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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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泡沫のJune bride 白兎 GM

ジャンル シリアス

タイプ マルチ

難易度 普通

報酬 多い

公開日 2020-06-19

予約期間 開始 2020-06-20 00:00
締切 2020-06-21 23:59

出発日 2020-06-29

完成予定 2020-07-09

参加人数 13 / 16
●Azalea  痛い、いたい、イタイ。  どうしてこんなことになったのだろうと。朦朧とする意識の中、思う。  今日はいつも通り、この場所に、薬草を摘みに来ていたのだ。私はしがない薬草売りで、それで生計を立てていたから。  けれど、この日。いつもの場所に、アイツがいたのだ。赤い目をした、狼のような、魔物が。  それで、私は。逃げようとして、でも、追いつかれてしまって。  ぐちゃぐちゃに、されて。痛くて、いたくて、堪らなくて。  泣いていたら、アイツは飽きたのか、何処かへ行ってしまって。  だから、今のうちに村に帰ろうと思っても、体が、ぜんぜん、動かなくて。  あぁ、私は。死んで、この世界に、還るんだと。  そんなことを、まるで他人事のように、思って。  なみだが、あふれて。  いやだ、嫌だ、イヤだ――死にたくない。  私には約束があるのだ。数か月後に、結婚の約束を、しているのだ。  幼い頃から憧れて、大好きだった、あのヒトと。  やっと、結ばれて。これから幸せな毎日を、贈る予定、だったのに。  どうしてこんなことになったの? 神様、どうして、私をこんな目に合わせるの?  どうして私は、あなたを置いて、消えてしまうの?  いやだ、イヤだ。  嫌だ、いやだ、イヤだ……! (消えたくない……っ!)  あなたに、会いたい。あなたに、愛していると、言いたい。  ずっと憧れだった花嫁衣裳を着て、あなたに、綺麗だと、笑われたい。  きっとあなたは、照れくさそうに言うんだろう。ぶっきらぼうに、でも、優しそうに。  いやだ。  嫌だ、イヤだ、いやだ嫌だイヤだ……っ! (わたしは、あなたと。生きて、いたい……っ!) ……… …… … 「あれ、わたし。……わたしは、だれ?」 ●Tatarian aster 「さて。今回の依頼について、なのですが……」 「私がリバイバルになった理由……失くしてしまった『何か』を、一緒に探し出して、欲しいのです」  六月のある日。雨を受けた紫陽花が、きらきらと涙を零す、その日。  『きみ』はある教室に来ていた。本日参加する予定の、課題の概要を聞くためだ。  教卓の前には、担当教官である【シトリ・イエライ】と、薄紅色の髪をした女性が立っている。  【アザレア】と名乗ったそのヒトは、リバイバルだった。体全体が薄らと透けている彼女は、穏やかな表情で、言葉を紡ぐ。 「それが原因で、私は消えてしまうかもしれないと、シトリ先生より聞き及んでおります。ですが、どうしても、私は思い出したいのです」  どうして? と誰かが言った。女はゆるりと、微笑んで、 「わかりません。ですが、今の私は、とても大切な『何か』を、失ってしまったように思うのです」  そして自分は、その『何か』のために。リバイバルとして、この世界に残ったような、気がして。  答える彼女に、『きみ』は尋ねる。思い出して、この世界から消えてしまっても、良いのかと。 「消えてしまうのは、怖い……と、思います」  ……ですが、私は。 「このまま、心にぽっかりとした穴が。空いたままでいることも、とても、辛いのです」  何か、なにか、とても大切なことを。どこかに置き去りにしているような、気がして。  呟く彼女は、哀しげに、瞳を伏せた。困惑、悲哀、そして、どうしようもない、喪失感。  様々な影を落とす彼女の隣で、シトリが声を発する。 「皆さんもご存知の通り、リバイバルは『死んだ瞬間の記憶や思い』を持つことは出来ません。思い出した瞬間、魂がその重みに耐えられず、崩壊してしまうからです」  命あるモノは皆、死を迎えた後。その体や魂ごと、光の粒子(魔力の残滓)へと姿を変え、この世界から消えてしまう。  ヒトによってはそれを『世界に還る』と言ったり、『次の輪廻への、準備に入った』と考えるようだが。  人間族の中では、極まれに。消滅を免れる――正確に言えば、消滅するよりも前に。『消えたくない』という思いが周囲の魔力をかき集め、自らへと補い、この世界に魂だけをの残した状態で存在してしまう――ことがあるのだという。  それが即ち、リバイバル……『魂霊族』と呼ばれる人達だ。  だからこそ、リバイバルは不安定な在り方をしていると言っても、過言ではない。  その体は普通の人間族とは違い、魔力で構成されているため、実体としては存在していないのだ。  ゆえに、思わぬ場面で。自分がどのように死んだのか。そしてその時、どのように、思っていたのか。  そういった、自分の死に纏わる強い想起に直面することで、突然消滅してしまうこともあるのだという。  まるで、ふわふわと浮いていたシャボン玉が、ふいに弾けて、消えてしまうように。 「それでも……私は、思い出したいのです」  アザレアは懇願した。『きみ』の顔を見て、迷いのない眼差しで、告げる。 「消えるまでの、束の間でも良いのです。どうか、私に、……わたし、に」  何を失ったのかもわからない女は、そのまま口を噤む。眉を顰める彼女は、精一杯に言葉を探しているようだった。  けれども彼女は、それきり何も言わずに、頭を下げた。  ――何を失ったのかも、わからないが、ゆえに。   ◆   アザレアが教室を出た後。  一人の男――フードを目深にかぶったその人は。壁にもたれる様な形で、ずっと室内にいたようだ――が教壇に立った。  そして、ゆっくりとした動作で、フードを脱ぐ。ドラゴニア特有の黒い角が、姿を現した。  シトリが口を開く。 「そして、彼が。今回の課題の、もう一人の、依頼主です」 「俺の名前は【紫苑】(しおん)、生前の彼女の婚約者で、恋人だ」  彼女とは、結婚の約束をしていてな。  続くその言葉に、『きみ』は、気付いてしまった。  あぁ、それが。アザレアがこの世に残した未練、消えたくないと願った、想いなのだろうと。  だから、そんな『きみ』を見て、紫苑は苦笑する。 「恐らく、君たちが想像した通りだと思う。彼女は数か月前、不遇にも魔物に襲われて、リバイバルになったようなのだが……」  紫苑が語るに、事は中々、複雑なようだった。  数か月前にリバイバルとなった彼女は、偶然通りがかった冒険者に保護され、彼女と紫苑が暮らしているのとは別の村で日々を過ごしていた。  しかし、彼女を必死に探していた紫苑が、彼女の居場所を見つけ、出会ったことで、歯車が回り始める。 「彼女は、俺に会って、今までの記憶を思い出し始めているようなのだ」  自分はアザレアという名前で。故郷の片田舎で、薬草を売って生計を立てていたこと。  家族には先立たれていて、既に天涯孤独の身の上であること。  けれど、とても大切で、大事な、『誰か』がいたこと。 「だが、その誰かが俺であることには気づいていないようだ。恐らく、リバイバルになった原因と、深く関わりがあるからだろう」  ゆえに、自分はアザレアには、それ以来会っていない。  けれど、アザレアは。全てを思い出したいと、最近、生まれの村に帰ってきたらしい。 「だから、手を貸して欲しい。俺は彼女に……消えて欲しくない。生きていれば、きっと、新しい思い出も、別の形の幸せも、手に入れられると思うから」  そのために、彼女にバレないように村を出る、手伝いをして欲しい。  男は頭を下げ、教室の中が静まり返る。  だから『きみ』は、何かを言おうとして、口を噤んだ。  ――自分の言葉が、行動が。選択が。二人の未来を、まるで違うものにしてしまう可能性に、気付いたからだ。
梅雨時のイタズラ妖精 夏樹 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-06-20

