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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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月夜の狩人 七四六明 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 難しい

報酬 多い

公開日 2019-05-30

予約期間 開始 2019-05-31 00:00
締切 2019-06-01 23:59

出発日 2019-06-08

完成予定 2019-06-18

参加人数 8 / 8
 フトゥールム・スクエアに来てしばらく。ついにこのときがやって来た。  校長先生によって新入生たちに与えられる難易度の高い試練――実力テスト!  これまでに学園で学んだ魔法、技術のすべてを試す絶好の機会に皆が全力で挑む。  筆記、実技を終えて、いよいよ実戦テストのときが来た。  内容は二人以上八人以下のチームを組み、依頼人役となっている先輩を狩人役の先輩方からの猛攻から制限時間の間護り切れば合格となる厳しい試験。  チームごとに試験会場は異なり、それぞれが全力で先輩方に挑んでいく中、ついに自分達の番が来た。  試験会場は学園近くの森の古城。月夜に輝く真夜中に、新入生を狩るため参戦した狩人三人が待ち構える。 「悪いけど手加減はせぇへんよぉ? 覚悟を決めてぇな」  銀髪のヒューマンが木刀を担いでケタケタと笑う。どこの国の訛りかはわからないが、細身の外見もあってのらりくらりとこちらの手を躱して来そうな危うさを感じる。  その隣で、少々老け顔のローレライは面倒そうに頭を掻きながら疲れ切った様子で湿った溜め息を吐いた。 「ま、こっちも単位が掛かってるからなぁ……」  面倒だが、全力で。その方針はヒューマンと変わりないようだ。  ヒューマンのほくそ笑むような目に対して、不機嫌そうにも見える鋭い眼光でこちらを睨みつけてくる。 「いやいや、手加減しないといけないから。手加減してねって先生に言われたから。それこそ大怪我なんてさせたら私達の面目ないから。本当、頼んだからね?」  と、虎のルネサンスが諫める。  だがこの先輩が一番危険だと聞いている。  先のテストにも狩人として参加して大暴れし、二チームに不合格の烙印を叩きこんだらしい。三人の中で、最も油断ならない相手だろう。 「ほな、始めよか? 後輩諸君、せいぜい気張りぃやぁ」  果たしてこの強敵狩人の猛襲を潜り抜け、テストに合格することはできるのか。  これまでに学び、経験したことすべてを出し切って、見事試験に合格せよ!  次代の勇者一行による難関実戦テスト、開幕!
【夏コレ!】水着を買いに行こう! 桂木京介 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 とても簡単

報酬 なし

公開日 2019-06-14

予約期間 開始 2019-06-15 00:00
締切 2019-06-16 23:59

出発日 2019-06-21

完成予定 2019-07-01

参加人数 8 / 8
「夏、だなっ☆」  と【メメ・メメル】校長が君に話しかけてきた。わりと突然に。  それは、あなたが学食でカレーを食べているときだったかもしれず、友達とわいわい校門を出たときだったかもしれず、はたまた、授業中に居眠りして廊下に立たされている最中だったかもしれない。  ともかくメメル校長は凶器サイズの胸を揺らしながら君の眼前に飛び出してきて呼びかけてきたのである。 「夏だな!」  と。  いえまだ間があるような――と、君は冷静に返しただろうか。  イエス! と腕まくりして答えただろうか。  それとも、近くで見るとますますデカいな、とわりと無関係な感想を抱き生唾を飲み込んだろうか……ッ。  いずれにせよこちらのリアクションになどお構いなしにメメルは続ける。 「毎日毎日カクジツに暑くなっており、もう気分は夏なのだ。少なくともオレサマ的には☆」  というわけで、と言ったのだ。 「夏といえば海にプールに川に……とにかくスイミングなのだ。だから水着を買いに行こうぜ! なんならオレサマが選んであげよう☆ むしろ選ばせろ、みたいな♪」  やる気まんまんのメメルに導かれ、君は学園都市のショッピングモール『クイドクアム』に連れて行かれるのであった。  かぎりなく『連行』に近い形で。  さあ、クイドクアムに水着を買いに行こう!    ◇ ◇ ◇ 「水着を買いにいくの~? え~、どうしようかなぁ」  もじもじした様子で【キキ・モンロ】はかたわらの【サラシナ・マイ】に訊く。 「マイは行く~? キキはね、帰りにごはんごちそうしてくれるなら行ってもいいの~」 「お前いつもそれだよな。ある意味ブレないというか」  キキはもう行く気でいっぱいのようだが、マイは乗り気ではなさそうだ。 「オレはあんま興味ないな。わざわざクイドクアムまで出なくても、『アボット』(※制服専門店)で学園指定だか推薦だかの水着買う程度で構わねえし」  え~っ、とキキはイヤイヤをするように左右に揺れる。 「マイも行こうよ。せっかくだもん。おなかもいっぱいになるよ」 「せっかくってったってなぁ。ていうかなぜ食うことが前提になってんだよオイ」  とはいえキキにお願いされるとマイは弱い。 「しょうがねえなあ……」  というわけで首尾良く、君たちの誘いにキキとマイは乗ったのだった。  クイドクアムに水着を買いに行こう!  ついでにご飯もお忘れなく。  ◇ ◇ ◇ 「水着を買いに行くのかい? いやあ、どうしようかなあ」  あっはっは、と錬金術教師【イアン・キタザト】はかたわらの【ゴドワルド・ゴドリー】に訊く。 「ゴドーは行……」 「行くわけないだろ。お前の水着は褌(ふんどし)で十分だ」  ゴドリーは、とりつく島もない様子である。  君たちは一体どうしてしまったのか。気の迷いかそれとも、トリップする魔法薬の匂いでも嗅いでしまったのか。キタザトとゴドリーという、おっさん教師二人組に水着を買いに行こうと呼びかけるなんて! (※キタザトは少年みたいに見えるがゴドリーと同い年である) 「じゃあ褌でいいからゴドーも付き合ってね」 「冗談はよせ」 「だったら褌で泳ぐのと、今から水着を買いに行くの、どっちがいい?」 「そ、それは水着を買いに行くほうが……おい待て」  なぜその二択なんだとゴドリーは言うのだが、いつの間にかキタザトに丸め込まれて、君たちに同行することになってしまうのだった。  クイドクアムに水着を買いに行こう!    なお、フル甲冑を着込んだ素顔不明の教師【ネビュラロン・アーミット】に声をかけた君は、 「…………」  無言の彼女から、ヘルメット越しの凍てつくような視線を浴びる羽目になった。   ◇ ◇ ◇  クイドクアムに水着を買いに行こう!  買いに行こう!  だってもうすぐ夏だから! 理由なんてそれで十分じゃないか。
人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて…? へぼあざらし GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-06-07

