;
はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



絞込
ジャンル 難易度 GM メモピン
キーワード検索

【夏コレ】黒雨 機百 GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 難しい

報酬 多い

公開日 2019-06-23

予約期間 開始 2019-06-24 00:00
締切 2019-06-25 23:59

出発日 2019-07-02

完成予定 2019-07-12

参加人数 6 / 8
●嵐の前触れ  其れは、夏の全校集会より少し前の事。  どこかの裏路地にて。 「――状況は以上です」 「裏付けは取ったな?」 「舟を借りて確認しました。あれの正体は恐らく――でしょう。厄介な相手です」 「ふむン……成程、よくやったな。ご苦労」  男は情報を伝えると、すぐにその場を後にした。その場に残ったのは、背が高く、背丈ほどある薄い亜麻色の髪の女。  彼女は一応教師らしい。らしいというのは、教師の肩書を持ちながら、彼女から授業を受けたという生徒は少なく、殆どは用務員か何かだと思っているらしい。それどころか教師たちの間でも、名前は知っていても姿を見たことがないという教師もいるくらいである。  それはさておき、確か今年の新入生が近隣のアルチェの町で夏を満喫するらしい。だが今の件を放置すれば根底から台無しになってしまう。  なら単純に、新入生自身に解決してもらおう。少しばかりの助力を添えて。  彼女は頷くと、裏路地の闇に姿を晦ました。  その明日のこと。 「というわけで、状況を説明させてもらおうか。途中退出は許可しないぞ」  待て。今の状況を説明するのが先ではないのか? なぜ自分達はす巻きにされていて、埃塗れの倉庫に転がされているのだ。  記憶を遡れば確か自分は、親しき友人と共にクイドクアムで買い物をしていたはずだ。そこで、少し別行動をすることになってから……あれ、何故かここから先の記憶がない。 「細事だ、気にするな」  細くない。  そもそもこうなって途中退室などできる筈がない。何にしてもやり方が手荒というレベルを超越していた。 「まあ、きわめて緊急性の高い事態でなァ。皆の夏の思い出を守るための課題だと言っておこう」  そう言うと女性教師は、こちらの困惑や憤りを無視し、適当な木箱に腰を据えてすらりと長い足を組むと説明を始めた。 ●幽霊船は来たる 「まず、新入生達がアルチェの町へ行って遊んだりしてくるのだったな? この課題を無視すれば、夏の思い出は悪天候で外に出られぬまま終わるだろうなァ」  話を飛躍させていないだろうか。だが、どういうことだろうか? 何故課題を無視すれば悪天候になるのか。 「まず、アルチェの町はイルフィナ海に接しているが、そのイルフィナ海沖で、暗雲垂れ込める暴風雨の中に奇妙な船を見たという話が漁師達の間で囁かれている。誰も乗っておらず、マストが折れ船体が大きく破損しているにもかかわらず、荒波を漂っているわけだ。それを見た若い船乗りは『幽霊船』と呼んでいるらしいなァ」  女性教師の軽い口調とは裏腹に、急に怪談のような重く湿っぽい空気が漂ってきた。  幽霊船? いやまさかそんなものが実際にある筈が……。 「その幽霊船だが、最初は沖に漂っているだけで、誰も気味悪がって近寄らなかったため、今のところ被害はない。だがその幽霊船が暴風雨を引き連れるように、アルチェの町に少しずつ近づいてきているとしたら、どうなる?」  アルチェの町が暴風雨に見舞われるのは確かだろう。そうなっては確かに、夏の思い出など暴風雨と共に吹き飛んでしまう。  これらが幽霊船の祟り、と言ったものでないことを祈りたいが……。 「そこでお前達には幽霊船を止めてきてもらおうか。皆の夏の思い出を守るために、なァ?」  女性教師はスッと足を組みなおしつつ、にやりと笑った。 「まず『幽霊船』の正体だが、これは巨大なスライム型の魔物が難破船を巣にしながらそのまま浮き上がってきた姿だ。この魔物は青色の巨大な粘液の肉体を持つが生命力が低い。それを補うために沈んだ難破船などに入り込み、脅威から身を守っていると考えられている。奴は雷雲や雨雲を好み、それを見つけると船と共に浮き上がってくる。そして、何らかの魔力によって雲を自分のいる場所に停滞させる、というわけだなァ。これは繁殖のための行動と考えられているが、所詮推測の域だ」  この奇妙な習性と、前例を知らない船乗りの想像力が幽霊船の噂に繋がったのだろうな、と女性教師は付け足した。それを聞いて何人かの生徒はほっと胸をなでおろした。 「このスライムの魔物、『メデューズ』の倒し方だが、先も言ったように難破船を殻の代わりにしているため、傷んでいるとは言え外からの攻撃は通じないと考えろ。そもそも何処に奴がいるのか分からなければ徒労に終わるだろう。だから難破船に乗り込んで直接、コアを叩くしかない。先ほど生命力が弱いと言ったが、この手の魔物としては珍しく物理的な攻撃がそこそこ通じるから、その点は安心していい。だが奴は船の破損個所からゲル状の触手を伸ばして不意討ちしてくる。痛いでは済まないかもなァ?」  敵の体に直接張り付いて戦えということである。リスクはあまりにも大きいが、それ以外に手がないとすればやるしかないだろう。 「メデューズだけではない。難破船のあちこちに、奴と共生しているフジツボ型の魔物の『カタラク』が張り付いているそうだ。こいつは個々で戦うなら大した相手ではないが、狭い箇所にびっしりと密生していることが多いから、数の差で苦戦するだろう。こいつの攻撃手段だが、毒を含んだ海水を吐き出したり、殻の一部を飛ばしてくる」  メデューズだけでも厄介な存在というのに、こんな魔物とも戦わなければならないとは。  正攻法で攻めると消耗が激しくなるだろう。だが、どんな搦め手を使えば少しはマシに戦えるだろうか? 「難破船の規模だが、全長は大体、学園の小規模な屋外練習場のトラックに匹敵する。全幅は、その運動場の三分の一にも満たない程度だろうか。少なくとも迷うことはあるまい。中の様子は分からないが、外観や規模から察するに貨客船だったと推察される。客室と乗組員室のデッキと貨物室のデッキがあるとみて間違いないな。後、長い間海に沈んでいたから結構傷んでいるだろうが実際に貨客船だったとすれば、大きく傷んでいる個所をわざと踏まない限り踏み抜くことはないだろう」  多分、船の最深部まで行けば奴を叩けるだろう、と女性教師は言葉をつけ足した。  問題は、メデューズ本体がいるその最深部まで出来る限り負傷しないで行く方法だが……。 「今のお前達では道中でかなり消耗させられることだろう。そこでだ、助っ人を二人呼んでおいた。クスギリ、ダヌシュ。来るがいい」  女性教師が指を鳴らすと、二人の生徒が入ってきた。一人は、山刀のような大太刀を背負ったローレライの剣士の青年。もう一人は、弩というには長すぎる得物を肩に担いだ、小柄なルネサンスの術師の少女だった。 「ああやっぱり、今年もまたこんな……皆さん、本当にうちの先生が済みません!」 「生徒に謝らせてる」  ローレライの青年がす巻きになっている皆に必死に頭を下げ、ルネサンスの少女は女性教師をジトっと見つめていたが、女性教師は全く意に介さず話を続けた。 「この二人はお前達の先輩だ。今回は一人だけお前達に同行させよう。上手に使ってやれ」  女性教師が再びにやっと笑ってもう一度指を鳴らすと、す巻きにされている生徒全員の縄が独りでに解けた。  生徒達は目を丸くし、恐る恐る立ち上がる。 「説明は以上だ。挑んでくれると信じているよ。あぁそうそう、課題を果たしたら一日だけアルチェの町での自由行動を許可しよう。勉学に努めるのもいいが、夏の楽しみを先取りするのも一興だろう」  奇妙な事態と厄介な課題で不安になった生徒達だが、この一言でやる気が漲った。
【夏コレ!】魔物退治のご褒美は魚介BBQ GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