予約期間 開始 2020-06-21 00:00
締切 2020-06-22 23:59

出発日 2020-06-27

完成予定 2020-07-07

参加人数 5 / 8
 あなたは、学生寮『レイアーニ・ノホナ』の寮生である。  ある日、いつもの通りに登校しようと寮の玄関を一歩外に出た途端、物凄い勢いで顔が冷たくなった。  何かと思ったら、次々次々と飛びかかってくるのは『絵の具水』! 「な、なんだ!?」  途端に、響き渡るのは子どもの声。  遠目に、ローレライの子どもと、エリアルの子どもが走り去っていくのが分かった。  朝から全くの災難。一回は寮の部屋に戻り、着替えをし、汚れた衣服を洗濯し、登校した時間は遅刻寸前であった。  それから、無事になんとか学校の授業を終えて、寮の部屋に戻る。  夕方なので、干していた洗濯物を取り込もうとしたところ……。  朝に洗濯していった衣服は絵の具水でそれはもう大変な汚れようになっていた。  愕然とするあなたの前で、響き渡るのはやはりローレライの子どもとエリアルの子どもの声。 「いい加減にしろ!」  思わずそう怒鳴ってしまうあなたの隣の部屋から、ひょっこり、同じ寮生が顔を出してきた。 「……私もやられたんですよ。なんでしょうねえ、アレ……」  話を聞いてみると、このところ、ローレライの子どもの【ローラ】と、エリアルの子どもの【リル】が、一緒になって、レイアーニ・ノホナとその周辺の住民に、絵の具水をぶっかけるイタズラを行っていると言う。  お互いに話し合っているうちに、こうしていても仕方がないという結論に達し、あなたは隣の寮生とその知り合いとともに、フトゥールム・スクエアに掛け合ってみることにした。  その結果、ローラとリルを捕まえて、イタズラをやめさせるという『勇者活動』が組まれる事になったのである……。
カエル王女は美肌自慢 海太郎 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2020-06-19