予約期間 開始 2019-06-08 00:00
締切 2019-06-09 23:59

出発日 2019-06-14

完成予定 2019-06-24

参加人数 8 / 8
 ――本当に、私は幸せ者です。  教師、【フェレ・ディア】は今年、結婚することになった。新入生がやって来て、学園がにぎやかになり始めたこの時期、幸せな出来事がかさなるように、その知らせはやってきた。  ディア先生が選んだ式場は、魔法学園フトゥールム・スクエアの北西部に位置する、もゆる煙と極楽の街【トルミン】にあった。ここはいわゆる温泉街のような場所で、観光地として人気である。 「せっかくだから、幸せな気持ちが集まっている場所で式を行いたかったの」  ディア先生は自身の水色の髪をいじりながら、そんな乙女チックなことを口にしていた。そんな話を聞くと、こっちまでときめいてしまう。だから学園の生徒たちもディア先生に幸せになってもらえるように、結婚式の準備を手伝おうと意気込むのであった。ディア先生もはじめのうちは遠慮していたが、生徒の熱意に押されてしまう。 「本当にうれしいわ。……でも手伝ってくれるなら、課題(クエスト)にしてあげなきゃね!」  ディア先生のはからいで、お手伝いはちょっとしたアルバイトになった。そして、結婚式も間近になってきたころ、ディア先生と生徒たちは荷馬車に乗って森の中を移動していた。 「これだけの貴重なぶどう酒。あの人も喜ぶと思うわ」  荷馬車に積んでいたのは学園から贈られた、最高級のぶどう酒であった。これは滅多に手に入らないものだが、人の高さほどある大きな酒だるが荷馬車に乗せられている。これは、【コルネ・ワルフルド】先生が学園に贈り物として掛け合ってくれたものだ。ダンナさんが喜ぶだろうとのことだったが、結婚式で自分が飲みまくりたいだけであろう。え、違う? 「……こんなにみんな祝福してくれて……私にはもったいないくらいだわ」  ディア先生はぽつりとつぶやいた。ローレライの血を引く彼女の肌は、透きとおるように白いので、よく顔が赤らんでいるのが分かる。生徒たちもそれを見て、ついはにかんでしまう。ここまで応援した甲斐があったものだ。生徒たちはそんなことを思っていたのだが――その馬車を狙う二つの影があった。それは遠くからものすごい速さでこっちに向かってくる。 「あれだよ、兄さん。うわさに聞いた極上のぶどう酒だ。フトゥールム・スクエアの学園長でもなかなか飲めないだとか」 「あぁ、弟よ。あれをいただかずには帰れないな」  そんなことを口にする彼らは、金髪で、顔立ちが整っていて、筋肉質な身体を持ち、そして何より下半身が馬のすがたをしていた。 「…………ケンタウロス! な、なんでこんな時に?」  ディア先生は悲鳴に近い声を出す。それもそのはずでケンタウロスは魔物の中でも上位クラスの存在である。それが同時に二体出現したのだから、ディア先生が焦らないわけが無い。  そして、こんな噂を聞いたことがある。 『気性の荒い双子のケンタウロスがいるらしい』  彼らは、弓の名手である兄のペネと、こん棒使いの弟ペレ。一見、美形でおとなしそうな彼らは、喧嘩をすると感情がむき出しになると聞く。加えてケンタウロスはそもそも好色酒好き暴れ者。出会ったらただでは済まないと思った方が良い。  しかし、そんなことで心が折れる学園生徒ではない。勇敢な彼らは武器を持ち、立ち向かおうとしているではないか。ディア先生はそのたくましい生徒たちのすがたを見て、改めて勇気づけられる。そして、幸せを感じていた。自分の教え子たちが、自分を守ろうと奮起しているのだから。また、ディア先生はあることに気が付く。 「……そうよ、彼らは人が多くいるトルミンの街近くまでくれば追ってこれないはずだわ。そこまでたどり着ければ……」  そう、トルミンまでの道のりはあと少しだ。これを乗り切れば難を逃れられる。ディア先生は自分の杖を取り出して、戦闘に備える。彼女は戦闘に不向きではあるが、相手を惑わす幻術は一級品だ。 「ケンタウロスは女好きだから、それに効果的な幻術を使うわ。……けど、ちなみに案があったら教えて欲しいの。私、あまり男の子が好きな……そ、その喜びそうなのってイメージわかないから」  ディア先生は生徒たちにそう言いながら顔を真っ赤にしている。ちなみに、過激な事だけは彼女に吹き込んではならない。そんなことをすればダンナさんからの鉄拳制裁が下るだろう。俺のウブな嫁になにしてくれとんじゃ、と。 ちなみに、ケンタウロスは女好きとは言えども、未成年や成人したての人には興味を持たないらしい。彼らだって、一応は紳士だ。ロリコンではない。決して。  と、考えている間にもケンタウロスは距離を詰め始めているではないか。ただ、生徒たちにも策はある。  そして、暴れ馬たちとの攻防戦が幕を開けた。ディア先生の結婚式をジャマさせることだけは生徒たちも許さない。それと、こんな時に襲ってくるのが馬というのも変な話だ。なにせ、昔からこういうではないか。人の恋路をジャマする奴は、馬に蹴られてなんとやら、って。今回はどうやら、その馬の方をどうにかしなければならないらしい。
≪奉仕科1≫誕生日パーティーのお手伝い 浅田亜芽 GM

