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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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【体験】メメ・メメル誘拐じけ……んん? 機百 GM

ジャンル イベント

タイプ マルチ

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2020-11-13

予約期間 開始 2020-11-14 00:00
締切 2020-11-15 23:59

出発日 2020-11-24

完成予定 2020-12-21

参加人数 13 / 16
●???  ある日の学園長室にて。  そこではあどけない容姿をした銀髪の小柄な少女が執務を執り行っていた。  彼女の名は【メメ・メメル】。見た目こそ女の子だが何を隠そう、この学園の学園長を務める才媛である。 「んー……今日も穏やかでいいのだが、少し退屈だな」  そんなことを言って、メメルがゆったりと背もたれに身を逸らし、うんと背筋を伸ばしたその時だった。 「それじゃァ、少し遊んでみるか?」 「およ?」 ●そいつはやってきてしまった  それは、少しばかり肌寒さを感じてきたある日の事だった。  その教室では新入生の歓迎を終えたばかりだった。志を持って学園に入った新入生と、少しばかり先輩になった生徒達が交流していたが、日も沈む時刻となってそろそろ解散しようと思っていた。  その時だ。  何事にもそれなりに前触れというものはあるものだが、それは唐突にやってきたのである。 「大変だよ! 学園長が『メモワール・ド・コスプレ』という怪人にさらわれちゃった!!」  ……えっ?  ちょっと何を言っているか分からない。  飛び込むように教室に入ってきた【コルネ・ワルフルド】は肩で息をしながらそれを伝えに来た。気さくで優しく、またよく新入生のお世話をしてくれる、素敵な狼のルネサンスの先生である。そんなコルネの狼狽え方は尋常ではなかった。  だがちょっと待て。どうか落ち着いてもう一度言ってほしい。 「だから、学園長がメモワール・ド・コスプレにさらわれたんだって!」  ……。  彼女は何を言っているのだろうか。学園長がさらわれるなど……いや、過去にそんな話があったような、そうでもないような? どっちにしろその時はそんな大した話ではなかった筈だ。  それに『メモワール・ド・コスプレ』とは何だ。  聞いた話では確か怪傑を自称する、よく変な格好をして現れるおかしな先輩がそんなのではなかったか? 「あれは【ミロワール・ド・スクレ】で、出たのはメモワール・ド・コスプレだって! こっちもあまり詳しい事情は知らないんだけど、えっと、学園長室にそういう内容の置手紙があって、実際に変な格好をした怪人に小脇に抱えられる学園長を見たっていう教師がいたの!」  何かしら奇妙な格好をした人物の小脇に抱えられる学園長を想像してみる。うん、実にシュールな光景だ。  だがそれはつまり、学園長でも手も足も出せない相手という事なのだろうか? いや、流石にそれはにわかには想像しがたい。何か逃げ出せない理由があるのだろうか?  また、そのような存在が、学園長をさらった理由とは何なのだろうか? 「置手紙には、こう書いてあったんだよ」 『学園長は私、メモワール・ド・コスプレが誘拐した。ふふふ、生徒たち諸君の驚く顔が目に浮かぶようだ。だが、私が求めるのは学園長ではない。この学園のどこかにあるとされるヨ・スデソ・ウ水晶を持ってくるがいい。さすれば学園長を返してやろう。はっはっはっ、楽しみにしているぞ!』  なんとツッコミどころだらけの文面だろうか。笑い声なんて紙に書かないだろうに。少々うんざりしそうだが、とりあえずこの怪人の目的は分かった。  然し、コルネは怪訝とした様子で首を傾げながらこんなことを言った。 「けど、ヨ・スデソ・ウ水晶なんてもの、アタシも初めて聞く代物で……初めから悪党に渡すものなんてないけど、知らないものは渡しようがないんだよね……」  無論、自分達もそんなものは聞いたことがない。コルネが知らないとなると、教師たちでも一部しか知らないような貴重品なのだろうか?  すると、ここで新たな小さい人影が教室に入ってきた。見た目はとても幼い少女で学生の一人のようだが、実際には薬学の先生をしている【パールラミタ・クルパー】だった。 「はーい聞いて聞いてーボクが説明するんだねー。その水晶はー学園の敷地内にある『初心者の遺跡』にーあるんだよー」  パールラミタの発言に、コルネも思わず目を丸くした。確かに何故、パールラミタが例の水晶の事を知っているのだろうか? 「そうだねー『初心者の遺跡』はー主に僕も管理している施設でー、なんて言うかなー物置というか倉庫みたいな風にも使っててーそこにヨ・スデソ・ウ水晶がー保管されているんだよー。でもー今は閉鎖してるからーボクも一緒に行って開けるんだねー」  それを取りに行けば、怪人と接触することができそうだ。それにパールラミタがついてくるなら、遺跡の中でも他でも頼りにして良さそうだ。  だが、学園長がさらわれるという非常事態だ。これは本当に自分達に手に負える事態なのだろうか? 経験を積んだ上級生や先生達に任せればいいのではないか?  するとコルネ先生は首を真横に振りながら答えた。 「それが、メモワール・ド・コスプレは正体不明の多くの配下を従えてて、学園長を助けに行こうとした上級生たちやアタシ達教師はその配下の迎撃に追われていて、助けに行けないんだよ! だから……その、いざって時に頼りにならなくてごめん! だからお願い、みんなで学園長を助けて!」  事態は思った以上に深刻なようだった。まさかコルネ先生を始めとする学園の教師まで動員する事態になっているとは。  だが、ここで狼狽えているだけでいいのだろうか? ここで自分たちが必要とされているなら、将来の勇者として助けに行くべきではないだろうか。  無論諦めて傍観していてもいいが、さて、どうする? ●その一方  夜の第一校舎『フトゥールム・パレス』の広場は、沢山の生徒がクラスやコースの垣根を越えて談笑・交流する憩いの空間である。  つい先ほどまでは生徒達で談笑する平和な空間だった。だが今は、怪人の配下が唐突に現れたことで、事態は混迷を極めていた。  逃げ惑う大勢の生徒、武器を持って侵入者を迎え撃つ少数の生徒の喧噪だけがこの広場を支配していた。 「……」  その刹那、広大な広場の一角で無数の銀の閃きが奔った。血潮を噴き出すことなく、悪しきものだけを貫く正義の一閃が、奇妙な格好をしている怪人の配下を容赦なく貫いていった。  その剣筋の主は激怒していた。それはもう、顔を仮面で隠しているにもかかわらず、近くにいる他の生徒を怯ませるほどに。 「あ……あの、幾らベタな真似をされたからって……」  大剣を携えた生徒が震えた声で、『彼女』に話しかける。  だが、 「真似って、あんなふざけた女とあたしとが、どこがどう似ているのか、詳しく説明してくれる?」  そう言って、倒したばかりの適当な配下をヒールでぐりぐりと踏みつけながら彼女は言った。そんな彼女の黒いツインテールが隙間風にゆらりとそよぐ。  溢れんばかりの怒気に大剣の生徒は怯み、下手な事を言えないまま沈黙してしまった。どうやら彼女の怒りの矛先は、怪人の配下とは別に向いているようだ。  誰もが取り付く島がないと思っていたその時、窓の外から明らかに場違いな嬌声が聞こえてきた。 『くははははっ、学園長はここだぞ諸君!!』 『キャーイヤーダメーたーすけてー☆』  片方はここにいる生徒達には聞きなれた声で、そして少なくとももう片方は、おそらく学園の誰もが知っている銀髪の少女の声なのだが、誰もが聞かないふりをした。生徒と教師だけでなく、何故か侵入者たる配下すらも諦観の面持ちになっていた。 「……ちょっとぶちコロがすくらいで済ませられるかしらね?」  その一方でツインテールの彼女は、声が聞こえてきた方向の窓の手すりを握りしめ、深くひびを入れながら独り言ちた。
毛糸に想いを込めて、あなたと ことね桃 GM

