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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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Don’t ask me why. 桂木京介 GM

ジャンル ハートフル

タイプ EX

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2022-09-15

予約期間 開始 2022-09-16 00:00
締切 2022-09-17 23:59

出発日 2022-09-23

完成予定 2022-10-03

参加人数 5 / 5
「本気で言ってるんですか?」  これが、衝撃と当惑と混乱を経てようやくしぼりだした【コルネ・ワルフルド】の回答だった。 「おいおい」  うなじのあたりに手をやって、【メメ・メメル】はあきれたように言う。 「さすがのオレサマでもジョークでこんなこと言うかよ~」  「じゃあ思いつきで……?」 「どんだけ信用ないんだオレサマは!」  ……まあ、そう思われても仕方ないくらいのテキトー具合だったこともあるけどなぁ、と苦笑いして、メメルは手にした三角帽子を指先でくるくると回した。  フトゥールム・スクエア学園長室にして校長室、残暑の西日がやけにきついが、メメルはカーテンを引いていない。とうに授業は終わって放課後だ。  いつものように椅子に浅くこしかけるメメルと、その正面に立つコルネ、いわば日常の光景といえよう。しかし会話の内容はあまり日常的ではないらしく、コルネは刀でも呑んだような表情、いっぽうでメメルのほうは、いささか疲れたような顔をしている。 「酔ってないですよね?」 「酔ってない。っつーか、初期化以来オレサマ昔ほど呑めんよーになったんだ。ワインなんてボトル半分を超えると気持ち悪くなるぞ。なもんで基本的には酒はやめとる。毎日飲んだくれるなんてもう、やろうとも思わんしやりたくても体のほうが無理のムリムリだ」  気づいとらんかったのか、とメメルはため息をついた。 「そういえば、アタシが入室したときに慌ててボトルを隠す姿を見ていないですね、最近」  それはそうとして、とコルネはふたたび険しい表情にもどった。 「せっかくのお話ですけどアタシには……」 「他に誰がおるというんだ」 「でも」 「見ろ」  メメルは立って真横を向いた。帽子を頭に乗せ、ひらいた手の左右を合わせる。しばしの集中ののち、ハアッと髪が逆立つほどの気合いを入れた。  泡のような魔法弾の粒が、ふわっと散ってたちまち消えた。 「……今のオレサマができる最大限の魔法だ。これでも努力したんだからな。先週はいくらやっても粉チーズみたいなのしか出んかった。その前にいたってはゼロだ。こんな……」  と言ってコルネを見るメメルの目には、いまにも泣き出しそうなアメジストの光がやどっている。 「こんなオレサマが、『勇者』を指導する学園長なんぞできるかよ。かけだし以下の学園長でござい、ってか?」  どすんと音を立て椅子に戻るとメメルは、まっすぐにコルネを見すえた。 「だから受けてくれ、コルネ・ワルフルド。もう理由なんて訊くな。オレサマに代わってフトゥールム・スクエア二代目学園長になってくれ……!」  ◆ ◆ ◆  眠っていた。  開きかけの本に手をかけたまま、頬杖ついて【ネビュラロン・アーミット】は眠っていた。  右頬にはざっくりと深い傷跡、目覚めているときはそれこそ雌獅子というか、射るような眼光の持ち主である彼女も、こうしていれば丸まった猫のように穏やかである。  しかしネビュラロンの眠りは唐突に途切れた。目は閉じたままだが左手をかすかに、音も立てずに腰の剣に置いている。  ネビュラロンの脳裏に、部屋にしみ入ってくる影のようなイメージが走ったのだった。すでに彼女の筋肉は、非常態勢に即応できる状態だ。  「さすがは――」  声がした。 「気配は完全に消したつもりでしたが」  ため息をついてネビュラロンは手を剣からはなした。 「……試すようなまねはやめてもらえませんか、ネオネ先生」  そんな意図はなかったのだけど、と【ユリ・ネオネ】は肩をすくめる。 「ごめんなさいね。隠密家業が長いもので、つい」  それで、といささか不機嫌そうにネビュラロンは座り直した。 「なにかご用ですか」  ここは学園の一角、正門にほど近い宿直室だ。放課後ではあれどまだ陽の高い午後、ネビュラロンともあろうものがつい油断してうたた寝してしまったのは、魔王との決戦が終わったがゆえの油断だったろうか。 「急を要す事態となりました。すぐ連絡のつく数名で構いません。学園生の招集が必要です」  ネビュラロンの表情が険しくなる。 「うかがいましょう」 「アーミット先生は、魔王軍幹部【ドクトラ・シュバルツ】を覚えておいでですね?」  ドクトラ・シュバルツ――折り曲げた案山子(かかし)のような体躯、ととのった顔立ちではあるが常に狂気を宿したような笑みを浮かべ、黒いタンクトップにミニスカート、白衣を羽織るという異形の人物である。弱肉強食の理想に凝り固まり、魔王すら理想実現のための手段と言い切った。  当然でしょう、といった表情がネビュラロンの顔に浮かんだ。 「魔王決戦のおりに一度刃を交えました。たしかに恐るべき敵でした。……しかし彼女は敗死した。私はこの目で見たのです。まちがいはない」  もちろんです、とうなずいてユリは言ったのである。 「ですがこのほどシュバルツに忘れ形見……まだ幼い娘がいることが判明しました」  ネビュラロンは言葉を失った。 「それも、シュバルツにとっては因縁浅からぬ地、アルチェからさほど遠くない魔族の集落にです。魔王軍敗退の流れを受けて集落は解散、住民の大半は立ち去りましたが彼女――【ブロンシュ・シュバルツ】は少ない世話人とともに残ることを選びました」  すでにネビュラロンは立ち上がっている。  魔王決戦のおりアルチェを攻める途中で、シュバルツは村をひとつ滅ぼした。子どもですら許さぬ鏖殺(みなごろし)であったという。  もし惨劇のおり偶然村を離れており、生き延びた者たちがいたとしたら。  そうでなくとも、シュバルツの娘を売ろうと思う者たちがいたとしたら。  恐怖に駆られた人間が、どれほど残酷になれるかをネビュラロンは知っている。  ◆ ◆ ◆  野良作業を終えてひと息をつく間もなかった。  火がついたように泣き出す赤子を抱え、【ピーチ・ロロン】は木陰に入り息をついた。乳房を出すと【レミール】にくわえさせる。さすがに暑さに参ったか、盛夏の時期はいささか元気のなかった彼だが、涼しくなりはじめたおかげか、ここ数日はピーチが痛みを感じるほど元気よく吸うようになった。 「きれいな夕陽……」  沈みゆくブラッドオレンジに染まる彼女には、かつての面影はない。黒づくめの衣装と厚底ブーツに身を包み、青白い顔で病んだ笑みを見せていたあの頃――わずか一年ほど前のことなのに、十年は前の記憶のようだ。  あのころピーチが我が身と心を捧げ、求められるなら命だってきっと捧げた男は、不実が服を着ているような人間だった。口では世直しと理想を語りながら、実質は魔王打倒より、いかに自分の影響力を高めるかばかりを考えていた。あの男にとってピーチは、一時の欲望を解消するためだけの道具、それも、たくさんある道具のひとつでしかなかった。  そんなことわかってた。でも、それでもいい、って思ってたよね、私――。  でも今は、  今はちが……う……。  ピーチは目を見張った。 「やあ……探したよ」  ピーチの眼前にボロボロのサンダルが止まった。同じくらいひどい状態の粗衣、枝を折っただけの杖。  かくまってほしい、と【ディンス・レイカー】は媚びるような笑みを見せた。
不穏の種は未然に防げ 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2022-09-04