ジャンル ハートフル

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-06-09

予約期間 開始 2019-06-10 00:00
締切 2019-06-11 23:59

出発日 2019-06-17

完成予定 2019-06-27

参加人数 5 / 8
 第一校舎『フトゥールム・パレス』の、ある大教室に集まった学生たちは、今日から始まる新しい授業科目に興味津々の面持ちで、先生が来るのを待っていた。  ガラリ。  勢いよく扉を開けて入ってきたのは、ヒューマンの女性教師。  年の頃は30手前だろうか。  肩の下まで届く亜麻色の髪には程よいウェーブがかかっていて、彼女の歩みに合わせて軽やかに揺れる。  教壇の前に立ち、抱えてきた書類をタンっと置くと、注視している学生たちに零れるような笑みを向けた。 「皆さん、初めまして! 私は奉仕科の授業を担当する【ユリア・ノイヴィント】です」  温かみのある澄んだ声は、教室にいた全員の耳を一瞬で捉えた。  ユリア先生は続ける。 「皆さんは奉仕科って何をするの? と疑問に思っていることと思います。奉仕科で行うのは……」  一旦言葉を区切り、教室の端から端まで見渡したユリア先生は、きっぱりと告げた。 「ズバリ、『人助け』です。皆さんには困っている人を助けたり、困っている事を解決したりしてもらいます!」  教室内がざわめいた。  喧騒が落ち着くのを待ってから、ユリア先生は静かに口を開く。 「まず皆さんに質問ですが、勇者に必要なことは何だと思いますか?」  あちこちの席から、 「勇気!」 「体力も!」 「戦闘力は?」  などの声があがる。 「そうですね。それらはもちろんとても大切な能力ですが、それだけでは十分ではありません。『思いやり』や『想像力』など、人間らしい心を磨いてこそ勇者たり得るのです。その訓練をする科目として奉仕科があります。人の役に立つ経験が真の勇者となる糧になるのですよ」  次にユリア先生は、この授業のシステムを簡単に説明した。  様々なジャンルの依頼を受けて実習に行くため座学ではなく、難易度もまちまちであること。  そして、出来るだけ学生が自分たちで解決方法を見つけることが大切であること。  そのためユリア先生は適宜サポートするにとどまること、などだった。 「難しそうと感じても思い切って挑戦してみることが大切です。きっと新たな発見があり、自身の成長に繋がりますからね」  ユリア先生の説明が一通り終わった時、 「しつもーん!」  と一人の学生が挙手した。 「先生、困っている人や困っている事ってどうやって見つけるんですか? 無かったら課題をこなすことができません」 「ああ、それは心配ありません。私が日頃、さまざまな依頼を広く受け付けているので、お困りごとはたくさん『ストック』されている状態なのですよ」  ユリア先生は質問した学生に、 「積極的でいいですね」  と褒めてから、全員に向かって言った。 「今日はそのストックの中から、皆さんが取り組めそうな内容をいくつか選んで持ってきています」  ユリア先生は書類の束を指し示す。 「後で参加希望者を募りますから、依頼の内容をよく聞いてくださいね。では一つ目」  一番上にあった書類を取り上げて、声に出して読み始めた。 「おばあ様の誕生日パーティー準備のお手伝いの依頼です。依頼者は10歳と8歳の兄妹……」
君が見えない 宇波 GM

