった少女は折り畳み椅子に座る君たちに気付く。 「初めまして。『フトゥールム・スクエア』の生徒さんたちですか?」  少女はふわりと、まるで妖精のように舞台から飛び降りる。 「私はこの劇場の支配人、【アンジェ・リリー】と申します。概要は学園側に伝えさせていただきましたので、伝わっているとは思いますが……」  改めて説明をしようと口を開きかけたアンジェは、乱暴に開かれた扉の音にびくりと肩を揺らす。  どかどかと中に入ってきたのは、ぱりっとしたスーツに身を包んだ3人の男たち。 「……乱暴に扉を開けないでください」  努めて冷静に男たちを睨むアンジェに、男のひとりは肩を竦める。 「もうすぐ私のものになる建物を、どう扱おうが私の自由と思いますが?」  にやにやと下卑た笑みを浮かべる男たちに、悔しそうに唇を噛みしめるアンジェ。  男たちはアンジェの傍にいた君たちに気が付く。 「おや、お友達ですか」 「……この人たちは……」  君たちを庇うように前に出たアンジェに、面白くなさそうに男は鼻を鳴らす。 「まあ、誰だろうと関係はありませんね。一週間ですよ。そこから1分もまけはしませんからね」  男たちは言うだけ言って、またどかどかと扉を開けて出て行く。  残されたアンジェは、泣き出しそうな笑顔で口を開いた。 「詳細を説明、しますね」 「この劇場は、祖母の代から続いていたんです」  舞台の裏にある出演者用の控室に君たちは案内された。 「祖母と祖父が亡くなり、継いだ両親もついこの間……」  悲しそうに目を伏せるアンジェは、両親の代から経営が傾いたのだと告げる。 「さっきの男たちは、両親からこの土地を建物ごと譲るように言ってきた、金貸しです」  この劇場を建てるとき、暴利をふっかける金貸しからお金を借りてしまったのだという。  建物自体の金額は返し終わっているが、膨れ上がった利子を返しきれていないとアンジェは言う。  とうとう返す目処の立たなくなった両親に、金貸しはこの建物と引き換えに借金を無くすことを持ちかけた。 「ですが、両親はこれを拒否しました。……金貸しは、ありもしない風評被害を流し、とうとう少なかったお客さんも来なくなりました。働きすぎて体を壊した両親は、そのまま……」  それを機に、残ってくれていた役者が辞め、脚本家が辞め、演出家が辞めていき、とうとう残ったのはアンジェひとりとなってしまった。 「私には、もうここを続けていくことができません。ですが、最後に一度だけ、お客さんに劇を見せたい。この劇場の、最後の劇を見せたいんです」  金貸しには、一週間の猶予をもらったという。  それまでに、なんとかして役者を集め、脚本を書き、お客さんを集めなくてはならないらしい。 「みなさんには、最後の劇を行うためにお手伝いをしてほしいんです。……どうか」  アンジェはゆっくりと、頭を下げた。  控室の灯りは、ちかちかと不安げに点滅している。  アンジェが手ずから淹れた紅茶は苦く舌に広がった。
変身クエスト るう GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

公開日 2019-08-27

予約期間 開始 2019-08-28 00:00
締切 2019-08-29 23:59

出発日 2019-09-06

完成予定 2019-09-16

参加人数 6 / 8
「ほーら可愛い生徒たんたち、今から魔法をかけるからきりきりとそこに並べー☆」  校舎3階の教室に集まった君たちの前に、唐突に『特別授業』をすると言ってやって来た学園長【メメ・メメル】の開口一番は、そんな強引な一言だった。生徒たちが素直に、あるいは文句を言いながらも仕方なく列を作っている間、学園長はこんな説明をしてみせる。 「知ってのとおりこのフトゥールム・スクエアの教育理念は、『新たな勇者の育成』ってヤツさっ☆ ところで勇者ってのは、敵地への潜入や情報収集のために変身の魔法を使う場合もあるかもしれないし、逆に悪いヤツに魔法をかけられて、変身した姿のままでしばらく過ごす羽目になるかもしれない……そこで今回の特別授業の出番だ♪」  特別授業の内容は……学園長に変身魔法をかけられたまま、今いる校舎を出、他の生徒たちも多数いる校庭の脇を通過して、ハンティング授業中の森の中を通りつつ、学園西側にある『スペル湖』のほとりに作られたゴールまで辿り着くこと。ゴールできれば学園長が魔法を解いてくれるので、その時点を以って授業は終了、だそうだ。  使い慣れない体でゴールまで行くのは大変? 変身した姿を誰かに見られるのは恥ずかしい?  だからこそぶっつけ本番になる前に慣れて克服しておこう! ……というのが授業の趣旨だけど、もちろん存分に変身ライフを楽しむのもひとつの手だ。  もっとも、コースには変身した姿ならではの、幾つもの難所が待ち構えている。  校庭の生徒たちが君たちの姿を見たら、興味を持って寄ってきたり、附属生物園『アニパーク』などから脱走した動物かと勘違いして捕まえようとしたりするかもしれない。  森の中でハンティング授業中の生徒たちに見つかれば、武器や魔法で攻撃されるかもしれない。  姿によっては3階の教室から1階に下りる階段が思わぬ難所になったり、そもそも教室の扉を開くことさえできないかもしれない。  ……これ、ゴールできなかったら一生変身した姿のままなんだろうか?  教室内がにわかにざわつきはじめるが、学園長はそんなことさっぱり気にすることなく、魔法の杖を掲げてみせた。 「早くゴールした偉い子たんは、全員がゴールするまでの間、オレサマが好きな姿に変身させてやるから自由に遊び回ってもいいぞ~♪ あ、でもはしゃぎすぎると野生化しちゃうかも……?」  本当に大丈夫なんですかねこの魔法? 「まぁ、チミらなら余裕だ! 多分! さぁて心の準備はできたなー! 順番に魔法をかけてくぞっ☆」
迷子騒ぎは大騒ぎ!? 鞠りん GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-08-28