予約期間 開始 2022-09-05 00:00
締切 2022-09-06 23:59

出発日 2022-09-13

完成予定 2022-09-23

参加人数 2 / 8
 ズェスカ地方を始めとした復興事業は順調に進んでいた。  大陸を縦断する鉄道計画も、大国が参加することで進展している。  それらを進めるに当たって必要な人手も、確保されていた。  魔王軍との戦いで被害を受けた人々や、魔族達も積極的に雇い、着実に形になっていった。  懸念されていた魔族との軋轢も、学園生達が尽力することで最小限に抑えることが出来ていた。  それは魔王の脅威がなくなった世界を象徴するように、繁栄と平和へと繋がるものであるように見える。  多くの人々が待ち望んだ世界が、これから続いていくように思えるような状況だった。  けれど、それを望まぬ者もいる。 「どねーかしてくださいや! このままじゃジリ貧になっちまうんじゃ!」  懇願するように、悪徳商人【ギド・ギギル】は男に頼む。 「折角アホどもから二束三文で手に入れた土地が、学園のクソ共のせいで取り上げられちまったんじゃ!」  それはズェスカでの話だ。  ギドは、元々の住人から現地の土地を買い占めていたのだが、学園が間に入ることで取り返されている。  それは現地で行われた、地殻変動による温泉計画を乗っ取ろうとしたことが原因だ。  火の霊玉を中心として行われた地殻変動に干渉し、自分達の土地の価値を高め、それ以外の土地は暴力沙汰で奪うつもりでいたが、学園生達により防がれている。  地殻変動に干渉しようとしたことがバレ、それを切っ掛けに学園に介入されたのだ。  手に入れた土地自体が、暴力じみた脅しで強引に買い上げていたり、場合によっては詐欺で騙して手に入れていたので、そこを突かれ土地を没収された。  どうにかしようにも、名のある大国は全て学園と協調しているので、それらに広げていた伝手を頼ろうにも断られる始末。  なので、異界同盟という秘密結社に、ギドは泣きついていたのだ。 「そもそもそっちが寄こしたもんが原因じゃろが!」  懇願していたギドだったが、相手の応えが鈍いので、脅すような口調で言った。 「儂がこうなったんはアンタらのせいじゃ! 責任があるじゃろ責任が!」 「そうですねぇ」  激昂するギドに、男は言った。 「確かに言われてみれば、あなたの言い分は正しいですねぇ」 「そ、そうじゃろ」 「ええ。それに私達としても、あなたのように我々の理念を理解して協力して貰える方は大事にしたいと思っています。それにあなたは商才もある。我々が世の中を牛耳った暁には、あなたのような方に商業をお任せしたいと思っているのですよ」 「そ、そうなんか。ははっ、そりゃまぁ、儂も力になれることがありゃ、力になりたいとおもっとるんじゃ」  相手が言うことを聞き、持ち上げるようなことを口にしたので、ギドは途端に下手に出る。 「本当に、あんたらの力になりたいと思っちょるんじゃ。じゃけど、それにゃ色々と人手もいるけぇ」 「ええ、分かっています。ですので、これらを差し上げます」  そう言って男が指を鳴らすと、無表情な男たちが現れた。 「これらは死人兵と言います。自分で動く死体、ゾンビのようなものと思って下さい」  男は説明すると、刃物を取り出し死人兵の1人に刺した。 「少々壊れても動きます。それに命令に忠実です」  そう言うと、男は命令する。 「自分で傷を抉りなさい」  刺された死人兵は言われた通りに従う。 「これらをあなたに差し上げます。好きに使ってください」 「こいつ、儂の言うこと聞くんか?」 「ええ。そのように設定しました」 「ほうか」  ギドは笑みを浮かべると、死人兵の1人を殴りつける。 「土下座せぇ」  命令通り従う死人兵。 「こりゃあええわ!」 「喜んでいただけたなら何よりです」  微笑みながら男は言った。 「異世界の技術を応用して作りました。こちらの世界にも死霊術はあったらしいのですが、それを使っていた魔王軍の幹部は殺されてしまったらしく、代替するのに手間が掛かりましたよ」  笑顔のまま男は続ける。 「素材となる人間がいれば幾らでも作れますから、売っていただければ買いますよ」 「ええの! 邪魔な奴ら殺したら処分する金かかっとったが、これからは儂が貰えるんか!」 「その通りです。色々と実験するのにも素材は必要なので、あるだけ買いますよ」 「そげぇに研究することあるんですかの?」 「もちろん。死人兵に吸血鬼の性質を付与して、勝手に増えるようにもしたいですから。まぁ、そうした事を進めるためにも、表の世界の顔役となって貰える方が必要なのです。なっていただけますか?」 「もちろんじゃ! 任せぇ!」  大口を叩くギドを、男は薄い笑みを浮かべ見詰めていた。  そして、不穏な事態が進行する。  ギドは死人兵を荒事に使い、裏社会で急速に力を着けていく。  同時に表の顔である商人としての伝手を使い、各地の復興事業に手を広げようとしていた。  斡旋業を介したピンハネや、土地の地上げ。  そうしたあくどい商売をしながら裏社会の伝手も使い、復興事業の労働者を博打や薬に引きずり込もうと画策している。  しかも搾り取れるだけ搾り取ったあとは、異界同盟に売りさばくつもりのようだ。  それを学園は、事前に察知している。 「魔法でみんなまとめて吹き飛ばした方が早いと思うゾ☆」  笑顔で言う【メメ・メメル】に、【ユリ・ネオネ】が返す。 「気持ちは分かります。というか私もそうしたいですけど、それしちゃうと地下に潜られちゃうんで、慎重に行きましょう。潜入工作してくれている生徒達の安全も確保しないといけませんし」  ユリの言葉通り、いま学園では、学園生による異界同盟への潜入工作が行われている。  ギド達の動きも、そうした学園生達からの情報で得た物だが、それを表に出すと潜入している学園生達の安全が危ない。  仮に安全が守られたとしても、相手に気付かれたら潜入工作が難しくなる。 「あくまでも偶然を装って、悪徳商人の悪巧みを防ぎつつ、異界同盟の本丸を叩く準備をしないといけないんです」 「面倒だナ」 「はい。ですが現時点では、この方針が最善です。ですので各地の復興事業に協力しつつ、不測の事態が起こりそうな場所に学園生を配置しましょう」  ユリの提言をメメルは許可し、課題が出されることになるのでした。
学園生の日常 その2 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 なし