ジャンル シリアス

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-06-03

予約期間 開始 2019-06-04 00:00
締切 2019-06-05 23:59

出発日 2019-06-11

完成予定 2019-06-21

参加人数 8 / 8
 見えない。  遠くなる。  ぽつんとひとり。  暗い場所で、ひとり、立っていた。  だんだんと、離れていく。  後姿が、遠くなる。  手を伸ばしたけれど、その姿に届かない。 (ああ、行かないで)  君の姿が遠くなる。 (だめ、行かないで)  君の姿が薄くなる。 (お願い、ここにいて)  君が、見えない。 「『記憶が無くなる迷路』……?」 「はい。最近、噂にもなっているようですね」  記憶が無くなる迷路。  それは、遊園地にでもありそうなアトラクションボックスのようなもの、だとか。  それは、入れば記憶が抜け落ちていく、人の記憶を喰う魔物、だとか。  それは、意志を持った移動型コンテナのようなもの、だとか。  どこか掴みどころのない、一貫性もない、ふわふわとした雲のような噂。  それは、都市伝説や七不思議にも似た、不思議な魅力を纏い、人々の耳から耳へ伝播(でんぱ)する。 「今回、依頼に出されている、討伐対象でもあります」 「迷路を、討伐?」  耳慣れない討伐対象に、首を傾げる生徒たち。  無理もない。  迷路という討伐対象相手に、どう対処すればいいのか、だれもピンときていないのだから。 「はい。この迷路の中には中心となるコアがあり、そのコアを破壊すれば迷路は討伐できます」  受付職員は、そっと目を伏せる。 「しかし、先ほども申し上げた通り。この迷路は入れば記憶が失われます」  それも、その人にとって一番大切な記憶から。  順々に、順々に失われていくという。  大切な記憶。  家族の記憶かもしれない。  幼い時の、初恋の記憶かもしれない。  勇者になりたいと、強く思う気持ちかもしれない。  ……失われる? その、記憶が?  ぞっとする。  鳥肌の立った二の腕を摩り、ひとりは拒否を示した。 「無理です。記憶がなくなるなんて、考えられない!」  彼に賛同するように、ひとり、またひとりと声を上げていく。  職員はぎゅ、と強く目を瞑る。 「……既に、何人か。この迷路に入り、記憶を失っています」  民間人の、力のない被害者がいる。  その言葉に、僅かに揺れ動いた者がいた。  それでも、響かない者もいた。 「……私も、そのひとりです」  生徒たちは耳を傾ける。 「正直、どうしてここにいるのか、分かっていません。顔見知りの人も、もしかしたら、いらっしゃるのかもしれませんが、すいません。覚えていないんです」  彼は、彼が受付職員であるということを忘れているという。  ここにいるのは、僅かに残った責任感と、長年の業務で染みついた習慣のおかげだろう。  彼は頭を下げる。 「迷路を討伐さえできれば、記憶が戻ってくるかもしれないんです……! 被害者の記憶も、これから入るみなさんの記憶も。どうか、お願いします」  大切な記憶を賭け、大切な記憶を取り戻す、迷路討伐。  生徒たちは息を呑む。  あるいは緊張で、あるいは恐怖で。  もしかしたら、未知の体験に湧き上がる冒険心を覗かせた者もいるかもしれない。  職員は空気が揺れ、僅かに変わったことを感じ取る。 「迷路は危険物として登録しています。我々は、件の迷路を暫定的にこう呼んでいます」  『ロスト・メモリー』と。
大きな大きな… 根来言 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-06-01