予約期間 開始 2020-06-20 00:00
締切 2020-06-21 23:59

出発日 2020-06-26

完成予定 2020-07-06

参加人数 7 / 8
「諸君がだァい好きな『勇者活動』のお時間だぞ。乙女心満タンなカエルの女王がお待ちだ」  学園教師の【ジョー・ウォーカー】は、自分の受け持つ授業において、開口一番そう告げた。  事の起こりは、数日前にさかのぼる。  その日も、空はどこまでも晴れ渡っていた。  一点の曇りもなく、空気はすがすがしく乾いている。  本来なら雨が降ってもおかしくない時期なのに、だ。 「このままじゃ俺たち、干上がっちまう」  そんな訴えがとある地域から寄せられたのが数日前。  お気楽に見えても一応は学園長であるらしい。【メメ・メメル】もその異変には気付いていて、ジョーに視察を命じた。  その結果、地域一帯の雨天を司る『恵雨の秘石』が盗み出されていることが判明したという。  そこまでざっくりと概要を説明し、ジョーは深いため息をこぼした。 「てっきり盗賊か何かの仕業かと思ったんだがな。犯人はカエルの女王だったんだよ」  そう語る彼の眉間に、皺が寄る。 「しかも最近好きな男が出来たからスキンケアを根本から見直しただとか、そんな下らねェ理由で……」  途端、女子生徒から非難の声が浴びせられる。 「ひどーい」 「先生なんもわかってなーい!」  ジョーはチッと舌打ちした。 「やかましい!」  だが、一蹴されても生徒たちからの非難は終わらない。 「おとなしく、話を聞け」  と釘を刺し、ジョーは説明を再開した。 「今回の『勇者活動』は、カエルの女王から『恵雨の秘石』を取り戻してくるのが目的だ。説得だろうが、力ずくだろうがそこは問わねえ。恋愛相談に乗ってやるも良し、スキンケアしてやるも良し、恋に浮かれた横っ面をぶっ飛ばすも良し、だ」  質問は、と問われ、一人の生徒が手を上げる。 「カエルの女王って、美人でしたか?」  好奇心満々の問いかけに、ジョーはにやりと笑って見せた。 「おう。肌が緑色で目が黒目一色の、特徴的なキュートさあふれる美人だ」
赤土の園に咲き散る華 土斑猫 GM