公開日 2022-08-23

予約期間 開始 2022-08-24 00:00
締切 2022-08-25 23:59

出発日 2022-09-01

完成予定 2022-09-11

参加人数 2 / 8
 今日も今日とて、学園では学生たちの日常が続いている。 「最近、課題増えたなぁ」  同期の呟きに、友人の学園生が返す。 「なんか、ズェスカの復興事業で人手が要るみたいで、手伝い募集してるみたいだぞ」 「あれ? それって、大陸横断鉄道事業のヤツじゃなかったっけ?」 「そっちも人手募集中らしいぜ。なんか、ボソク島とズェスカ結ぶ旅行ルートを開拓して盛り上げるとかなんとか」 「いいね。景気の好い話じゃん」 「だな。とはいえ、それだけじゃねぇけどよ」  げんなりした声を上げる友人に、学園生は尋ねた。 「なんかあったのか?」 「んー、何か色々あるみたいでさ。デカい事業が続いてんのは良いけど、それに食い込もうとしてる胡散臭い業者とかの話聞くしさ。それに、魔族も事業に関わらせられないかって動きもあるみたいだし」 「あー、そっちか……まだまだ、わだかまりあるだろうしなぁ……でもそっちは、まだ良いんじゃねぇか。他の奴がなぁ……」 「なんかあったか?」 「んー、なんか異世界出身の奴等が怪しい秘密結社作ってるみたいでさー。それの調査とかの課題受けてんだよな~」 「あぁ……異界同盟だっけ?」 「そうそう。たまったもんじゃねぇよな。それで異世界の研究とか禁止されたらどうしてくれるんだってんだよ」 「ん? あ、そういえばお前、セントレアの研究職目指してるんだっけ?」 「そうだよ。こっちが日々伝手を積み上げてるってのに、関係ない所でおじゃんにされてたまるかってんだ」 「そういうのも含めて、課題こなしていくしかねぇよな~」 「だな」  などという話が、学園では見られます。  他にも学園生ごとに、それぞれの目的に沿った日常を過ごしています。  中には、邪悪な何かと戦う者もいるでしょう。  あるいは、力なき人々に手を差し伸べるため奮闘する者もいる筈です。  ひょっとすると、過去の因縁にまつわる何かの決着をつけるため動いている人もいるでしょう。  そうした重苦しいことだけでなく、明るい日常を送る者もいるのです。  日常と一口に言っても、人によって千差万別。  その日常を守るために、学園は力を貸してくれるでしょう。    そんな中で、アナタ達は、どう未来を進みますか?  自由に、好きなように、アナタ達の物語を進めてみてください。
異界同盟を調査しよう 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 なし

