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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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【領地戦】特異点の彼方へ - セントリア防衛 桂木京介 GM

ジャンル 戦闘

タイプ マルチ

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2022-01-18

予約期間 開始 2022-01-19 00:00
締切 2022-01-20 23:59

出発日 2022-01-28

完成予定 2022-02-07

参加人数 12 / 12
 膝が体を支えきれなくなり両手を地につける。  バランスを崩し【ネビュラロン・アーミット】は顔面から地面に激突した。死にかけた黄金虫のようにもがく。  駆け寄り彼女を助け起こした学園生は自分の目を疑った。  ネビュラロンの顔にあったのは――恐怖だった。 「先生、しっかりしてください!」  声をかける。だが返ってきたのは言葉にならない、けだもののような吼え声だけだった。  抱き起こされた姿勢のまま、ネビュラロンは両手で顔を覆った。いや、覆おうとした。しかし右手首から先がない。 「先生、気を確かに! どうしたんですか!?」  力強く揺さぶると、ようやくネビュラロンは学園生に応じた。 「……ここは」 「ここは、どこなんです?」 「ここは私が、生まれた世界だ」  途切れ途切れに告げると、ネビュラロンは薨(こう)じるかのように気を失った。  * * *   異世界への門『特異点』を中心とした研究都市がセントリアだ。  現在、特異点は『異世界転移門(トランスゲート)』という形で実用段階に移行しつつある。先日も短い試用が行われたばかりだ。  この日、セントリア付近に魔王の軍勢が集結していた。  有象無象からなる魔王の先兵が黒い群れを成している。猛獣と猛獣使いの組み合わせもあれば、半獣半人のようなジャバウォックも唸り声をあげている。わずかな食料と引き換えにかり出されたゴブリンたちは、退屈したのか仲間同士で小競り合いをはじめている。うち一匹が目の前を横切ったのを、邪魔だと言わんばかりにトロールが蹴り飛ばす。学園では移動手段として好まれるグリフォンの亜種が、猫のような目を細め爪で地面をひっかいている。沼沢地からかり出された蛟(ミズチ)の集団は、貸与された真新しい盾と槍を構えているものの不服そうな表情は隠せていない。  混成、それも無理にかき集めたような様相だ。ただし数は多い。千とは言わずとも、兵士数百に匹敵する規模といえよう。  この一団の先頭にあって、 「ふむ」  あごに手を当て、奇妙な紳士はつぶやいた。  いやしかしそれは『手』であろうか。  それに、『あご』といえるのか。  紳士風ではある。少なくとも服装は。ひろげれば雨傘にもなる長いステッキ、蝶ネクタイに燕尾服、靴も光沢のある本革だ。高級感のあるボーラーハットも頭に乗せている。  しかしやはり奇妙だ。  紳士には肉体がないのだから。  手袋、燕尾服にスラックス、靴、いずれも中身はあるように見えるが、袖口と手袋の間、あるいはシャツと顔の間、いずれの空間も無なのである。  顔にしたって、溶接工が被るような鉄面なのだ。フルフェイスで両眼は黒い窓、口の部分から蛇腹状の管が垂れている。  彼は【スチュワート・ヌル】と名乗っている。 「数は揃いましたな」  ヌルのつぶやきに対し、ケッ、と唾棄するような口調で応じた者がある。  まっすぐ立てばきっと長身、ヌルに並ぶほどの背丈があるだろう。  けれど彼女【ドクトラ・シュバルツ】は極度の猫背なので実際のところはわからない。目鼻立ちは美しいほうに入るはずだが、五日も寝ていない人のような目の隈、病人のような顔色とあいまって不気味な印象しなかった。なのに唇ばかりはやけに赤い。 「こんなモンが戦力になるもんかね。烏合の衆さ」 「ふむ」  ヌルは否定しない。 「しかれどひと月も前であれば、この半分を集めるのにも苦労したことでしょう。勢いは急速に増しているのです。わが魔王軍の」 「……『わが』?」  シュバルツは片眉を上げた。 「失敬、『われらが』でしたな」  返事のかわりにシュバルツは鼻息して、手に持ったチキンの丸焼きをバリッと食いちぎった。生焼けもいいところで血液すらしたたっているが、まったく気にしていないらしい。  食えない奴だね――とヌルに言う代わりにシュバルツは白衣で口元を拭った。タイミングが違えば、『わが』とうっかり口にしたのは彼女のほうだったかもしれない。 「口を慎め!」  ヌルの顔面が吹き飛んだ。地面にマスクが落ちる。体(といっても服と手袋、靴だが)はワンテンポ遅れてマスクを追った。  丸々と太った長髪の男が、眼鏡の位置を直しつつヌルを見おろしていた。 「『わが』でも『われらが』でもないのだよ、ヌル君。『偉大なる魔王様の』魔王軍だろう?」 「手厳しいですな、ガスペロ殿」  頬を押さえつつヌルは男を見上げる。  男は【ガスペロ・シュターゼ】という。現在は髪を長く伸ばした中年男の姿をとっているが、実体はガスのような気体であり、人間に寄生してその肉体を仮の肉体として用いる。 「もちろん、シュバルツ君もな」  シュバルツは返事をせず、腕をさすって肩をすくめた。 「さて諸君!」   ガスペロはニタリと頬を緩めた。 「連中のくだらない企みを粉砕する必要があることは理解しているだろう? この世界の住民を異世界に一時避難させ、魔王様の力の源である『恐怖』の供給を止めようというのだからね。とんだ法螺話に聞こえるが、たしかに卓越した発想ではある。異世界転移門は破壊しなくてはなるまい!」  御意とヌルは答え、シュバルツは黙ってチキンの残りを口にほうり込んだ。  ガスペロは言う。 「軍を二手に分けよう。一方はヌル君、一方はシュバルツ君が指揮を執る。どちらが先に異世界転移門を破壊するか見物だね」  * * *   この規模の魔王軍がセントリアへ侵攻をかけたのである。  無論、規模が規模だけに奇襲とはいかなかった。  フトゥールム・スクエアを中心とする対魔王陣営は一団となって横合いから攻撃をしかけ、魔物の群れに少なからぬ打撃を与えた。  しかしセントリアは平地の街であり守るには適さない。残念ながら攻撃を防ぎきれず、ヌル、シュバルツはいずれも少数の精鋭を率いて研究施設に侵入、特異点に迫ったのである。  先に異世界転移門へたどり着いたのはヌルだった。  門を守る最後の壁たるべく、学園生たちはヌルに立ちはだかった。その中には、教師ネビュラロンの姿もあった。  肉体を持たぬ紳士はこれを目の前にしても動じず、悠然と上着のポケットに手を入れた。 「私は先日、古代の祠(ほこら)で素敵なものを見つけましてね」  キラリと輝くものを、ヌルは手袋でつまみ上げる。 「見えますか? 鏡の破片のようですね。どうやら特異点のかけら、あるいはキーではないかと……」  言いかけたところでヌルの姿は消えてしまった。  ネビュラロンも。  学園生たちも。  異世界転移門が突如として目を覚ましたのだ。  異世界転移門を中心として、まばゆい光が場に満ちた。  光に包まれた者は、一秒の千分の一に満たぬ時間で世界の壁を乗り越えた。  * * *   君は今、気を失ったネビュラロンを介抱しているのだろうか。  それとも、この不思議な世界を呆然と眺めているのだろうか。  まったく見覚えがない光景だ。都市部のようである。高い建物が佇立している。建物は大量の窓に陽光を反射し、きらきらと燐光を放っている。気味が悪いくらい清潔だ。人の気配はない。  やがて君は知るだろう。ここは地上ではなく巨大な船の上だと。  しかもこの船は空を飛んでいるのだと!   あるいは君は、魔王軍を蹴散らし異世界転移門に駆けつけたところかもしれない。  一瞬の光が見えた。  しかし異世界転移門に到着しても、そこにはすでに誰の姿もなかった。  石柱が円環状に建ち並び、沈黙をたたえている。  この場所には数人の学園生が護衛として残っていたはずだ。彼らはどこへ消えたのか?  探している時間はなさそうだ。魔王軍の新手が、この場所に迫りつつあったのだから。
魔族の王達を起こしに行こう 春夏秋冬 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2022-01-17