ジャンル サスペンス

タイプ EX

難易度 とても難しい

報酬 多い

公開日 2020-06-14

予約期間 開始 2020-06-15 00:00
締切 2020-06-16 23:59

出発日 2020-06-25

完成予定 2020-07-05

参加人数 8 / 8
 皆が到着した時、『彼女』はたった一人でそこにいた。  頭に巻いた布と、身に纏った巫女服。彩る紋様は、地の文化。故郷の彩に身を飾り、捧げられた彼女。  生きているとは、思わなかった。誰も、思わなかった。  彼女は贄。荒ぶる神への供物。  だから、誰も間に合わないと知っていた。  だって。  彼女を捧げた村はもう、滅んでいるのだから。 ◆  学園に、応援の要請が入ったのは三日前の事だった。  東の遠方。小さな自治体。魔物と思わしき存在が出現。多数の民が襲われた模様。勇者の、助力を乞うと。 ◆  険しい山岳沿いにある、かの自治体。そのコミュニティの中に、より山奥。ポツンと離れた小村がある。古く長く、独特の習わしを持つ村。名義上、件の自治体の一部として名は連ねているけれど、実の所は村は独立状態。距離が離れている事もあり、自治体本体との交流は商業以外ほとんどなかった。  そんな村には、土着の信仰が一つ。一柱の荒神を祀る、奇妙な神事。盛大な祭りと共に、贄を捧げる風習もあったと言う。  けど、過去の話。時が流れ、代が変わり。信仰は、薄れていく。祭事は絶え、生贄の儀式も絶え。古の記憶に包まれた村は、ゆっくりと歩み出そうとしていた。  そんな、矢先――。 ◆ 「『八束(やつか)』様が、現れたのです」  渡された水を貪る様に飲んだ少女は、一息つくとそう言った。  ある夜。森の奥から現れた異形、四体。大きさは、2m程。掲げる形相は、大型猫と昆虫を合わせた様な醜悪。痩身を包むのは、黄土色の剛毛と虎の如き縞模様。何より奇異なるはその脚。身長の三倍ほどもある曲がった脚が、二本だけ。それを、曲輪の様に動かして。彼らは村に襲いかかった。 「その夜の内に、多くの者が裂かれ喰われました……」  涙を浮かべ、震える手で華奢な身体をかき抱く。 「八束様は、『土蜘蛛』様の先駆けです。言い伝え通りなら、八束様が現れた一週間後……明日の真夜中、でしょうか。八束様が狩った血が滲みた山の赤土を苗床に、土蜘蛛様は顕現します。長老様はお鎮めする為に、長年絶えていた贄の儀式を行うとおっしゃりました。私は適齢で、身寄りがありません。だから……」  彼女が、皆を見る。黒真珠の瞳が問う。  ――どうなったのか、と――。  立ち込める、重苦しい空気。察した少女が、目を伏せる。『そう、ですか……』と。  誰かが、尋ねた。何故、君は助かったのかと。 「分かりません……」  答えには、届かない。 「苦しまぬ様、神酒をいただいて。後は……」  苦悩する様に頭を抱え、乞う眼差しで皆を見る。 「あなた方は……学園の……勇者様なのですね……?」  伸びる手。近くにいた者の手を、掴む。 「お助けください……」  か細い、声。 「この地は、既に染まりました。明日の夜には、土蜘蛛様が顕現します。かの方は、荒神にして祟り神。命を枯らし、枯らし続けます……。村の守人30人も、使いである八束様にすら敵いませんでした! もう、あなた方にすがる他に術がありません!」  握った手に顔を寄せ、少女は祈る。 「私にも、幾ばくかの知識があります! 出来得る事を、致します! だから、どうか! どうか!」  見合せる顔。選択肢は、なかった。  ◆  少女は【チセ】と名乗った。  チセは、言う。  『土蜘蛛』は、遥か遠い日に異国より渡り来た妖しの神。進む道行で命を枯らしながらこの地に至ったソレは、惨劇の果てにかの国より追ってきた武人の手により討たれた。 「その時に使われた神刀、『髭切之太刀』がこの山の奥に奉納されています。それを使えれば、或いは……」  何故最初にそれを? との問いに、チセは首を振る。 「腕に覚えのある若人が10人、取りに行きました。けれど、一人も……」  話を聞く度に増える、犠牲者の数。満ちる重い空気を振り払う様に、チセは言う。 「場所は、私がご案内します。勇者の術を知るあなた方なら、きっと……」  あえかな希望にすがる様に、贄の少女は頭を下げた。  ◆  チセを守る様に固まって歩く事、しばし。隣を歩いていた者に、チセが声をかけた。 「私とあまり歳差がない方が、いらっしゃるのですね。勇者と言う方は、もっと年配の方々と思っていたのですが……」  まあ、皆が皆ではないけれど。苦笑すると、ジッと見つめてきた。  何? と尋ねると、オズオズと言い出す。 「……私も、なれるでしょうか?」  向ける眼差しには、強い羨望。 「私は、孤児です。村の方々に、育てていただきました。けれど、御恩に報いる術がありません。贄に選ばれた時、此度こそはと思ったのですが……」  抱く、不信。贄なんて、喜ぶ事ではない筈。確かな、歪み。彼女は、孤児。ひょっとしたら、そう思う様に教育を。 「……人の役に、立ちたいのです。生きる意味が、欲しいのです。あなた方に倣う事が出来るなら、もしかしたら……」  ――その『人』の中に、貴女はいるの――?  誰かの言葉に、チセは顔を上げる。  ――勇者は、『人』を幸せにしなきゃいけない――。  また、誰かが。  ――そして、自分もその『人』の中の一人じゃなきゃいけない――。  そして、誰かが。  ――じゃないと、きっと泣く人を増やしてしまうから――。  問う。  ――貴女は――。  その想いを、計る様に。  ――出来る――?  と。 「………」  ほんの少し。ほんの少しだけ、戸惑って。  頷いた。  ――なら――。  皆が、手を差し出す。  ――行こう――。  微笑みと、共に。  ――一緒に――。 「………!」  綻ぶ、華。  恥ずかしそうに伸びた手が、触れ合った。 ◆  荒々しい呼気と共に、鋭い牙がチセに襲いかかる。  遮る様に振るった武器に弾かれたソレが、悲鳴を上げて転がる。  憎しみの篭った唸り声を上げて起き上がったのは、白毛の狼。明らかな殺気を受けながら、チセが『シキテ……』と呟く。  曰く、『シキテ』は村で育てていたはぐれ狼。村の者には、決して牙を向けない子だったのにと。  と。  風が運んだ、匂い。土臭い、獣の匂い。向けた視線。今まで通ってきた、山道。そこを、追う様に登ってくる異形の影三つ。 「八束様……」  怯えた声で呟く、チセ。  目を凝らすと、大きな異形に従う様に歩く人影も幾つか。 「……髭切を探しに出た方々です……。八束様は、糸を絡めて生き物を繰ります。恐らくは、手駒に……」  続けて、言う。 「八束様の数が少ない……。もう、『巣』も……」  土蜘蛛は、八束の一体が何かしらの生き物に憑いて『巣』に変性。それに残りの八束が同化する事で、顕現を果たす。 「誰が……」  見分ける術は、ない。  振り払う様に、チセは言う。 「行きましょう。髭切があれば、きっと……」  歩き出す、一行。末尾の者が、後ろを見る。  少しの距離を置いて、ついてくるシキテ。そのさらに後方に、異形の群れ。 (速い……)  程なく、追い付かれるだろう。そうなれば……。  武器を握る手が、汗で滑る。  皆、同じ。  思いも。  覚悟も。  希望を目指し、ただ進む。  鉄錆の香に染まった、赤土の園。  死の気配が、追って来る。
あの夜に咲く物語 じょーしゃ GM