予約期間 開始 2019-06-02 00:00
締切 2019-06-03 23:59

出発日 2019-06-08

完成予定 2019-06-18

参加人数 8 / 8
 広い広い学園にも七不思議や怪談というものが幾らか存在する。それはある日、突然語られ始めることもあれば、学園が建設されるはるか昔から語られているようなものまで多彩である。その数は日々変化しており、おそらく正確な数を知るものはいないだろう。今回の場合は前者であった。  『校舎の隅にある教室で何かが唸る声を聞いた』  『大きな、何かを打ち付けるような音が何度も聞こえる』  『巨大な魔物を学校で誰かが飼っている』等といった話が1日のうちに広がっていったのだ。  君は『他の生徒を脅かすことなどあってはならない!』と、意気込んだ勇気ある者か。  『面白そうだから見に行ってみようかな?』と好奇心満載のお調子者か。  それとも『飼い慣らすことができれば、強力な使い魔になるだろう!』と企む者か。  何れでも構わない。どんな者であれ、恥を捨てて命乞いをしよう。なけなしの小遣いではあるが、報酬だってもちろん出そう。だから……  『僕を、僕を助けてくれ』  教室いっぱいに収まった、大きな大きなフェアリータイプのエリアル【アデル・ミドラ】は泣きそうな顔をしながら君たちに頼み込んだ。君たちは勿論、エリアルという種族のフェアリータイプがどのような姿をしているかを知っている。全長1メートルほどの、小さな妖精のような姿をした種族であったはずだ。だが、目の前にいるアデルは君たちの知るフェアリータイプのエリアルとは全く違っていた。  ざっと見積もっても10メートルは超えているだろうか? 体はパンパンに肥大化してしまっており、これなら喋るトロールだと言われたほうがしっくりとくるだろう。  横たわらなければ身動きすらもできないようで、動こうとするたびに、天井や壁に頭や体をぶつけて『ゴン』という鈍い音を響かせた。ぶつけた頭をかばうように、おそるおそる押さえながらも、彼はこうなった経緯を話し始めた。  彼の身長は80センチ、フェアリータイプのエリアルの中でもかなり小柄な彼は、自分の見た目に大きなコンプレックスを抱えていた。そんな時に偶然、魔法薬の授業にて一時的に体を大きくすることができる薬『ビッグ』の存在を知り、手に入れば背の高くてかっこいいエリアルになれるのでは? と考えてしまったらしい。  その薬は身体に直接塗り込み使用する。  ひとたび塗れば文字通り、フェアリーですらもビックになってしまうこの薬。  主に、武力を持たない村人が戦わずして魔物を遠ざけるためにであったり、造形があまりに巨大な建物を建築する際に使われる場合がある。しかしそうした、そのハチャメチャな効果ゆえに、そもそもあまり使われないマイナーな薬であった。  しかし、アデルはその薬の効果に興味を持ってしまう。そして、学園内にあるということを知ってしまった。  薬剤室のひとつを管理している教師【マーディ・ウィリアム】の目を盗み、その薬を手に入れることに成功した。そうした後、誰もいなくなるまでこっそりと隣の空き教室に身を潜めることにした。計画では身を潜めたあとに寮に戻り薬を試そうとしていたが、我慢することができずに少しだけならと蓋を開けようとした。しかし、薬を飲もうとした時に誤って体中に浴びてしまい、気が付くと巨大な体になってしまったという。  隣の教室が騒がしいと様子見に来たマーディには『貴方がそうなってしまったのは自分のせいでしょう? バツとして効果が切れるまでそこで反省をしていなさい。食事とトイレだけは何とかしてあげるから』と言われてしまう。しかし、1日中じっとしているのも飽きるし、かといって外にでようにも教室のドアはとても今のアデルには小さすぎる。浴びた量も多く、あと何日こうして我慢しなければいけないかもわからない、と、アデルは説明しながらもまた泣き出しそうになった。 「今回の件はあまりにも、酷い仕打ちではありませんか! ただの生徒のいたずらに、ここまでする必要もないでしょう!」  顔を赤くした新任男性教師の声が、薬剤室にこだまする。  それはというのも、アデルの噂はその日のうちに広がり、聞きつけた彼が己の正義感から、直接マーディのもとへ抗議に来たからであった。  その言葉に『はぁ』と、老年のヒューマンの女性、マーディは小さく息を吐いた。  そして、興奮した新任教師とは対照的な、落ち着いた声で話し始める。 「たまに、居るんですよ。ああやって、薬剤をいたずらに使おうとしたりする生徒。えぇ、やりすぎだと言いたいのでしょう? 顔に出ていますわ」 「ですが」 「たしかに、薬が切れるまでおおよそ2日といったところでしょうか。授業に出ることもできないので、成績にも影響が出てしまうかもしれませんね?」  遮るようにマーディは言葉を続ける。新任教師は、まるで心を読まれたかのような彼女の指摘に、思わず目を泳がせる。 「薬品棚には多種多様の薬があります。触るだけで爆発してしまうものも、蓋を開けるだけで呪われてしまう危険なものも沢山。ですから、今後は近づかないように少々痛い目にあってもらわなくては。言い方は悪いですが見せしめ、として。あぁ、しかし、解放する頃合いかもかもしれませんね。彼も反省しているようですし」  マーディは少し考えるように、目を細めた。『頃合いをみて治療を行う』というやり方では、『どうせすぐに許してもらえる』と、いたずら好きな生達は考えてしまう可能性がある。どうせなら『たまたま助かった』ように、見せなければならない。 「ですが、ただ解放するだけでは……」  言いかけた彼女は、ふと、薬剤室の外に視線を移す。そこには、曇りガラスで見えにくいものの、確かに数名の生徒の姿があった。  この時間、彼らが向かう方向で行われている授業はなく、ただ空き教室がいくつか並んでいるだけだろう。  その空き教室のひとつには勿論、アデルがいるはずである。 「そうですね、ちゃんとあの子たちが授業を聞いているか、突発ではありますがテストとさせてもらいましょうか」  彼女はそう言い、ニヤリと笑った。
伝説のスカート 秀典 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2019-06-05