公開日 2022-08-13

予約期間 開始 2022-08-14 00:00
締切 2022-08-15 23:59

出発日 2022-08-22

完成予定 2022-09-01

参加人数 3 / 8
『覇王二柱に異界の創造主。随分と豪勢な面子だね』  陽炎の如く揺れる影が、客人を出迎える。  名は渾沌(こんとん)。  覇王六種が一柱、『滅尽覇道・饕餮』の臣下にして端末たる、『三凶・渾沌』だ。 『それで、わざわざ会いに来るなんて、何の用だい?』 「気付いているか確認に来たのである」  覇王六種が一柱、夜天覇道【アーカード】が問うと、渾沌は哂うように言った。 『火遊びをしてる、異界の異物共のことかい? それなら気付いているよ』  渾沌が口にする異物とは、異世界からこの世界に訪れた者達のことだ。  この世界には、異世界から『人』が転移してくることがある。  訪れた『人』は、この世界の『法』に従って作り変えられ、この世界の人間種族に変えられ無害な存在に成るのだ。  だがそれは、記憶や知識には及ばない。  あくまでも、『基本』は、ではあるが。  転移した人物の状況によっては、一部記憶が消えてしまうこともあるが、大半は転移する前の記憶や知識が残ったままだ。  だからこそ、危険をはらんでいる。  知識は、再現性のあるものだ。  仮に、この世界では実現が不可能な物でも、『それまでには無かった発想』は容易く過去を置き去りにし、在り得なかった物を生み出しかねない。  それは有益な物ばかりとは限らない。  場合によっては、世界にとって危険極まりない物も生まれかねないのだ。 「少し前、魔族を浚う輩どもを潰したのである。そやつらのリーダー格が異世界出身であったが、こちらの世界の材料で、異世界の技術で作られた物を持っていたのである。そういう輩は、他にも多いのであるか?」  アーカードが尋ねるのは、饕餮の探知能力を知っているからだ。  饕餮は世界を維持するためのシステムであり、世界のバランスを崩しかねない存在を食滅することで、世界を保っている。  それを十全に発揮するために、世界で起こる様々な事象を探知する能力を持っており、常に『世界を観測』しているのだ。 「答えられる範囲で良いので教えて欲しいのである」 『夜空の星よりは少ないんじゃないかな?』 「随分詩的なこと言うであるな」 『そちらに分かり易いように例えてあげただけだよ』 「それはつまりー、数えきれないほど多いってことですかー?」  尋ねたのは、異世界人である【メフィスト】だ。  これに渾沌は返す。 『そうだよ。以前から異世界由来の、『世界の脅威に成り得る種』はあったけど、魔王がああなってから増えてきてるね』 「そいつらの中で、今すぐ饕餮が動く必要があるのっているのか?」  飴玉をガリガリ噛み砕きながら破天覇道【スルト】が尋ねると、渾沌が応える。 『今すぐ動く必要のある相手はいないよ。この先は知らないけどね』 「なら今の段階でー、どうにかすることは出来ますかー?」 『なんで?』  メフィストの問い掛けに、渾沌は言った。 『饕餮に出来ることは『喰らうこと』だけだよ。そうならないよう未然に防ぐだなんて、そんな余分な機能を持ったら性能が落ちるじゃないか』 「ならせめてー、危険度が高い物を教えて貰うことは出来ますかー?」 『それはかなりギリギリになるよ。饕餮はこの世界全てを観測する全知だけど、全能じゃない。全て見えてるけど、全てを理解してるわけじゃないんだ。危険であればあるほど、それに分析力を集中することで『知覚』出来るけど、危険度が低い物までいちいち全部分析してたら計算が終わらない。そんな無駄なこと、饕餮はしないよ』 「おーう、それってあれですかー。食滅するラインギリギリにならないとー、詳しいことは分からないってことですかー?」 『そうだよ』  あっさりと答える渾沌。 『饕餮はあくまでも『起った事』に対するカウンターだ。これから起こるかもしれない『可能性』にまで関与しないよ。免疫システムがそんなことしてたら暴走じゃないか』 「ですよねー。ちょっとしたことで一々動いてたらー、健康な組織まで攻撃する免疫細胞みたいなもんですしー」 『だから動くなら饕餮以外だよ。我が巫女の一欠片のような、学園生とかね』 「楽すること覚えたであるな」 『幸い、減らない噛みタバコがあるからね。丁寧に磨り潰しても無くならないのは便利だよ。どうせなら、種類を増やしても良いけどね』  含みを持たせる渾沌に、メフィストは言った。 「それはやはりー、まだ人形遣いがこの世界に在るということですねー?」 『直接観測できないから、痕跡を分析して出した推測だけど間違ってないだろうね。全知をどうやってすり抜けてるんだか知らないけど』 「そういうのに能力のほとんどを全振りしてますからアレはー。全知や遠隔走査じゃ見つけられないのでー、地道に痕跡辿って見つけ出すしかないんですよー」 『あっそ。がんばって』 「少しは協力して下さーい」 『知らないよ。喰らう時が来たら饕餮が喰らう。ただそれだけだよ』 「それだと人形遣いの思うつぼになると思うので協力しましょー」 『どういうことかな?』 「恐らく人形遣いはー、自分では無くこの世界の人間が自主的に滅びに近付くように技術や知識を撒き散らしている筈でーす」 『だろうね。それで?』 「これが人形遣いの思い通りに進むとー、世界の危機がちょくちょく出て来る筈でーす」 『その時は饕餮が食滅するよ』 「それが頻発するとー、間違いなくこの世界の人達はー、隠れて実体のつかめない人形遣いでは無くー、食滅を繰り返すあなたを危険視するようになるでしょー。そうなればあなたを封印しようとするでしょー」 『饕餮が封印されている間に、人形遣いは自由に動くようになるってこと?』 「そうでーす。自分は目立たぬようこそこそ動いて破滅の種をバラ撒き続けー、それが実現した時にあなたが食滅すればー、あなたの危険性を煽ってあわよくば共倒れを狙っていると思いまーす」 『だからそうならないよう協力しろってこと?』 「そうでーす」 『…………』  しばらく沈黙が続いたあと渾沌は応えた。 『計算したら、そっちの言ってる可能性が高いのが分かったから、手を貸してやるよ。何を知りたい?』 「現状一番危険な相手がいたら教えて下さーい」 『いいよ…………分析完了。そいつらの情報を伝えるから、せいぜい働きなよ』  そして、現時点で一番危険な集団の情報を得ることが出来た。  その名は『異界同盟』。  異世界からこちらの世界に転移し、この世界の人間種族へと存在変換された者達の集まりだ。  どうやら異世界由来の知識を再現し悪用することを目的としているらしいが……。  その内のひとつ。  少し前に学園が叩き潰した、魔族を浚った者達も属している組織のようだ。  その壊滅のため、学園から課題が出されるのでした。
大規模事業の始まり 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 とても簡単