ジャンル ハートフル

タイプ EX

難易度 とても簡単

報酬 通常

公開日 2020-06-20

予約期間 開始 2020-06-21 00:00
締切 2020-06-22 23:59

出発日 2020-07-01

完成予定 2020-07-11

参加人数 8 / 8
 春が終わる。  誰にも見せられない記憶を連れて。  また今年も、春が終わる。  独り歩く夜の広場は少し暑くて。  そのはずなのに、なぜか少し寒いような気がして。  雨は降らない。  雲ひとつない空に、星だけが輝いている。  君は何を思い出しているだろうか。  かつて故郷で仲間と過ごした、騒がしい夜のこと。  温かいスープを飲みながら家族と過ごした、優しい夜のこと。  独り読書にふけって過ごした、静かな夜のこと。  君は何を思い出しているだろうか。  仲間と争い、別れ、孤独に泣いた夜か。  家族を恨み、恨まれ、部屋に閉じこもった夜か。  独りこの世を憂い、憎み、絶望に浸った夜か。  誰も君を見つけることはできない。  夜の闇に溶けるような。  ふと吹いた風に飛ばされて消えていくような。  そんな心の火を僅かに灯して、君は歩く。  魔法学園フトゥールム・スクエア。  様々な価値観を持った者同士が集い、その人生を謳歌する場所。  君の全てが受け入れられ、その個性が輝く場所。  生きるという自由を、本当の意味で叶えられる場所。  それでは君が過ごしていた過去は?  その価値観は、誰かを揺るがしていただろうか。  その個性は、誰かに受け入れられていただろうか。  その自由は、君だけのものだっただろうか。  誰も君を止めることはできない。  夜の闇に差す光を求めるような。  一本のか細い糸を手繰り寄せてたどり着くような。  そんな奇跡の積み重ねの上に、君は独り立ち尽くす。  暑くて、寒い。  そんな夜に。  君は、何を思う?
甘くて辛いハニーコーム 正木 猫弥 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 多い

公開日 2020-06-15

予約期間 開始 2020-06-16 00:00
締切 2020-06-17 23:59

出発日 2020-06-23

完成予定 2020-07-03

参加人数 8 / 8
 名峰『アルマレス山』の麓には、八色の街『トロメイア』以外にも小規模な集落が散らばっている。  人口三十人ほどの小さな村、『ハニーコーム』もその内の一つ。  周囲はうっそうとした森と、耕作には適さない平野に囲まれていて、どこか浮世離れした雰囲気が漂う集落である。  そんなハニーコームの村から、『フトゥールム・スクエア』に向けてゴブリン退治の依頼が出されてから数日の後のこと。 「――おい、あんたら。もしかしてハニーコームに行くつもりか?」 目的地に向けて、山道を歩く学生たち。そんな彼らに話しかけたのは、ハニーコームの隣村に住む森の木こりであった。 「そうか、ゴブリンを退治しに。そりゃあご愁傷様……おっと、いけねえ」  思わず口を滑らせた木こりの男を、学生たちは怪訝な表情で見つめた。  フトゥールム・スクエアに寄せられた今回の依頼に、特に不審な点は見られない。強いて言えば、退治するゴブリンの数の割に、報酬がかなり多いことだろうか。  聞けばハニーコームの村人は全員養蜂を行っていて、彼らの作り出すハチミツは世の美食家や菓子職人にとっては垂涎の的であるらしい。  彼らの収入は近隣の村々に比べてかなり多く、報酬の高さはそれが理由と思われる。  至れり尽くせりに見せるこの依頼の、どこに問題があるというのだろうか。 「……いや、ハニーコームのことを悪く言うつもりはねえよ。気のいい連中で、俺もあの村の宴会に参加したことがあるしな。だけどよ」  木こりの顔が、心なしか青ざめたように見える。 「ケーキに入れたり、肉を軟らかくするために使うってのはまだ分かる。でも『ハチミツかけごはん』とか『ハチミツのハチミツ割り』ってのは何なんだ⁉ うう、思い出したら気分が……」  首を振って悪夢を振り払った木こりの視線には、学生たちに対する『同情』の成分がたっぷりと含まれていた。 「ま、ハチミツの質が良いってことは間違いないんだ。覚悟を決めるこったな」  その村は、甘党にとっての楽園。しかし、そうでない者には――?  木こりを見送った学生たちは、再びハニーコームへ向かう山道を歩き始めた。
自称歌姫の苦悩 夏樹 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-06-09

予約期間 開始 2020-06-10 00:00
締切 2020-06-11 23:59

出発日 2020-06-18

完成予定 2020-06-28

参加人数 4 / 8
 ……アルチェのサビア・ビーチにセインディーネが出た……。  そんな『勇者活動』が、フルゥールム・スクエアにて行われる事になった。  担当の係が概要を、学生達に説明している。 「サビア・ビーチは観光向けの一般ビーチなのだが、毎晩夕暮れになると、セインディーネが1体と、ウィルオー2体が現れるらしい。ウィルオーは鬼火や人魂のような類でウロチョロする以外は無害だが、幻惑を使い不運のステータス異常をもたらすことがある。セインディーネは歌声で水を操り、人肉を好む見た目は美女の魔物だ。当然、人肉を狙って全力攻撃を行うので気をつけてほしい。いずれ、アルチェのミルトニア家が苦慮しているようでな。何しろ、観光業で持っている国だから、梅雨の時期にセインディーネが出てしまったのは夏に大変な被害を予測されるため、早めに退治して欲しいということだ。報酬はそこそこだが、帰りに、観光地区で羽根を伸ばすぐらいは大目に見てもよい。学生達自身のためにも頑張ってほしい」  ……そういう事が予測されるのだった。 「ちなみにこのセインディーネは、どういう訳か、物凄い音痴でな。美しい歌声というのは本人談なので、惹きつけがきくとはあんまり考えられないのだ」  そこで担当がそう言った。 「その、物凄い音痴を矯正してやれば、人肉を喰わせなくても、多少は大人しくして海に帰る……かもしれない」
芸術クラブ放置施設――集え善意と金と物 K GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-06-11