予約期間 開始 2022-01-18 00:00
締切 2022-01-19 23:59

出発日 2022-01-26

完成予定 2022-02-05

参加人数 6 / 8
 トロメイア。  精霊の住むといわれるアルマレス山の麓に広がる街であり、観光名所として名高い。  多種様々な種族が住んでいることもあって、一際雑多な雰囲気を見せる街でもある。  そこで、1人の美女と食道楽が観光していた。 「ああ、あの子ええわぁ。かわいい。あっちの子も、ええわぁ」  オープンカフェで紅茶を飲みながら、美女が道行く美形を見て堪能していた。  ちなみに、性別年齢種族関係なしである。 「みんな色艶ええし、目の保養になるわぁ。昔に比べて、ええ時代になったんやねぇ」 「みたいだな」  一口でチーズケーキを食べながら、相席している男が返す。  美女は狐のルネサンス、食道楽の男はドラゴニアであるように『見えた』。 「食い物も昔に比べて種類が多いし、封印を破ったかいがあったな」 「せやねぇ」  さらっと、聞き捨てならないことを言いながら、2人は会話を続ける。 「こんだけ、かわええ子らがおる時代やったら、うちは別に暴れんでもええかなぁ思うんやけど、そっちはどないするん? 【スルト】」 「下手に暴れて美味い物が食えなくなるのは御免こうむる。とりあえず百年ぐらいは各地を巡って美味い物が食いたい。そっちは相変わらず美形探しか? 【コトノハ】」 「せやねぇ……魔王のアカンたれのごたごたのせぇで、あの子がどうなっとるのか分からんようなってもうとるし、せめて子孫でも残ってへんか見て回ろう思うんよぉ」 「……最後にお前が契約した小僧のことか?」 「そやわぁ。放っといたらぐずぐずに堕ちる子ぉやったから、どんな最期を迎えたのか気になるんよぉ。まぁ、痕跡探そうしても、どうにもならへんやろうけど」 「気になるなら我輩が探すの手伝ってやるのである」  突然声を掛けられて、スルトとコトノハは視線を向ける。  そこには顔なじみが居た。 「【アーカード】やないの」 「お前も封印解いたのか」 「ふははははっ、当然である!」 「いや、こっちが解いてあげたんじゃないですか」  血の魔族アーカードに突っ込みを入れたのは1人の少女、【カタリナ・ストーカー】。 「きゃー、かわええ子やないのぉ。おばちゃんの膝に座るぅ?」 「嫌です」  さらっと返すカタリナ。  めそめそ嘘くさく泣くコトノハ。  そちらをちらりと見たあと、スルトは言った。 「そっちの娘は何だ? アーカード」 「我輩の眷属の子孫なのである」 「……【ブラム・ストーカー】の子孫か。そっちの眷属は律儀だな。二千年経ってるのに、封印を解きに来るとは」 「我輩の持ってた財宝パクって成り上がった後に放置されてたのである」 「……あいつらしいな。封印を解いても問題ない時代になるまで力を蓄えて、お前を迎える準備を子孫にさせてたのか」 「そういうことは真顔で言わないものである。気恥ずかしいであるからな!」 「……承知した。それで、何しに来た? 今の時代は娯楽と美味い物に溢れてるからな。わざわざお前と殺し合いをして暇つぶしする気は無いぞ」 「相変わらず物騒であるな、汝は。そんなつまらんことをする気は無いのである。殺すなら魔王を殺すである」 「……ほぅ」  にやりと、楽しげな笑みを浮かべるスルト。 「魔王は封印されていると聞いたが?」 「どーせ近い内に出て来るのである。それが分かってるから、2人とも封印破って出てきたのであろう?」 「せやねぇ」  カタリナを膝の上に乗せながらコトノハが言った。 「あのアカンたれに無茶苦茶されて、かわええ子らが減ったら世界の損失やろ? やから出てきたんよ。色々変わってて、慣れるまで時間かかったわぁ」 「なら話が早いのである。とりあえず覇王六種、全員起こしに行くのである」 「……あの、前々から気になってたんですけど、覇王六種って具体的になんなんです?」  コトノハの膝の上に乗ったカタリナ(抵抗したが諦めた)は、疑問に思って尋ねる。 「アーカードさんも入ってるから、凄いのか凄くないのか分からないんですけど」 「そいつ今はそんなだが、眷属が増えれば増えるほど際限なく強くなるぞ」 「吸血鬼の魔王みたいなもんやねぇ」 「え~、本当ですか?」 「信用零である! ならば説明するのである!」  というわけで説明し始めるアーカード。  話によると、魔王に喧嘩を売れるぐらいの強さを持つ強大な魔族、とのこと。6人おり、それは――  血の魔族・夜天覇道(ナイトウォーカー)アーカード。  奈落の魔族・滅尽覇道(メギド)饕餮(とうてつ)。  言葉の魔族・創天覇道(ゴッドワード)コトノハ。  破壊の魔族・破天覇道(ラグナロク)スルト。  進化の魔族・変天覇道(アトラクナクア)レン。  無限の魔族・無尽覇道(ケイオスオーバー)女華(じょか)。  全てが規格外の力を持つ魔族だった。話を聞き終ったカタリナは恐る恐る言った。 「あの、みんなとんでもないんですけど、特に饕餮さんって――」 「起きた途端、気に入った種族が絶滅するまでもぐもぐしかねんヤツであるな」 「そんなの起こしちゃダメでしょー!」 「そうは言っても、もう起きかけてるのである。それにあれを起こそうとしてるのもいるみたいであるし、どの道起きるのである」 「じゃぁ、どうするんですか?」 「その辺は我輩がどうにかするのである。それより、残りのレンと女華を起こしに行くのである」 「ちょっと待って下さい!」  慌ててカタリナは止めると、続けて言った。 「封印解きに行くなら、学園生さん達に協力して貰いましょう」  ヤベーヤツらに好き勝手させられない、と言わんばかりに説得し始めるカタリナだった。  そして課題が出されます。  内容は、覇王六種と呼ばれる強力な魔族の封印を解きに行くこと。  アーカード達、すでに目覚めている覇王六種達も付いて行くとの事です。  この課題にアナタ達は、どう対応しますか?
王冠――埋まらない空白 K GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2022-01-15