予約期間 開始 2019-06-06 00:00
締切 2019-06-07 23:59

出発日 2019-06-12

完成予定 2019-06-22

参加人数 2 / 8
 学園から南にある町、シュターニャ。  大陸を分断する大きな川を渡る橋の手前にある、活気溢れる商売の町である。  その町の中を、【レインメース・シャロライン】という女性が歩いている。  この女性はフトゥールム・スクエアの一教師であるが、今回は友人の頼みでこの町へ来ていた。  内容はまだ聞かされてはおらず、今現在目的の家に向かって歩いている途中なのである。 「ここだろうか?」  到着したのは商店としては中の下ぐらいの大きさの、二階建ての雑貨屋のような店だ。  レインメースは、その店の店主である【トトラリ・トラトメ】という女性に会いに来たのだった。  自分が来た事を知らせると、そのまま二階の住居に案内された。  そして今、お茶を出されて店主と向き合っている。  二人はお茶をクイっと飲み干し、トトラリが話を切り出した。 「伝説のスカートという物を知っていますか?」 「は?」  トトラリの質問にレインメースは面食らった。 「じつはこの家代々に伝わる、伝説のスカートという物があるのです。それを使って接客をしようと思ってるのですが、色々と問題があるのです。是非頼みを受けて貰いたいです!」 「……伝説のスカートですか? ……え~っと、聞いたことがありませんね。なんですかそれは?」 「はい、我が家に伝わる伝説のスカートです。それを履くと魅力的に見えると言われている伝説のスカートなのです! じつはここにあるのですが、少し見て貰えませんでしょうか?」  学園に来た依頼内容を確認しに来たのだが、聞いたこともない伝説のスカートの話を聞かされている。  魅力的に見えるとは、どのぐらいのレベルなのかもよく分かっていない。 「……ああ、はい……」  レインメースはそのスカートを手に取り、広げて見始めた。  決して派手ではない、むしろ地味目のもので、鼠色の下地に白色の縦線が入っている完全に大人用だった。  しかしそのスカートには、目立つ場所に豚のアップリケが付けられていた。  例え角度をずらしても、その豚は確実に出て来る仕様となっている。  しかももう一つ問題があった。  目立つように赤いペンで落書きがされている。  これは、とぐろを巻いた蛇だろう……たぶん。  大人が履くのには少しだけ勇気が要りそうな物だ。 「……あの、このスカートをどうしろというのでしょうか?」 「はい、このスカートをどうにか使いたいのですけど勇気がなくて、何か素敵なコーディネートを教えて欲しいのです!」 「……残念ながら私は、そういうものに疎いので……あの、それでその豚とか落書きは取り外すことはできないのでしょうか?」 「一度試してみようと思って挑戦してみたのですけど、何故か防壁の様な魔法が邪魔をして外れてはくれないのです。ですからこのままお願いしたいのですけど……」  レインメースはスカートを見て考えている。  お洒落なんてしたこともない自分の知識量ではどうしようもないと諦め、学園に手を借りる事を思い付いた。 「ならば学園の者に募集をかけてみるとしましょう。あれ程の人数がいれば、誰か上手いコーディネートをできる者もいるでしょう」 「ありがとう御座います! 是非おねがいします!」 「あの、参考までに、魅力的に見えるとは具体的にどんな感じなのでしょうか?」 「いいでしょう。では一度履いてみますので、その効果のほどをお確かめください!」  トトラリがそのスカートを手に取り装着すると、顔付きと体つきまでも変わったように見え始めた。  魅力的に見えるというのも間違いではないだろう。  しかしそれがあったとしても、服のちぐはぐさが違和感しか生んでいない。  もしこんな格好で町に出れば、美人がおかしな格好で歩いている様にしか見えない。  これを解消する為には、このスカートを使って違和感のない格好にしなければならないだろう。  もし素晴らしいコーディネートが出来たのなら、その効果は数倍になる。  このスカートの力を発揮できるものが出来るのならばだ。  自分では無理なのでとレインメースは学園に戻り、学生の手伝いを募っている。 「すまないが妙なスカートを美しくコーディネートできる者は手を上げてほしい。私にはそういう知識はもっていないのだ。誰か頼む、誰でも良いから手を貸してくれ!」  レインメースから学生たちに依頼が出され、依頼書が校内に貼り出されていた。
ウォーキングコースの整備依頼 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