予約期間 開始 2019-08-29 00:00
締切 2019-08-30 23:59

出発日 2019-09-05

完成予定 2019-09-15

参加人数 5 / 8
「どうしましょう、あの子が学生寮に戻って来ないの」  雄大なフトゥールム・スクエア内の学生寮レイアーニ・ノホナの一角で、寮の管理者の1人である【リシリア・ミゲル】はある不安に駆られていた。  その理由は学生の1人である【ミーシャ・チャリオット】が、夕方近くになっても、学生寮に帰って来ない為である。  ミーシャは4歳にして、このフトゥールム・スクエアに入学が許された子で、この歳で幾つもの魔法が扱える天才肌の持ち主なのだが、やはりまだ4歳という年齢か、すぐに色々な事に興味を示し、フラフラといなくなってしまう子供の面も持ち合わせている。  普段は同学年になる生徒の誰かが彼女の面倒を見てくれているのだが、今日は誰もミーシャに付いて行っていないと上級生達は言っていたので、リシリアの不安は増すばかり。 ● 「ああ、あなたたち少し手伝ってくれないかしら?」  リシリアは偶然談話室の近くを歩いていた新入生たちを見付け、ミーシャの捜索をお願いした。そんな小さな子が、この学園で迷子になっていると聞けば、新入生といえども手伝わない訳にはいかない。 「ミーシャはね本が大好きなの、だから図書館にいる事も多いし、食べ盛りになって来たので食堂も好きよ。それに購買を見て回る事も、後は意外でしょうけど体育準備室も好きなのよ。ああ、もしかしたら誰かが迎えに来てくれると思い、教室にいるかも知れないわ」  リシリアはミーシャが行きそうな場所を必死に考えてくれた。広い学園内でミーシャが行きそうな場所を教えてくれるのは非常にありがたい、その場所に絞って捜索をすることが出来るのだから。 ●  リシリアは新入生たちに場所を教える為に、一度自分の部屋に戻り、話した場所に記しを付けた地図を持って来て新入生に手渡した。 「でも門限には気をつけて、破れば……分かっているわね?」  フトゥールム・スクエアは夜遅くの行動は禁止されている。そして門限を過ぎれば寮母さんたちのキツいお説教が待ち構えてもいる。  お説教だけは勘弁して欲しいのは、上級生も新入生も皆同じであり、誰もが寮母さんたちが面倒くさいと知っているせいだ。  寮内で永遠と続くお説教は、フトゥールム・スクエア内で新入生でもすぐに聞くほどの有名話。  この面倒くささを嫌がり、学生はほとんど門限を破らないのが暗黙の了解だったりする……一部で逞しい学生たちが、肝試しなどしているらしいが。 ●  リシリアは手伝ってくれる新入生たちを連れ、寮の表門に向かいながら話す。 「今日のミーシャは、フトゥールム・パレスでの共同授業だったと上級生さんが言っていたわ」  それを聞き、新入生たちは軽く絶句してしまう。  第一校舎であるフトゥールム・パレスは、高さ30階、地下40階からなる、フトゥールム・スクエアの中心的な建物で、お城か要塞かと言われるほどの巨大建造物。  その中から子供を1人探すのは至難の技なのだが、リシリアはミーシャが今日使用した教室を知っており、その場所にいる可能性だってある。 「でもミーシャですもの、簡単に違う場所には行かないと私は思うの。あれで人見知りなのよミーシャは……ミーシャから見える周りは全て歳上のせい、4歳だもの当たり前の反応よ」  それは……と、今度は口を濁す新入生たち、4歳の子供から見れば10歳の学生でも大人に見える。もしかしたらミーシャと同じ年頃の学生がいるかも知れないが、ミーシャの周りにはいないらしい。  だから人見知り、でも好奇心は旺盛なミーシャ。リシリアからの話を総合すれば、ミーシャは違う場所には行かないと考え、新入生たちはリシリアが言う5ヵ所の捜索を行う事にした。  ただ1つ問題もある。集団で探すか1人1人に別れて探すか、時間内に広大なフトゥールム・パレスを探すには、どちらを選択すれば良いだろうか? ●  表門に着き、新入生たちを心配そうに送り出すリシリア。ミーシャも新入生もリシリアに取れば大切な寮生であり、どちらも無事に帰って来て欲しいのがリシリアの思い。 「お願いよ、必ず見つけてあげて。1人ぽっちでミーシャが泣いているかも知れないから」  夕方になりかけた今の時間から、門限までにリシリアから教えて貰った場所を探してミーシャを見つけ寮に連れて来る事。それがリシリアからのお願い。  ――あなたはどこから捜索しますか?
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