公開日 2019-06-23

予約期間 開始 2019-06-24 00:00
締切 2019-06-25 23:59

出発日 2019-07-01

完成予定 2019-07-11

参加人数 3 / 8
「バーベキュー、というものをしますわよ!」  それは王様・貴族専攻4年目の【ミレーヌ・エンブリッシュ】だ。バーベキューとは炭火の上に網を置き、具材を焼く調理方法だ。  炭で焼かれた具材は風味を増し、味がぎゅっと凝縮されて美味しくなるのだという。  アルチェと呼ばれる町の一部地域ではバーベキューとは夏の定番プチイベントなのだという。  どこからかそれを聞きつけてきたミレーヌは一枚の羊皮紙を集まった生徒たちにつきつける。 『魚介が豊富にとれる漁場の一部に突如フラッシャー数体とセインディーネ1体が出没するようになってしまいました。このままでは漁師たちが危険な目に合うかもしれないので、退治をお願いします。報酬はいくばくかのゴールドと、大量の魚介類になります。どうぞよろしくお願いします。-アルチェ漁師一同-』  その羊皮紙はアルチェに住む漁師たちからの依頼書であった。 「この町の漁師たちが魔物の出現に困ってるそうですわ。バーベキューをするためにまず依頼をこなして来てくださるかしら!」  ミレーヌは満面の笑みでそう集まった生徒たち依頼を押し付けようとしていた。ちなみにミレーヌ自身はバーベキューの準備をするから魔物退治には同行しないという。 「魔物退治の経験を皆さまにお譲りするということですわ! タダでバーベキューに参加するつもり? まさかそんな、おほほほ」  ミレーヌの乾いた笑いが響き渡る。とはいえ本当にタダ乗りするつもりではないようだ。現地で依頼をとってくるついでに現地の状況や魔物の情報を集めていた。  戦いの場となるのは漁師の帆船。さほど大きな船ではないため、1隻に乗れるのは最大4人まで。必要に応じて出してもらえる船は増やしてもらうことが可能だ。  敵はフラッシャーと呼ばれる魚のような魔物が数体。フラッシャーは鋭い歯と狂人な顎をもっており、体長1メートルから2メートルほど。  海中から飛び出して空中にいる得物などを仕留めることもある。  一度噛みついたら離れず、水中に引きづりこんだりかみちぎったり。地上であればその体を揺らし噛みついた相手を地面へ叩きつけたりしてくる。  またセインディーネと呼ばれる魔物はよく言えば人魚。悪くいえば半魚人だ。口をつぐんでいれば美しい乙女に見えるが、開けば醜く4つに分かれて開く口に鋭い歯で人肉を喰らう。  セインディーネは水上に現れ歌声により水を操り、その声は人々を魅了する。  この2種の魔物と同時に戦うか、チームを分けて対応するかの対策が必要だが、どちらにしても中々大変な作戦となることだろう。 「結構大変な依頼かしら。でも魔物を倒した後にはお腹いっぱい魚介のバーベキューですわ」  魚介以外にほしい具材があればミレーヌが用意しておいてくれるという。  バーベキューのため、いや、漁師の人たちのため。ミレーヌはアルチェの海に出没した魔物退治に向かってくれる人員を募り始めるのであった。
【夏コレ!】夜空の大輪に彩りを 瀧音 静 GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-06-23