公開日 2019-06-01

予約期間 開始 2019-06-02 00:00
締切 2019-06-03 23:59

出発日 2019-06-09

完成予定 2019-06-19

参加人数 7 / 8
●夏に向けて  魔法学園『フトゥールム・スクエア』は敷地内に自然がいっぱいだ。  学園の裏山には、思わず歩いてみたくなるウォーキングコースがたくさんある。 「いやあ、委員長? 今年の夏もウォーキングがしたくなりますね?」 「くくく、我ら健康増進委員会の出番だな!」  学園内に数ある委員会のひとつに健康増進委員会といったものがある。  活動内容は、健康に関することなら何でもありの委員会だ。  特にウォーキングは彼らの主な活動範囲にある。 「ところで委員長! 裏山にあるウォーキングコースですが、そろそろ整備活動も始めましょうか?」 「うむ。ちょうど俺からもそう提案したい所だった。ぜひ皆で裏山へ向かおう!」 ●キラーホーネット現る! 「ぷはー! やはり裏山にあふれている大自然の空気は美味いなあ!」 「ですね、委員長! 今、コースの折り返し地点ですね? 休憩を入れましょうか?」  後ろを歩いていた女子委員がその言葉に反応する。 「いいわね、休憩! ん? あれ?」  健康増進委員会のメンツがコースの中腹に差し掛かった所で異変が起きた。  ちょうどコース全体の真ん中あたりに大きな蜂の巣ができていて……。  その中から、巨大なスズメバチがぶん、ぶん、と勢いよく飛び出た! 「きゃあ! 何よ、この変な蜂!」 「おそらくは……。キラーホーネットだ!」 「当然、駆除する! 各自、戦闘準備に入れ!!」 ***  戦うこと数分……。  健康増進委員会はキラーホーネットにぼろ負けした。  中には刺されて毒が回り、倒れる者も続出した。 「委員長! ここは逃げましょう! 我々の勝てる相手ではありません!」 「くっ……!! 委員達の生命が最優先だ! ここは撤退するぞ!」  戦闘不能で倒れた委員達を介抱した後……。  臨時の会議になった。 「さて、どうしましょう、委員長? ウォーキングコースを整備する必要があります。ですが、あんな恐ろしい蜂がいたら今年の夏はウォーキングコースが開けなくなります!」 「ならば……。俺らから報酬を出すという前提で外部から害虫駆除に長けた者達を集おうか……。ここは名門の魔法学園だ。キラーホーネットを上回る戦闘力を持った者達も多数いることだろう……。彼らを頼ろう……」  夏に開かれるはずのとあるウォーキングコース。  今年はキラーホーネットに占領されて開催が危うい。  それどころか、キラーホーネットをこのまま放置したら山道で被害が増えることだろう。  求む、害虫駆除の勇者!!
納得のいく料理 〜☆Wi☆〜 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-05-25

予約期間 開始 2019-05-26 00:00
締切 2019-05-27 23:59

出発日 2019-06-03

完成予定 2019-06-13

参加人数 4 / 8
 平和でのどかな風の吹くここは魔法学園フトゥールム・スクエア。  沢山の生徒がここで仲間と共に競い、互いを高めあっている。  しかしここに一人、まだ学校に馴染めていない生徒がいた。  彼女の名前は【リル・サムア】。  十一歳という年齢で入学したものの、同じくらいの年の生徒が見つからず、年上の生徒に話しかける勇気も無く、日々一人で淡々と生活していた。  そんなある日、突如彼女の前に一匹の小さな妖精が現れる。 「ヤッホー! 私の名前は【カシス】! あなたの願いを叶えるために来たの!」  カシスは半透明な水色の羽でリルの顔の周りを飛び回る。 「お願い……? そうだなぁ……。あ、私、新しい靴が欲しい!」  リルは目をキラキラさせながら言った。  カシスは顎を撫でながら。 「よぉし、じゃーあー、リルに一つ頼み事をするね! それをクリア出来たら新しい靴を私がプレゼントするよ!」 「頼み事?」 「そう、今私ね、とぉってもお腹が空いているんだ! だから、お友達と協力して一緒に料理を作ってちょうだいよ!」  カシスの言葉にリルの表情が曇る。 「私……料理できないし……友達……一緒に料理作ってくれる人いるかなぁ……」  俯く彼女をカシスは励ました。 「大丈夫! 早速教室の皆に声をかけてみよう! あ、そうそう、私普通の妖精よりちょっぴり大食いな妖精だから量とかは気にしなくて大丈夫だよー!」 「で、でも、何をすればいいかとかわかんないし……」  リルはまだ不安そうだ。 「大丈夫、大丈夫! せっかく皆で作るんだもん! コースか一品か、何を作るか、役割分担等々、決めてもらおうよ! 皆得意不得意あるだろうしね!」 「私……出来た料理を運びたい!」 「うん! 大丈夫、きっとみんな優しいから! さて、早速行こうか!」  二人は教室の前へと移動した。 「さぁ、勇気を出して!」  カシスがリルの背中を軽く押すと、教室の扉が自動で勢いよく開く。  突如入ってきたリルにクラスの視線が向けられる。 「あ、あの! ど、何方か私と一緒にお料理をしてくれる方はいませんか?」
初夏に肝試し! 駒米たも GM

