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はいはーい! 今日の課題はここで確認してね~……って、こらー!
言うことちゃんときけ~! がおーっ!
コルネ・ワルフルド



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【天遣】諦観天使と傍観の魔法使い達 春夏秋冬 GM

ジャンル 推理

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-10-18

予約期間 開始 2021-10-19 00:00
締切 2021-10-20 23:59

出発日 2021-10-27

完成予定 2021-11-06

参加人数 5 / 8
 最初の問い掛けを、彼女は致命的に間違えていた。 「先生は、怖くないの?」  幼き少女の問い掛けに、青年は困ったような笑みを浮かべ応えた。 「怖いです。だから、何かを残したいのです」 「残す?」  じっと見つめる幼き少女【セオドラ・アンテリオ】に、アークライトの青年は言った。 「この世界に自分が居た証を残したい。それは何でも良いのです。私にとってそれは、貴女に知識を伝え残すことです。そして貴女の御父上にとっては、貴女自身が、そうなのですよ」 「……」  セオドラは、泣くのを堪えるように黙る。  彼女の父である【テオス・アンテリオ】は、青年と同じくアークライトだ。  元々は、とある地の領主であったが、アークライトとして覚醒してからは、悩めるアークライト達の指導者としての役割を引き継いでいる。  アークライトは、覚醒してから長くても20年で『消滅』してしまうため、その事で思い悩む者も多い。  悩める同胞達の苦しみを少しでも和らげるように、テオスは生きていた。  けれど娘であるセオドラは、それが怖かった。  眠りに就き目が覚めれば、その時には父が『消滅』してしまっている。  そんな悪夢を見るのも、一度や二度ではない。  物心つく前に母を亡くしているセオドラには父以外に家族は居らず、それが『恐怖』をより強く感じさせていた。  だから、家庭教師である青年に問い掛けてしまったのだ。  怖くないのか? と。 「何かを残したい。私は、そう思っています」  それは青年の本心であった。  同時に、諦めから来る言葉でもあった。  だからこそ、ある種の呪いとして、成長しアークライトに覚醒したセオドラの心に、楔として食い込んでいた。  ◆  ◆  ◆ 「申し訳ありません。お父さま」  近況を伝えるセオドラに、テオスは静かに返した。 「謝る必要はない。皆も、よくやってくれているのだろう?」 「はい」  迷いを見せず、セオドラは応えた。 「今回は学園の働きを超えることはできませんでしたが、必ず、私達が学園に代わり得るのだと多くの人達に思って貰えるようにします」  少し前から、セオドラ達アークライトの一団は学園の役割を担うべく活動している。  同じように動いているローレライの王族勢力とは、『対学園』では協調関係を結んでいるが、だからといって同盟という訳ではない。  向こうとしては、場合によってはアークライトを魔王軍攻勢の旗頭に据えるぐらいのことは考えているかもしれないが、あくまでも主導権はローレライの物だと思っているだろう。  もっとも、それならそれで構わない。  セオドラ達にとって必要なのは、『複数の霊玉を自分達アークライトが使える状況』にすることだ。  そのためにも、学園が持つ霊玉を手に入れられるようにしなくてはならない。  学園の代わりになろうとするのは、『手段』でしかないのだ。 「ローレライの方達も動かれています。私達も、より積極的に動かないと――」 「そーよねぇ」  軽い口調で賛同する声に、セオドラは視線を向ける。  そこに居たのは1人の偉丈夫。『ヒューマン』の商人である彼の名は、【シメール】。  十指全てに指輪を嵌めた手で口元を覆い、笑うように言った。 「貴方達には先行投資させていただいてますものねぇ。ちゃあんと、回収させて下さいましねぇ?」 「……分かっています」  苦い声でセオドラは応えた。  シメールとセオドラ達との関係は、出資者と活動家だ。  どこから聞きつけて来たのか、霊玉を求めるセオドラ達に接触してきて、活動のための資金援助をしている。  ローレライ陣営にも息の掛かった者を送り込んでいる節もあり、資金面の関係で、切りたくても切れない間柄だ。 「我々が学園を掌握した暁には、学園の利権に貴方が関われるよう便宜を図ります。そのためにも、今まで以上の援助をお願いします」 「もちろんよぉ。ローレライの坊やたちと同じように、面倒見てあげるわぁ」  獲物を見るような目を向けるシメールに、セオドラが怖気を感じていると、シレーヌは笑みを浮かべたまま言った。 「そうそう、お金だけじゃなくて、情報もあげちゃうわぁ。学園が、魔法国家ミストルテインに接触するみたいよぉ。あそこを学園に引き込まれると面倒だから、先に獲りに行ってねぇ」 「……分かりました」  苦い声で応えるセオドラだった。  それからしばらくして、魔法国家ミストルテインでは、学園の関係者が訪れていた。  ◆  ◆  ◆ 「では、つまり、サイクロプスに調べろと言われて、この国に来た訳ですか」  鷹揚に執務机に座り、壮年のヒューマンが言った。  彼の名は【レト・グリファ】。  魔法国家ミストルテインの代表議長をしている。  ミストルテインは合議制国家であり、高位の魔法使い達により議員は選ばれている。  当然、レトも例外ではない。 「最近、我が国を調べている者が居るとは聞いていましたが、捕えてみれば学園の関係者ですか」 「卒業してるので、もう直接関係は無いんですけどね」  軽い口調で返したのは、【ガラ・アドム】。  他の2人と一緒に、魔法で拘束されているのに余裕である。  もっとも、もう1人はそうでもなかったが。 「私関係ないんで自由にして下さいー」  泣き言を言っているのは、研究都市セントリアの代表責任者【ハイド・ミラージュ】。  そしてもう1人。 「逆さになると血が頭に下がりまーす」 「それは私の責任ではないが?」  拘束された状態でふよふよ浮いているのは、異世界人である【メフィスト】。  この3人は、少し前、学園とサイクロプスの交渉に立ち会っている。  その時、サイクロプスにミストルテインを調べろと言われたので、商人であるガラは商売を装い入り込んでいた。  ハイドとメフィストは、ガラにくっつく形で一緒に訪れている。  2人とも、他国と関係性が薄く秘密主義なミストルテインの技術を探る好機だと言って付いて来たのだが、色々と調べている内に不審者として捕まったという訳だ。  しかも、調べられる中で事情を話していると、どういう訳か代表議長であるレトの前に連れて来られたという訳だ。 「学園関係者と聞いて、アークライトのように協力関係を結びに来たのかと思ったが、よりにもよってサイクロプスとは……」  何やら考え込むレトに、ガラが売り込むように言った。 「学園も貴方達との協調を望んでいます。どうです? ひとつ、話を聞くだけでも」 「どちらでも好きな方を選べと? なら、試させて貰いましょう。貴方達とアークライト、より強い方と、私達は話をしたい」  そして一息つくような間を空けて、続けて言った。 「力なき理念は無力だ。理念なき力は、暴力にすぎんが」 「それはー、貴方の背後の『ヒト』の考えですかー?」  レトの頭上に視線を向けながら尋ねるメフィストに、レトは返す。 「……私の考えだ」  警戒するようにメフィストを見詰めるレトに―― (それって、巧くいっても個人的な考えだから国としては知らん、って言い訳も出来るってことだよな)  ため息をつくように考えるガラだった。  そしてひとつの課題が出されました。  内容は、ミストルテインの魔法使いが作った疑似ゴーレムと、アークライトの一団。  そして学園代表で、バトルロワイヤル形式で戦い力を示す、という内容です。  結果を見てミストルテインは、どの勢力と今後関わるかを考えるというのですが……。  さて、この課題、アナタ達は、どう動きますか?
未来へ向けて、第一歩 K GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2021-10-17