予約期間 開始 2019-06-24 00:00
締切 2019-06-25 23:59

出発日 2019-07-01

完成予定 2019-07-11

参加人数 5 / 8
 学園からそう離れてはいない、けれども周りには他の建物は無いような、そんな場所にポツンと建っている工房。  特に飾りのない、言ってしまえばつまらない外見のその工房の中で、黙々と作業する男が一人。  工房であるため、何かしらの芸術や美術品を作っているはずなのだが、彼は絵を描いていたりいているわけでは無いし、彼の周りにもまた、彼の作品と思われるものは見受けられない。 「よし……こんなもんだろ」  作業していた手を止め、顔を上げた男は安堵の息を漏らす。  どうやら一区切りついたらしく、それまでの張り詰めていた空気が一気に緩んだようだ。  立ち上がった彼の手には球体が握られていて、それは祭り等の時に夜空を彩る大きな花となるもので。 「毎度毎度あいつは、思い出したようにこんな時期に仕事依頼しやがるんだから――」  誰に向けての悪態かは分からないが、誰に聞かせるわけでも無く零れたそれは、男の素直な気持ちなのだろう。 「さって……後は色を付けるだけ――」  棚に保管されている筈の、炎の色を決める素材へと手を伸ばした男の手が、途中でピタっと止まる。 「うっわやっべぇ。よりによって紅色がねぇじゃねぇか……。しゃーねぇ、あいつに依頼しとくか。――元はと言えばギリギリに依頼出したあいつが悪いんだ。これくらいはしやがれ」 *  魔法学園、『フトゥールム・スクエア』。その日常の中で、この日はちょっぴり非日常な事が起こっていた。  学園長である【メメ・メメル】から数人の新入生へと呼び出しがかかったのだ。  悪いこと等はしていないのに、教員に、しかもよりによって学園長に呼び出されたとあっては、当事者の生徒達からしてみれば何を言われるか分からずたまったものではないだろう。  そんな思いでビクビクしている新入生を前に、呼び出した本人の学園長はため息を一つ。  思わず身構える新入生だったが、そんな様子を余所に学園長は口を開いた。 「この間、オトモダチに依頼をしてたんだけど~、そいつから材料がないーって連絡来ちゃって~」  いきなりのそんな言葉に目が点になる新入生だが、当然学園長は気にはしない。 「なんか~、オレ様が依頼を遅れてしちゃったのが悪かったみたいでぇー? 依頼品が欲しいなら材料持ってこいって言うのー。メンドーだよねえ」  明らかに面倒だ。という表情で言う学園長を見ていれば、自ずと言いたいことは分かってくる。 「そこで! チミたちに命じる! 材料、取ってきて~」  自分で集めるのがめんどくさいから、新入生へと丸投げしよう。という事なのだろう。 「集める素材と場所はこの紙に書いておいたぞ~。メメたんってばやっさしー! 大サービスで採取の道具も貸したげる! なんて太っ腹~! ここまでしたんだから、もちろん――受けるよね~? 返事は『はい』か『イエス』しか受け付けないぞ☆」  選択肢は無いようで、紙を受け取った新入生達は内容を確認し、依頼の達成の為に意見を出し合うのだった。
【夏コレ!】ランタン祭りに参加しよう! 夜月天音 GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2019-06-19