予約期間 開始 2022-01-16 00:00
締切 2022-01-17 23:59

出発日 2022-01-24

完成予定 2022-02-03

参加人数 3 / 8
●あなたを呼ぶ声  グラヌーゼ。  荒れ地は一月の寒気のもと、常以上に閑散とした様相を呈している。空は曇り。けれど雲には切れ目があって、そこから時折薄日が、梯子のように降りてくる。  サーブル城の上にその光が、さっと差しかかった。  その瞬間城は輝いて見えた。往年の生気を取り戻したかのように。だけどそれは錯覚だ。日が途切れると同時にまたもとの、寂れ果てた姿へと戻る。  コートのポケットに手を入れて、遠くのサーブル城を眺めていた【セム・ボルジア】はほんの瞬きのくらっとするような感覚を覚えた。その間に幻覚を見た。多分幻覚だろう。実際にはそういうことは起きなかったのだから。  崩れていた城壁もガーゴイルも屋根も窓にはめられたガラスも庭の花壇も、何もかもが一瞬にして元通りになっている。  空堀には水が満たされ、城の周辺は緑の芝が広がっている。その回りは黄金に染まる麦畑だ。 平原を突っ切って白い舗装道。城へ真っすぐに伸びている。城の住人であり主人である人々が出て行くための道……。 『違う違う。戻ってくるための道だ。王冠を持つお前はそれを知っている』  ひゅっと息を吸ってセムは、瞬きをした。それから額を手で擦った。少し汗ばんでいる。この寒いのに。 「……何ですかね、今のは」  一人ごちるその声に、傍らにいる【ラインフラウ】が反応する。 「どうしたの、セム」 「……白昼夢ですかね。そういうものを見まして。今。何か声も聞いたような」  どこか身の入っていない声色。心配そうにラインフラウは、セムの顔をのぞき込む。患者を診る医者のように顔をしかめて。 「……ローレライでもないのに?」 「ええ」 「どんな幻?」 「城が元通りになっていたんですよ。周辺もきちんと整備されててね。過去の光景なんでしょうかね、あれは。それとも未来の――」  セムはまだ何か続けようとしたが、ラインフラウが不意に抱き着いて、それを遮った。 「それは多分、ノアの呪いが見せているのねえ。ねえセム、私あなたを死なせないわよ? 少なくとも一緒に死ぬ手筈が整っていないうちはね」 「……その話、諦めてないんですか?」 「当然」 「それはまた、どうも」 「学園、行くの?」 「ええ。ウルドさんがまた、興味深い絵を描いたみたいですから」 ●不祥事の後始末 「――と言うことで、私が代理に来させていただきました」  【トリス・オーク】の秘書を名乗る男は、黒い革カバンから真新しい書類――『念書』の束を出す。  そこには小難しい法律用語で『この度のことには、遺憾の意を表明する』『道義的責任から生活支援のための援助金をお渡しするのでぜひ受け取ってほしい』『あなたがたの家に放火した当事業所の下請け臨時従業員については依然行方が知れないが、彼らが学園領内のあなたがたの生活に支障が出ないように手配し、取り計らう』という旨が書かれていた。 「内容にご承知いただけますなら、サインの程をお願い致します」  馬鹿丁寧に両手を添え万年筆を渡してくる相手を、【ウルド】の祖父は、半眼で眺める。 「オーク氏はどうして来られんのじゃな」 「お仕事の方がご多忙で、時間が取れないのです。何とか都合をつけようとなされたのですが……ストップしていた再開発計画がまた進み始めまして……いずれ都合がつけばまた日を改めて、是非直接お話ししたいとのことではございましたので、はい」  【アマル・カネグラ】はこっそり思った。いつまでたっても『都合』とやらはつかないだろうなと。なにしろこちらへ本人が赴いた時点で、事件への関与(彼が命令したことではないにしても、だ)が確定してしまうのだ。これから選挙にも出ようかという人間が、そんな危険は犯すまい。誠意があれば別だが、多分そんなものないだろうし。 「ひとまず援助金の方は、こちらに」  秘書が別の鞄を開いた。  中にはぎっしり紙幣が詰まっている。  そんなものこれまで一度も目にしたことがない老夫妻は、目を白黒させた。  【ラビーリャ・シェムエリヤ】は法律上の手続きに疎い彼らが、不利益を被らないよう、秘書にこう申し出た。 「……書類の方、私にも見せていただけますね?」 「かまいませんよ、どうぞ」  確認したところ、ひとまず書類上の不備はなかった。一切の責任が所在不明とされている人々に帰せられているのは、いかがなものかと思うが。 「……この念書は学園が保管することになりますが、それでかまいませんね?」 「はい。それはもう、ご随意に」  アマルは特に断りなく札束を手に取り、勘定をし始める。ちゃんと書面に記載された分の金額を持ってきているかどうか確認するために。 ●欠落  祖父母らがオークの使者に応対している間、【ウルド】はおずおずとセムに、『新作』の絵を見せた。  絵にはセムが描かれていた。この前の絵と同じ姿。小瓶を手にしてワインの入ったワイングラスに、何か液体を注いでいる。彼女だけではない。彼女の家族も同様のことをしている。  どう見ても不穏極まりない光景だ。  その後ろに、前の絵にあった宴席がしつらえられている……。  セムは絵を見た瞬間、何とも言いがたい感じに表情を歪めた。笑いと言えばそうともとれるが、それにしてはあまりに苦すぎる。  続けて彼女は椅子に座り込み、黙り込む。頭を下げ手で額を支えて。  結構長い間そうしているものだから、ウルドは、もしかして彼女が泣いているのではないかと思ってしまった。  けど違った。持ち上げた顔には涙など一滴も流れていない。激情が吹き荒れているかのように、灰色の目が底光りしている。怖いくらいに。 「……ウルドさん、他に何か描いた絵はありますか? 私に関して」 「い、いや、あらへん。今のところは」 「……今のところは、ですか」  鉄の沈黙。  緊張感に耐え切れなくなってきたウルドは、場にいた【ドリャエモン】に救いを求める。目で。  ドリャエモンはそれに応じた。 「……セム、お主、ウルドがこういう絵を描くことは、承知しておったではないか。今更それを責めてもせんないことではないか」  セムは答えた。押し潰したような声で。 「責めてるんじゃありませんよ。別に。ただ、ここまで来たならもっと細かいところを描いてくれればいいのにと思っただけでして……」 「それは、どういうことだの」 「……例の晩餐について前後の記憶がすこぶる曖昧でしてね、私。これを見るにどうやら、私を含めた家族全員が毒を盛ったようですが――経緯が全然思い出せなくてね」  彼女は息を深く吸って、絵の中の自分を指差す。 「……可能なら思い出したいんですよ。そこのところ。そうしないとどうも、すっきりしなくて。まあ、思い出したとしても、どうということはないでしょうけど。私だけがやったにせよ、家族全員がやったにせよ、もう時効ですし……」
木滅の刀 七四六明 GM