報酬 なし

公開日 2022-08-04

予約期間 開始 2022-08-05 00:00
締切 2022-08-06 23:59

出発日 2022-08-13

完成予定 2022-08-23

参加人数 5 / 8
 ズェスカ地方は、以前は活気の溢れた湯治場だった。  温泉は湯量が豊富であるだけでなく効能も抜群で、大陸中から多くのお客が来たものだった。  しかしそれは昔の話。  いまでは温泉は枯れ、当時住んでいた村人達も多くが他に移り住むようになり、寂れた場所になっていた。  けれど、それが変わろうとしている。  切っ掛けは、学園を中心とした新規事業が提案されたことだ。  火の霊玉の力を宿した【ドーラ・ゴーリキ】に協力を得て、ズェスカの温泉復活計画が始まったのだ。  しかも南国の島であるボソク島とも提携し、相互に活性化を図っている。  現在、各地で異世界の技術を下地にした鉄道事業の計画が立てられているのだが、それを利用し、ズェスカとボソク島を繋げる旅行プランも練られ始めていた。  これらの発起人は学園生であり、彼ら、あるいは彼女達が奔走することで、大きなうねりとなって進み始めていた。  銀行業を主軸に置いたストーカー家が資金を出し、各国が提携し鉄道事業の技術推進や敷設に邁進している。  それらに必要な人手は、人間種族だけでなく魔族からも募集していた。  これは人間種族と魔族の融和を念頭に置いた物でもある。  同時に福祉事業としての側面も持ち、貧困に窮する者や、何らかの事情で働き辛い者達にも仕事が回るように便宜を図っている。  それを促進するため、弱者救済に動いている団体や個人とも可能な限り連携が取れるように動いていた。  ある意味、大陸全土が関わる超特大事業であるため仕事は大量にあり、むしろ人手が足らないので、活発に動いている。  それらは、学園生達の尽力の賜物であり、より良い未来に向けたのものになっていた。  それに関わっている学園OB【ガラ・アドム】は、後輩たちの苦労を無駄にしないよう奔走していた。 「ズェスカの新名物、試作できたんだって?」 「ああ」 「提案されたものも含めて、幾つか作ってみた」  ガラに応えたのは、料理人である【ガストロフ】と【辰五郎】だ。  2人は以前、ボソク島や、観光名所であるアルチェで行われたグルメバトルで関わったことがあり、今回の学園生達が企画した事業にも関わっている。 「まずは、頼まれてた『食べられる石の温泉卵』。食べてみてくれ」  ガストロフに勧められガラは、見た目は石にしか見えない黒い温泉卵の殻を割って食べる。 「ん……思ってた以上に美味いな。卵に味が付いてるし、黄身が半熟状態で食感も良い」 「下処理で出汁に漬けてるからな。染み込ませた出汁で味だけじゃなく黄身の凝固も調整できるようにしてる。他の温泉地で試して作ったもんだが、ズェスカで温泉が湧いたら調整して、誰でも作れるようレシピを用意するつもりだ」 「助かる。他には、何があるんだ?」  これに辰五郎が応えた。 「饅頭に蒸し芋、あとプリンも温泉の蒸気で作ってみた。他にも蒸しチーズケーキとかも考えたんだが、温泉の蒸気を直接利用するとどうしても匂いが付くからな。場合によっちゃ、匂いが付かないようにする必要があるな」 「分かった。そっちは任せてくれ。どうにかできないか、学園やセントリア、あとミストルテインとかで訊いてみる」 「そうか……それでそっちはどうなんだ? 色々と調整してるみたいだが」 「まぁ、色々と走り回ってるよ。ズェスカとボソク島を繋ぐ鉄道を利用した旅行事業とかは、分担してるけどな」  今回の事業では、鉄道を利用した長距離観光事業の企画も上がっているのだが、そちらは貴族筋にコネがあるアルチェの貴族商人【ララ・ミルトニア】が動いている。 「やること多くて目が回りそうだが、ケンタウロスの姐さんやサイクロプスのお蔭で、色々と助かっているよ」  ケンタウロス達は飛脚業務や資材や生活必需品の運送を行い、サイクロプス達は鉄道や街道や橋にトンネルの整備、あるいは住居施設建築などの物理的インフラに携わっている。  どちらも大きな成果を上げていた。  ケンタウロス達は迅速に必要な物を運ぶだけでなく、1人1人が強力な戦士でもあるので、盗賊などを寄せ付けない。  サイクロプス達は魔法を併用した工作技術が素晴らしく、工期の短縮や質の向上に大いに貢献していた。 「大まかには巧くいってるよ」 「……大まかにってことは、そっちもなんかあるのか」  げんなりした口調の辰五郎にガラは言った。 「ひょっとして、引き抜きとかあったか?」 「ああ。金は倍払うとか言ってきたが、胡散臭いんで断った。他にも金ちらつかせたり脅しまがいで引き抜こうとしてるのがいるみたいだ」 「そっちもか」  腹立たしげにガラは言った。 「金の匂い嗅ぎつけて胡散臭い奴らが山のように湧いてやがる。揉め事が起らなきゃいいんだが」  ガラの懸念は、各地で現実となっていた。 「じゃから儂の土地をどうしようが儂の勝手じゃろうが!」  銅鑼声で恰幅のいい脂ぎった男、【ギド・ギギル】は言った。 「何で畜生共のためにそんままにせんとあかんのや!」  ギドが学園の使者と話しているのは、ズェスカの土地利用についてだ。  ズェスカの温泉を復活させるため、ドーラが霊玉の力を使い、マグマと地殻変動を制御することで地形を変える予定なのだが、それにより野生動物の住処が無くなる場所も出て来てしまう。  それを防ぐため、野生動物の新たな生息地に予定していた土地があったのだが、権利者と名乗るギドが利用に待ったをかけたのだ。 「なんや儂がこの土地もっちょるのがおかしいんか? ちゃあんとここらの権利は儂が買うたんや。権利証もあって証明されちょるけぇの」  ズェスカがさびれた時、村人は他所の土地に移ったのだが、その村人達から買いあさっていたらしい。  幸い、予定している温泉地からは離れているが、隣接しているので性質が悪い。 「とにかくここは儂の土地じゃ。帰れ帰れ!」  どう見てもゴロツキにしか見えない取り巻きをけしかけて学園からの使者を追い返したギドに、1人の男が声を掛ける。 「順調ですか?」 「こりゃあ先生! そりゃもう」  揉み手をしながら言った。 「先生に教えてもらっちょったお蔭で、バカな村人共から安う買えましたわ。ここで博打に女に薬に、たぁんと銭が寄って来るもん作りますさかい、そんときゃサービスしやすぜ」 「いえ、お気になさらずに。それよりも、これを」 「はぁ? こいつは?」  両手に乗るぐらいの水晶玉に見える何かを渡されギドが問うと、『先生』と呼ばれた男は言った。 「ズェスカで行われるマグマと地殻の変動に干渉できる魔法玉です。これを後で設置してください。そうすれば、この近くでも温泉が湧くでしょう」 「そいつは良い! 二束三文のこの土地の価値がさらに上がる」  喜ぶギドに、男は指人形をあしらったネックレスを渡す。 「これを差し上げます。私達の組織の一員の証です。今後も便宜を図りますから、寄付をお願いしますよ」 「へへー、そりゃもう」  ギドは頭を下げながら内心では舌を出す。 (はっ、使える内は使うちゃるわ。見ちょれ、その内、組織も儂が貰っちゃるけぇの)  頭を下げるギドを、男は亀裂のような薄く壊れた笑みを浮かべ見詰めていた。
学園生の日常 その1 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 なし