予約期間 開始 2021-10-18 00:00
締切 2021-10-19 23:59

出発日 2021-10-26

完成予定 2021-11-05

参加人数 7 / 8
●芸能・芸術コース志望【トーマス・マン】。進路を前に、悩む  トーマスは学園の入学願書を前に考え込んでいた。  教員【ラビーリャ・シェムエリヤ】からかけられた言葉を思い起こしながら。 『周りの人からもう、それらしいことは聞かされてると思うけど――トーマス、絵かきになりたいなら学園に入学するべきだと、私は思うよ。貴方がカサンドラから受けた教育は、すばらしいものだったと思う。だけどそれは、やっぱり個人のものでしかない。このまま自己流の研鑽を続けて行くだけでは、彼女の亜流になってしまう恐れがある。そうならないようにするには、多種多様な教授から教えを受けなくちゃいけない。加えて絵画以外のことも、たくさん学ばないといけない……貴方の可能性を開くために。カサンドラもそうやって、自分だけの絵を見つけていったんだよ』  トーマスはもう、『勇者』の卵となることをためらっていない。その理由であった【黒犬】との関係が、おおいに変化したから。  もとより彼は、正規の教育を受けたいという願望を持っている。読み書き等の基礎的な学力は、保護される前から身につけているのだ。父母が生きていた間、民間の教育施設に通っていたから。  その父母は常から、息子にこう教えていた。 『トーマス、勉強しないといけないよ。字が読めなかったり、計算が出来なかったりすると、大きくなったとき、自由に仕事を選ぶことが出来なくなる。どんなに真面目に一生懸命働いても、着るものや、住むところや、食べるものに困るなんてことにもなりかねないんだよ』  親の言い分についてトーマスは、確かにその通りだと思っていた。だから叔父の家に引き取られた際、叔父の『人間真面目に働いていさえすればそれでいいのだ』という教育方針にどうにも納得出来ず、反発と摩擦の悪循環を生むことになったのである。  ――とにかくトーマスは入学すること自体に、拒否感はない。  ただ妹【トマシーナ・マン】のことを思うと、ためらいが生じる。  入学したなら自分は保護施設から出なければいけない。そして、学園の寮に入らなければならない。そうなるとトマシーナは、一人で保護施設での生活を送らなければならなくなる。それが原因で彼女が、体調を崩したりしないだろうか――と。  なにしろトマシーナはこれまで、トーマスと離れて生活した経験がないのだ。父母の家でも、叔父の家でも、この施設でもずっと一緒。  寮から施設へ様子見に訪れることは出来るが、それでもやっぱり、同じ屋根の下にいるのとは全然違うだろう。 「施設から学校に通うって、出来ないのかな……」  本音を言うとトーマス自身、施設から出ることに躊躇いを覚えている。  なにしろ、もう一年以上もここに住んでいるのだ。半ば『わが家』のようなものである。  カサンドラが使っていた部屋はすっかり片付けられてしまって、からっぽになってしまったけど――思い出は、別にそこだけにあるわけではない。施設の様々な場所に残っている。彼女の声が、姿が、仕草が。  ここで遊んだ、勉強した。いいことばかりではなく、いやなこともあった。意見が合わなくて言い争いもした、彼女を困らせた。それらは胸の中で、小さな棘となって残っている。恐らくこれからも、ずっと消えずにあるのだろう。 「……先生に、もっと親切に出来たら、よかったんだけどな……」  黒犬は施設にいる。タロも。  彼らに繁く会えなくなるのも、トーマスにとってはやっぱり……寂しい。 ●どうしましょうかね  トーマスから相談を受けた施設関係者と学園運営は、顔つきあわせ話し合っていた。 「僕はトマシーナちゃん、ドリャエモン先生の家に行くのがいいかなーって思います。で、黒犬とタロのどっちかと一緒に。施設の番犬は、一匹だけでもいいですし」 「トーマスくんは、別に施設にいてもいいんじゃないですかね? 現時点で、施設職員見習いという肩書があるんでしょう?」 「いや、でもそれ、施設の趣旨としてはどうですかねえ。あそこはあくまでも、一時的な避難場所です。これから先の長期的な展望が開けて、居場所も見つかったのなら、退所してもらうのが一番いいのでは? 施設にはこれからも、保護を求める人が来るでしょうし」 「トマシーナちゃんも学園入学してもらって、トーマス君と一緒に寮に入るってのはどうでしょう?」 「それは、難しいんじゃないかなあ。トマシーナちゃんはまだ、ええと、3歳か4歳でしょう? 就学するには幼すぎます」 「そうかなあ。似たような年頃の学生、見かけませんか?」 「それはあくまでも外見年齢がそうだっていうだけの話。皆さん本当に幼児ってわけじゃないの」 「この際学園にも幼児コースを作ってみたらいいんじゃないか」 「話が大きくなり過ぎるわよ。そんなことしようものなら、これまでのカリキュラム全面改定しないといけなくなるじゃないの。学園長が許可――したらおおごとだから、その方向で話を進めることは全面反対ね」 「そもそも入学させたところで、寮に一緒には入れないわよ。トーマスくんは男だし、トマシーナちゃんは女だから」 「あー、そういえば男子寮女子寮別々よねえ……うちは」 「そこは柔軟に対応してよくないですか? 兄妹ですよ。一緒にいても全然問題ないでしょう」 「……いや、問題が起きた事例がなんかあったような気がする。百年ほど前に。当時の日誌にそんな意味のような記述があったようななかったような」 「エッ、マジデスカ」 「そんなの特殊中の特殊な例でしょー」  あれこれあれこれ額突き合わせやり合った末、関係者たちは、選択肢を2つに絞り込む。 1:特例として、このまま兄妹とも施設で生活してもらう。 2:規則通りトーマスは入寮。トマシーナはそのまま施設に残留。もしくは養父である【ドリャエモン】の家に行く。(黒犬またはタロも一緒に)
学園での一日・異世界人+α編 春夏秋冬 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-10-10

予約期間 開始 2021-10-11 00:00
締切 2021-10-12 23:59

出発日 2021-10-19

完成予定 2021-10-29

参加人数 8 / 8
 魔法学園フトゥールム・スクエア。  言わずと知れた、勇者の育成を掲げる教育機関だ。  年齢や種族を問わず学生として受け入れ、日々賑やかな生活が行われている。  各種依頼を引き受けるギルドを母体として始まったこともあり、現在も『課題』として様々な依頼を引き受けていた。  そんな学園に、幾つかのお客が訪れていた。 「申し訳ありませんが、学園長は席を外しています」  学園への来訪者を、【シトリ・イエライ】が対応していた。  相手は2人。  1人は、フェアリータイプのエリアルに見えるおっさん。ただし本体ではなく、異世界人である【メフィスト】が作りだした分身。  もう1人は、セントリア中央研究所の責任者をしている【ハイド・ミラージュ】だ。 「残念ですねー」 「何か用事があったんでしょうか?」 「ええ……」  歯切れ悪くシトリは応える。  なぜなら、【メメ・メメル】が居ない理由が、ローレライとアークライトによる学園弾圧を和らげるために動いているからだ。  現在、火の霊玉を学園が確保できなかったことを槍玉に挙げ、このふたつの種族が大きく動いている。  目的は、自分達の勢力に霊玉を集中すること。 (このようなことをしている場合ではないでしょうに)   ローレライであるシトリとしては、別段関わっている訳ではないが、色々と思う所はある。  とはいえ、部外者であるメフィストとハイドに気取らせる訳にはいかないので、淡々と対応する。 「どのような用件で、今日は来られたんでしょうか?」 「実験の協力をお願いしようと思ってきたんです」  ハイドが応える。 「この前、学園生さん達から、異世界の技術を使って色々と要望を貰いましたからね。それを実現するべく、来たわけでして」 「それでしたら、わざわざ学園に来られなくても、セントリアで行えると思いますが」 「出来ない物もあるのでーす」  メフィストが口を挟む。 「特にー、ここの学園長って人のー、身体いじるには直接会わないとダメですしねー」 「何をする気なんです」  珍しく眉を顰めるシトリに、メフィストが応える。 「肉体に干渉してー、不調を治すためでーす。ここの子にー、頼まれましたからねー。発作を治したりー、無理なら新しい体に移すような方法を作って欲しいとー」 「……それは、副作用は無いのですか?」 「基本は肉体の初期になっちゃうのでー、元気になるでしょうがー、弱体化しちゃうでしょうねー」 「……恐らく学園長は望まないでしょうね」 「そうですかー? でも気が変わることもあるかもですしー、やっていきますよー。それでー、ひとつ聞きたいのですがー、この世界ではー、生まれつきの種族から変わることがあるのですよねー?」 「ええ。リバイバルとアークライトですね」 「それですよー。この学園にも居るんですよねー? それならー、ちょっーと何人か会わせて下さーい。サンプルとしてー、情報収集したいでーす」 「それなら私も」  ハイドも要望を出す。 「武器や防具、それに封印術式とかの実験に協力して欲しいんですよ。ウチだと作るのは出来ても、実践できるのが少なくて」  色々と要望を足して来る2人に、どうしたものかと悩むシトリだった。  シトリが悩んでいる頃、第一校舎『フトゥールム・パレス』の中にある、マスターラウンジでも来訪者が話をしていた。 「学食に新メニューを卸すって形で、話を付けました」 「話が早いわね」  機嫌よく言ったのは、アルチェの領主一族に連なる女商人【ララ・ミルトニア】。 「時間が掛かるかと思ったけど、有能ね」 「別段、俺の手柄って訳じゃないですよ」  肩を竦めるようにして、学園の卒業生でもある商人【ガラ・アドム】は返す。 「アルチェとボソク島のグルメバトルで、学園生の作ったメニューの評価が良かったですからね。そういう実績があったんで、どうにかなったってだけです」  少し前、とあるグルメバトルがあったのだが、それに学園生が参加していた。  その中で、グルメバトルで使う食材の輸出先であるボソク島の発展のため、継続したスポンサーを学園生の1人が探して回ったのだが、賛同したのがララという訳である。  彼女は継続した事業として動かしていくため、色々な場所を回っていたが、学園に訪れたのもそれが理由だ。 「原価はギリギリまで落としてあげる。ただし、食材の供給先はアルチェとボソク島に限定してよ。学園での口コミも、期待してるんだから」  学園には様々な地域から人が訪れるので、そこで味が知られれば、宣伝になると考えているのだ。 「そこら辺は万事抜かりないですよ」  ガラが応える。 「ひとまず、グルメバトルで学園生が作ってくれたメニューは確定で。それ以外何かメニューに加えられないか、試行錯誤中です」 「良いんじゃない。頑張って」  基本、人を動かすことに慣れているララは、笑顔で仕事を促した。  そんなこんなで、学園に訪れた来訪者たちは、思い思いに動いています。  同じころ、アナタ達は学園で課題をしています。  なにかの実験かも知れませんし、訓練かもしれません。  あるいは、書類仕事や調べ物をしているかも?  そんな中、一息ついていると、来訪者たちの姿をアナタ達は見つけます。  気になって声を掛けてみるのも良いですし、気にせず、自分の課題をしていても良いでしょう。  学園での、とある一日。  アナタ達は、どう過ごしますか?
学園での一日・魔物編 春夏秋冬 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-10-10