ジャンル 戦闘

タイプ EX

難易度 とても難しい

報酬 多い

公開日 2022-01-11

予約期間 開始 2022-01-12 00:00
締切 2022-01-13 23:59

出発日 2022-01-20

完成予定 2022-01-30

参加人数 2 / 6
 恩讐に果て無し。雨は止めども終焉遠し。汝の戦い未だ果てず。  強い雨足の跫音が響く。  冷たく強く、叩き付ける様に降り頻る雨の中で、静謐の二文字を具現した声が、脳の内側でこだまする。  恩讐に果て無し。されどもし、汝が此の恩讐に立ち向かわんとするならば、疾く走れ。鎮魂の剣(つるぎ)を持って、疾く参れ。  至るべき終わりを齎さんと驕るならば、疾く、疾く――英雄擬きの剣(つるぎ)達よ、走れ。向かえ。荒ぶる魂を鎮めんがために。 「来たか……」  怪談じみた奇妙な話だが、この村は毎年ある時期になると、森に侵食されていた。  夜になると、異常な速度で成長する木々。広がる緑は土から栄養を奪い、村の作物を枯らしてしまう。  枝葉に紛れて、ジャバウォックやポイゾネスジャバウォックが人を襲い、夜にはウィルオーが跋扈する。足元に広がる草花の中にはマヒノクサやヨイユメゴケが混じって、幻覚や麻痺毒に苦しむ人が多い。  そんな村にフラリとやって来て、生活を保証して貰う代わり、森から村を守っている男がいた。 「鳶《とび》さん! 鳶さん来てくれ!」 「魔物が出たか」 「今日は枝だ! 団体客だ!」  男の名は【鶯・鳶】(うぐいす とび)。  色の神なんて姓のついた師から、髪と同じ色を受け取った男。金、銀の色を持つきょうだい弟子と共に、剣の技を磨いた男。 「あれ、か……」  まるで、枝葉の波だ。  限界まで高く、上まで伸びて、村を圧し潰し、呑み込まんとする大津波。夜空の光源を村から奪わんばかりの巨大な影が、怪物の仁王立ちの如く立ち上がっていた。  が、鳶は引くどころか、肩からぶら下げた刀身の凄く長い長刀を抜く。 「村の者ども! 始めるぞ! 夜の祭りだ!」  水平に構えて月光を反射する刀身が、風と雷の魔力を同時に纏い、大きく振り回した。  そして、大きく薙ぎ払う。横一閃された斬撃が、長く伸びた枝の波を両断。再度伸びて来る枝を、今度は縦に両断する。  すると今度は大きく成長した大型のジャバウォックが飛び出し、一直線に突進して来た。  水平に構えた長刀が嵐を纏い、大きく開いた口から一直線に両断する。縦半分に両断されたジャバウォックを見た村人達が、歓声を上げた。  更にポイゾネスジャバウォックまでもが襲い来るが、それも両断。再び、村から歓声と拍手が上がる。  逆に勢いを失った森は、盛り上がらせていた枝を引いて、急激に大人しくなった。 「今夜の祭りはここまでだぁ! 明日もあるだろうから、さっさと寝なぁ!」  この時期になると決まって来る森との戦いを、男は祭りと呼んで村から恐怖と共に斬る。  が、ここ最近の戦いは例年より激しさを増して、祭りだ何だと言って誤魔化せる物でもなくなって来た。 「鳶! ……どうする?」 「さすがに、もう俺一人でカバーするのも難しいな……仕方ねぇ。梟を飛ばしてくれ。爺さんの弟子が、何人かいるはずだ。どれくらいの出来かは知らねぇが、色を貰ったなら使えるだろ」 「わかった!」  単なる直感だが、何となくわかる。  森の中に、この事態を引き起こしてる何かがいる。  目的は知らないが、人相手に良い印象を持っている感じはない。村に来たのは本当に偶然だったが、自分が来ていなければ、今頃村は森を操る何者かによって、食い尽くされていただろう。  敵意、殺意。  そう言ったものを感じさせる何者かが諦めてくれない以上、掃討する他ない。 「魔法学園、か……どんな奴が来るんだかなぁ……」  期待と不安とが混じり籠った手紙を脚に括り付け、梟が飛ぶ。
異世界避難先準備しましょう 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 多い

公開日 2022-01-10

予約期間 開始 2022-01-11 00:00
締切 2022-01-12 23:59

出発日 2022-01-19

完成予定 2022-01-29

参加人数 5 / 8
 小都市セントリア。  異世界転移の核となる特異点研究所を中核として、それを隠蔽するための複数の研究所からできた研究都市だ。  学園生達のお蔭で研究は進展しており、幾つかの成果が上がっている。  その実力を見込まれ、学園からひとつの要望が出されていた。 「魔王の影響をどうにかしてくれって、無理ですよぅ」  泣き言を言っているのは、特異点研究所の責任者である【ハイド・ミラージュ】。 「そりゃ、異世界との接続は成功しましたよ。それで得た知識や材料で今までに無かった物を作れましたよ。だからって無茶ぶり言われても」  魔王の復活に備え学園から要請されたのは、ハイドが口にしたように『魔王の影響の排除』。  この世界の生物の恐怖を取り込み、際限なく強くなっていく魔王をどうにかできないかと訊かれたのだ。 「無理に決まってるじゃないですかこんなのー」 「そんなに無理なのですかー?」  ハイドに尋ねたのは、異世界人である【メフィスト】。  これにハイドは、説明する。 「メフィストさんも、学園長から渡された資料を見たじゃないですか。あんなの滅茶苦茶ですよ」  学園長の【メメ・メメル】は、魔王と直接戦ったことのある内の1人だ。  その時の経験を可能な限り全て記した資料を渡されたのだが、実際、どうしようもなかった。 「基本不死身で殺しても殺しても恐怖する誰かが居るだけで復活するとか、どうしろと。しかも戦ってる最中も、誰かの恐怖を取り込み続けることで体力も魔力も際限なく回復し続ける上に、元々の力の最大値も上がっていくって」  体力と魔力が自動回復し続ける上に、その最大値が戦っている最中も上がり続けるという相手だ。 「アークライトという種族丸々ひとつの命を代償にして、光の精霊王が核になった封印をすることで回復力を低下させて倒したみたいですけど、一度受けた魔法には耐性を持つとか書いてるじゃないですかー。これ、今の封印解けたら、同じ方法だとどうにもできないですよぉ」 「魔王の周囲を結界で覆って倒すのはどうですかー?」  メフィストの提案に、ハイドは少し考えて応える。 「とんでもない出力が要りますよ。それをどっからもってくるかって話ですし。それに根本部分で、この世界に恐怖を抱く生物がいる限りどうにもなりません」 「勇者達は、どうだったのですかー? その人達もー、恐怖はしたでしょうしー」 「それは、精霊王の加護で一時的に魔王からの影響を排除してみたいです。今、人間と呼ばれる八種族も精霊王の加護を与えられているので、ある程度は魔王の影響を排除できるでしょう。ですが、それ以外の種族、いわゆる『魔族』は、もろに影響を受けるでしょうね」 「魔族ですかー。それって単純に、精霊王からの加護を受けられなかった種族ってだけですよねー?」  メフィストの言葉に、ハイドは返事に詰まった後、眉を顰めて応えた。 「ええ。学園長の資料が正しいなら、そういうことでしょう。本質的に、我々『人間』と『魔族』に違いは無い。単に、精霊王に選ばれたかどうか、ただそれだけです。そして精霊王が『人間』にしか加護を与えなかったのは、善とか悪とか、そんなもんじゃない」 「ただ単にー、力が足らなかったってだけですねー」  単純明確な答えをメフィストは口にした。 「そもそも魔族というのはー、『魔力から生まれた種族』ってことでしょうしー。それを言ったらー、この世界全てが魔力から形作られてますからねー。全ての生き物が魔族ですよー」 「ええ、そうです」  ハイドは、メフィストの言葉に返す。 「この世界において『人間』と『魔族』との差は、善や悪や性質の違いから来る物じゃない。単に運が良いか悪いか、その程度だ」 「でしょうねー。だからー、人間に善人や悪人が居るようにー、魔族にも色々いるでしょー。ですがー、魔族が居るとー、魔王を倒すことが難しくなるー」 「……そうとは限らないでしょう。魔王からの影響を跳ね除ける『覇王』と呼ばれる魔族も居たと資料には書いてあります」 「それはごく一部ですねー。大半は違いますよー。だからー、一番手っ取り早いのはー」 「魔族の皆殺し、でしょうね」  吐き捨てるようにハイドは言った。 「恐らく、今の魔族との因縁は、それが関わってるんでしょう。当時の情勢を考えれば、そうなるのも仕方ないと思います。魔族の中には、魔王を信仰して、積極的に人間から恐怖を搾り取ろうとした者達も居たようですから。だからといって……」 「殺し合いは嫌ですかー?」 「嫌ですよ! そんなの当たり前じゃないですか!」 「なら止めましょー。他の方法取れば良いだけですしー」 「他の方法って、そんなの――」 「異世界に避難させれば良いじゃないですかー。魔王を倒すまでー」 「……え」  あまりにも単純で、けれど意識から抜け落ちていた答えに、ハイドは間の抜けた声を上げた。 「そんな、ことって……」 「できますよー。とりあえず私の世界に避難して貰いましょー。他にもー、私の世界にぶつかって来るー、巨大宇宙船の世界にも協力して欲しいですしー。それ以外の世界にもー、一時的に避難できるなら避難して貰いましょー」 「それが可能なら……いや、いけるか? 転移門の出力を上げて、今以上に複数の異世界との経路を作れば――」  研究者として考え光明を見出すハイドに、メフィストは言った。 「これはこちらの世界の人達がー、魔族の皆殺しをしようとしなかったから提案したことでーす。うちの世界にしてもー、軽々しく皆殺しにしようとするような人達は避難先として受け入れられませんからねー」 「見定めてました? ひょっとして」 「それはもちろんー。そこはお互い様ですねー。それよりもー、これを実現してー、魔王を殺して決着をつけましょー」 「魔王を殺す、ですか」 「そうですよー。資料から判断してー、今の魔王は話し合いで解決はしませんー。殺す以外の選択は無いですよー。これは生存競争ですねー。生きてる限り逃れられませんー」 「……そうですね。でも魔王は殺しても、この世界がある限り新たに生まれる。それは……」 「一から育てて、誰も傷つけないような子になって貰えば良いじゃないですかー」 「それは……」 「おかしいですかー? でもー、学園を作ったメメルって子は、そう願ってると思いますよー。だからこそ学園にー、『魔王・覇王コース』なんてものがあるんでしょうからねー」  その答えに息を飲むハイドに、メフィストは応えた。 「いつか生まれてくる新たな魔王が健やかに育ち皆と歩めるようにー。覇王と呼べるほどの強力な魔族もー、共に学園生として過ごせるようにー。そういう願いをー、持っているんだと思いますよ」  メフィストの応えに、ハイドは小さく笑う。 「メフィストさんって、ロマンチストなんですね」 「ええー、もちろんですよー」  漂々と応えるメフィストだった。  そして学園から課題が出される。  内容は、異世界に避難先を作ること。  そして、より多くの異世界との繋がりを作ること。  いずれ必ず起こる魔王との戦いを前に、殺さないための戦いの協力を求められるのでした。  この課題に、アナタ達は、どう動きますか?
燃え上がれ、燃え上がれ、燃え上がれ元ッ旦 桂木京介 GM