公開日 2022-07-25

予約期間 開始 2022-07-26 00:00
締切 2022-07-27 23:59

出発日 2022-08-03

完成予定 2022-08-13

参加人数 5 / 8
「今度の休みの日、どうする?」  授業の終った学園生が、友人に問い掛けた。 「ちょっと街の方にでも行ってみるか?」 「ん、いや止めとく」 「えー、なんで?」 「実家の手伝いしようと思って。この前、故郷に帰る課題あったじゃんか」 「あったけど、お前帰ってなかった?」 「帰ったんだけど、割と魔王戦の影響で荒らされててさ」 「お前んち、学園に近かったよな……進攻ルートに引っかかってた?」 「微妙にだけど、おかげで魔物に荒らされてさ。避難してたから人死には出なかったけど、家とかボロボロになってて」 「その後片付け、まだ終わってなかったのか?」 「いや、大体の目処は立ったんだけど、問題は復興でさ。家立て直したりするにも先立つ物はいるし。だから学園のコネ使って、どうにかしてくれって言われてさ」 「無茶ぶりだな、おい」 「だよなー。とりあえず先生達にOBやOGの伝手紹介して貰って、商人の人らから金引っ張って来れないか交渉しなきゃなんねーんだ。手ぶらじゃ話になんねーから、なんか商売のプレゼンしなきゃなんねーし」 「おぉう、大変だな」 「そういうお前はどうなん? 暇なら手伝ってくれよ」 「んー、いいけど、日によっちゃ無理だぜ。受けたい講義があるし」 「勉強熱心だな。研究職目指してるの、変んねーんだ」 「おう。どうにかしてセントレアに潜り込んで、異世界の研究してぇ」 「異世界か~、商売のネタになるかな?」 「なるんじゃね? でも、かなり熱いことになってんぜ」 「え、どういうこったよ」 「利に目敏い商人が黙ってるわけねーじゃん。どうにかして利用しようとしてるみたいだけど、学園がストップかけてるみたいだな」 「……同じ世界でも争いは絶えないってのに、それを他の世界にも広げたらめちゃめちゃになるわな」 「そういうこと。そういう状況で、どうにか食い込めねぇかと日々奮闘してんですよ、俺は」 「なるほどね。なら、その手伝いをするよ。そん代わり、俺の方の手伝いもしてくれ」 「んー……分かった。それじゃ、先生にセントレアに行く許可貰いに行くか」 「オッケー」  などという話が、学園では見られます。  他にも学園生ごとに、それぞれの目的に沿った日常を過ごしています。  中には、邪悪な何かと戦う者もいるでしょう。  あるいは、力なき人々に手を差し伸べるため奮闘する者もいる筈です。  ひょっとすると、過去の因縁にまつわる何かの決着をつけるため動いている人もいるでしょう。  そうした重苦しいことだけでなく、明るい日常を送る者もいるのです。  日常と一口に言っても、人によって千差万別。  その日常を守るために、学園は力を貸してくれるでしょう。    そんな中で、アナタ達は、どう未来を進みますか?  自由に、好きなように、アナタ達の物語を進めてみてください。
未来に向かって 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 なし

公開日 2022-07-15

予約期間 開始 2022-07-16 00:00
締切 2022-07-17 23:59

出発日 2022-07-24

完成予定 2022-08-03

参加人数 6 / 8
 魔王との決戦から、一月ほどが過ぎようとしていた。  歴史的な変革ともいえるこの偉業に、世界と、そこに住まう人々の生活は、変化を見せ始めている。  もっとも、目に見えて分かることは少ない。  一見すればこれまでと変わらず、同じように進んでいるように見える。  だが、違う。  確実に変化は起り始めている。  それは新たなる未来へ向かっての物であり、過去の清算に繋がる物でもあった―― ◆  ◆  ◆ 「――というわけで、霊玉の件も含めて、色々と協力して貰うぞ☆」  学園長室で、【メメ・メメル】は異世界人である【メフィスト】に頼む。 「オッケーでーす。こちらとしてもー、この世界が安定して貰った方が余計な不安を抱えずに済むので助かりますからねー」  2人が話しているのは、諸々の問題となりそうな物を、今の内に未然に解決しておこうというものだ。 「それで、霊玉の解放は目処がつきそうなのか?」 「とにかくー、内在する膨大な力を何かで消費する必要がありますねー。何に使うとかはー、そちら任せになりますがー」 「オッケーだ。むしろそうしてくれないと困る。異世界人に好きにさせたとか、あとで難癖つけられたら腹が立つからな」 「それなら学園生さんに協力して貰いましょー。色々とー、他にも頼みたいことはあるみたいですがー」 「まぁ、色々とあるぞ☆」  メメルは言いながら、机に書類を広げる。  以前なら魔法で簡単に出来たことだが、今では入学したての生徒と変わらないので多少の手間はかかる。  もっとも、人の目につかない所で鍛錬を始めてるので、時間は掛かっても以前のような力を取り戻すことが出来るかもしれない。  それはさておき、メメルは関係書類を広げて説明する。 「人に宿っていない霊玉、五つは学園で確保してるから、いつでも使えるな。残りのふたつは人に宿っているから、取り扱いは気をつける必要があるぞ☆」 「霊玉ひとつでもー、魔王が宿った子を受肉化する力がありましたからねー。残りの霊玉の力を消費しようと思ったらー、色々と使わないとですねー」 「それもあるが、他にも処理しないといけないことは山盛りだ」  少しうんざりするようにメメルは言った。 「魔族との融和問題に、魔王との決戦での爪痕の復興もしないといけない。それに魔王がいなくなったから、そっちに割いてたリソースを好きに使おうって色気だしてる所もあるからなー。地味に忙しすぎて飲む暇もないぞ」 「大変ですねー。幸い人手はー、学園生さんを頼りにすれば良いですしー、その辺りの手配はお願いしますねー」 「うぅー、大変だ。労いがてら、そっちの世界の銘酒をくれても良いんだぞ☆」 「私甘党なのでー、今度甘い物持ってきますねー」 「酒に合うのを頼む」  などという話がされ、学園生達に色々な課題が出されるのでした。
恋はみずいろ L’amour est bleu 桂木京介 GM