ジャンル ハートフル

タイプ マルチ

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-12-02

予約期間 開始 2020-12-03 00:00
締切 2020-12-04 23:59

出発日 2020-12-10

完成予定 2020-12-20

参加人数 6 / 16
●その毛糸は誰のために? 「……んしょ……よいしょっと」  大きな木箱が学園の廊下を左右に行ったり来たり。  幽霊少女の【メルティ・リリン】が珍しく大きな箱を抱えて学園寮に向かっている。  そこに丁度居合わせたのは女教師の【ペトラ・バラクラヴァ】。  彼女はメルティの抱える箱をひょい、と持ち上げると『思ったより軽いな。こいつはどうした』と問うた。 「あの……それは毛糸の箱です。そろそろ本格的に寒くなりますし、それに12月の行事でも靴下とか……必要とされる子供達もいるのではと思って。先生にご迷惑をおかけするわけにはいきませんので、これぐらいは自分で……」 「いいっていいって。どうせ寮まで大した距離はねえんだ。それにしても年末に向けて編み物で奉仕活動ってわけか。真面目な優等生だねェ」  ペトラはそう茶化すように言いながらもメルティの歩調にあわせて寮へ向かう。  彼女は授業がいかにスパルタ方式であろうとも学生のプライベートに関しては意外と親切なのだ。  事実、ペトラは砕けた口調でメルティの活動に関心を示す。 「毛糸っつーとあれか、靴下以外にも色々作んのか?」 「はい。帽子や手袋にマフラー。時間がある時は毛糸のパンツやベストを作ることもあります」 「へー、アタシゃあんな細かい作業耐えらんないね。木の棒とか鉤付きの棒でちくちくやるんだろ?」 「でも良い毛糸で作ったものは何年も使えますから……」  メルティはそう言うと箱から毛糸を一玉取り出した。 「トルミンのように身体を温められる場所があるのならともかく、グラヌーゼのように冷えやすい地域では体を壊される方も少なくないでしょう。そういう場所でもし長く愛用されるのならきっとこの子達も幸せだと思います」 「ふぅん。でもこの量は消化しきれんのか? ぶっちゃけひとりでやるには無理だろ」 「ふふ、大物を作るとあっという間になくなってしまうのですよ。赤ちゃんのお帽子や靴下ぐらいならほんの数玉で十分ですけれど、羽織物だと時折足りなくなってしまうこともあるのです」  そんな会話を重ねていくうちに――メルティの私室に到着。デスク脇に木箱をどかんと置くとペトラはふう、と息を吐いた。 「……にしても、お前って今年からやっと課題を始めたばかりだろ。授業での成績は悪かねえが、課題はきっちりこなさねえと色々間に合わなくなるんじゃねえか?」 「それはまぁ……でも私、リバイバルですから! 体がない分、気合で乗り切ります!」 「いや、それは駄目だろ……リバイバルだって精魂尽きりゃ消失するんだからよ。ま、今年はある程度割り切って時間を使えよ。でないとぶっ倒れちまっても仕方ねえんだからな」  ペトラはそう言って退室、扉を閉めたところで肩を竦めた。 (メルティか……ああ見えて頑固だからなぁ。こうなったら仲間に声をかけてみるか)  大きな角をポリポリ掻いてペトラは課題案内板のもとへ行く。  ボランティア活動兼編み物の手習いなら学生達も気軽に参加できるだろうし、完成品を寒冷地に贈れば学園の知名度も上がり頼りにしてくれる地域も増えるかもしれないと。 ●ペトラ先生の課題内容  案内板の前でどーんと仁王立ちするペトラの前に無理矢理集められた学生達は明らかに怯えていた。  何しろ鬼の如き厳しい授業で名の知れた彼女のこと。  きっと格の高い魔物相手に軽装で突撃してこいとか、冬山の難関ルートを時間制限付きで攻略してこいというような難題を突き付けてくると思っていたのだ。  しかし彼女は言う。 「あー、今回の課題は『編み物』だ。年末の奉仕活動だと思って、靴下とか防寒具とか作ってこい。これも寒冷地で向かう際には必要な経験になるかもしれないからな」  ――不器用だが、要は毛糸を有効活用して世の中に役に立つようにと。  そのほんわかした内容に学生達は思わず目を丸くする。  もしかしたら明日あたり槍が空から降ってくるのではと逆に不安になる学生がいたぐらいに。  そこで毛糸の扱いを知らぬ学生が手を挙げた 「あの、自分は編み物をしたことがないのですが……教えてくれる先生がいるのでしょうか」  するとペトラはにっと笑った。 「ああ、その点は大丈夫だ。この学園には編み物に気合の入った奴がいるからな。そいつに聞きゃあどうにかなんだろ」  この点のいい加減さにおいてはやはりいつも通りだが――こうして学生達はメルティとともに編み物に興じることになるのだった。
夏の夜空に歌を響かせ 海太郎 GM