ジャンル 日常

タイプ EX

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2022-01-06

予約期間 開始 2022-01-07 00:00
締切 2022-01-08 23:59

出発日 2022-01-15

完成予定 2022-01-25

参加人数 6 / 6
 本日の【コルネ・ワルフルド】は振袖姿、白地に踊るは牡丹と蝶で、帯も金色のあざやかな装いだ。結った髪にかんざし挿して、やや内股で前に出る。  ええと、と頬をかいてコルネは言った。 「明けましておめでとうございます。体調不良の学園長に代わってー……代行で乾杯の音頭をとりますワルフルドです。旧年中はお世話になりました。えー、今年もよろしくお願い申し上げますっ。星マーク!」  星マーク? と怪訝な顔をする列席者たちを見てうろたえ気味に、コルネは手元の紙に視線を落とした。 「先生、思うんですが」  かたわらの【イアン・キタザト】が耳打ちする。 「その星マークは、『元気に読め』っていう意味ではないかと」 「あっ」  合点がいったような顔で、ふたたびコルネは宣言した。 「今年もよろしくお願い申し上げますっ☆ では乾杯!」  乾杯の声が唱和する。コルネはグラスを掲げると、泡立つ大ジョッキに口を付けた。白い陶器製、自分の顔ほどもあるメガジョッキである。持ち上げるだけで難渋しそうな逸物であるにもかかわらず途中で息つくこともなく、咳止めシロップみたいに軽く空けてしまった。  ぷはぁと口をぬぐうコルネに、イアンはいささかあきれ顔だ。 「先生いきなり飲みすぎでしょー」 「いやぁ、急に挨拶の代理まかされたもんで、緊張してノド乾いちゃって♪」 「お酒はほどほどに、ですよ。先生、お見合いパーティでも痛い目にあったみたいですけどー」 「あー……あれは、失敗でした。なので今日は、これ一杯ですませますんで」  その一杯がデカすぎるよね? と思った様子だがイアンは特にコメントせず、自分のグラスを手にする。  改装したばかりの学園内講堂は、床も天井もぴかぴかだ。せっかくなのでということで、今年の教職員新年会はこの場所での立食パーティとあいなったのである。これまで学食や、こぢんまりした山小屋で行っていたものと比べると規模が段違いだった。 「学園長の思いつきで、雪ふってるのに屋外開催ってこともありましたよねー。雪のうえにゴザ敷いて」  あれは寒かったとコルネは首をすくめたが、はからずも出てしまった名前に、数秒間会話は絶えることになった。  ようやく、イアンが言った。 「……学園長、大丈夫なんでしょうか?」  のほほんとしていた表情が曇っている。 「うん、まあ、大丈夫って言ってますけど。本人は」  毎年恒例の教職員新年会は、【メメ・メメル】がはりきって幕を切るところからスタートしていた。  ところが今年はそのメメルが欠席しているのである。あえてコルネに訊く者はないが、メメルの体調不良が原因であることはすでにあきらかだった。 「オレサマはたしかにフトゥールム・スクエアの創立者であり代表者でもあるが、学園そのものではない」  今朝、例の発作にうめきながらメメルがコルネに告げた言葉だ。 「だから行事はいつも通り進めてくれ。会場でオレサマが急に倒れたりすれば、おめでたいムードに水を差すからな……」  いつもいる人がいるべき場所にいないのだ。火が消えたようとまでは言わなくとも、一抹の寂しさがあることは否めない。  でも、お葬式みたいに悄然としろとメメルは言っただろうか? いや、大いに騒いでくれと言ったではないか。だからコルネは、うんと明るい声を出すのだ。 「でも今年はその分、教職員だけじゃなく学生も入れたパーティですからねっ♪」   会場を見わたす。例年、教職員に限っていた新年会だったが、今年は講堂という大きな会場を使うということもあり、帰省していない生徒、そもそも帰省先がない生徒も招いたのだった。なので会場はたくさんの姿で賑わっている。  コルネ同様振袖で【フィリン・アクアバイア】が華を振りまいている。薄いブルーの絹が美しい。  どこで仕立てたの? と訊きたくなるほどゴージャスなロイヤルレッドのドレスで高笑いしているのは【ミレーヌ・エンブリッシュ】だ。ミレーヌは宝石がじゃらじゃらついた扇子を手にしてしきりに扇いでいる。周囲がいささか引き気味なのも彼女らしい。  いつもの服装と大差ないが、胸元に白百合のコサージュを足しているのが【キキ・モンロ】の『おめかし』のようだ。例によってキキは色気より食い気、ガツガツ音がたつほど旺盛な食欲を発揮していた。  キキよりもっといつも通りなのは【サラシナ・マイ】で、まるっきり普段着で談笑している。相手の【エミリー・ルイーズム】がきっちりイブニングドレスを着ているのとは対称的だった。  チーズフォンデュにおっかなびっくり手を伸ばしている(食べたことがないらしい)のは【フィーカ・ラファール】で、壁際のチェアで早くもうたた寝をはじめているのは【テス・ルベラミエ】である。【パルシェ・ドルティーナ】と【ルシファー・キンメリー】は仲良く一枚のピザを分け合っていた。(ただし割合は2:8くらいだが)  珍しい組み合わせもあった。【ラビーリャ・シェムエリヤ】と【ネビュラロン・アーミット】だ。そもそも無口なふたりなので、テーブルを挟んで向かい合ったまま特に何も話していない。ただ、ふたりの間には丼に入った奇妙な食べ物が湯気を上げているだけである。豚骨ラーメンだった。しかし、麺の上に大きなプリンが乗っている。チャレンジ精神旺盛なメニュー『甘旨豚骨ラーメン(プリンラーメン)』というものらしい。 「……」  無言でラビーリャは丼を押し出した。 「……」  無言でネビュラロンは受け取った。  そうこうしている間にイアンは、【ゴドワルド・ゴドリー】を見つけ絡みに行ってしまった。ゴドワルドは迷惑そうだが、イアンは至って楽しげだ。  会場を眺めふと思い出したように、 「そういえば、リーベラントのほうはどうなってるかなあ……」  ぽつりとコルネはつぶやいた。  たまたま通りかかった【リリィ・リッカルダ】が、それこそ子ウサギのようにビクッと反応する。 「私! ……の話ですか……?」 「あ、いやいやいやキミの話をしてるわけじゃないからね! ひとりごとひとりごと~」  今日は、ローレライ国家リーベラントでもニュー・イヤー・パーティが行われているのである。  幾度かの衝突と交流を経て、ようやくリーベラントとは雪解けムードが形成されつつあった。公女【マルティナ・シーネフォス】から『非公式かつ友人として』招待を受け、修好のため学園代表としてリーベラントにおもむいた生徒もいるはずだ。  謹賀新年!!  魔王が滅びて2022年目の年が明けた。熱く燃え上がるような一年になるだろうか!?  君のお正月をおしえてほしい。  学園の新年会に参加し、友人や教職員と交流を深めているのだろうか?  帰省して地元でくつろいでいるのだろうか?  リーベラントの新年会に招待され、緊張しつつ学園代表の任を務めているのだろうか?  それとも、自己鍛錬に精を出しているのだろうか?  正義の怒りをぶつけろ、元旦!(唐突に)
新年あけましておめでとうございます。 K GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 とても簡単