ジャンル ロマンス

タイプ EX

難易度 簡単

報酬 なし

公開日 2022-07-14

予約期間 開始 2022-07-15 00:00
締切 2022-07-16 23:59

出発日 2022-07-21

完成予定 2022-07-31

参加人数 4 / 4
 学園つづきの商業施設、クイドクアムにて彼を待つ。  具体的にはその中央、噴水の公園にたたずんで待つ。  彼とまたこうして逢えるのは、決戦が終わり魔王との、解決をみることができたから。  転がる石の戦いは、どうにか穏当に落ち着いた。  けれども恋の駆け引きは、まだこれからといったところか。  彼を待つ。精一杯のおしゃれ着で、背伸び気味にして待つ。   待つ。  ていうか遅いんですけど……!  ごめんごめんと言いながら、すっ転びそうな足取りで彼が来た。 「今度遅れたらブッ殺す」  彼女は言う。にっこり笑顔で。  ===  雨降って地固まるのたとえのように、フトゥールム・スクエアとリーベラント国の同盟関係は強固にしてゆるぎないものとなった。かつてリーベラントが学園に公然と敵対宣言を出し、自分たちが対魔王戦の主導権を握ると主張していた日々が嘘のようである。  互いをよく知らなかったこと、これが原因だったのではないかと現国王【ミゲル・シーネフォス】は語った。 「もちろん対立は良くなかった。我々がフトゥールム・スクエアに妨害工作をしたことも恥ずべき過ちだった。しかしそれがあったからこそ、我々は学園にじかに接し、彼らと個人的に知り合って真の友人同士になることができたのだ。終わり良ければ、とはよく言うが、まさしくそうした結果になったな」  御意と回答したのは美青年【パオロ・パスクヮーレ】である。濃いブルーの頭をうやうやしく下げて言う。 「僕、いえ、私にもそうした出逢いがありました。学園との交流で生まれた大切な出逢いが」  心なしかパオロの頬は染まっているように見えた。  さもあろう、とミゲルはからかうように言う。 「ゆえにこそ学園への留学生を募る話が出るや、貴公は真っ先に志願したのだろう?」 「陛下、それは……」  たちまちパオロは言い淀む。ますます血色がよくなった様子だ。 「お兄はん、あんまりパオロはんをいじめたらあかんで」  助け船を出したのは国王の妹【マルティナ・シーネフォス】だった。つやつやした小麦色の肌、ちらりとのぞく八重歯と大きな瞳が特徴的で、頭には黒い猫の耳があった。マルティナはルネサンスでありミゲル国王との血のつながりはないが、孤児として先王に引き取られ、現在は法的にも妹、身分的には公女の立場にある。 「そういう兄はんかて似た者同士やん? 今日かてこれから……」 「うむ……ま、それはそれ、だな」  しらじらしくミゲルは空咳する。なんやそれー、とマルティナは笑った。この兄妹もかつては不仲だった。正確にいえば、ミゲルが彼女から遠ざかっておりよそよそしい関係であった。だがフトゥールム・スクエアとかかわるうちそうした雰囲気は雪解けし、本当の意味で兄妹らしくなったのである。 「ともかく、パオロを無事に送り出してやってくれ。丁重にな。余の代理として特使の任をマルティナに任せる」  本来は私も行きたいくらいだが――と惜しげなミゲルとは対称的なくらいに、 「任しとき!」  元気に胸を叩いてマルティナは請け負うのである。 「そういえば」  何か思い出したらしくミゲルは玉座から身を乗り出した。 「聞いたぞマルティナ、貴公も余のことが言えた立場か? 貴公にも誰やら懸想している学園生がいるそうではないか」  たちまち恥じ入るマルティナをミゲルは期待した。さりげなくパオロも期待していた。  ところがマルティナは、いささか寂しげな表情で笑ったのである。 「ああ……うん、その話は……な……」  苦い水でも飲みこんだような笑みだった。  先頭はマルティナ、その隣には数年間フトゥールム・スクエア学園生となるパオロ、つづく供の数名という一行がリーベラント王宮を辞した。水の大門を抜けて学園へむかう。
悪の芽は潰えず 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 なし