ジャンル 冒険

タイプ EX

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-08-02

予約期間 開始 2020-08-03 00:00
締切 2020-08-04 23:59

出発日 2020-08-09

完成予定 2020-08-19

参加人数 8 / 8
●Scat Catsを探せ! 間をつなげ!  ヴェリエーダ街の夏祭りを楽しむ勇者候補生たちの前に、その男はバタバタと現れた。  丸メガネにくしゃくしゃのくせっ毛。身なりは良いが着こなしはどこか崩れている。大人には違いないが、どこか子どもに似た無邪気さの抜けない表情。 「あ、君! 確かうちの生徒だよね!?」  勇者候補生によっては、この男が学園教師の【ジョニー・ラッセル】だと気が付いただろう。 「良かった……! 助けが必要なんだ……!」  と、ジョニーは夏祭りを楽しむ勇者候補生たちに頼み込んだ。  曰く。 「今日の夏祭りのステージに立つ予定だった『Scat Cats』がいなくなっちゃったんだ! 君には、彼らを探すか、ステージに立って間をつなぐかしてほしい!」   随分な無茶振りに、勇者候補生たちは顔を見合わせた。 「先生、Scat Catsって……?」  不思議そうに尋ねる勇者候補生の一人に、ジョニーは、 「えっ、知らないの!?」  と目を丸くする。 「ケットシー4匹のカルテットだよ! 【ビック・ジョーンズ】って君たち知らない? 有名な楽団長なんだけど、その人がプロデュースしたジャズ界期待の新進気鋭バンドで……」  勇者候補生によっては、その曲を聞いたことがあるかもしれない。  ピアノ、ベース、ドラム、ボーカルで編成されたケットシー4匹のジャズグループ、Scat Cats。  もふもふと愛くるしい姿は女性に人気を博する一方、実力は本物であり、猫らしい自由奔放な演奏はジャズファンの心をつかんで離さないという。 「その4匹が、演奏の直前、どこかに消えちゃったんだ! 演奏を放り投げてどこかにいくような子たちじゃない……なにかトラブルに巻き込まれたのか、誘拐されたのかも……」  そう話すジョニーのそばに、関係者らしい男が息を切らせて駆け寄ってくる。 「ジョニー先生……! これ!」  関係者が手渡したのは、乱暴な筆跡の脅迫文だった。 「……猫どもは預かった。命が惜しければ、秘蔵の名酒『リルド・エーダ・ガッティ』をもって森の奥にある広場までこい……バング盗賊団」 「バング盗賊団か……厄介だな……」  居合わせた勇者候補生の一人は、関係者を見遣った。  最高級の蒸留酒、リルド・エーダ・ガッティ。換金すれば、遊んで暮らすには事欠かない。 「このお酒は出せないの?」 「リルド・エーダ・ガッティは王族に奉納する特別なお酒です。たとえこの場をしのいだとしても、この脅迫に屈してしまえばまた同じようなことが起きるでしょう。……絶対に、本物のリルド・エーダ・ガッティを持っていくことはできません」  ジョニーは勇者候補生たちをじっと見つめた。 「これを、課外活動とする。二組に分かれて活動してほしい」  勇者候補生たちは神妙に頷いた。 「一組は、舞台に上がって祭りにきたお客さんたちにScat Cats不在をさとられないようパフォーマンスを披露すること。もう一組は、この犯人たちの根城に踏み込んで、見事Scat Catsを奪還すること」  ジョニーの目は、怒りをたたえていた。 「せっかくのお祭りを、台無しにしようとするなんて。絶対に許しちゃいけないよ」
小春日和の幕間劇 K GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2020-11-28