報酬 通常

公開日 2021-12-31

予約期間 開始 2022-01-01 00:00
締切 2022-01-02 23:59

出発日 2022-01-09

完成予定 2022-01-19

参加人数 3 / 8
●年始のシュターニャ  ボルジア邸。  【赤猫】は、豪華な居間の椅子の上。丸くなって、のんびり寝ている。  【セム・ボルジア】並びに【ラインフラウ】は本社へ行っているから、邸の中は空っぽ(もっとも、いつもほとんどそんな感じだ)ここにいるのは彼女一人。  うううや。  やややあ。  声が聞こえたので目を開けると、数匹の猫が寒そうに窓から覗いていた。  うーや。  返事をした赤猫は伸びをし起き上がり、部屋を出て行く。野良友達を家の中に入れてやるために。 ●年始の学園  【ラビーリャ・シェムエリヤ】は教員住宅で一人、お雑煮を食ている。 「……静かだねえ……」  確かにこの時期学園は、常になく静かだ。多くの生徒、並びに教員が帰省するからである。 (今、誰と誰が学園から離れてるかなあ……)  つれづれなるままにラビーリャは、指折り数える。 (アマル・カネグラは帰省……ガブ、ガオ、ガルも帰省……トーマスとトマシーナは、ドリャエモン先生が実家へ連れて行ったっけ……後、ロンダル・オークも帰省したね……それから――)  一通り名前を連ね確認した後、今度は、まだ学園にいる存在について思いやる。 (ウルドはずっと保護施設にいるね。おじいさんおばあさんと一緒ではあるけど……)  年始の挨拶がてら様子を見に行ってみようか。  そう思って彼女は、お雑煮を食べ終えた後、保護施設に向かう。手土産の菓子折りなど買ってから。 ●年始の田舎  【ドリャエモン】の故郷は、火山地帯に程近いのどかな田舎だった。  雪が降る中、あちこちから湯気が上がっている。  見える家は皆石作りだ。壁はもちろんそうだが、屋根も、薄く切った石片で葺かれている。でも、全体的に丸っこい作りであるし、土を塗って凹凸が目立たないようにしてあるしで、いかつい感じはしない。  集落の真ん中には広場がある。広場には、火山岩で出来た粗削りな噴水が作られている。噴出しているのは、水ではなくお湯。  おかみさんらがその周囲に集い、山積みにされた服を洗っている。 「さあ、ついた」  【トーマス・マン】と【トマシーナ・マン】は、物珍しい光景に目を見張る。  ドリャエモンたちの姿を目に留めるや彼女らは、気さくに声をかけてきた。 「ありゃ、ドリャエモン様。お帰りなされましたか」 「おおこれはババ殿。お久しぶりでございます。洗濯ですかな?」 「そうさ、なにしろ新年一番のアカ落としをしなきゃならないからね」  大掃除といえば大体年末にするものだが、ここでは年始にやるものらしい。  【ドリャコ】が朗らかに言った。 「すぐ私も、洗い物をもって来なければいけませんね」 「ああ、そうしなそうしな。土産話などたくさん聞かせておくれよ。あんたたちからそれを聞くのを、皆、楽しみにしていたんでね」 「はいな」  ドリャエモンの家がある。彼らの息子たち、並びにその妻子が出迎えに出てきた。皆親によくにてかっぷくがいい、その子供たちもいる。 「父上、母上、よくお戻りなされた。これが新しく迎えた、我々の弟と妹ですかな?」  見知らぬ大きなドラゴニアたちに囲まれて、トーマスとトマシーナはちょっと緊張気味だ。  ドリャコはそんな彼らの背を押して、安心させる。 「大丈夫よ、トーマス、トマシーナ。皆、仲良くしてあげてね」  孫、ひ孫たちは、揃ってはあいと声を上げる。そして遊びに誘う。 「トマシーナちゃん、一緒にたこあげしよ」 「こま回しと、羽子板もあるよ」  同じ年頃の子供たちの申し出に、トマシーナは気を取り直した。元気よく頷く。  トーマスにもまた、同じ年頃の子供たちが声をかける。 「トーマス、一緒にお供えの餅をつこう。それが新年の男のお勤めだ」 「う、うん……」  と答えはしたものの、正直トーマスには餅つきというものがなんだか分からない。  こそっとドリャエモンに聞いた。 「おじいちゃん、餅ってなあに?」  餅つきの準備として袖をまくり上げていたドリャエモンは、おや、と声を上げる。 「トーマスは、餅を見たことはなかったかの?」 「うん……」 「餅というのはな、食べ物だ。もち米という米を蒸し、ついてこねて、形を整えて――」  説明している間に手際よく、準備がなされていく。米を蒸すための大きなカマド、せいろ、それから大きな石臼、杵。餅を丸め冷やすためのすのこ。交ぜ込むための黒豆やヨモギ……。 ●年始の保護施設  【黒犬】は寒いのなんかへっちゃらとばかり小屋の外へ出て、寝そべっている。  人の気配がしたので顔を上げる。  それがラビーリャだと分かった時点で再び顎を落とす。 「新年あけましておめでとう、黒犬」  と言われても、尻尾を軽く一振りするだけ。実に無愛想。  でもその数秒後には、もっと奮発して勢いよく尻尾を振った。彼女が大きな骨をよこしてきたので。 「はい、お年玉」  黒犬が喜び勇んで骨をかじり出すのを尻目に、ラビーリャは、玄関のチャイムを鳴らす。 「失礼します。ラビーリャです――あけましておめでとうございます」  一番先に出てきたのは、施設に住まう光の精霊【ミラ様】。  次に出てきたのは、【ウルド】。 「あ、先生。あけましておめでとうさんでございます」  三番目に祖母が出てきた。 「まあまあ、よくいらっしゃいました。わざわざご挨拶すみません」 「いいえ。あ、これ、つまらないものですがお納めください」 「まあま、こんなによいものをいただきまして……どうぞおあがりになってくださいませ。お茶くらいはお出しいたしますので」  最後に祖父が出てきた。 「おや、これはこれは。新年おめでとうございます」 「これはこれは――」  型通りのあいさつを一通り終えたラビーリャは、奥へ入って行く。ささやかな新年祝いをするために。
時の奇術師 ~聖魔ゲーム~ SHUKA GM