予約期間 開始 2019-06-20 00:00
締切 2019-06-21 23:59

出発日 2019-06-27

完成予定 2019-07-07

参加人数 8 / 8
 夕方、アルチェのサビア・ビーチ。 「海は楽しんだかい? 良かったら、夜の海も楽しんでいかないかい? 実は土産屋をする俺の友人がランタンの仕入れ量を間違えて、売り切れないほどの量になってしまってね。今夜、ランタン祭りを開催する予定だ」  海水浴アイテムを貸し出す仕事をしている中年男性が、返却に来た客達に何やら親しげに声を掛けていた。 「夜の海で空に向かって飛ばすのはどうかなと思ってね。星空に光り輝くランタン、綺麗じゃないか。願い事があるなら、ランタンに書いたら願いが叶うかもしれない。だから、こうして声を掛けているんだ。ボートと空飛ぶ箒の貸し出しをしているから、海に漕ぎ出したり空を飛んだりしてランタンに溢れる空を見学してもいいし、飲食物も売っているはずだからどんちゃん騒ぎも歓迎だ。時間があったら、是非夜も来てくれ。そうしてくれると助かる」  客を引き込むのに必死さを見せる中年男性は、ちらりと大量のランタンが入った箱を一瞥した。  ついに夜が訪れる。 「願い事、何にしようかな」 「空を飛んで見学したいな」 「これだけ人が多いなら、商売繁盛よ」  闇に染まったビーチには、中年男性が頑張った成果か、日中にも負けない賑やかさを見せていた。  程なくして、ランタン祭りが始まった。
【夏コレ!】マグロの食感イカの味 宇波 GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 少し

公開日 2019-06-19

予約期間 開始 2019-06-20 00:00
締切 2019-06-21 23:59

出発日 2019-06-27

完成予定 2019-07-07

参加人数 3 / 8
「青く輝く海ー!」 「うみー!!」 「白い入道雲の浮かぶ青い空ー!」 「そらー!!」 「背後を見れば青々と緑が眩しい山―!」 「やまー!」 「そしてそしてー?」 「そしてー?」  ばっちりと決めた勝負水着。  ウォータープルーフの日焼け止めも塗って、日焼け対策ばっちり。  お気に入りの麦わら帽子も引っ張り出して、凍った飲み物も常備してきた。  ビーチパラソルだって、持っていないから、持っている先輩に借りてきた。  バーベキューの道具だって、レンタルしてきた。  完全に海で遊ぶ気満々だった生徒たちは死んだ目で海を見る。  ひとりは獣もかくやと咆哮した。 「どうして! こんな時に限って魔物なんて出てくるのお!」  ざっぱーん。  水平線に、大きな魚影の波が立つ。  事の発端は、二日前。 「臨海学校の下見、ですか?」 「そうなのですよぉ。今年は私が担当になりましてねぇ」  おっとりと間延びした声は、教師【アキ・リムレット】。  彼女は授業の準備を頼んだ生徒たちに、『お願い』をする。  曰く、下見に行くのはいいのだが、ひとりだとどうも寂しいとは彼女の言。  そのため、生徒たちに共に来てほしいと言う。 「下見とは言っても海だけですのでぇ、みなさんで水着着てぇ、ビーチバレーをしたりぃ、ダイビングをしたりぃ、お昼はバーベキューでご飯にしましょうぅ」  お金は学園持ちですのでぇ。  アキの付け足した言葉に、決断は早かった。 「ぜひ。行かせてください」  人の金で遊ぶ遊びほど、楽しい物はない。  それに、昼食一食分の金が浮くだけ、助かるというものだ。  学生は、案外金策にあえいでいる。    そうしてやって来た、海。  しかしそこには先客がいた。  自分たちの何倍もでかい、巨大なマグロ。  そう、マグロ。  何度だって言おう、マグロがいた。  マグロは我が物顔で海の中を泳いでいる。  一緒に泳ぐとしても、あの巨体で立つ波は大波。飲まれてしまう。  尾びれに当たりでもしたら、いったーい! で済みそうもない。  ざっぱーん。  まるでイルカのように波から跳ねたマグロの横腹。  そこにはでかでかと、模様として書かれていた。  『クラーケン』と。 「マグロじゃねえのかよ!!」  がくー、と脱力する生徒のひとり。  アキは、あらあら、といつも通りの笑顔で頬に手を当てている。  落ち込んだ生徒は嘆く。 「マグロでもクラーケンでもさ、いたら泳げないよー」 「まあ、こう考えればいいよ」  生徒のひとりはぽん、と落ち込む生徒の肩を叩く。 「バーベキューの具材に、マグロが一匹増えるだけだ。って」  生徒たちはざ、っと雰囲気を変える。  その目は、まるで。 「刺身だー!」 「大トロ! 大トロ!」  哀れなマグロを捕食しようとする、捕食者の目だった。
【夏コレ!】アルチェを襲う海の巨影 伊弉諾神琴 GM