予約期間 開始 2020-11-29 00:00
締切 2020-11-30 23:59

出発日 2020-12-07

完成予定 2020-12-17

参加人数 8 / 8
●以下、猫の首輪に仕込んだテール(通信用魔法石)によって聞き取れた音声の一部抜粋。 (厚手の布が引き裂かれる音) 「あ。破れた。まあいいや。これ、いい。すごくいい。ねえ?」 (複数の猫の鳴き声) 「部屋に敷いたら絶対あったかーい。こっちのタペストリーも、降ろしちゃおー」 (厚手の布が引き裂かれる音) 「ぶらんこゆれろ、ゆれ、ゆれ、ゆれろう♪」 (風を切る音。) 「もっともっとゆーれろう♪」 (ガラスが激しくぶつかり合う音。金属がきしむ音。) 「わあ」 (ガキンと鎖が切れる音) (たくさんのガラスが一斉に割れ砕け散る音。付随して金属製の何かがひしゃげる音。) 「なーんだ。もう落ちちゃった。だめねえ。このシャンデリア」 「(コルクを開ける音)そーねー。お天気よくなったら、外へ遊びに行こうか。ポンコツの様子、見に行こうか。あいつゆーしゃの学校の近くにいるんだって」 (猫の鳴き声) 「(液体を飲む音)そーよー、あいつが死んだら私も死ぬの。呪いでそうなってるの。ああ嫌だ、むかつく、本当にむかつく(声のトーンがどんどん険悪なものになっていく)なんで私が飼い主に媚びるしか能のない犬っころに付き合って、死(以下言葉が猫のわめき声に変じ聞き取れなくなる)」 (バリバリ電流が走る音。鈍く重い打撃音。厚手の壁が抉れる音) ●スカウト  フトゥールム・スクエア。  居住区域『レゼント』にある学生に人気のカレー食堂『おいらのカレー』。 「あなたたちにお目にかかるのは、これで二度目ですね」  と言って【セム】は、メニューを狼ズ三兄弟【ガブ】【ガル】【ガオ】に差し出した。 「どうぞ、何でも好きなだけ注文してください。勘定は全部私が持ちますから」  狼ズは食べ盛り。最近は鍛練に身を入れているので、その分腹が減るのが早い。ということで、この提案を喜んで全身全霊受け入れた。 「ビーフメガ盛り!」 「飯大盛り!」 「丸ごとチキンカリー揚げ5つつけてくれ!」 「スパイシーラムも!」 「ミートサモサも!」  セムはがつがつ食いまくる彼らを前に、失礼、と席を立つ。タバコを吸うために――店内は禁煙だったのだ。表に出てゆっくり一本吸い切ってから再び店内に戻る。  狼ズはちょうど腹を六分程度まで満たしたところ。食べるペースを落とし、口の中にあるものの味を心ゆくまで味わっている。  そこでセムが話を切り出した。 「あなたがたを呼んだのは外でもない、仕事を頼みたいからです」  それを聞いた途端狼ズは、なんとなく顔を見合わせた。  彼らは実のところ、このセムというヒューマンの女に、ちょっとした苦手意識を持っている。  それというのも以前彼女が自分たちを含めた学園生徒に『致死毒実験をするため、ゴブリンを捕獲してくれ』という依頼を出したことがあるからだ。たとえ魔物と言っても毒でじわじわ殺されて行く様を見るのは、彼らにとって、けして気持ちがいいものではなかった――魔物を駆逐すること自体に抵抗感はないのだが、その手段として毒を使うというのは――どうも、今一つためらいがある。 「そんなこといきなり言われてもよお」 「なあ」 「うん。俺たちもやることあるし。先公が毎日欠かさず習練出てこいってうるせーし」  セムは彼らの及び腰な反応を見越していたか、落ち着き払っていた。  テーブルに肘をついて両手を組み、にこやかに――社交辞令の範疇にあるにこやかさだ――言う。 「私はね、あなたたちを買ってるんですよ。この間の、ゴブリンを前にしてのあなたたちの戦いぶりには感嘆しました。それは確かに多少は稚拙だったかもしれない。でも初陣においては、皆そんなものでしょう。あなたたちはとても勇敢に戦っておられました。他の誰よりも。犠牲を厭わず前に出て」  ガブもガルもガオも虚を突かれた。セムがこんなにはっきりした褒め言葉を口にしてくるとは思っていなかったので。  人間誰しもそうだが、褒められて悪い気はしない。特に彼らは根が単純である。 「うん、まあな」 「俺たち伸びしろありまくりだからな」 「つか、最強だからな」  この通り、すぐいい気になる。  セムはすかさず『仕事』の内容について説明し始める。 「グラヌ-ゼのサーブル城はご存じですね? そこに【赤猫】という魔物が住み着いておりましてね。その魔物、ベラボウに力が強くて、並の人間どころか、並の勇者候補でも手に負いかねる相手だそうで。私は赤猫を城から退散させたいと思っているのですが、力ずくでそうするのは難しい。なにかしら策を講じなければ。そのために可能な限り多くの情報を集めたいと思っています。それにご協力いただけませんか?」  続けて彼女は言う。以前同じ依頼を【アマル・カネグラ】含む別の生徒達に依頼し、『果て無き井戸』の一つに入ったのだが、途中で危険と判断し戻ってしまい、姿を見ることも出来なかったのだと。  『並の勇者候補でも手に負いかねる相手』と聞いた狼ズは、内心躊躇しなくもなかった。  しかし虚勢がそれに勝つ。 「おう、べ、別にいいぞ」 「アマルが途中まで行けたんだろう。俺たちなら、最後まで朝飯前ってもんよ」 「井戸に入るくらい楽勝だぜ」  セムは称賛の拍手を彼らに贈る。 「さすがです、皆さん」  店の入り口で呼び鈴が鳴った。  見目麗しいローレライの女――【ラインフラウ】が入ってきた。セムたちのいるテーブルに向け手を振り、微笑む。 「話はまとまった?」 ●内幕  ――気象予報担当者によれば、ここ一週間ほどのぐずつきが過ぎた後、グラヌーゼはしばらく穏やかな日和が続くだろうとのこと。  大陸南部の気温は、平均より高めの傾向が、後数日ほど続く見込み。――    天気予報欄を確認したセムは新聞を畳み、カフェテーブルの上に置く。向かいの席にいるラインフラウはパフェを食べながら、彼女に話しかけている。 「セム、何であの子たちに仕事を頼んだの? 言っちゃ何だけど『勇者』としてのレベルは低いでしょう」 「だからですよ。ある程度以上のレベルに達した『勇者』では向こうが警戒して、素直に釣り出されてこない危険性があるでしょう? そもそもそういう人は危険についての察知能力がすこぶる優れているから、最初から不必要な遭遇を回避しようとしますし。この前みたいに」 「それはつまり、あの子たちが無鉄砲無思慮に危険地帯へ足を踏み入れてくれそうだから、声をかけたってことね?」 「まあ、そうとってくれても構いません」 「わーるいんだー、セム」  ラインフラウは明るく笑い、空を仰ぐ。 「言っておくけど危ないと見たら私、あなたを連れて即逃げるからね?」  セムは物憂げに返す。 「あの子達は?」 「残念だけど、そこまで面倒見られないわ。勇者候補なら、自分でなんとかするでしょう」
目と舌で魚を楽しもう! 夜月天音 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-11-25

予約期間 開始 2020-11-26 00:00
締切 2020-11-27 23:59

出発日 2020-12-03

完成予定 2020-12-13

参加人数 2 / 8
 快晴の朝、アルチェ、旧ミルトニア邸前。 「本日、大広間でアクアリウムを開催中です! 魚とか海洋生物が好きなら、是非観賞して行きませんか?」  イベントスタッフと思われる20歳の女性が、行き交う人達に声を掛けたりチラシを渡したりしていた。 「水槽は魔法で作った宙に浮く水の玉です。その中を魚達が優雅に泳いでいます。夜に活動的になる魚やキラキラと光る魚とか色々楽しいですよ。今朝捕獲されたジェムフィッシュの姿を見る事も出来ます!」  女性は手ぶりで球体を描きながら、イベントの内容を語る声は弾む。 「温かい飲み物と甘いお菓子もご馳走しますよ。クッキーとかアイスクリームとかパイとか……漁業たるアルチェの宣伝としてお菓子の味は魚味です。その味は、まぁ、食べてみてのお楽しみで……味の好みは人それぞれですし……」  ご馳走の説明に入った途端、女性はひきつった笑顔になった。明らかに味を知っている顔だ。 「それで、どうですか? 見ていきませんか?」  女性は表情を元に戻し、再度誘った。 「あの幻の魚、ジェムフィッシュが見られるの!」 「魚味のお菓子とか、興味あるんだけど」 「アクアリウムかぁ」  興味を持った人達は、足を止めて屋敷に入った。  会場たる大広間では、魚が泳ぐ水の玉がいくつも宙に浮遊していた。
どうせ みんな ねこになる 正木 猫弥 GM