予約期間 開始 2020-06-12 00:00
締切 2020-06-13 23:59

出発日 2020-06-20

完成予定 2020-06-30

参加人数 8 / 8
●許可いただきました  見た目は少女、心は少女、しかして年齢不詳な学園長【メメ・メメル】は、スモウレスラー的外観のドラゴニア老教師【ドリャエモン】に聞き返した。 「ちゃりてぃーおーくしょん?」 「うむ。放置されていた美術クラブ施設を保護施設にリフォームする、というプロジェクトが現在進行形だったろう」 「……そーいや、そーいう話もどっかであったよーに聞くな♪」 「そこに置かれたままになっていた美術クラブOBの作品を売却し、収益を保護施設運営資金として活用したい。そのためのチャリティーオークションを開催したいと、生徒らが申し立てたのだ」 「おー、それはなかなか面白そうだな♪ メメタンもちっくら参加したーい☆ あのほら、なんてーの、壇上でハンマーをカンカンする進行役……オークショニアっていうの? 『三百万から始めます』とか『一億に決まりました』とかやるアレ! アレやりたいアレー! ねーねーやらせてやらせておじいちゃーん☆」  目をきらつかせのたまう学園長。  しかしドリャエモンはスルーする。 「そのために、第一校舎の講堂を使わせて欲しいということで」 「ガン無視かーい! あーそーですかいそーですかい! どーせオレサマは愛されない人間だよコンチクショー!」  あからさまにすねくる学園長。  しかしドリャエモンはスルーする。 「許可をいただきたいのだが、かまわぬかな?」 「そりゃもち、かまわんぞ☆ んで、ドリャちゃんも参加しちゃう感じか?」 「いや、わしはオークションには参加せん。同日、保護施設でバザーのイベントもやるそうだから、そっちに出ようかと思うてな」 ●何かと募集しております  フトゥールム・スクエア魔法学園。グリフォン便乗り場。  グリフォン待ちの生徒達が時刻表横に貼り出されている告知を、興味深げに眺めている。  それによれば近日、学園内のなにがし山に、保護施設――何らかの形で事件に巻き込まれ保護を必要とする者をかくまう場所――が開設されるらしい。そのためのチャリティーイベントとして、バザー、そしてオークションが開催されるのだそうな。  バザーの開催場所は、なにがし山の保護施設敷地。希望者は誰でも手作りのお菓子や雑貨等を会場に持ってきて、売ることが出来る。  売上の半分は保護施設への寄付として天引き。残り半分は自分の手取り。 「あ、売上げ手元に残るんだ。じゃあ出てみようかな、バイト代わりに。クッキーとかマドレーヌとか、簡単なお菓子なら作れるし」 「なら、僕はレースでコースター編もうかな」 「じゃあおいら、雑巾縫う。消耗品だから需要あると思うし」 「わたしは、どうしよう……授業で作った茶碗とか持ってこようかな」  オークションの開催場所は、第一校舎の某講堂。  売りに出されるのは芸術クラブOBたちの作品。どれも現在芸術家として名を馳せている人の物だとか。 「故人の作品も出されるらしいよ。これまでにまだ確認されていなかった、新発見のものなんだって。正式な鑑定人のお墨付きだってさ」 「資産家とかコレクターとか来るみたいなの。すごい値がつくんじゃない?」 「わ、面白そー。ちょっと見に行ってみようかな」 「入れるの?」 「見るだけは出来るみたいだよ。正式参加はお金がいるみたいだけど」  なお直接イベントには関係ないが、保護施設は物品の寄付も受け付けている。  求められるのは生活物資。施設では対象者の短期、または長期滞在が想定されているので。  あまり痛みがひどい物は別だが、そうでない限りは、中古品でも大歓迎。 「そういえば、買ったけど結局あんまり着なかった服ある」 「兄さんの結婚式のときもらった、引き出物のでっかいお皿があるんだけど……そういうのも大丈夫かな」 「子供用の鉛筆とかノートとかどうなんだろ。未使用のが結構余ってるのよね」 ●盛り上がっていきましょう 「本物ということで間違いない?」  豚耳のぽちゃぽちゃルネサンス男子【アマル・カネグラ】の質問に、オーダーメイドのスーツを着込んだ青年【ルサールカ】が、にやっと口元を緩ませた――青い目に青い髪。整った上品な顔立ちの、いかにもローレライらしいローレライだ。 「ええ、アマル坊ちゃん。間違いなく本物です。大発見ですよ。一体どこで見つけてきました?」 「学園の美術クラブ関連施設だよ。リフォーム中に見つけたんだ」 「それはそれは、なかなか興味深い話ですね。私も一度、そこに足を運んでみたいものです」  ルサールカは美術品への熱い情熱と一級の鑑定眼を持つ美術商。  兼詐欺師。  手元に本物を温存しておきたいがために贋作を売り付けたり、逆に本物を贋作と言いくるめ二束三文で入手したり、旧家、貴族の娘たちをたぶらかし、代々伝わる骨董品を持ち出させたり。  そんなこんなが積み重なってとうとう逮捕。裁判。服役。  普通ならとうの昔に社会的生命が終了していそうなものだが、出所後カネグラ家に専属の美術商として雇い入れてもらったおかげで、快適なる生活環境を得ている次第。  とはいえ手取りの給料はほとんど、ない。  実はたぶらかした娘たちの1人に子供が出来てしまっているのだ。その養育費としてほぼ全額を送金しているのだ。  ちなみに送金は自発的なものではない。強制的なものである。その娘自身はエリアルなのだが、父親はめたくそにおっかないドラゴニアなのだ。仕送りが滞ろうものなら速やかに火山帯から飛んできて、彼を物理的に蒸発させてしまうことだろう。 「これは高く売れますよ。まさに、今回のオークションの目玉となりましょう。最低価格は坊ちゃんのお決めなさった、百万Gからいきますか」 「どのくらい値を上げられるかなあ」 「さあ、そこはオークショニアの腕の見せ所ですね。後はサクラの皆様の。それはそれとしまして、バザーの売り上げの寄付率を半分にするというのは、坊ちゃまの案ですね?」 「うん。そうしたほうが参加しようかなっていう人、増えると思うから。違うかな?」 「いいえ、違いませんとも。欲と二人連れでなければ、人間なかなか動かないものですからね」
【体験】Keep On Runnin’ 桂木京介 GM