予約期間 開始 2021-10-11 00:00
締切 2021-10-12 23:59

出発日 2021-10-19

完成予定 2021-10-29

参加人数 7 / 8
 魔法学園フトゥールム・スクエア。  言わずと知れた、勇者の育成を掲げる教育機関だ。  年齢や種族を問わず学生として受け入れ、日々賑やかな生活が行われている。  各種依頼を引き受けるギルドを母体として始まったこともあり、現在も『課題』として様々な依頼を引き受けていた。  そんな学園に、幾つかのお客が訪れていた。 「おっきい」  今年で5才になる子供が大木を見上げる。  それは霊樹。  学園のシンボルであり魔力の貯蔵庫としての役割を持っている。  一時は枯れかけた事もあったが、学園生達のお蔭で、今では青々とした葉を茂らせていた。 「手、とどかない」  ぴょんぴょんと子供が『4本の足』で跳ねる。  ルネサンスが祖流還りで原種の姿になっている訳ではない。  元々、彼女はその姿なのだ。  ケンタウロス。  腰から上はヒューマンで、下は馬体の魔物だ。  魔物と言ってもケンタウロスは知性が高く、会話を交わすことも出来る。  魔王が、ヒューマンとルネサンス両方の力を持った生物を作ろうとして生まれた、という歴史を持つ。  その歴史から八種族と敵対しそうなものだが、そういう訳でもない。  そもそも魔物自体が、『魔王によって作り出された生物』という意味合いでしかない。  必ずしも、魔王に絶対服従、という訳ではない。  特に世代を重ねると、その傾向が薄れるとの研究もあるようだ。  それ以前に、いわゆる『人』とされている八種族と、それ以外の種族の差は、知性が一定以上あるかないかも前提だが、政治的な理由も過分に大きい。  いわゆる『魔族』と呼ばれる者達も、八種族と大差ない者達も大勢いる。  霊樹を前に跳びはねている女の子も、そうした『ひとり』だ。  少し前、学園生達により仁義と恩義を受けたケンタウロス族がいた。  その借りを返すべく、何かあれば『二度』までは共に戦うと約束をした。  けれどそのためには、学園と連絡が取れるようになる必要があり、いまケンタウロスの一団が学園に訪れている。  しかも、彼女達が約束した時に立ち会った学園生達との交流が切っ掛けで、学園での滞在も行われていた。  彼女達は羊を家畜として育てているのだが、それを連れて学園を回ることで、雑草の駆除をしている。  彼女達としても、羊たちに食べさせる草は必要だったので、お互い利のある状態だ。  という訳で、ケンタウロスの大人達は放牧に出ているのだが、子供達は別だった。  今まで見たことも聞いたこともない大きな大きな学園に訪れ、好奇心が刺激されている。  だから子供達の中には、探検するように学園を回っている者も居た。  いま霊樹を前にして跳びはねている【ツキ】も、その内の1人だった。 「ん、やっぱりとどかない」  さわさわ風で揺れる大きな枝に手を伸ばしながら、ツキは後ろに下がる。 「かけあがったら、のぼれるかな?」  助走をつけて、霊樹の幹を駆け上がろうとしていたのだ。すると―― 「そんなことしちゃダメだもん!」  小さな男の子の声が聞こえてきた。  不思議に思ってツキが振り返ると、そこには一本の若木が見える。  少し離れた場所には、芽吹いてからあまり経っていない新しい霊樹があった。  他には何も見えないのでツキが小首を傾げていると―― 「駆け上がったら霊樹の幹が傷付くもん!」 「木がしゃべった」  ツキは好奇心に目を輝かせて、若木に近付く。 「へんなのー」 「変じゃないもん!」  ツキにつつかれた若木は、地面から根っこを抜いて枝を振り上げた。 「僕はフォレストボーイだもん!」 「へんなのー」  フォレストボーイと名乗った若木(?)を、ひょいっと持ち上げるツキ。 「もってかえるー」 「そんなことしちゃダメだもん!」  じたばた暴れるフォレストボーイ。 「僕は霊樹も学園も、学園生も、みんなみんな守るんだもん!」 「まもるの?」 「そうだもん! それがじぃちゃんとの約束なんだもん!」 「おじぃちゃん?」  興味深げに、ツキは尋ねた。 「おじぃちゃん、いたの?」 「ツリーフォレストマンの、じぃちゃんだもん」  フォレストボーイは応えた。 「じぃちゃんは、死ぬ前に僕に頼んだんだもん。みんなを守ってくれって。僕は約束を守るんだもん。だから学園に居ないといけないんだもん」 「やくそく……」  ツキは想いを馳せるような間を空けて言った。 「わたしも、おじちゃんとやくそくしたの。ゆうかんな子になるって」  死んだ伯父と、かつて交わした約束を思い出し、ツキは鼻の奥をツンっとさせる。すると―― 「大丈夫だもん。きっと守れるもん」  フォレストボーイは、枝でツキの頭を撫でる。 「ここは勇者の学校なんだもん! ここに居たら勇気もりもりだもん!」 「そうなの?」 「そうだもん!」  フォレストボーイは、胸(?)を張る様に言った。 「勇気一杯になりたかったら、学園を見て回ると良いんだもん。案内するもん」 「あんない、できるの?」 「当然だもん! 僕はじぃちゃんの知識を受け継いだんだもん。行ってみたい所があれば案内してあげるもん」 「なら、えだまめのある所がいい!」 「え、枝豆?」  ぴしっ、と固まるフォレストボーイ。  しかしツキは、お構いなしに続ける。 「うん。このまえ食べたの。おいしかったの。だから、また食べたい」 「え、枝豆……」  悩んでいるのか、微妙にしおれた感じになるフォレストボーイ。 「むりなの?」 「む、無理じゃないもん! えっと、えっと……あっちに行ったら、きっとある筈だもん!」  そう言って、枝で指示したのは、世界中の植物を集め、生育している植物園『リリー・ミーツ・ローズ』がある方角。 「あっちに行ったら、きっとある筈だもん」 「わかった。いく」 「なら案内するもん!」  そんなこんなで、子供2人が『リリー・ミーツ・ローズ』に向かいます。  同じころ、アナタ達は学園で課題をしています。  なにかの実験かも知れませんし、訓練かもしれません。  あるいは、書類仕事や調べ物をしているかも?  そんな中、一息ついていると、奇妙な子供2人組をアナタ達は見つけます。  気になって声を掛けてみるのも良いですし、気にせず、自分の課題をしていても良いでしょう。  学園での、とある一日。  アナタ達は、どう過ごしますか?
【泡麗】誘惑の吐息 桂木京介 GM