ジャンル 恐怖

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2019-05-27

予約期間 開始 2019-05-28 00:00
締切 2019-05-29 23:59

出発日 2019-06-03

完成予定 2019-06-13

参加人数 6 / 8
「肝試しって、知ってるか?」  湿った風が教室へと吹きこむ或る生暖かい日のこと。  教室の中は午後の気だるげな空気で満ちていた。欠伸混じりに呟かれた単語を、同じように微睡んでいた隣の耳が拾う。 「何だぁ、それ?」 「恐怖によって己の忍耐を鍛える訓練、らしい」 「らしいって……」  提案した方も明確な肝試し像が想像できないのだろう。顎を擦りながら他人事のように答える。 「恐怖かぁ」 「恐怖なぁ」  思考する時間。 「近々、全クラス一斉テストがあるらしい」 「怖い。が、怖さの種類が違う」  一刀両断である。 「コルネ先生の干しブドウを全部盗む」 「既にやった猛者がいると聞く」 「ゴドリー先生と一緒にハイキング」 「開催済みだ」 「嘘だろ」  二人は顔を見合わせた。  ――参加者ゆうしゃかよ。  ――ゆうしゃの卵だなぁ。 「分かってるよ。後輩の武勇伝に焦る気持ちぐらい」  負けていられねぇよ、という呟きはどちらのものだったのか。  焦っている、というよりも新たな好敵手の存在に胸を弾ませている顔だ。 「でも、何をやったらいいんだろうな」 「そこで肝試しの出番だ」 「そのようだな」  競争心、好奇心、向上心。いずれに火がついたのかは分からない。 「俺だってッ……、俺だって! 可愛い後輩に『キャーセンパイカッコイー!』とか言われたい!」 「不純すぎる動機だが、痛いほど気持ちが分かってしまう自分が悲しい!」  バンバンと音を立てて叩かれる机に視線が集まるが、不幸なことに、二人を止める者はいなかった。  へぇ、がんばれよ、と。ぜったいに巻き込むなよ、と。  外の空気に負けず劣らず、生暖かい眼差しが二人を包みこんでいる。 「聞いた話によると、肝試しっつーのはオカルト的な恐怖でゾッとするのが伝統なんだと」 「オカルトなぁ。『勇者の穴』にある、お化け屋敷みたいなもんか?」  居住区域『レゼント』に存在する遊戯施設には大抵の娯楽が揃っている。ただし勇者としての訓練を積むことを目的としているため、ただ純粋に遊べるだけではない。 「壁から手が生える」 「魂霊族の壁抜けを初めて見た時はびっくりしたな」 「それから墓場を彷徨う死神」 「グレイブスナッチは強いからな。不意打ちをされたら苦戦する」  二人は顔を見合わせた。 「ぞっとするか?」 「だから。オカルトには、詳しくないんだって」 「いや、待って。一つ思い出した!」  一人が手を突き出した。  額に指を当て、目蓋を閉じるとムムッと唸る。  ――フトゥールム・スクエアには、勇者暦以前に建てられた旧校舎があるって噂だ。  ――そこを訪れようとした生徒は、みんな、姿を消すんだと。 「噂じゃ樹海に囲まれているらしい」 「樹海、は知っているぞ。位置もわかる」 「そこに怖い仕掛けがあったら怖くないか? 奥に宝箱置いて、中身を取って戻るとか」 「いいな、それ。どうせなら肝試し大会を企画しようぜ!」 「そうと決まれば、さっそく二人で準備だ! コンニャク、って何だ。どこで買える?」 「さぁ?」  事件というものは、大抵些細なきっかけから始まるものだ。  昨晩から、生徒二名の所在が分からない。  学園内から出た形跡もなく、両名とも実力のある生徒であることから丸一日放っておかれた。  しかし流石にご飯の時間になっても帰ってこないのは心配だというクラスメイトの訴えにより、有志による捜索隊が結成されることになった。 「センキュー、カミング。生徒、のようなものたち」  深い樹木と水の匂い。  鏃(やじり)のような黒の梢がざわめき、ぬばたまの闇と不快な湿度が体に纏わりつく。 「ここ。樹海イズ、おそらく現場」  集まった顔ぶれを確認した女性教師が樹海を親指で示した。  仕事の出来る麗人といった整った風貌。  しかし喋ることが不得意で有名な、サバイバル教師の【ヴィアーレ・ロクスウェル】だ。彼女のとんがり帽子の上でバランスをとっているフクロウが同意するように鳴く。 「あの二人はサバイバルの達人だから。普通の遭難なら帰って来るよ」 「消える直前、樹海や肝試しについて話していたから心配なんだ」  消えた二人が事前に話していた情報をまとめると、恐らく旧校舎付近に広がる樹海に向かったのだろうと捜索隊は見当をつけていた。  旧校舎『アリエ・アガルペリア』。姿を見た者はほぼ居らず、存在すら疑わしいとされている建物だ。  しかし、その周辺に樹海が広がっているという噂は有名である。  夜空の下で、羽音もなく数羽のフクロウが旋回している。  内部は通信魔法石(テール)による通信ができず、他チームへの連絡や救助方法はフクロウによる連絡便しかない。 「樹海、魔物いない。けれど迷いやすい。バラバラになるのは、ノー」  ヴィアーレ教諭は胸の前でバツ印を作った。  あまり人数を分散させずにチームごとに捜索しろという意味なのか。  肉体的にバラバラになったら復活に時間がかかるから止めてほしいという意味なのか。 「準備する。情報を得る。みんな協力。とても重要。なぜなら」  彼女の視線からは何も読み取れない。 「森が敵だとデンジャラス」  樹海の地面を、重苦しい霞が覆いはじめていた。 「では。皆様、ごー」
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