ジャンル コメディ

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2020-11-23

予約期間 開始 2020-11-24 00:00
締切 2020-11-25 23:59

出発日 2020-12-01

完成予定 2020-12-11

参加人数 2 / 5
「コルネ先生!」 「落ち着いて。何があったか話してくれるかな?」  魔法学園『フトゥールム・スクエア』が誇る植物園、『リリー・ミーツ・ローズ』。  異常事態に駆けつけた学園教師【コルネ・ワルフルド】は、泣きじゃくる植物委員の女子学生から聞き取りを行っていた。 「たまたま温室の近くで、収穫したマタタビを乾燥させていたんです。まさかその中に、『マタタビモドキ』が混じってたなんて……」  コルネに渡されたハンカチで涙を拭いながら、必死で女子学生は言葉を紡いだ。  猫が酔っ払ったような症状を見せる事で知られるマタタビ。しかし、マタタビモドキはマタタビとは似て非なる魔法植物の一種であり、その効能は猫以外の動物や種族にも及ぶ。  乾燥させたマタタビモドキの実には、通常のマタタビよりさらに強烈な陶酔作用がある。実が発する香りを一定量嗅ぐと、その者は『自分は猫である』という幻覚に囚われてしまうのだ。 「猫化した学生が温室に実を持ち去ったせいで、温室の中にマタタビモドキの香りが充満してしまったんです。その場にいた全員で温室内を探し回ったんですが、それが却って良くなかったみたいで。皆が次々ニャーニャー鳴き始めて、私、怖くなって逃げてきたんです」 「大変だったね。でも、アタシが来たからにはもう安心だよ」  再び涙ぐむ女子学生の肩に手を置いて、コルネが優しく語りかける。 「も、もしかして先生1人で行くつもりですか? 無茶ですよ! せめてマスクが届いてから――」 「……残念だけど、あまりのんびりはしてられないみたいだね。あの温室は、学園にとって貴重な施設。被害は最低限に止めないと」  温室内には貴重な薬草が多数栽培されている。猫化した学生が好き勝手に暴れ回れば、多大な損害が発生する恐れがあるのだ。 (うーん、干しブドウが足りない……。今日は忙しかったからなあ)  景気づけに干しブドウを食べておきたかったが、生憎手持ちを切らしてしまっている。  買いに行こうとした矢先に事件が起きてしまったので、今のコルネは干しブドウの摂取量が不足した状態であった。 「せ、先生……」 「大丈夫! 狼のルネサンスであるアタシが、マタタビなんかに負ける訳ないでしょ?」  力強く宣言したコルネは、不安げな表情を浮かべる女子学生にウインクをしてみせるのだった。 ◆ 「――というのがマタタビモドキの特徴だ。お前達には、温室内のどこかにある実の回収と、猫化した者の救出を頼みたい」  マタタビモドキに関する説明を終えてから、その教師は集められた学生達を一瞥した。 「と言っても、実の在り処の見当は付いている。お前達が来る前にコルネ先生が学生達の救助に向かっていたのだが、数時間経っても戻って来る気配がない。状況から考えて、恐らくコルネ先生も猫化してしまった可能性が高い。マタタビモドキの実を学生から取り上げた後で、自らがその香りにやられてしまったと考えられる」  猫化した学生の数は10人以上。その全員をたった1人で取り押さえ、温室の外に連れ出した手腕は流石と言うしかない。しかし、マタタビモドキの実を所持したままでの救助活動は、コルネ自身の猫化を当人の予想以上に早めてしまったのだろう。 「猫化しているとはいえ、あのコルネ先生を力づくでどうにかする事は難しい。だが、その猫に成りきった状態を利用すれば打開策は見えてくるはずだ。幻覚によって、仲間の姿が猫に見える等の影響が出るだろう。猫が二足歩行をする奇妙な光景が見えるはずだが、動揺せず落ち着いて対処してくれ。頼んだぞ」  教師はそう語り終えると、学生達に専用のマスクと容器を手渡して出立を促すのだった。
迫る脅威、探る道標 根来言 GM