ジャンル サスペンス

タイプ EX

難易度 簡単

報酬 少し

公開日 2021-10-11

予約期間 開始 2021-10-12 00:00
締切 2021-10-13 23:59

出発日 2021-10-18

完成予定 2021-10-28

参加人数 4 / 4
 またこいつか、と【ヒノエ・ゲム】は左腰にこぶしを当てた。 「……で、注文は?」  さっさと決めろよな、と無愛想そのものの表情で右手のフライ返しを左右にふる。  ローレライはアハハと笑った。 「あいかわらず接客をしようという姿勢すら見せないね。すごいな」  うっとりしたような口調だ。  しかし返すヒノエの対応ときたら、コップ一杯の冷や水をぶっかけるかのごとく冷たい。 「アホか。これのどこが誉められた態度だ」 「そこがいいんじゃないか。素敵だよ」 「す……」  面食らったらしくヒノエはしばし言葉を失ったがようやく、 「……素敵って何だよ」   ぼそっと小声で告げ、「じゃあA定食な!」と一方的に注文を決めてしまって、揚げ物だのポテトサラダだのを乱暴にトレーに載せていく。そんな彼女の様子を、ローレライの少年は目を細め楽しげに眺めるのである。  じろっと三白眼でヒノエはトレーを突き出したが、少年は満面の笑みで受け取った。 「僕、お姉さんのこと気に入っちゃったな」 「うるさい。とっとと席につけ。後がつかえてる」  行列には誰も並んでいないのに、ヒノエは荒々しく声を立てた。  ――変なヤツ!  ヒノエは元密輸商人だ。禁制品の運搬にかかわっていたが、学園に懲らしめられて引退。多額の借金を背負った父親のために、現在は学生兼調理配膳係としてフトゥールム・スクエア内の学食で働いている。  仏頂面で愛想のひとつも言わず、いつも不機嫌な猫みたいな目で仕事をしているヒノエに、このところよく声をかけてくる学生がいた。【ミゲル・アミーチ】と名乗るローレライで、ヒノエよりずっと年少に見えた。  このミゲル少年がしばしば、というかこのところ毎日、それもつねに食堂がガラガラになる時間帯にばかりやってきては何かと話しかけてくるのである。  ミゲルは澄んだ水色の髪、おなじ色の瞳、あどけない風貌のいわゆる美少年というやつだ。だがあいにくとヒノエの好みは年上、そうでなくてもせめて同年齢(タメ)だ。こういうお子様には興味がない。……自分だって十四歳だったりするのだがそれはさておき。  なのに、 「明日も来るからね」  などとミゲルが言って去ると、そう悪い気はしなかったりもする。 (何やってんだ、私――)  ガシャガシャ音を立て食器を洗いながら思う。 (寂しいのかな)  絶対に認めたくないが、そういう気持ちもあるのかもしれない。  ヒノエには、このところあまりいいことがない。それどころかいら立つことばかりだったりする。借金の金額たるや気が遠くなるほどだし、嫌々参加している授業とくに座学は退屈だし、日々は単調だし……それなりに親しくしている学園生ともこのところ交流がなかった。なんだかうるおいに欠けている気がするのだ。  だからかもしれない。  お姉さんのこと気に入っちゃったな、か――。  妙にこの言葉が、ヒノエの心に残ったのは。 (平然と言いやがって。クソッ)  なんだか胸がこそばゆい。  ★ ★ ★ 「平然と言うのが肝心だよ」  ミゲルは唇を斜めにつりあげた。ヒノエに相対しているときには決して表にしない表情だった。 「ああいうおぼこい娘は直球の態度に弱い。あと一押しといったところか」  さすがミゲル様、見習いたいものです、と口々に称賛が起こる。  学食の裏、ちょうど木立になっていて陽が射さない場所だ。ミゲルを囲むように数人の若者が立っている。  若者の男女比は半々くらいだろうか。だが種族という意味では偏りがあった。全員ローレライなのだ。黄金、白、濃いブルー、髪は色こそ多様だが、いずれも水のような流体であることからもあきらかだろう。 「ヒノエと言いましたか? あの娘がそれほど重要とは思えませんが……」  知的な風貌の女性ローレライが言った。真新しいフトゥールム・スクエアの制服を着ている。 「そうか、リリィは知らなかったか」  作戦に参加して間もないからな、とミゲルは言った。 「あの娘はああ見えて、学園主力メンバーとのつながりがある。メメルの覚えもめでたいようだ。それでいて自我が弱い。だから」 「引き抜きにはもってこい、というわけですか」  ミゲルは鷹揚にうなずいた。 「ヒノエが裏切れば学園長メメルも動揺するだろうな。かなりな」  なお、ミゲルが名乗る『アミーチ』なる姓は偽名だ。彼は本名を【ミゲル・シーネフォス】と言い、ローレライ代表リーベラント王国の王族である。具体的には現在の代王【アントニオ・シーネフォス】の実弟にあたる。ついでにいえば、外見こそ十三歳くらいに見えるが実年齢ははるかに上だった。 「ヒノエは私に任せろ。お前たちは総勢であと三、四人はヘッドハントするのだ。相手は学生でも職員でも構わん。学園の連中を骨抜きにしてやれ」  手段は各自に任せる、とミゲルは言った。 「色じかけ、金銀、あるいは知識や将来の特別待遇、何でもいい! 連中が食いつきそうなものは王弟の名において許す」  足元に置いた学食のトレーをミゲルは蹴倒した。手つかずの料理が四散し土にまみれる。 「こんなまずいものを食わされている連中だ。さぞや誘惑には弱いことだろうよ」  あざ笑うように言った。さすがにこの所業には表情を曇らせたローレライもあったようだが、声を上げられる者はなかった。 「たとえ『勇者』を目指していようと、我々のリーベラントへの忠誠心にはおよばぬものだ。信念にとぼしそうな学園生、心の弱そうな学園生を標的に定めよ。目標は一人一殺だ。では解散!」  ミゲルが号令するや、学園生に化けた、あるいは旅人の風体をしたローレライたちはぱっと四方に駆け出した。
ご自慢の絵を持っといで K GM