ジャンル 推理

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-12-29

予約期間 開始 2021-12-30 00:00
締切 2021-12-31 23:59

出発日 2022-01-08

完成予定 2022-01-18

参加人数 2 / 6
「皆さん、こんにちは。今日は僕達が君達の演習の臨時講師を務めるよ」 【ニルバルディ・アロンダマークォル】【稲葉・一矢】は二人並んで生徒達の前に立っていた。  数年の間冒険者として世界で揉まれた卒業生たちからは油断ならない気配を感じさせる。 「今日は皆で聖魔ゲームをしようじゃないか」  ニルバルディの提案に首を傾げる生徒達。  生徒の中には聖魔ゲームを知っている者もいたが、演習場で武装をしてのゲームとなると一体何が行われるのか予想が出来ないようだ。 「この中に一人、聖人に化けた魔人が紛れていると想定する。そんな中で君達は魔王討伐を行うのさ」  そう言ってニルバルディは角の生えたヘルメットを被る一矢を示す。  目つきが悪く、腕組みをしてむすっとしている様子は魔王としては少々小物感を否めない。 「君達は魔王を討伐、その後演習場の出口へと向かってもらう。それで聖人側は勝利だ」  彼の視線の先には出口がある。 「ただし、ゲートをくぐる時、そのメンバーの中に魔人が混じっていたら聖人側の負け、『戦闘不能になっていない聖人全員でゲートをくぐらなければならない』。そうでなければ魔王側の勝利となる。だからゲートをくぐる前に皆はメンバーの中で誰が魔人かを言い当て置いていかなければならない」  そこでニルバルディは意地悪な笑みを浮かべた。 「まあ当然だけどそもそも魔王を倒せなかったら聖人側の負けだ。だから魔人は敢えて一矢に加勢して戦闘で聖人側を全滅させるという手に出ても構わないよ。裏切りの瞬間が鍵になるだろうね」 「なるほど、互いに疑心暗鬼の状況の中で、いかに普段通りに立ち回れるかを見るということですね」  生徒の一人が納得して頷いた。 「けれどそれだと魔王側が有利じゃないですか?」  そんな中、別の生徒が困り顔で手を挙げる。 「魔人役が全力で聖人側に加勢したら魔人の特定が出来ません」  その分析にニルバルディはごもっともと頷き返した。 「うーん、そこは洞察でなんとかしてね、と言うことも出来るんだけど、門の前で不毛な口喧嘩なんて事になるのも困るからね。ここは一つルールを追加しよう」  この中にはそもそも聖魔ゲームをよく知らない者もいるはず。  そう判断してニルバルディは生徒の提案を受け入れる。  果たして今の生徒はあの魔人の必勝法に気づいて発言しているか?  そこまでは分からないが、現状では魔王側有利である状況に変わりはない。 「魔人役はある一つの行動がとれない、という制約をつけよう。魔人がその行動をとった瞬間聖人側の勝利だ。ちなみに制限される行動を知る者は、魔人役本人と魔王役の一矢、審判である僕だけだよ。そのあたりも考慮に入れて作戦を立ててね」  演習場の真ん中で生徒達が作戦を話し合っている。  そんな彼らを見ながら、ニルバルディと一矢はこの演習が開かれる前に訪れた学園長室を思い出す。  学園長室、ニルバルディと一矢が揃ってこれまでの一連の事件について報告をしていた。 「学園長、以上が我々の報告になります」 「うむ、ご苦労」  学園長席でふんぞり返り、鷹揚に頷いてみせるメメル学園長。  表情こそ真面目を装っているが、その芝居がかった所作はこのシチュエーションを心底楽しんでいるらしい。  しかしその愛らしい容姿と一矢から差し入れられた手作りチョコレートケーキのクリームが口の端についていて、せっかくの威厳が台無しになっている。 「それとメメル学園長。生徒達を派遣していただいてありがとう御座います。僕たちは本当に助けられました」 「……正直助かった。まさか助けを寄越してくれるとは思っていなかった」  一矢も目を逸らしながらも礼を言う。  そんな一矢の様子をメメル学園長はけらけらと一笑する。 「たとえ学園を卒業したとしても、教え子のために一肌脱ぐのは当然さ。それがたとえ、家族を救うためにすべてを投げ出して学園を飛び出していった生徒であったとしてもね」 「……チッ、こんな時ばっかり教師面しやがって」 「ふふっ、惚れ直したかい?」 「抜かせ。いつ俺があんたに惚れたって?」 「毎回お茶会で俺様にケーキを焼いてくれたじゃないか」 「あれは俺の食べる分だろうが。毎度毎度奪っていきやがって」  そう言いつつも、一矢の頬は上気し瞳は揺らいでいる。 「ところで今のチミ達は時間がある訳だね。だったらお願いしたい事があるのだ」 「まさか生徒達に臨時講師として演習をしろとはな」  一矢は目を伏せながら言う。どうやら学園中退という立場を後ろめたく感じているようだ。 「まあまあ。君の冒険者としての豊富な実戦経験は貴重だよ。それを存分に伝えればいい」 「つまりここにいる生徒共を全力で叩き潰せと?」 「出来るものならね」  ニルバルディは不敵に笑う。 「なるほど、それは楽しみだ」  そこに生徒達への強い信頼を見て取った一矢もまた不敵に笑い返す。  一矢もまた先日の美術館での戦いで、生徒一人一人が油断ならない力と伸びしろを持っていることを理解している。今回の戦いは全力で挑まなければあっという間に潰されるだろう。  それを見たニルバルディはにこりと微笑むと離れて集まり相談をする生徒達に向かって呼びかける。 「それじゃあ作戦は決まったかな? 準備が出来たならそろそろ演習を始めよう」
サンタクリスマス 春夏秋冬 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-12-20