ジャンル イベント

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 多い

公開日 2019-06-14

予約期間 開始 2019-06-15 00:00
締切 2019-06-16 23:59

出発日 2019-06-23

完成予定 2019-07-03

参加人数 8 / 8
 春から夏へと移り変わりつつあるこの頃。  海の街アルチェも、夏に向けて本格的に観光の準備が進み始めている。やはり夏は海と相場が決まっているからだ。  海開きが間近に迫ってきた白い砂が輝くサビア・ビーチでは、貸出するボートや水着、ボールなどを用意していた。  メルカ漁港方面では観光客たちへ獲れ立ての魚や干物などを提供するため、日々漁に勤しんでいる。  そんな折、漁師たちの間でとある噂が実しやかに囁かれた。  「『海喰い(うみくい)』が目覚めた」と――。  『海喰い』とはアルチェで古くから仄めかされてきた都市伝説であり、深海で眠る巨大なタコであるという。主に秋から冬にかける魚の繁殖期に百年周期で目覚め、アルチェの沖合で海上と深海を往復して魚を捕食し、満足したら再び眠りにつくとされている。  一度眠りについた後は目覚めるまで長い期間を要するため、その姿を目にした者が生きていることはごく少ない。あくまで都市伝説や噂で語られる程度の存在だった。  ところが、連日海に出ている漁師たちは少しずつ違和感を覚え始めていた。  海から魚たちがいなくなっていく。日に日に獲れる魚の量が減っているのだ。  それは当人たちの感覚だけの話ではない。鳥山の数もどんどん少なくなっている。海鳥たちも餌場が無くなって困惑したかのように、どこか遠くへと飛び去っていく。  そしてとうとう事件は起こる――ある日、沖合に出たはずの漁師が血相を変えて戻ってきた。  この世のモノではない何かを見てきたような形相の漁師へ、どうしたどうしたと仲間が問いかけるとただ一言――。 「『海喰い』が出た。大渦を起こして魚を喰らってる」  漁師仲間は大爆笑の渦に飲み込まれた。そんなはずないと、最初は笑い話にしていた。  だが、一隻二隻、さらに一隻二隻と、沖合に漁に出たはずの船がどんどん漁港へと帰ってくる。どの漁師も焦った様子で、『デカいタコが居た』、『巨大な影が海の中に』、『ビーチの方へ向かっている』――口々に叫ぶ漁師たちに、その場にいた全員の背筋が凍った。  伝承では人を喰らう事は無いとされるが、観光客たちの安全を考えると放置するのは得策ではない。  しかし夏は刻一刻と迫っている。  今から海開きを延期させるか?  バカンスやグルメを楽しみに来た観光客たちも追い返すか?  そんなことはさせない――漁師たちの行動は早かった。アルチェに浮上しつつある『海喰い』について文献を読み漁る。『海喰い』を深海に追い返し、あわよくば討伐せしめるだけの情報を得ようとした。  勇者の学校『フトゥールム・スクエア』にも協力を仰ぎ、人騒がせな客人……もとい客蛸にお帰りになってもらう準備をする。  アルチェの人たちは諦めない。観光に来た人たちのひと夏の思い出を守るために。  ……君らも同じ気持ちのはずだ。  楽しい楽しい海辺の青春を謳歌したいだろう?  生命の母たる海が育んだ、美味な魚や貝を食べることを邪魔されたくないだろう?  ならば、取るべき行動は一つだろう?  さあ、勇者たちよ――海開き前の招かれざる客を追い返す時が来た。
【夏コレ!】第1回★熱血スイカ割り大会! あまのいろは GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-06-14

予約期間 開始 2019-06-15 00:00
締切 2019-06-16 23:59

出発日 2019-06-22

完成予定 2019-07-02

参加人数 5 / 8
●  時が流れるのは早いもので、ツリーフォレストマンによる熱烈な歓迎から数ヶ月。  魔法学園フトゥールム・スクエアに通う学生たちも少しずつ学園に馴染み、クセが強すぎる先生に先輩や、奇想天外な授業にも、ちょっとやそっとじゃ驚かなくなってきた。  けれど、そんな彼らを1枚の張り紙が驚かせることになる。 『おっすおっす! フトゥールム・スクエアの学園長メメたんからのお知らせだぞ!  毎日授業に課題を頑張る諸君にささやかな御褒美だ! 海辺の街アルチェにご招待!』  海辺の街、アルチェとは、夏になると海水浴やマリンスポーツに訪れる観光客で賑わう街。  街中に飲食店やホテル、土産屋が立ち並び、1日ではとてもじゃないけれど回りきれない。  そんな観光地の浜辺で羽を伸ばしてきてよいと、学園長からのお達しが出たのだ。  アルチェの街までは学園がしっかりサポート。しかもスイカまで用意してくれるらしい。  学生たちは、アルチェの海にそれぞれ想いを馳せる。  きらきら輝く海辺に響く、楽しそうな笑い声。泳ぐだけじゃなく、砂浜でビーチバレーも楽しそうだ。ああ、夜になったら花火もしたい。  もしかして。いつもはしっかり着込んでいるあの子の水着姿が見れちゃったりして。  夏の日差しがいつもより開放的な気分にしちゃったりして。気になるあの子と大接近! なんてこともあるかもしれない。ないかもしれない。  ぶっちゃけ、ものすごく、行きたい。学生たちは、その誘いに乗ることにした。  まあでも、これ、メメたん学園長からの誘いなんだ。 ●つまりは罠である  浜辺にスイカがあった。  大人ひとりをゆうに越す大きさのスイカだった。  聞いてない。スイカを用意しておくぞ! とは言っていたけれど。  こういうスイカだって聞いてない。今回はきゃっきゃうふふするだけの楽しい話だと思ったのに!!  というかこれなんなの? 魔物なの? 原生生物なの?  分かるのは、とにかく大きいスイカが海辺に転がっていることと、遊ぶためにはとりあえずこのスイカを壊すしかないらしいということだ。  まだ海に入っていないのに、頬を伝ったそれはなんだかしょっぱい味がした。気のせいかな。
【夏コレ!】浜辺でビーチバレー(謎)対決? 秀典 GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-06-19