ジャンル イベント

タイプ ショート

難易度 簡単

報酬 通常

公開日 2021-10-01

予約期間 開始 2021-10-02 00:00
締切 2021-10-03 23:59

出発日 2021-10-10

完成予定 2021-10-20

参加人数 5 / 8
●新たな試み始まる 「発案者は私じゃなくて、あなたのところの生徒さんです」  そう前置きして【セム・ボルジア】は、学園長【メメ・メメル】に、とある企画書を手渡した。  メメルはそれを読み、ほほう、と楽しげな声を上げる。 「アマチュア限定の美術展覧会……なかなか面白い試みだな。いいんでないの? まだ名もなき芸術家たちに、日の目を見るチャンスが増えるわけだから。しかし、参加出品料結構な額じゃの」 「そうですか? 安いものだと思いますがね。まだ何者にもなっていない人間の作品を、一流ホテルのイベントホールに展示してあげようというのですから。これはボランティアじゃありませんからね。経費もろもろ差し引いて、黒字とは言わないまでも赤字にならないだけの利益は確保しませんと」 「根っから商売人だなセムたん。で、その展覧会を、わがフトゥールム・スクエアとの共同開催にしたいとな?」 「ええ。今言いましたけど、これはそもそも学園の生徒さんが提案してきたことですし……あなた方の名前をメインにすれば、参加者の方々も安心出来るかと思いましてね」  セムは、タバコの火を灰皿に押し付ける。ずるそうに口元を吊り上げて。 「可能なら、芸能・芸術コースの生徒さんにも出品していただきたい。それなら、一定水準のクオリティは保証されていますからね……その旨、学園内で告知していただけますか? 集団参加ということでしたら、出品料を幾らか割り引きしてもよろしいですよ?」 「んー、ま、よかろ。ところで出品内容についての規定はないのか? 著しく公序良俗に反するもの、明らかにパクリと思えるものは展示致しかねます、とか」 「特にありませんが」 「した方がいいと思うぞー。愉快犯みたいな連中、世の中たくさんおるからなー。キワキワどころか完全アウトな代物わざとこさえてくる可能性もないとは言えん」 「そういう手合いのは一カ所にまとめて、隔離しておけばいいんですよ。この先問題のある作品が展示されていますと銘打って、成人以外立ち入り禁止。作者の名前と作品内容は、入り口に掲示しておきましょう。そうしたら嫌な人は、見なくてすむでしょう?」 「……そうだな、そういうやり方もあるな。つーか、その方がいいな。怖いもの見たさの客を引き付けること、間違いなしだ。セムたんの悪評がまたひとつ増えそうな感じはするが」 「そのくらいは容認しますよ。名より実を取るのが私のやり方でね」 ●世にごまんといる、知る人も知らないアーティスト――のうちの一人 「こっ、これは……」  魔法学園と『ホテル・ボルジア』のコラボによるアマチュア展覧会の話を耳にした貧乏画家は、わなわな震えた。 「と、とうとうわしの絵が日の目を見るときが来たか……!」  苦節数十年、描けども描けどもちっとも売れず――それでも描き続けた。  稼がなくては生きて行けないので、致し方なく港湾の警備人としての職につき、糊口をしのぎ――描き続けた。  あげく妻子に愛想を尽かされ逃げられてしまったが――描き続けた。  出品料はかかるようだが、手の出ない額ではない。一カ月食うものを半減させればどうにかなる。『ホテル・ボルジア』と言えばその名も知らぬ人間はない一流ホテル。そこに展示されれば、たくさんの人が見てくれる。中には自分の芸術を理解してくれる人もいるはずだ。というか、いてくれ。頼む。  必死の願いを胸に秘めた画家は、これまで描いた絵のうちで一番の傑作を持ち出す。受付会場へ向かう。  そして……自分と境遇の似通った人間が、世の中には思った以上に多く存在していることを知る。 ●生徒さんたちお手伝い  本日【アマル・カネグラ】は、他の生徒達とともに展示会のお手伝い。  イベントホールに移動式のついたてを並べ、通路を作る。  床に絨毯を敷いたり、案内板を置いたり。入り口にパンフレットを並べたり。やることはたくさんある。  中でも一番大事な仕事が、絵の仕分け。  自費出展とあって、ちまたのコンクールなどで見られないような変わった題材や描き方をしたものが次々運び込まれてくるのだ。公序良俗に反する者はゾーニングせねばなるまい。  ところで中には、これが絵だろうかと首を傾げたくなるものもある。  目下アマルが手にしているのが、まさにそれだ。 「うーん……こうかな? いや、こうかな?」  彼はキャンバスをクルクル回す。それというのもどっちが上でどっちが下なのか、さっぱり分からないからだ。  絵のタイトルは『華麗なるシュターニャの遠景』。  だが実際に描かれているのは、無数に交錯する多色の直線――ただそれだけ。 「……どのへんがシュターニャなのかなあ……?」  どっちにしても分からなかったので、気に入った方を下にして掲げることとする。  続いての絵は……どうにもこうにもあられのない女性の絵としか表現出来ないもの。  アマルは鼻の下を延ばしつつ、その絵を、隔離ゾーンに持って行く。 「これは間違いなくこっちだね」  そのとき頭の上に、暖かいものがポンと飛びのってきた。  何かと思えば、猫――【赤猫】である。 「こら、降りろ」  そう言われても赤猫は知らん顔。頭の上からどかない。ばかりか、絵にちょっかいを出そうとする。あえて人が嫌がることをしようとするあたり、魔物のときからの性格は変わっていないらしい。 「こら、駄目だって。傷をつけたら! これは展示が終わったら持ち主に返すんだから!」  アマルは丸い体で絵を抱き込みガード。  そこに、声。 「こら、邪魔しちゃだめよ猫ちゃん」  赤猫はアマルの上からポンと飛び降り、声の方に――【ラインフラウ】のほうに向かう。甘えた声を出し、抱き上げてもらう。どうやら、彼女によくなついているらしい。  続けて【セム】がやってきた。憮然とした顔で。 「ここにいたんですか。全く、手に負えませんねこのけだものは」  赤猫はわあーおと鳴いてラインフラウの腕から抜け出す。  セム自身はかまおうとしないのだが、そんなことはおかまいなし。彼女の足を八の字に回り、存分匂いつけをする。察するに、一定の好意を持っているようだ。
【天遣】rivalizar - 始動篇 春夏秋冬 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 なし

公開日 2021-09-27

予約期間 開始 2021-09-28 00:00
締切 2021-09-29 23:59

出発日 2021-10-06

完成予定 2021-10-16

参加人数 6 / 8
 海洋国家リーベラント。  広大な国土を持ちながら、国民が少ないことで知られている。  幾つかの例外を除いて、ローレライの民にしか国籍を認めない方針をとっていた。  王の名は、【クラルテ・シーネフォス】。  かつて魔王を封印した九勇者の直系の子孫だ。  そんな彼の居城に、【メメ・メメル】は訪れていた。 「で、オレサマを呼び出した理由を聞こうか」  片肘をテーブルにのせて首をかたむける。 「まず、申し上げておこう」  急病で臥せった王に代わり、王太子である【アントニオ・シーネフォス】は言う。 「ありていに言って我らはもう、あなたたちを信頼していないということを」 「ふぅん」  知ってるよ、と言わんばかりにメメルは薄笑みを浮かべた。 「そっちの親子も同意見かい?」  視線の先には、どこか神々しい光を背負ったような男女の姿がある。  達観したようなまなざしからして、アークライトと見てまちがいないだろう。 「同意見とお考えください」  アークライトの女性が言った。アントニオとはちがい糾弾するような口ぶりではない。けれど毅然として、書道家が書き始めの筆を運ぶときのように、自分の発言に疑いをもっていない様子だった。彼女は【セオドラ・アンテリオ】という。年若い。  もう一人は黙ってうなずいただけだった。セオドラの父親【テオス・アンテリオ】だ。テオスもやはりアークライトであり、アークライト族の代表者でもあった。  セオドラの言葉を継ぐように、テオスも考えを口にした。 「フトゥールム・スクエアは先日、火の霊玉を魔王軍に奪われたと聞いている。そのような醜態をさらしたのは、ひとえに、長である貴殿の責任であろう」  魔族を自称する【怪獣王女(ドーラ・ゴーリキ)】、そして魔王軍と名乗った【ドクトラ・シュバルツ】との交戦の結果、火の霊玉は失われてしまったのだった。  正確にいえば、魔王軍の手に火の霊玉があるとは言い切れない状況ではあった。霊玉は消失したのであって奪取されたわけではない。怪獣王女が魔王軍と共同戦線を組むとも言い切れない。  だがこのところ学園に批判的だったアークライト族代表テオスはこれを奇貨として学園を公然と非難し、まだしも中立的であろうとしたクラルテから代替わりしたローレライ族代表アントニオもこの流れに乗り、メメルを召喚して会談という名の糾弾を行う流れとなったのである。 「もはや学園に霊玉の管理を任せることはできない。土の霊玉を宿すという少年ともども、すべての霊玉の引き渡しを要求する。我らに任せるべきだ」 「ははは、ノー・サンキューと言っておこう。ベリー・ノーだな☆」  その『ベリー・ノー』って文法的に正しいの……? とコルネがつぶやいたが誰も聞いていない。 「なぜ」 「学園が管理するのが一番安全だからだよ。わからんかねチミィ」 「そうでしょうか?」  セオドラが言う。 「学園と、そこで育ったかたがたに力があるのは知っています。ですが、それが正しく使われるとは限らない。過日、研究都市セントリアで起ったテロ事件。これを元学園生である【ディンス・レイカー】が主導して起こしたことは、力が正しく使われなかった証拠でしょう」  それは! とコルネが言いかけるもメメルは手で制した。 「……ディンスのことで責めがあるなら、いくらでも聞く用意がある。でも霊玉の保管については別だな。霊玉を分割して持っているのが危ないことはオレサマも認めるが、だったらなおのこと、そちらが持っている水の霊玉と光の霊玉を学園に渡してほしいと言いたいな♪」 「私たちは、フトゥールム・スクエアはもう信頼できないと言ったはずですが」 「リーベラントなら信用できるというのかな?」  かつて、霊玉は各種族の代表や勇者の直系の子孫がそれぞれ分けて有すことで各種族のパワーバランスを保ち、政情の安定を図っていた。  だがそれは平時の話だ。  魔王軍が活発に動き出している今は有事である。  分散させていた力をひとつに集める必要が出てきたのだ。 (クラルテが病で倒れなければ……)  メメルとしては、事態の急変が悔やまれる。  リーベラントの王であるクラルテは、ときとして尊大な態度をとることもあったが基本は進歩的で、フトゥールム・スクエアにもたくさんの学生を送り出してきた。クラルテなら他種族と協力して危機を乗り越える道を選んだだろう。リーベラントに霊玉を集めるなどと無謀を言わず、学園を拠点とすることに応じたはずだ。  しかし彼の息子であるアントニオはちがう。  父とは正反対で、ローレライ第一主義をとり、ヒューマンやルネサンスを『化外の民』と呼んで見下している。魔法力文化力にすぐれたローレライこそが各種族を束ねる立場であると断じ、一方で魔王軍に対しては早期の封じ込めを主張していた。  それだけでも問題だが、そこに追い打ちをかけているのが、アークライトの代表であるテオスだ。  彼も、元々は他種族と協調して危機を乗り越えるべしと唱える人物だったが、事情が変わってしまった。  アークライトとなって、すでに18年が過ぎた彼は、もはや寿命が近い。  そのため、自身と同じくアークライトとなった娘であるセオドラに対外的なことを任せている。  だがセオドラは父とは違い、アークライトこそが力を束ね、魔王軍を討つべしという強硬派だ。  結果、それぞれが霊玉の所有を主張しているのが現状だった。  苦悩するメメルに、テオスが言った。 「力を束ねる必要がある。それに異論はないでしょう」  鐘のようによく通る、澄んだ声だった。  アークライトとして同胞に寄り添い、精神的支柱として支えてきた彼の人生を感じさせるような声。  だからこそ、メメルを含めた全員は耳を傾けた。  テオスは提案した。 「言葉ではなく、行動で示しましょう。我々アークライトは、今までフトゥールム・スクエアにあまりに多くを任せすぎていた。しかし現在の我々は、各地の騒動の解決だけでなく、魔王軍に対する備えもはじめています」 「それは、学園になりかわるってことか?」 「いいえ。より相応しい者が、全てを束ねるというだけです。メメ・メメル、我々は、その覚悟がある。それを示すため、我々は今まで学園に任せていた業務を代行させていただく」 「あえて露悪的に言うが許せよ。それってもしかして、自分たちの方が巧くやれるから、フトゥールム・スクエアは引っこんでろってことか?」 「そう思っていただいても構いません。反論があるなら、結果で示して下さい。そうでなければ、納得が出来ない」  テオスの言葉に、アントニオも賛同した。  かくして、三つ巴の競争が、これから起きることになる。  学園が課題として受けていた依頼に、ローレライやアークライトの勢力が横槍を入れはじめたのだ。  目的は、自分達の優位性を示すこと。  学園よりも早く、あるいは確実に依頼をこなすことで、霊玉の所有者に相応しいと知らしめようとしているのだ。  少しずつではあるが、それは現実のものとなりはじめている。  このまま手をこまねいていては、メメルの学園長の辞任要求を起こされ、学園を実効支配されかねない。  それを防ぐためには、今まで以上に、課題を達成していく必要がある。  この状況で、あなたたちは、どう動きますか?
【泡麗】rivalizar - 始動篇 桂木京介 GM