ジャンル 冒険

タイプ マルチ

難易度 普通

報酬 少し

公開日 2020-06-12

予約期間 開始 2020-06-13 00:00
締切 2020-06-14 23:59

出発日 2020-06-22

完成予定 2020-07-17

参加人数 15 / 16
 まだ眠たげな太陽が、ぐずぐずと頭の先を見せはじめていた。  夜の黒はグレーに、ついで群青色から淡いブルーへ、いちいちもったいぶるみたいにじわじわと変化していく。  大地に突き立てた剣、その柄に両手を重ね、白いマントの騎士が立っている。  全身白銀の甲冑だ。ブーツも、ガントレットも、ヘルメットにいたるまで。バイザーとマスクに覆われた顔はうかがうことができない。  一瞬、置物かと疑ってしまうほど微動だにせず、教師【ネビュラロン・アーミット】が待っていたのだった。 「よく来た」  背に旭日を浴び、ネビュラロンは静かに告げた。  まるで張りつめた弦、その凜然たる響きに生徒たちは思わず居住まいをただす。  どちらかといえば小柄な女性教師なのに、ネビュラロンの放つ威圧感たるやすさまじい。抜き身の剣を喉元に突きつけられているように感じた者もいたことだろう。 「本日の授業の目的、それは体力作りである」  来た――目配せしあう生徒たちがいた。数日前から告知されていたのだ。まさかとかマジかとか言いたい。  これから暑くなるというのに、よりによって……! 「先日予告したはずだな。体力作りとして、『マ』ではじまり『ン』で終わるハードなジッセン授業を行うと」  ここで出た『ジッセン』はネビュラロンがよく用いる表現だ。『実践』と考えるのが常道だろう。新入生だったらきっとそう考える。  しかし在校生ならこう考える。『実戦』だと。毎回とんでもない授業を行ってきたネビュラロンだからありえる話だ。  それにしても、『マ』ではじまり『ン』で終わるハードな訓練とは――。そんなの『マラソン』以外思いつかないじゃないか! 「あ……『マンドリン』とか?」 「マンドリンか、マンドリンはハードだよなー」  と小粋な会話を交わした生徒たちがいるが、ネビュラロンにはまるきり無視された。 「フルマラソンの距離を走破してもらう。だがジッセンだからな、ただ走るだけではない」  早々に『マラソン』と言っているあたり全然隠す気はないらしい。かく告げてネビュラロンは振り返った。 「では……キタザト先生」 「はい~」  すると草葉の陰からよろよろと、やはり教師の【イアン・キタザト】がまろび出たのである。  彼は小柄な童顔の教師で、しばしば生徒と間違われるルックスである。  といっても、それは通常時であればの話だ。  なぜならこのときキタザトは、ネビュラロンそっくりの鎧とヘルメットを着込んでいたからだ。ヘルメットの顔は開いており、肩から手、膝から下の装甲はない。それでもネビュラロンによく似ている。 「どうですか先生、着心地は」 「まったく良くないよう……」  イアンは半泣きである。 「走れそうですか」 「これすごい重いんだもんこんなの無理……いや、まあ関節だけはよく動くんで移動はできるけど……」 「申し訳ない、キタザト先生、こんな扮装までしていただいて」  言葉こそ丁寧だが、ネビュラロンの口調は氷のように冷ややかである。  は、は、は、と乾いた声でキタザトは笑った。 「いやあ、ネビュラロン先生のためなら、たとえ火の中水の中、ですよう」  などと言っているがこちらも、まったくもって声に気持ちがこもっていないのは丸わかりだ。どうも『言わされている』印象である。  さて、とネビュラロンは生徒たちのほうに向き直った。 「一人一着用意している」  何を? などと野暮を言う生徒はいない。 「コースも三つ用意した」  コースって? と生徒の気持ちを代弁するようにキタザトが言った。 「山、川、森」  ということらしい。  山は、急勾配を登っていく道のりだ。登りと下りを繰り返す構造であり、登攀(はん)路はこの世のものとも思えぬほど苦しい。ただし下りになればかなり楽だということだ。  川は容易に想像がつくだろう。急流や滝、ゆるやかな小川などが交互に現れる水辺の道だ。川に入って進むことも可能だが足元がおぼつかない。ただし涼しいことは間違いないだろう。  そして森、これは鬱蒼と茂る木々を抜けながら走るコースということになる。体力回復する果実も得られたりするが、木々が邪魔である上に倒木なども進路を妨害する。 「おのおの好きなコースを選ぶといい。せっかくなのでコースごとにチームとなり、対抗戦をするものとしよう。最初にゴールにたどりついたチームには栄誉が与えられる。ただし、同じチームの全員が走破できたときだけだ」  迷惑なことに各コースには敵も生息するらしい。  山にはアーラブル、突進攻撃を主とする猛牛のような野生の獣が出る。バイソンをずっと大きく凶暴にした動物を想像するといいだろう。直線攻撃しかしてこないが、その突進力はすさまじい。  川にはアスピレイトランプレイの生息地がある。ヤツメウナギに似ているがずっと大きな怪物で、体にからみつき精気を吸い取ってくる。妙にいやらしい絡み方をしがちだそうだが……幸か不幸か鎧が役立つだろう。  森は怪異の巣窟だ。餓鬼、ケットシー、リザードマンなど、そこまで強力ではないが数が厄介なモンスターが次々と襲ってくる。多少知能がはたらくモンスターなら、罠をしかけてくるかもしれない。 「それってマラソンなのかなぁ……クロスカントリーとかトライアスロンに近いような気も……」  キタザトの疑念ももっともであろう。 「困難ばかりではない。各コース途中にいずれも一人、諸君の訓練を助ける助っ人が待っている」  頼もしいことだ。お助けキャラがいるということなのだから。  山コースには教師【コルネ・ワルフルド】が待っている。近道のヒントをくれたり、栄養ドリンクを出してくれたり、傷ついた生徒には簡易の治療をほどこしてくれるという話だ。きっと助けになるだろう。  川コースでは学園長【メメ・メメル】が遊んでいる。メメルは自分本位で気まぐれなため、役に立ってくれるかどうかはわからない。むしろイタズラを仕掛けてくるかもしれない。お助けキャラの定義とは一体……。  森コースにいるのは用務員【ラビーリャ・シェムエリヤ】だ。何をすれば助けになるのか彼女はいまいち理解していないようだが、うまく意思が通じれば近道や安全なルートを教えてくれるかもしれない。 「いずれのお助け役にも、あのルール……えっと、なんでしたっけ先生?」 「『マ』ではじまり『ン』で終わる言葉、そのキーワードにあてはまる援助に応じてもらえるよう頼んでいる」  まさかここでまたこのキーワードが出るとは! 「糖分補給に『マカロン』を出してとか頼むとか……いやいや、『マイルストーン』(道標)を示してほしいと頼むとか……うーん」  キタザトは腕を組んで考え込んでいる様子だ。こうして見ると、ネビュラロン風鎧を着込んでいても、それなりに動けるということはわかる。  ざわめく生徒たちをよそに、ネビュラロンはやはり静かに問いかける。 「コースは選んだか。ぐずぐずしていると陽が高くなる。その分道中は厳しくなるぞ」  こうしてはいられない! 急いでコースを選び、山または川ないし森、同じチームの仲間と力を合わせて他のチームより先に栄光を目指すのだ! ……あんなアーマーとヘルムを着込んだ上で。  走れ! 走り続けろ! Keep On Runnin’ だ!
いーものあるよ 瀧音 静 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-06-09