ジャンル 推理

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2020-11-18

予約期間 開始 2020-11-19 00:00
締切 2020-11-20 23:59

出発日 2020-11-28

完成予定 2020-12-08

参加人数 4 / 8
 その日、『魔物の大群』がとある村へと押し寄せた。  人々は近隣の都市『シュターニャ』へ身を寄せ、魔法学園の生徒と、わずかに残った村の衛兵達が、魔物の群れを退けた。  文にするだけならば、1、2行にも満たないような出来事。  しかしながら、それは、人々と村へ、多大な影響を与えた。  ……あの出来事から、2か月が経過した。  未だ人々は故郷へ帰ることはなく、村には時折、シュターニャの傭兵達が交代で見張りにつく。  悪化……とまではいかないまでも、魔物も、そして人々も。  全てが行動することもなく、ただ、立ち止まったまま。  そして今日も。 「……はぁ」  誰かが、この日何度目かもわからないため息を吐く。  気が滅入るのも仕方がない。衛兵達から入る情報は今日も変わらず『特に異常なし』の1点のみだからだ。  ……確かに、あの日以来、村へに現れる魔物の数は極端に減っていた。  1日に1匹か2匹、弱い魔物が顔を表す程度……。  しかし、それも森の外のみ。  調査に出た衛兵達からは、森の中には、そこら中に魔物のものであろう痕跡が残っているとの報告もある。  ……恐らく、未だ森の奥には、魔物達が大量に蔓延っていることだろう。  ――森の中だけで留まるそれを、平和と呼ぶべきか。  それとも、いつまた起こるかもしれない、災厄と捉えるか。 「――以上が、屯駐兵達の報告だ。事態は悪い方向にも、良い方向にも動いていない。……だが、今、村人たちを村に返すわけにはいかない」  また何時魔物が、再び現れるかもわからない。傭兵組合『シュッツェン』の代表、【ニキータ・キャンベル】はそう付け足す。 「けれど、わたし達も、いつまでも村人さん達を置いておくわけにはいかないわ……。申し訳ないけれど」  観光組合『アイネ・フォーリチェ』の代表、【マチルダ・アベーユ】が口を開く。  幾ら、彼女と仲の良いニキータの判断でも。マチルダは観光組合の代表として、言葉を述べる。 「今、こちらにいる村人さん達を泊めている宿泊施設。その間、お客さんを止めることはできない、観光業が滞ってしまう。一触即発ってところね」 「シュターニャにとっては、早めに対応した方がよい……か。……ところで」  ちらり。目の端にいる大男を、ニキータが睨むように見上げる。  元凶……ではないものの。彼は間接的に、面倒ごとを長引かせた原因のような者。あまりニキータの心証はよろしくない。 「貴方は、この事態に何か心当たりはないのか? ガープスさん」 「……俺に聞かれても、困る」 「あー、ニキータさん。こいつは超鈍感脳筋ヤローなんで、あんま頼んねーでくださいっス」  元・最強の戦士【ガープス・カーペンター】の横で水を差すのは、商人【ピラフ・プリプク】。  ニキータがガープスを敵視するのは勝手だが、それでまた、現在の状況をガープスが責任を負う必要はない。……と、ピラフは考える。 「……まぁ、ピラフの言う通りだ。申し訳ないが、そういったことは苦手なんだ」  ピラフの軽口に何かもの言いたげであったが、ガープスは口を慎む。ここで変に反論する意味もないだろう。 「第一、こいつ(ガープス)は村の出身でも、長らく住んでいるわけでもねぇ。おまけに注意力っつーのがあんまねぇっす」 「……申し訳ない」 「……いいえ、気にしないで。ではピラフさん。貴方は、何か心当たりがあるかしら? 魔物が出てくる前、森の中に入ったと聞いたのだけれど」 「んー……、オレは1泊しただけなんで、村の知識はこいつ以下っスよ?」  そう言って隣にいるガープスを小突く。  幾ら衛兵や強い戦士がいたとしても、原因や発生源が分からなければ動くことはできない。  鎮まる面々の顔を眺め、またため息が漏れる。 「やはり、落ち着くまで待つしかない……か。歯がゆいが、それが一番確実だろ――」 「……あ」  ニキータの声を遮るように、思い出したようにピラフが声を上げる。 「そういえば、オレ、一度森にはいったんスけど……。森の中に家? っつーか、小屋みてーのが見えたんっす。あの小屋? の持ち主とかなら森のこととか詳しかったり?」 「小屋? 山小屋みたいなところかしら?」 「いや、山小屋っつーか、秘密基地……みてーな感じで……」  思い出そうとするピラフの言葉に、ガープスが反応する。 「……村の子供たちのものだろう。俺が村に来る以前……、魔物がいなかった頃は、森は子供たちの遊び場だったらしい」  その言葉に、ニキータが反応する。 「何故、それを早く言わない! 以前の様子を知る者がいるなら、その者に聞けば何かわかるかもしれないだろう!」 「ま、まぁまぁ! そうね……、貴方たちが知らなくても、知っていそうな人に聞いた方がいいかもしれないわ! 他に、何か知ってそうな人に心当たりは?」 「……そうだな――」  それは、姿も、終わりも見えない脅威に思えた。  しかし今、道標が立とうとしている。
Trick or Blood? 七四六明 GM