ジャンル 戦闘

タイプ ショート

難易度 難しい

報酬 通常

公開日 2021-09-27

予約期間 開始 2021-09-28 00:00
締切 2021-09-29 23:59

出発日 2021-10-06

完成予定 2021-10-16

参加人数 6 / 6
 どうにも、とつぶやいて【メメ・メメル】は壮麗な大門をくぐった。  門は大理石や木材製ではなく、ましてや土や骨でできているものでもない。  水だ。たえず噴き上がる蒼い水柱が城門を形成しているのだ。高さはメメルの十倍はあろうか。水の壁がさっと左右にわかれ、大広間への道を空けたのだった。  足元は石材、しかし左右はたえまなく流れる水柱、霧のごとく吹きつける飛沫(しぶき)をものともせず、メメルはマントをひるがえし場内に立ち入る。  背後で門が閉じた。  百人は優に収容できそうな広間だ。天井は貝殻、それも空前の大きさのものが一枚あるきりで、これを珊瑚からなる太い四本の柱が支えている。それ以外の壁はすべて水流である。  外とことなり宮殿内は閑(しず)かだった。針の一本を落とす音ですら響きわたりそうなほどに。水もかからない。特殊な結界にでも包まれているものと思われた。 「どうにも……なんですか?」  唯一メメルにつき添うのは【コルネ・ワルフルド】だ。静まりかえっているからか、ささやくような声でメメルに話しかける。 「なんじゃね」 「さっき宮殿の門をくぐるとき学園長言ったじゃないですか、『どうにも』って」  ああそれか、とメメルは面倒そうに答えた。 「どうにも辛気くさくなったな、と思っただけだ」  コルネよりはるかに大きな声だった。この場にいる者たちに聞こえるように言ったものと思われた。  宮殿の奥、玉座に座る人物はメメルに冷ややかな視線を向けている。 「辛気くさくなった、とはご挨拶であるな。メメ・メメル学園長」  ふんとメメルは鼻で笑った。 「率直な感想を言ったまでだが? チミの父王【クラルテ・シーネフォス】がまだその玉座に座っておったとしたら、オレサマたちにこんな冷たいもてなしをしたりはせんかったろう。酒のひとつでも用意してな♪」 「代が変われば世が変わる、と申す」 「承前啓後という言葉もあるぞ☆ いいものは引きつぎ発展させよという意味だ。クラルテは自分にも他人にも厳しい男だったが、それでも客をもてなす礼儀は知っておったな」 「ちょっと学園長……!」  コルネはハラハラしながらメメルの肩に手を置いた。  宮殿で待っていたのは玉座の人物だけではなかった。武装した兵士が数十人、玉座の左右に控え兜の奥から目を光らせているのである。  玉座にあるのは、黄金の髪をしたローレライの青年だ。流水の髪が泡立っている。女性と見まがうような玲瓏な顔立ち、濃い橙色の瞳がとりわけ美しい。ただ、細い眉は鋭くつり上がっており、排他的な性格と意思の強さを感じさせた。  名は【アントニオ・シーネフォス】、海洋国家リーベラントの王クラルテ・シーネフォスの嫡男で、病に倒れた父王にかわり玉座についている。正式な継承がおこなわれていないためまだ王太子という扱いで、名乗るとしても『代王』でしかない。だが事実上のリーベラント君主であり、古来の習慣にしたがえばローレライ族の代表者でもあった。  傲然とアントニオは告げた。 「王の前では脱帽するのが礼儀であろう」 「父親に聞いとらんのか? このオレサマ、フトゥールム・スクエア学園長メメ・メメルには、そういったつまらん儀礼を無視できる特権がある」  そもそも、とメメルは腕組みするのである。 「席くらい出さんか小僧。オレサマはチミの同盟者であって臣下ではない!」  金属のこすれあう音が立った。兵士が一斉に槍を構えたのだ。兵はみな長い髪を兜からのぞかせている。流体の髪質からして、全員ローレライなのは瞭然だ。 「あーもう! 学園長はどうしてケンカ売るような言いかたしかできないんですかっ!」  コルネも構えざるをえない。無傷でここを出るのは難しい、と覚悟していた。  だがアントニオは黙って手をふった。兵士らは警戒姿勢を解き直立する。 「誰ぞ、学園長と侍従殿に席を」  簡素ながら席が運ばれてくる。 「失礼した、メメル学園長」  口調こそ謝辞だが、アントニオの表情は怒りをこらえているように見えた。  海洋国家リーベラントは広大な国土をもつローレライの国家である。  歴史は古く、九人の勇者が魔王を封じたときよりつづいている。リーベラント王が代々、ローレライ族の代表をつとめていることからもそれは明らかだろう。  だが強国とは言いがたい。国民が少ないのだ。領土のほとんどは無人地帯なのである。  理由は単純だ。ごく少数の例外をのぞき、ローレライ族にしか国籍を認めない方針をとっているからだった。ローレライは繁殖力にたけた種族ではない。この方針をいとい出ていく若者も少なくなかった。ゆっくりと、しかし着実にリーベラントは衰亡の途上にあった。  現在の王は前述のようにクラルテで、魔王を封印した九勇者の直系子孫だ。しかしクラルテは最近病に倒れ、現在は王太子アントニオが政(まつりごと)をとりおこなっている。  一席と小卓を与えられ、また飲み物も運ばれてきた。メメルはグラスを取ると一息で飲み干した。  なんだ水か、ジンくらい出せよなと不平を言ってから、 「……で、オレサマを呼び出した理由を聞こうか」  片肘をテーブルにのせて首をかたむける。 「まず、申し上げておこう」  アントニオは目を怒らせた。 「ありていに言って我らはもう、あなたたちを信頼していないということを」 「ふーん」  知っとるよ、と言わんばかりにメメルは薄笑みを浮かべる。 「そっちの親子も同意見かい?」  視線の先には、アークライトの代表者【テオス・アンテリオ】と娘の【セオドラ・アンテリオ】の姿がある。  コルネは代王アントニオ、そしてアークライトの二代表の様子をうかがい、メメルに視線を戻した。  相変わらず学園長は不敵な笑顔のままだ。口には出さねど『かかってこい』とでも思っているのか。  これはただではすまないね――コルネは心のなかでつぶやいた。  フトゥールム・スクエア弱し! ローレライ代表アントニオは断じ、アークライトの代表者たちもこれに応じた。  火の霊玉を目の前で奪われた学園に、他の霊玉を守護する力はないと彼らは口を揃える。そればかりかローレライ、アークライトのそれぞれが、自分たちこそ守護者たらんと名乗りをあげたのだ。  三つ巴の競争がはじまろうとしている。  学園が受けた依頼に、ローレライやアークライトの勢力が横槍を入れはじめるだろう。  このまま手をこまねいていては、メメルの学園長の辞任要求を起こされ、学園を実効支配されかねない……!  ◆ ◆ ◆  徒歩にして数日は東に下った地点へと場面は移る。  リーベラントで発生している事情などついぞ知らぬまま、あなたたちは作戦行動に入ろうとしていた。  陽が沈んで久しい。水塞までもうじきという距離にいる。  水塞と書けばものものしいが、要は川を背にした砦だ。水門に木の櫓を足して拠点にしたものだった。  かつて悪漢どもがたてこもっていたこともある。だが現在は駆逐されてしまい、もっと厄介なものが水塞の主におさまっている。  蛟(ミズチ)というモンスターだ。二足歩行するが身長は低い、好戦的かつ凶暴で、集団になるとことさらに厄介な相手である。蛟たちが水塞にこもり、付近を通りかかる人間を襲うようになったという。数は二十近い。  あなたたちの使命は蛟の排除と水塞の占領である。  弱敵ではないが蛟には知恵がない。進入路を発見し内部に突入、火でもかければたちまち蛟は混乱に陥るはずだ。楽勝とまではいかずとも、着実にかかればまず勝てる戦いだと思われた。  実際に作戦がはじまるまでは。
ギガンテス・ネゴシエーション 春夏秋冬 GM