予約期間 開始 2019-06-20 00:00
締切 2019-06-21 23:59

出発日 2019-06-26

完成予定 2019-07-06

参加人数 4 / 8
「あつ~~~~~~~い!」  夏……。  フトゥールム・スクエアの何処かにある学園長の部屋の中。  例年よりも早く、相当に気温が上がり続ける日々に、音を上げそうになっている女性が居る。  それが【メメ・メメル】という名の、この学園の学園長だった。  しかし暑さも毎年のことで、その対策がないわけではない。  部屋の中に冷却魔法を試してみたり、冷えた飲み物を飲んだりして、まあそこそこ快適な生活を送っている。  ただ、学園長がそれだけで満足するはずがなかった。 「あ、そうだ、今年も海にいこー♪」  その決断も毎年のことなのだが、今年は少し違っている。  暑さに悶える生徒の為に、学園長は決意を固めた。 「ついでだから、生徒の皆もつれてっちゃおう♪」  あくまでも、自主参加で集められた先生と生徒達は、学園長のお願いに喜んでついて行き、アルチェの町に向かって行ったという。 ●  アルチェの町は、元々は小さな集落で、住民は漁業で生計を立てていたという。  しかし、当時の領主である【ダンテ・ミルトニア】が美しい海と水産資源に目をつけて観光地区へと造り変えた歴史があった。  今では立派な町となり、かなりの人で賑わっている。  海辺ではマリンスポーツの大会も頻繁に開催されて、優勝者には豪華な賞品が与えられる。  その快適な町に、遊ばされに……遊びに来たのが学園の先生と学生達だ。  早速サビア・ビーチの海岸へ向かう学園長に、まあ涼しいから良いかなと向かう学園の人達。  初めは海を楽しみ、その気持ち良さを満喫していたのだが、楽しむだけでは終われなかった。  ビーチパラソルの内でビーチチェアに座り、水着で寛いでいた学園長は、トロピカルなジュースを飲みながらこう言った。 「涼しいけど~、オレ様が暇なのでビーチバレー大会を開催するゾ♪ チミたち頑張って楽しんでくれよ☆ ああでもー、普通のビーチバレーじゃつまらないし、このメメたん特製のボールを使ってみたまえ♪」  学園長の手の上に、突如丸いボールが現れる。  バレーのボールに見えるのだが、学園長が言うのだから何か違うものだろう。 「はい、ちゅうもーく♪ このボールはこうやって使うんだぞ☆ プチヒド!」  魔法を唱え叩くと、ボールには魔法の効果が収納された。  その炎の力を宿したボールは、海辺へとぶつかった。  ボゥっとボールから炎が上がり、その力を見せる。  つまりそれを使ってビーチバレーをしろというらしい。 「じゃあ皆、エキサイティングな戦いを期待しておるぞ♪」  だが一応危険かもしれないと、先生達がまず模擬的に対戦が行うこととなる。  先生達の模擬試合は壮絶を極めていた。  雷が落ち炎が巻き起こり、凍ったり爆発したりと、楽し気な光景が垣間見える。  体にアザがつき、誰が見ても危険だが……。 「うんうん、大丈夫っぽいなー♪ じゃあ大会を始めるぞ☆」  学園長が続行を宣言してしまった。  そして勇気ある学生達が、それに挑むことになる。  君達の対戦相手に名乗りを上げたのは。  防御を得意とする【ウッド・センプーキ】  力押しの【ダイヤリー・クロック】  炎と水の力を持つ【スイミー・ジェリーズ】  癒しの力を持った【ガーテン・ブラッシュ】  速度重視の【ラベル・クーラ】  の計五人だった。
【夏コレ!】海だ! 川だ! 魔物だぁー!? 鞠りん GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2019-06-15