ジャンル 戦闘

タイプ EX

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2020-11-17

予約期間 開始 2020-11-18 00:00
締切 2020-11-19 23:59

出発日 2020-11-26

完成予定 2020-12-06

参加人数 3 / 8
 人々が仮装に身を包み、先祖の霊と共に練り歩く秋の祭典は幕を閉じ、例の合言葉も聞かれなくなった頃、とある街裏を染め上げる夕闇の陰にて、とある二択を迫られる。 「Trick or Blood?」  悪戯か、血か。  そんな物騒な二択を迫られた人々が、次々と襲われる怪事件。  どちらを選ぼうとも、どちらとも選ばずに逃げ出そうとも、結末は同じ。襲われ、斬られ、繰り広げられる血の惨劇。多くの犠牲者と被害者を出していると聞いた学園はすぐさま三人の生徒を派遣し、本体が合流するまでの時間稼ぎ。あわよくば、捕縛の命令を出した。  だが、噂を聞く限りはこの通り魔。只者ではないらしい。  漆黒かつ巨大な刃のついた大鎌を振り、緋色の髪を揺らして迫るその様は、まさしく――緋色の辻斬り。 「――などと聞き及び、兄弟子が不覚を取り、泥酔した姉弟子を退けた辻斬りの実力をいざこの手で試してやらんと、自ら望んで来たわけなのだが……おまえが、緋色の辻斬りだと?」  【黒崎・華凛】(くろさき かりん)の前に立ち尽くす黒衣。フードの下はジャック・オー・ランタンの目、鼻、口が彫られているだけの鉄仮面で隠され、素顔は見えない。噂通りの巨大な大鎌と合わせて見ると、ハロウィンに出遅れて役目を失った可哀想な死神に見えた。  噂通りの緋色の髪はフードの下か。今のところまだ見えない。いずれにせよ、そうして顔を隠し姿を隠すような身なりをしている時点で、華凛が学園の同輩や兄弟子らから聞く辻斬りの印象からはずっと離れていた。 「Trick or Blood?」  不意に現れてそんな二択を迫られては、混乱は必至。恐怖に狩られるも無理からぬだろうが、こちらは元よりその問い掛けをするそちらに用があるのだから、混乱も無ければ恐怖も無い。  質問への返答の代わりに、腰の左右に差した愛刀を抜く。 「Trick or Blood?」 「どちらを選ぼうと斬りかかってくる癖をして、いつまでも祭り気分の抜けぬ阿呆か――!」  遠距離狙撃を任せた天使が痺れを切らし、合図も待たずに放たれた矢が飛んで来る。払い除けた鎌とぶつかった矢が爆ぜて黒煙を上げたが、辻斬りは黒煙をも鎌で斬り裂き、無傷の姿を晒して現れた。  派手な陽動から死角を取った華凛が、不意を突いて斬りかかる。  だが腕に籠手を巻き、腹には防具まで着ているのか、切れたのは全身を覆っている黒衣だけで、辻斬りの肌には届かなかった。  剣撃を弾いた辻斬りは一歩引いてから大振りで鎌を振り、自身の間合いにまで置いてから攻め立てる。  風を切る漆黒の速度は速く、影の中に溶け込んで時折見失って、防御に手を回さざるを得ず、反撃に至れない。わざわざ影の色濃い場所に出没している理由は、これのためだろう。  ならば夜に仕掛ければいいものを、夜では自分も同じデメリットを負わされる可能性があるからか。 「やはりおまえ、緋色の辻斬りではないな」  兄弟子と戦った緋色の辻斬りは、腕に籠手こそ巻いていたものの、ほとんど頼る事もなく攻撃こそ最大の防御とばかりに防御らしい防御もしなかったという。  そんな人間が、まるで防具に頼り切った防御でやり過ごす事など考えられない。面や黒衣で正体を隠したりと、とても聞いていた印象と違い過ぎる。 「おまえは臆病過ぎる。面と黒衣で隠した正体、剥がさせて貰おうか」 「Trick or Blood……Blood、Blood!!!」  再び、遠方から放たれた矢の雨が強襲。ただし今度は直撃させず、周囲に放って逃げ場を奪いつつ、爆ぜた矢が煙を上げて視界を封じる。  側面から迫って来た刃を弾き飛ばしたが、飛び込んできたのは刀だけで、華凛は正面からもう一刀で以て斬りかかる。  籠手で受けつつ鎌で払い除け、距離を取ろうとした辻斬りは視界から華凛の姿を見失う。やや遅れて鎌に重さを感じて振り返ると、鎌の上に乗った華凛が先に弾き上げられた刀を掴み取り、鉄仮面を斬り捨てんと振り被っていた。 「離れろぉぉぉっ!!!」  振り落とすべく、鎌を強く振り下ろして、地面を叩き割る。  しかしすでに華凛の姿はなく、上を見上げてもいない。では背後――にもいない。  下だった。  鎌が振り下ろされる直前に飛び退いた華凛は、辻斬りの足下で片膝を突き、構えていた。  と、華凛に気を取られている隙に三度目の矢が時雨の如く強襲。今度は全弾、狙いは辻斬り。  すかさず回避しようとしたが、咄嗟に片脚に重みを感じて見下ろすと華凛が脚を掴んでおり、直後に足を刀で貫かれて地面に固定され、全弾命中した。  が、脱げた黒衣の下にいたのは身代わりのうさぎのぬいぐるみ。本体は防具と籠手を巻いた死神らしからぬ姿を晒し、ずっと後方に離れていた。足を貫いた刀を引き抜くために力尽くで蹴り上げられて、華凛は堪え切れずに尻餅をつく。  華凛の体勢が崩れたのを見た辻斬りは今だとばかりに撤退。狙撃を振り切るためだろう、人通りの多い表通りの方へと逃げてしまった。 「ここまで、か」 「治療ですね。すぐさま治療しますので、動かないように」  建物の陰に隠れ、いざとなれば参戦するつもりでいた【クオリア・ナティアラール】が飛び出し、尻餅を突いていた華凛を起こす。 「いや、私は怪我など……」 「言い訳は結構。大丈夫、ほど信頼出来ない言葉もありませんので。無暗に多用している人ほど、早死にしますので、大人しく治療を受けて下さい。でないと、本当に死にますよ」 「わかった、わかった……」  多くの依頼に奔走している【シルフォンス・ファミリア】が、いつも無傷で帰って来る理由が、彼女の存在で理解出来る。ずっとこんな調子では、傷など残したくとも残せまい。  尻餅をついた際に擦った手に、クオリアは消毒を行い始める。 「辻斬りは」 「ご心配なく。彼が追っているはずですから。それにあの辻斬り、緋色のではないでしょう。あれだけ臆病な性格で、堂々と表で人を襲う事はないでしょうし……まぁ、あれだけの防具があれば怪我の心配が減るので、褒めるべき点はそこだけですか」 「君には敵わないな……」  クオリアの言う通り、あれが表で人を襲う事はないだろう。  しかし裏通りの、こうした表から隠れた陰で人を襲い続けるに違いない。早期解決に越した事はなく、そのために早急に動くことに異論はない。  が、流石に人手不足か。相手は闘争よりも、逃走のプロと見るべきだ。三人では詰め切れない。 「処置が完了しました。他に怪我はありませんね? 毒の類もありませんね?」 「あぁ、すまない。応援が来るまで、私達は奴が出没するだろう場所を片っ端から確認しておこう。これより先、一人も犠牲者を出さないためにも」 「賛成です。では、二手に分かれて行きましょう」  以上の経緯で以て、現在、ジャック・オー・ランタンの鉄仮面を被った謎の死神を追跡中である。  これ以上のTrickもBloodも出さないためにも、全力を賭して掛かるべき案件だ。
怪獣王女☆出現 桂木京介 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2020-11-10