ジャンル 日常

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-09-19

予約期間 開始 2021-09-20 00:00
締切 2021-09-21 23:59

出発日 2021-09-28

完成予定 2021-10-08

参加人数 4 / 8
「ばいばーい!」 「またねー!」  ボソク島の船着場から、子供達が見送りながら手を振っていた。 「またねー!」  ぶんぶん手を振りかえすのは巨人の子供【ガニメデ】だ。  彼は、魔王軍に操られ島を襲ったのだが、学園生達の奮闘で解放されている。  その後、学園生達の協力もあり島で生活していたのだが、故郷へ連れ帰るための船が用意出来たので、帰郷となった。 「……もう、見えない」  船のへりで、ずっと島を見ていたガニメデだが、もはや島が点にしか見えないぐらいに離れている。  今ガニメデが乗っている船は、風を操る魔法と水を操る魔法を使った高速艇。 「……ぐす」  一緒に遊んだ友だち達の姿が見えなくなり、涙ぐむ。すると―― 「そう湿っぽい顔すんな。また会いに来れば好いんだからよ」  明るい声が掛けられる。  声の主は【ガラ・アドム】。  商人にして学園卒業生の彼は、ガニメデを故郷に返してやるために船の手配をした人物だ。 「……また、遊びに行ける?」  ちょこんと、身体を縮めるようにして座りながらガニメデは問い掛ける。 「心配すんな。また来れるさ」  ガラは、ちょこんと座るガニメデを見上げながら言った。 「ボソク島との交易路を拡充する為にも、船は定期的に出すつもりだからな。ちゃんと準備すれば、遊びに行けるぞ」 「ほんとう?」 「ああ。でも、その前に家族を安心させてあげないとな。会いたいだろう?」 「うん……父ちゃんと母ちゃんにあいたい……おうち、かえりたい……」  話している内に、望郷の念が湧いて来たのか、大きな一つ目に涙を貯めるガニメデ。 「心配すんな! おいちゃんが返してやるからよ!」  ガラは笑顔で言った。 「帰る時は学園生に――ほら、前に島で遊んでくれた兄ちゃんや姉ちゃん達がいただろ? そこに護衛で来て貰えるように手配してるから、何の心配もないぞ」 「……うん!」  泣き笑いで応えを返すガニメデに、ガラは笑みを浮かべながら続けて言った。 「それでな、みんなで一緒に行くんだけど、そん時に、学園生以外の大人も一緒について来るけど、そっちも心配しなくても良いからな」 「おとなの、ひと?」  首を傾げるガニメデに、ガラは続ける。 「研究都市セントリア、って難しいこと言っても良く分かんないわな……んー、まぁ、色んなことを調べたりしてる所なんだけど、そこの人が付いて来るんだ」 「なんで?」  好奇心を浮かべて尋ねるガニメデに、ガラは応える。 「ガニ坊の父ちゃん達に、作って欲しい物があるんだ。ガニ坊の父ちゃん達は、なんでも造れるんだろう?」 「うん! 父ちゃんたち、すごいの。いろんなもの、つくれる」  ガニメデ達、巨人種サイクロプス族は、雷を操り様々な物を作ることに長けている。  しかし、その業が災いし、彼らの武具を巡って争いが起きたことがあり、今ではトロメイアにある大陸随一の高山、アルマレス山に連なる山岳地帯に隠れるようにして住んでいた。 (ガニ坊のことがあるから、こっちの印象は悪く無いが、交渉は気を使わねぇと)  ただでさえ魔王軍にガニメデが浚われて気が立ってる。  最初に話をしに行った時は、生きた心地がしなかったぐらいだ。 (その辺も、後輩たちに任せるかね)  御膳立てに全力を尽くすことにしているガラは、その後のことは学園生達に任せることにしていた。  そして船は、アルチェに到着。  そこからは陸路で向うことにしており、一緒に向かう学園生達を待っていた。すると―― 「ああ、居た居た! 巨人が居ると目立つから見つけやすくて助かりますね」 「迷わずにすんで好かったでーす」  ヒューマンの男性と、フェアリータイプのエリアルに見えるオッサンが近付いて来た。 「どうもどうも。貴方、ガラ・アドムさんですよね? 私、セントリア中央研究所の責任者をしてます【ハイド・ミラージュ】と言います」 「【メフィスト】でーす」 「あぁ、話は聞いてます。同行するのは、お2人だけですか? 「ええ。学園生さん達はともかく、私達があまり大勢で行くと警戒されるかと思いまして」  ハイドが説明する。  彼らが同行するのは、サイクロプス達に、必要とする材料を作って貰うためだ。  少し前、学園生達と共にセントリアで話し合いが行われた。  それは異世界の技術を流用し、何かが作れないかという物だった。  幸い、技術面では幾つか目処が立ち始めていたが、肝心の材料を手に入れる算段が出来ていなかった。  異世界の門となる特異点を安定して固定するための『界錨』や、仮面による支配を防ぐ結界を張るための『支柱』などなど、設計図は組めても作るための材料が無い状況だ。  それを作れるサイクロプス達と継続して交易できないか、というのが彼らの目的である。 「まぁ、その辺の交渉はお任せします。どーにも、うといもので」 「頼みまーすねー」  ガニメデと鬼ごっこするメフィストの声を聞きながら、どうしたものかと考えるガラだった。  この状況で、アナタ達は同行することになります。  巨人の子供であるガニメデを故郷に届け、サイクロプス族に継続した材料の交易をして貰えるように交渉するのが、皆さんに出された課題です。  幸い、今までの学園生達の奮闘により、サイクロプス族は皆さんに対して好意的なようですが、交渉を間違えると失敗することもあり得ます。  今後の魔王軍との戦いのためにも、ぜひ交渉を成功させて下さい。
【幸便】曇り顔と隠されたモノ 根来言 GM