予約期間 開始 2019-06-16 00:00
締切 2019-06-17 23:59

出発日 2019-06-21

完成予定 2019-07-01

参加人数 7 / 8
●  観光と漁業の街『アルチェ』。  夏になると、海水浴などが目的で、アルチェの『サビア・ビーチ』は多くの人で賑わい騒がしくなるのが、この辺りの人々の楽しみになっているよう。  そんな夏の日差しに当てられたアルチェを抜け、少し離れた場所に『エスト川』という川があり、アルチェから上流へ向かえば向かうほど、その水量が増し流れは激しくなる。 「……この辺りで良いかしら?」  エスト川の下流近くで、穏やかな川の流れを眺めているのは、フトゥールム・スクエアの教師【ユリ・ネオネ】だったりするのだが。  でも、どうして彼女がここに?  それは、夏のイベントを、更に盛り上げるために決まっているでしょう! 「ああ居たわ。水と言ったらこれよねぇ」  ユリが見つけたのは、一匹の見た目が美人な……魔物なのか!? 「ふふふ、これでもっと楽しめるわよ」  見つけた魔物に、少しだけ細工をし、ユリは学生たちが居るアルチェへと戻る道を辿る。  ――一体何をしたんだ、ユリ先生!!  一方、学生たちはというと、新入生にとれば入学初めての夏、しかも観光地アルチェということで、みんな期待と解放感に、ビーチで泳ぐだの、露店で食べ歩きをするだの大はしゃぎ。  普段は真面目に授業に取り組んでいる学生だって、海に来れば騒ぎたくもなるでしょう?  水着に着替えビーチに……。ほとんどの学生が、そう行動しようとしていた、そんな中。 「貴方たち、海も良いけれど、川で急流下りを楽しまない? 勿論私が引率してあげるわよ」  学生たちの前に現れたのは、レースの目隠しはそのままに、黒のワンピースタイプの水着と王道なのだが、胸の部分が紐状に縛られていて、その大きな膨らみを存分に誇張されているユリ先生が、腰に手を当てて佇んでいるではないか。  男子学生は『うおぉぉー!』と驚き、女子学生は、そんな男子たちを白い目で見る……のは、いつもの光景なのだから、目も当てられない。  一つ残念なのは、腰から下は膝丈ほどの紫のビスチェで見えないという点。  でも、上だけ……特に胸でも見られただけでも、海に来たかいがあるってものだと、男子たちは思っているらしい。  ――青春だねぇ。 「それで? 私が用意した、急流下りに行く生徒は?」 「ユリ先生、急流下りということはボートですよね。危険ではないんですか?」  質問した学生の意見はごもっとも。  一般的にボートといえば木製。それで急流と言うほどの川に出れば、途中に激しい水流や岩などが想定出来、下手をすればボートは木っ端微塵に……なるかも知れない。 「その心配は少ないわ、事前にボートには風の魔法をかけてあるもの。貴方たちが協力して岩を回避すれば、多少岩に当たっても風のクッションがカバーするわよ」  流石ユリ先生!  鬼教師なんて言われているけれど、考えるところは考えてくれている。  そう喜び、急流下りに名乗りを上げる学生が続出したのは……言うまでもない。  なのにユリは、 「そうそう、武器はちゃんと用意することね」  『どうして?』と、質問する学生たちが多い中、ユリは一言、 「この世界は、どこにでも魔物は居るものよ」  ……それだけしか答えてはくれなかった。 ●  ユリと学生たちは、川の上流を歩いて目指す。  それにしても、ユリは先ほどの水着のままの姿で、しかも足は踵が高いサンダルなのに、全く気にならないような素振りで山を歩いている。  黒幕・暗躍コースの先生ともなると、この程度の山道は、普通に歩くのと同じなのだろうか?  そんな学生たちの素朴な疑問は絶えない。  どんどんと流れが早くなる川を見ながら、山道を歩くこと30分以上、ユリは顔色一つ変えずに歩くが、学生たちはそこそこに疲れを感じて来ている……と、思っていたら、ユリが漸くその歩みを止めた。 「着いたわよ。ここから下流に一気に下る。絶好の場所じゃなくて?」  ボートを出せるほどの広い草むらがあり、川幅も大きいベストポジション。  これ以上進めば、ボートが出せないか、水圧が高過ぎてボートは簡単に壊れてしまうだろう。  ここまで歩かせるなんて、やっぱり鬼だ。  そう思っていた学生たちも、ユリの的確な判断は納得出来るもの。  ……先に言って欲しいけど。 「さあ、思いっきり楽しんで来なさい。そうね、無事にアルチェまで帰って来れたら……ご褒美くらい出すわよ?」  無事!?  何気ないその言葉に、一抹の不安が学生たちの間を駆け抜けるが、今は目の前の楽しそうな急流下りが先と、それぞれユリが用意していたオールを手に持ち、全員一緒のボートに乗り込んだ。 ●  学生たちを見送り、一人上流に残ったユリ。  目はレースで見えないが、その顔は笑っているようにも見える。 「ふふ……。私が出した夏の課題を、どうクリアーしてくれるかしら? ……楽しみね」  学生たちが……ボートが下流に着けば、先に仕込んだ魔物を抑えている『影縫い』が解け、学生たちに向かって襲いかかる。  だからこその武器持参、これもユリの計算の内。 「私からの夏のプレゼントを受け取って頂戴。でも本当にクリアーしたら、ご褒美を用意して、アルチェで待っているわよ。……頑張りなさいな」  そう独り言を呟き、ユリは凄いスピードで山を下り出す。先回りして、学生たちのご褒美を用意するために。  ユリ先生が出した課題をクリアー出来るのか?  それは、みんなの協力にかかっている。  さぁ! 川と魔物との夏を満喫しようしゃないか!
おお、花嫁よ! 宇波 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2019-06-11