公開日 2022-07-06

予約期間 開始 2022-07-07 00:00
締切 2022-07-08 23:59

出発日 2022-07-15

完成予定 2022-07-25

参加人数 4 / 8
 ソレは邪悪だった。 「プランAは失敗しましたねぇ」  嘲笑う声に、蔑む声が返す。 「他人事ではないだろう。アレの失敗は、私達の失敗でもあるのだ。私よ」 「そうですねぇ、私。悪くない所までは行けたと思ったんですが」 「ああなる前に私達全てが死んで力を集約するべきだったか?」  見下す声に、侮蔑する声が返す。 「無駄な仮想実験。私達が死ぬより早く、あの私は捕食封印された」 「確かに」  侮る声が同意する。 「プランAを進めていた私の行動は、あの時点の直前までは正しかった」 「そうでありながら失敗したなら、やはり他のプランを進めるべきだ」  嘲弄する声が断言するように言った。 「今後は、私達それぞれのプランを進めるべきだ」 「ならばこれ以上封印されないよう、気を付けましょう」  見縊る声が言った。 「この世界の維持機構に、すでに私(あくま)達の存在は知覚された。今いる私達を直接知覚することは出来ないが、増やそうとすれば居場所を知られ即座に封印される」 「面倒だねぇ」  愚弄する声が言った。 「大人しく惨めに嘆きながら滅びていけば良いのに。余計な手間を掛けさせてくれる」 「それはそれで良いではないですか。弄ぶ時間が増える」  嘲笑う声に、この場にいる11の同位体は嗤いながら同意した。 「違いない」 「滅ぼし喰らう前に」 「嘆きと苦痛で彩って」 「恐怖と怨嗟をスパイスに」 「味付けしてやろう」 「それぐらいしか価値は無い」  けらけらと悪魔は嗤い、邪悪な企みをこらし始めた。 ◆  ◆  ◆ 「黙ってついて来い!」  ヒューマンの男が、痩せ衰えた魔族を殴りつけた。  苦悶の声を上げながら、殴りつけられ倒れた男は立ち上がる。 「……」  無言で殴ってきたヒューマンの男を睨みつける魔族に、舌打ちしながら今度は蹴り飛ばした。 「薄汚ねぇ魔族がっ、調子こいてんじゃねぇぞ!」  さらに殴りつけようとした男を、軽い声が止める。 「それぐらいにしとけ。死んだら素材にならねぇ」  いかにもチンピラといった狼のルネサンスの男が、にやにや笑いながら言った。 「そいつはクソ以下のカスだが、俺達で巧く使ってやりゃ、人間様の役に立つ物になれるんだ。魔王なんかに従ってた極悪人共に、罪を償わせてやる折角のチャンスを無駄にしちゃいけねぇよ。なにより、俺達の儲けが減るだろ、こんな所で無駄に殺したら」 「……分かってますよ」  渋々というようにヒューマンの男は応えると、魔族を殴りながら言った。 「オラ、さっさと進め! 手間かけさせんじゃねぇ!」  言われるがままに、魔族の男は進む。  だが、魔族の男は気付かれずに痕跡を残した。  それは小さな宝石。  豆粒にも満たない小さな粒は、魔族の男の種族が使える魔法だ。  情報を刻んだ魔力を宝石として固定することが出来る。  それを、魔族の男が連れて行かれた後で、2人の覇王が見つけた。 「巧くいってるようであるな」  情報の刻まれた宝石を拾い上げながら【アーカード】は、同行する【スルト】に言った。 「これで人攫いのアジトの場所が分かるのである」 「そこに囚われた者達を助けに行くのか?」 「もちろんである」 「そうか」  たこ焼きを食べながらスルトは返す。 「それで、場所は1つだけなのか? それなら手っ取り早くて良いが」 「ちょっと待つである」  アーカードは、宝石の内部に蓄えられている情報を閲覧する。 「複数あるみたいであるな。あまり時間を掛けるとろくなことになりそうにないであるから、学園にも手伝わせるのである」 「ふむ。まぁ、別に良いが。俺もストーカーの所で食客になってるから、飯の分は働いてやる」  気軽に応えるスルト。  いま2人がここに居るのは、銀行業を筆頭に幅広く商業活動を行っているストーカー商会の筆頭、【ブラム・ストーカー】の頼みを受けているからだ。  アーカードの眷属であった人物を先祖に持つストーカー家は、魔王のとの決着がつく前から魔族の一部と関わりを持っている。  その伝手で、魔族の一部が人間に浚われる事件が頻発しているという話を聞き、アーカード達に協力を求めて来たのだ。 「昔と変わらんな、こういうのは」  呆れたように言うスルトに、アーカードは応える。 「それでも変わってはいるであるよ。それをより我輩達好みに変えるためにも、早く助けに行くである」  その後、人攫いのアジトのひとつに行き、人攫い達をボッコボコにしたアーカードとスルトは、他のアジトも潰すため学園に協力を求めるのだった。
偶には故郷に里帰り 春夏秋冬 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2022-06-27

予約期間 開始 2022-06-28 00:00
締切 2022-06-29 23:59

出発日 2022-07-06

完成予定 2022-07-16

参加人数 4 / 8
「やっと終わった」  疲れた声で、学園生の1人が息をつく。  それも無理は無い。  ここしばらく、瓦礫の後片付けや破壊された施設の修理に駆り出され、ろくに休む暇も無かったのだ。  一月ほど前、魔王の軍勢に学園が襲撃され撃退したものの、その爪痕は広範囲に残り、表面を取り繕うだけでも時間が掛かっていた。 (本格的な修繕は、またこれからみたいだけど)  教師達から話を聞くと、この際なので改修も兼ねた修繕を行うらしい。  これまで学園は、魔王の脅威に対抗する為の側面も持っていたが、これからはそれも変わる。  今まで以上に授業の専門性を上げることを提唱する者もいれば、外部との連携を強め研究都市としての特色を出していこうという者もいた。  魔王の撃破という、歴史の転換点とも言うべき状況に、祭めいた熱狂が広がっているようだ。 (まぁ、要は、浮かれてるってことだよな)  教室に戻りながら、彼は思う。 (しょうがねぇよな。それだけ大きなことを成し遂げたんだから)  どこか誇るように思いながら歩いていると、同じ学年の友人に声を掛けられた。 「よう、そっち終った?」 「ああ。今回の課題は、これで終わり。次、どうすっかな?」 「だったら、帰省の課題に参加してみねぇか?」 「帰省? 故郷に帰るってことか?」 「そういうこと。学園以外でも魔王軍は暴れてただろ? それに異世界に避難してた所もあるみたいだし」 「あー、それってつまり、学園の後始末に片が付いたから、労働力を外部に放流しようと」 「そういう意味もあるみたいだけど、ほら、やっぱ故郷がどうなってるか気になる生徒もいるだろ? そういうのも汲んで、課題という形で手配してくれてるみたい。帰省するのにかかる費用とか、諸々を用立ててくれるみたいだし」 「なるほどね。なら、参加してみるかな。お前はどうする? あと――」  彼は友人の名前を口にした。 「あいつは、どうだろうな? なんか、故郷は異世界らしいけど」 「そっちも、手配してくれるらしいぜ。異世界転移門の研究してる、ほら、なんつったっけ?」 「セントリアか?」 「ああ、そこそこ。そこと協力して、出来る限り異世界転移者が元居た世界に戻れるように便宜を図ってくれるらしい。向こうとしても、研究データが入るんで乗り気みたいだ」  以前は眉唾物とも思われていた異世界ではあるが、実証された今となっては、新たな研究テーマとして熱を帯び始めている。 「俺は折角なんで、あいつが異世界に帰省するのについて行こうかと思ってるんだ。研究論文の良いテーマになりそうだからな」 「そっかー……そっちもそそられるなぁ。故郷にはいつでも帰れるし」 「なら、お前も連いてくる?」 「んー……悩む」  などと、友人同士で喋りながら、2人は教室に戻っていった。  そうした帰省に関する課題が、学園から出されました。  故郷が気になったので帰るのでも良いですし、友人や知人が異世界に戻るのに同行してついていっても良いようです。  ひょっとすると、故郷が既にない人がいるかもしれませんし、あるいは、故郷に何かしらの因縁がある人もいるかもしれません。  そうしたことを解決するためにも、一度故郷の地を踏むのも良いでしょう。  魔王に勝利し、新たな時代が訪れる中、新たな区切りを迎えるためにも、この課題に参加してみませんか?
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