予約期間 開始 2020-11-11 00:00
締切 2020-11-12 23:59

出発日 2020-11-18

完成予定 2020-11-28

参加人数 6 / 8
 このおじいさんに名前はなくても話は進むのだけども、なければないで語りにくいので仮に、【ガリクソンさん】(80)としておこう。  ガリクソンさんは行商人である。両天秤状のかごをかついでえいほえいほ、峠の中腹まできたところでいつものように一休みした。  あつらえたような位置にある平らな岩に腰を下ろし、これまたいつものようにキセルをとりだして口にする。  といってもこのキセル、中身は空なのである。ガリクソンさんが禁煙してもう長い。慣習として一服しているだけなのだった。ガリクソンさんがタバコをやめるまでの物語も波瀾万丈だったりするわけだが、本編にはまったく関係ないので割愛する。  空気を吸って空気を吐きだすだけ、それでもプカーとやるとそれなりに落ち着くのだから不思議だ。  しかし老人の平穏はにわかに破れた。 「ヘイボーイ!」  舌っ足らずな声がして、茂みかきわけがさがさと、妙な格好の女の子がガリクソンの前に飛び出したからだ。 「コズミックエッグよこすのじゃ!」  十歳はたぶん超えていない。ぶあつい桃色のガウン、襟と袖のところは白くモコモコしていて、バラのような派手な襟飾りもついている。ベルトは金色でむやみに太く、ブーツもやはり金ぴかだ。金といえば髪もゆたかな巻き髪のブロンド、てっぺんに王冠をいただいている。  仮装がどうのという時期はもう終わったと思うが。  ガリクソンさんはあっけにとられた。そうするしかなかった。  しかし少女は許さない。豊かな髪から飛び出したトカゲっぽい耳をひくひくさせてもう一度言った。 「コズミックエッグよこすのじゃ!」  目がくりっと大きくて口が小さく、びっくりするくらいの美少女だ。なんか歩くたびに『きゃるん』とか音が立ちそうな。  ゆえにわけのわからさなさも倍増である。なんのことだろう。そんなコズミックなもの(?)の心当たりは当然ない。老人は首をかしげるしかなかった。  かごの内側がちらりとのぞいた。  卵がたくさん入ってる。ガリクソンさんのあきないの中心を占めるものだ。 「よこすのじゃ!」  得たりとばかりに少女は近づいてくる。  物盗りか? 素直に頼めばひとつくらいあげてもいいが、そういう平和的な雰囲気ではないとみた。そもそも少女からは、ただ者ならぬ闘気(バトルオーラ)が立ちのぼっているのである。 「ふぬう……さすればこのガリクソン、腕に多少の覚えあり」  ガリクソンさん八十歳は上半身をはだけた。大小さまざま無数の戦傷(いくさきず)、肉は落ちたが引き締まった骨格はなお健在、天秤棒をからりと外せば、たちまち六尺棒に早変わり。  ひゅんと棒を回してぴたりと止める。構える。攻防一体、人呼んで豹の構えだ。  これで逃げてくれればいいがと老闘士は思った。  生涯独身、孫はもちろん子も持ったことのないガリクソン(若い頃のあだ名は『棒術の鬼』)だが慈愛の情に厚い。子ども相手に蛮勇はふるいたくなかった。  しかし少女は恐れない。 「やる気のようじゃの!」  と言って、お人形さんみたいな顔にニヤリとした笑みを浮かべた。 「わちきは怪獣王女☆ 邪魔だてするなら容赦しないのじゃ!!」  少女は、長手袋をはめた両手を交差させガウンの内側につっこんだ。  * * * 「……それで、すべて奪われたということらしい」  商売道具を、と言ったのはフトゥールム・スクエア教師【ゴドワルド・ゴドリー】だ。 「怪獣王女と名乗った謎の少女は、桃色の卵をいくつもふところから出した。投げるとそこから桃色の怪獣が出てきたという」  見た目が恐ろしいモンスターではなかった。むしろ逆だということだった。特に似たモンスターはなくしいて言えば二足歩行のドラゴンといった形状だが、白みがかったピンクでぷにぷにとした、つぶらな瞳の『どらごん』というのが適切だろう。このお風呂のおもちゃみたいなのが何体もあらわれキュウキュウと鳴きながら迫ってきたという。 「で、キュウキュウと鳴きながらガリクソン氏を血祭りに……」  見た目とちがって凶暴らしい。注意したい。  ガリクソンさんは無事ですかと生徒の一人が聞いた。 「氏は『どらごん』のあまりの可愛さに抵抗できずボコボコにされたそうだが」  入院はしたものの元気にはしているようだ、とゴドリーは言った。  どらごん(仮称)は一応竜らしく火も吹くそうだ。温度は種火くらいのものらしいがもちろん食らえば熱い。 「コズミックエッグとかいうものについては、ざっと当たってみたが該当するものは見つからなかった……一体なんのことやら。とりあえずこの怪獣王女というのをおびき寄せ、奪われたガリクソン氏の荷物と六尺棒を取り戻すことが使命だ」  健闘を祈る、と普通に言えばいいのにゴドリーはここでどうしてもひとボケしたかったらしい。 「健康を祈る!」
【体験】メメたん秋の美味祭り 橘真斗 GM

ジャンル イベント

タイプ マルチ

難易度 とても簡単

報酬 ほんの少し

公開日 2020-10-09

予約期間 開始 2020-10-10 00:00
締切 2020-10-11 23:59

出発日 2020-10-20

完成予定 2020-11-17

参加人数 8 / 16
●食欲の秋  ―フトゥルーム・スクエア中庭― 「いやぁ、すっかり秋だねぇ~」  【メメ・メメル】が中庭の気が紅葉を見せている。 「メメたん先生! こんにちわなの~!」  落ち葉を箒で集めて掃除をしている【キキ・モンロ】が手を振ってきた。 「掃除にせいをだしていて、えらいねぇ~学生の鏡だよ。うんうん」 「落ち葉を集めて~、これから焼き芋するの~。学園の畑で収穫できたの~」  中庭の中央には気づけば焼き芋を焼くための準備がはじまっている。 「そうだ! このままでは勿体ないよ、キキたん! 新入生の歓迎会として秋の味覚祭りをやろうじゃないか!」 「秋の味覚祭り~? 名前を聞くだけでも美味しそうなの~」  メメル学園長は『いい考えがある』といった顔で、協力者を探しに駆け出すのだった。 ●メメたん秋の美味祭り 「えー、ということで、新入生の歓迎を兼ねての食事会を開くことになったんだよ」  学園長からの指示を受けて【コルネ・ワルフルド】は疲れた様子で返ってきた生徒達に話をしはじめる。 「タイトルは『メメたん秋の美味祭り』ということで、秋の味覚を君たちには取りに行ってきてもらっていたんだ」 「妙な課題だと思ったら……そういう魂胆だったのね」  【アスカ・レイドラゴ】は背中の籠に大量のキノコをもってジトーとした目でコルネを見る。  課題が終わったかと思えば次の課題であるが、せっかくとってきたものなのだから、確かに使わねば損だ。 「疲れているだろうから開催は明日、焼き芋とキノコ鍋の用意はできているけど、他にふるまいたいモノがあれば存分にやってよいと学園長から許可はもらっているんだよ」  コルネの言葉に腕に自信のあるアスカの目が光った。 「いったわね、これでもね。料理は得意なのよ。レイドラゴ家秘伝の味を見せてやるわ!」 「当日はただ飲んで騒ぐもよし、料理を作ってふるまうもよし、とにかく楽しくやるんだよー!」  コルネの言葉におー! とアスカ達は腕をあげ、楽しい明日に向けて英気を養うのであった。 
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