予約期間 開始 2021-12-21 00:00
締切 2021-12-22 23:59

出発日 2021-12-29

完成予定 2022-01-08

参加人数 8 / 8
 12月も終わりに近づいている。  冬の気配も近付いて、雪がちらほら降っている場所もあった。  この時期に盛大に行われるイベントといえば、当然―― 「クリスマスをするんだメェ?」  小首を傾げ、学園を歩いていた【メッチェ・スピッティ】は聞き返す。  これに応えたのは、話を切り出した【シトリ・イエライ】だった。 「年末のイベントですからね。皆で楽しんでも良いんじゃないかと思うんです」 「楽しいのは好いメェ~。でも、なんでそんなこと急に言い出したんだメェ?」  これにシトリは、授業を受けている学園生達に視線を向けたあと応える。 「最近は、色々と騒動がありましたから。学園生達の気分転換にも良いんじゃないかと思ったんです」  魔王軍が活発に動き始める中、その対応に学園生達が駆り出されることが増えている。  その度に体と心の両方に疲労が溜まっているとシトリは思っていた。 「学園全体でクリスマスを祝って、皆を楽しませてあげたいんです」 「好いと思うメェ~。でもそれなら、なにをするメェ?」 「そうですね……」  シトリが、メッチェと共に歩きながら考えていると――  シャンシャンシャン、シャンシャンシャーン  軽快な鈴の音が聞こえてくる。視線を向けると―― 「こんにちはだもん!」 「こんにちは」  歩く若木である【フォレストボーイ】と、ケンタウロスの女の子【ツキ】が挨拶してきた。 「……はい、こんにちは」  少し返事が遅れるシトリ。  それはツキとフォレストボーイの姿に、ちょっと意表を突かれたからだ。  ツキの姿といえば、赤で統一された服を着て、何故か鈴の付けられたソリを牽いている。  フォレストボーイといえば、ツキが引くソリに乗り、どういうわけか星や雪を象った飾りを付けていた。 「クリスマスツリーなんだもん!」 「それは飾るものであって自分が成るものではないと思うメェ」  思わずツッコミを入れるメッチェ。これにフォレストボーイは―― 「大丈夫だもん! ちゃんとクリスマスツリーに成れるもん!」  俺自身がクリスマスツリーになることだ! という勢いで意気込んでいた。 「みんなを元気にするんだもん!」  どうやらフォレストボーイも学園生達を気に掛けているようで、クリスマスで楽しませようとしているらしい。  それはツキも同じようだ。 「ツキは、なんでソリを牽いてるんだメェ?」  メッチェが訊くと、ツキは応える。 「トナカイ、代わりをする。走るの、得意」  話を聞くと、クリスマスの話を聞いて、学園生達にプレゼントを配って回りたいらしい。 「だから、プレゼント集めてる」 「良いの、集まったメェ?」 「ん、これから」 「まだなんだもん」  ちょっと気落ちするツキとフォレストボーイ。  勢いで色々とやってみたようだが、プレゼントまで手が回っていないようだ。 「なら一緒に作るメェ」 「ん、作る」 「一緒に作るもん」  いつのまにやらプレゼントを作るようになったらしい3人に、シトリは言った。 「好いですね。どうせなら、それを課題にしましょう」 「どういうことだメェ?」  小首を傾げたメッチェに、シトリは応える。 「みんなでサンタになって、贈り物をしましょう。学園の中でプレゼントし合っても良いですし、学園の外のどこかの街で、サンタとしてプレゼントを配っても好いでしょう」 「それだと、ちょっとお金が掛かりそうだメェ」 「ええ。ですから、学園の外にもスポンサーを募りましょう。幸い、最近は学園に出資してくれる資本家も増えましたから。言い出したのは私ですし、手配はしておきます」  というわけで、サンタクロースになってプレゼントを配る課題が出されることになりました。  プレゼントは、幾つかのスポンサーがついてくれることになり、頼めば用意してくれるとのこと。  学園の中で、学園生同士でプレゼントの交換をしても良いですし、学園生以外に配るのも良いでしょう。  学園の外に跳び出して、どこかの街でサンタとしてプレゼントを配ることも出来るようです。  さて、アナタ達は、どんなプレゼントを配りますか?
飛竜の襲撃 毛布32 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-12-19

予約期間 開始 2021-12-20 00:00
締切 2021-12-21 23:59

出発日 2021-12-26

完成予定 2022-01-05

参加人数 2 / 6
●心無き研究者 「14号にしてようやく仮完成といったところか」  薄暗い部屋、その中にあってフードを目深に被り笑うその男はガラスケースの中のワイバーンの幼体を見てそう呟く。 「しかしこれ以上は実験してみなければ、なに危険は付き纏うがやむなしというやつだ。その為にはまず、蹂躙すべき村を選定して……くくく……あぁそうだ敵も用意せねばな」  にやりと不気味な笑みをうかべながら独り言を言う男は手元の資料に目を落とす。 「魔法学園フトゥールム・スクエア……我が母校ならば不足ないだろう。さてどうやるか……」  瞳に狂気を隠さずに言い放ち、男は手紙を書き始めた。計画を始める為に……。 ●襲撃のワイバーン 「はぁ?差出人不明の手紙で襲撃予告だ?しかもワイバーン?馬鹿馬鹿しい、どうせ盗賊辺りが村を空っぽにした隙に村を漁ろうって魂胆だろう?」  グラヌーゼ南部の村、その村長宅で村の男衆が一人。【ケイ】が突如届いたという手紙の内容を聞きそう吐き捨てました。 「そう、だといいんじゃがな……わざわざ魔法学園に警護を要請するよう薦めておる辺り、単なる悪戯とも言い切れんが……ただ警戒は怠らないよう注意せんとな」  見せた村長もまた、完全に届いた手紙を信じているわけではありません。しかしその期待は裏切られるのだった。悪い方向に……。 「GYAAAAAAAA!!」 「な……! 畜生! 本当に出やがった!」  深夜、轟く鳴き声と日中村長と話してたケイの声に村長は目を覚ました。 「この鳴き声、まさか本当に……!」  外に飛び出て空を見遣る。暗く見難くはあったがそこにはたしかにワイバーンらしき飛翔する何かを発見することができた。  その直後、村長の出てきた家が強風に叩きつけられたように崩れ、村長もまた少し吹き飛ばされる。 「く……無事か村長! にしても何だあれ、ワイバーンだってのは分かるが吐いてんのは火じゃなく……あれは風か?」 「亜種かもしれん。どちらにせよワシらの手には負えんな。村人の避難を急ぐのだケイ」  愚痴るケイに村長はそう告げ、ケイは頷くと同時に村長は? と目で聞き返した。 「ワシは魔法石で魔法学園の知人に連絡をとってみよう。犯人の思惑に乗ることにはなるが、対処できるはずじゃからな」 「おう! ならこっちは任せろ!」  そうしてケイと村長は動き出し、魔法学園へ事が伝わった。 ●誠意ある護り手 「グラヌーゼ南部から魔法石で通達があって……亜種ワイバーンが人里を襲ってるみたい……」  魔法学園の職員、【ラビーリャ・シェムエリヤ】はその場に集まった者達へそう告げる。その顔は少し怪訝さを含んでいた。 「あ……うん。少し不自然な通達だったから……」  ラビーリャの様子を不可思議に思った生徒がたずねたのかラビーリャは語る。  曰く、通達は村からではあったがその前日に村へ予告があったというのだ。  そして、それはこれからも続くだろうとも添えられていたという。それはつまりこのワイバーンの人里への襲撃が人為的なものである可能性を示唆していた。 「多分だけど……この依頼、裏がある。私が着いていければいいんだけど……」  ラビーリャは別件で出張る予定らしく、その為に有志の生徒たちを集め、こうして説明をしていた。 「何が目的かはわからない……でも、襲われている人達を助けないといけないから……お願いしていい?」  突如としてそう告げられた貴方達、人里を襲うワイバーン。あるかもしれない裏。物語はこうして始まったのだった――。
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