予約期間 開始 2019-06-12 00:00
締切 2019-06-13 23:59

出発日 2019-06-19

完成予定 2019-06-29

参加人数 8 / 8
 ――結婚……結婚は人生の墓場だ……――。  耳元で、だれかが囁く。  幸せな結婚式前のこの時期に、輝く未来へ墨汁を垂らす、不穏な囁きを。  ――どうせ結婚したら化けの皮が剥がれるさ……旦那は嫌な男かもしれないぜ……――。 (そんなことないわ。彼は優しいもの)  ――祝ってくれてても……友達は内心嫉妬してるんだ……結婚したらみぃんな離れてく……――。 (やめてよ。どうしてそんなことを言うの)  ――やめてしまえよ……独身の方が気楽だぜ……――。 「やめてよ!」  甲高い、自分の悲鳴で目が覚める。 (夢……?)  荒い息を整えながら、寝室を見渡す。  何の変哲もない寝室。  いつも通りの風景。  そのことに、少しだけ安心する。 「ふぅ……」  額から流れ落ちる汗はシーツに染みる。  彼女はもう一度眠ろうと、して。 「き」  はた。  横向きに入った布団。  ベッド脇にいた、それと目が合った。 「きゃああああああ!!」 「毎日雨でじめじめして……。嫌になりますねぇ」  魔法学園『フトゥールム・スクエア』。  梅雨のじめっとした空気に顔を顰めながら、受付窓口まで集まった生徒たち。  しかし、彼らよりももっと顔を顰め、一層不機嫌そうな者は、彼らと正面から対峙する受付職員。  頭痛持ちなのだろうか。 「雨と言えば、今はジューンブライドの時期ですね」  ジューンブライド。  梅雨のこの時期に結婚すると、一生幸せになれると言う、幸せな言い伝え。  職員は一層、苦虫を噛み潰したように顔を顰めた。 「そのジューンブライドにかこつけて、人の幸せを踏みにじる魔物が出ているんですよ」  なんだと、それは許せない。  生徒たちが憤慨すると、そうでしょう、そうでしょう、と職員も何度も頷く。 「その魔物は、『ブルー・マリッジ』。結婚が決まった花嫁に、結婚に対するマイナスイメージを夜な夜な囁き、記憶に植え付ける魔物です」  なんて悪質な。  聞けば、中にはそれが原因でマリッジブルーに陥る花嫁や、結婚自体を取りやめた花嫁もいるらしい。 「その魔物はどういった容姿を?」  絶対に許せない。  怒りをそのままに特徴を聞くと、職員は指折り、特徴を伝える。 「黒いシルクハットを被り」 「ほうほう」 「手にはステッキ」 「紳士かな?」  話を聞くひとりが、手帳にメモを取っていく。 「劇画風の太い眉に」 「劇画……」 「きりっとした濃いめの両目」 「……はい」 「くるんと外側に渦を描くちょび髭を生やした」  メモにはいつの間にか絵が描かれている。  なんとなく、紳士のような……百戦錬磨の猛者のような姿見だ。  生徒たちは最後の特徴を聞いた。 「卵型の魔物です」 「イースターはもう過ぎ去ったよ!」  生徒の突っ込みに、はっはっは、と職員は笑う。 「以上が、ブルー・マリッジの外見的特徴になります。花嫁に対する精神的な攻撃が主攻撃で、物理的な攻撃力は皆無と言っていいでしょう。割ればいい目玉焼きになりそうですね」  朗らかに言うものの、職員の目は笑っていない。  苦笑いで返した生徒は、そっと目線を逸らした。 「現在確認されているブルー・マリッジは8体です。奴らは、この教会をねぐらにしているようです」  渡された地図をしっかりと確認していると、職員からそれから、と声がかかる。 「ブルー・マリッジについて重要なことをお伝えしますね。この魔物は、結婚式前の花嫁か、花嫁姿の者にしか目視できません」  うん? 生徒たちは首を傾げた。 「なら、どうやって……」  職員はにっこりと、無言のまま一着の服を取り出す。  白のフリルやレースで厚みを持った、ふわっふわでふりふりな、純白のドレス。  紛うことなき、ウエディングドレス。 「あの、これ……」 「全員分あります」 「いや、だから……」 「女性も男性もそうでない方も、全員着て行ってください」  渡された、もとい押し付けられたウエディングドレスを手に、困ったように顔を見合わせる生徒。  職員は笑っていない目で、ふふふふと笑った。 「検証のために私も着たんですよ……。まったく、人の幸せを祝えない魔物なんて、いなくなってしまえばいいのに」  魔法学園『フトゥールム・スクエア』学園窓口受付職員【ウケツ・ケ】。  彼は存外、根に持つ男だった。
440