予約期間 開始 2020-06-10 00:00
締切 2020-06-11 23:59

出発日 2020-06-17

完成予定 2020-06-27

参加人数 8 / 8
 学園『フトゥールム・スクエア』からそう遠く離れていない、のどかな村。  その村は今、ちょっとした窮地に陥っていた。  その村の稼ぎの大部分は農業品。その農業品が、どういうわけか売れないのだ。  今までこんなことはなかったはずなのに、てんで売れない。  いよいよと追い詰められた村人たちは、近くで行われるお祭りへと出店を決めた。 * 「らっしゃいらっしゃい!! ポテトフライはいかがですか!!」 「じゃがバターもありますよ!! ご一緒にフライドポテトはいかがですか!?」 「ハリケーンポテトはどうだい!!? ポテトチップスもありますよ!!」  活気よくかけられる声は全て芋。  ――そう、あの村は大量のポテトを抱えて立ち往生していたのだ。  ならば祭りで売ってしまおうと考えた村人たちは……だが。  いかに祭りで財布のひもが緩んでいるとはいえ、代わり映えしないジャガイモ料理には食指は動かないというもの。 「ポテトチップスと一緒にマッシュシェイクはいかがですか!!?」  挙句の果てには、何をとち狂ったかマッシュしたじゃがいもを入れたシェイク、マッシュシェイクなるものまで売り始めている始末。  物珍しさでいくつかは売れたが、残念ながら例年の売り上げにはまるで届かず。  いよいよ恐怖を感じた村人は、学園を頼ることにした。  手段は問わない。大量にありまくるジャガイモを売りさばいてくれ、と。
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