ジャンル 冒険

タイプ ショート

難易度 普通

報酬 通常

公開日 2021-09-17

予約期間 開始 2021-09-18 00:00
締切 2021-09-19 23:59

出発日 2021-09-25

完成予定 2021-10-05

参加人数 4 / 8
 グラヌーゼの森に位置する霧の地。  その地から生徒たちが帰還して、幾日かの日が経過した。  持ち帰った情報の数々を言葉で表すならば、『未知』。  奇妙な植物に不可解な生物。そこにあった建物からも、これまた未開の地下室が発見された。  それは単なる興味か、はたまた何かしらの使命感かはさておき。  一部の生徒や教師、あるいは学園の関係者たちはその未知を少しずつ探っているようだ。  学園の一角に位置する巨大な植物園「リリーミーツローズ」。  数々の植物の栽培を行い、そしてその植物達それぞれに適した環境を用意できる数少ない施設である。  まさに、植物の研究をするにはこれ以上ない場所といえよう。  水の量、日の当たる位置、湿度に温度。  肥料。あるいは土の堅さ、周囲の植物の影響。  ありとあらゆる環境を試み、やがて彼女達は声を揃えて言った。 「変な植物ですね」 「ヘンテコな植物だな」  ●  学園内に存在する学園長室の、内1つ。  口を尖らせ身振り手振りを交えつつ、ある植物について報告が行われていた。  件の地から生徒達が持ち帰ったとある植物の種子。そしてその成長記録。  学園の植物園は、ありとあらゆる植物を研究し、栽培しているといっても過言ではないほどに大規模な施設だ。  そして、そのような施設の管理を任された2人の少女【リリー】と【ローズ】もまた、ありとあらゆる植物に関する知識と技術を持つ知識人である。  ……が、今回の植物はそんな2人の知識を持ってしても栽培が困難らしく。  2人の言葉を整理したものが以下の通り。  ・成長した植物は種子ごとにそれぞれが米・トウモロコシ・小麦の何れかとなってしまう。  ・成長した物は、大陸で主に普及している穀物と全く同じ物のようである。  分からない・難しい・変。その3単語が永遠と並んだような報告を聞き終わり。 「なるほど~? つまり、くっつけちゃったわけだな!」  1人納得した声を上げる【メメ・メメル】。リリーとローズは互いに顔を見合わせた。 「メメルは何か知っているのです?」 「メメルは何を知っているんだ?」 「……っと、これこれ!」  机に積んだ本の山から、1冊の本を抜き出す。  ドバドバと落ちる他の本も、あーあと口を開けるローズの姿もメメルは全く気にしない。本をめくり、彼女らの問に答える。 「魔力に干渉されない、魔力の壁や障壁。まぁ、すごくわかりやすく言うと、結界だな。実は、封印の裏技みたいな、面白い活用法がある。……理論上はできるのではないか? っていう机上論どまりの論文だけど。結構昔のものだけど」  指さすその項目に書かれた文字をゆっくりと指でなぞる。 「2つの異なる物質を魔力の壁で囲み、1つの部屋を作る。んで、その壁をどんどん小さく、小さくしていき、物質をこれ以上ないほどに押し潰す。……2つの物質はやがて壊れ、けれど魔力の粒子は出口を失い、霧散せずそのまま混ざりあい、溶けあい、1つとなる。上手くいけば2つの性質を持った1つの物質となる。所謂キメラの完成ってわけだな」  そして、そのキメラこそが、今回持ち込まれた植物だろう。メメルはそう結論付ける。 「かなり昔の論文だし、もう実現されていてもおかしくはないと思うぞ。もっとも封印とかを研究している学者とかマイナーだからなぁ……」 「今までの私達の知識を否定されたような魔法ですね? 色んな毒を合わせた毒草とかできてしまいそうです」 「そんなこと出来たら、なんでもアリの植物もできちゃうじゃないか? 怪我とか病気とかをいっぺんに治せる薬草とか」 「まぁまぁ、リリーたんもローズたんも、落ち着き給え☆ キミ達も知っての通り、完璧とはいかないみたいだ。ほら、例の植物は栽培とかほぼ不可能みたいだし」  かの土地で生徒達が見たというコカトリスも恐らく、なんらかの欠陥があったのだろう。報告を聞く限り、敵対心の欠如や石化能力の剥脱……ということだろうか。 (キメラになると、魔物は危険じゃなくなる……? うーむ、サンプルがちょいと少なすぎる。もうちょい調べて……) 「そういえば、そのナントカ家って、封印の研究ばっかりしていたんだよな」 「あ、私もそれ、ちょっと不思議に思いました」 「んぅ? 何か思うことがあったのか?」  顔を見合わせ、やがて2人はほぼ同時に声を発した。 「『封印の研究をしていた過程で偶然キメラを作り出すことが出来たのか』、それとも、『キメラを作り出そうとする過程で封印の研究が必要になった』のか。目的はどっちだったんだろうって」  ●  霧も明け、晴れたかの地にて。  背丈に似合わぬ巨大なシャベルを土に突き刺し、彼女は額につたう汗を拭った。  一仕事を終えて地面に腰を下ろし、やがて仕事の成果に小さく息を吐いた。  掘り返した土はあちこちに飛び散り、ある個所は2.3mほど垂直に掘られた落とし穴と化していた。  満足そうにその穴を見つめ、緩やかに笑う。 「……うん、概ね予想通りで何よりだ」 「おーい、ベルたーん? オレサマ、墓荒らしをするような子に育てた覚えはないぞ?」  遠くから聞こえる声に、【ベル・フリズン】は悪びれもなく、気だるそうに手を振った。  廃屋の裏手は一部のみが掘り返され、墓荒らしの張本人も土だらけ。 「ハハ、何を今さら。許可をくれたのはメメル学園長じゃないかい? あと、アタシも育てられた覚えはないよ!」 「ここまで深く掘るとは、流石のオレサマも予想外だぞ? それで、目的のモノは見つかったのか?」 「勿論、予想通りなーんにも埋まってりゃいなかったさ! 骨1本でものこってりゃ、供養してやったんだけどねぇ」 「アイツは、アタシの住んでた村で死んだ。少なくとも10年くらい前、土と石の劣化からして……その結構前にこの墓石はできたと思う。だから、ここで死んだ奴はレオの名前を騙った誰か。それかレオが名前を騙っていたか……って、思ってたんだけど、それもちょいと難しいかもね」  騙る意味も、そして彼が騙られるような意味も全く分からない。少なくとも、その人物には地位も権力も、知名度も皆無だ。  【レオナルド・ガイキャックス】。メメルはベルの言葉を聞き流しながら、墓石に刻まれたその文字列をなぞる。筆跡は強く、妙に癖のある文字の書き癖。  メメルは静かに声を落とした。 「誰も、何も埋まっていなかった、か。ふむ……?」  頷くベルに、メメルは思い出したように声を出す。 「ちなみにベルたん? オレサマの生徒にも同じ名前の奴が昔いてだな? その生徒の出身がここら辺にあって、妙な癖のある字を書く奴なんだけれども」 「……へ、へぇ……どんなヤツだい?」 「『メメ・メメルの後継者』だとか『世界最強の魔法使いになる男』とかを自称するおもしれ―奴だったぞ☆」 「あー……。多分、同一人物だねぇ、そいつ。ウチの村でもそんな感じだったよ。たしか、『最強の魔法使い』って名乗ってた。……うん、全く嫌な偶然だねぇ」 「おー、全く変わってなかったようで何よりだ! 卒業してから忘れ……いや、話を聞かなかったけどな! まーこの話はおいおいにしてー……。うん、それなら1つ、思いついた仮説がある」 「仮説?」 「———レオナルド・ガイキャックスは、生前に墓を残していたってことさ」  残された、廃屋の、更にその奥に眠るもの。  完璧な答えがあるとは決して言い切ることは不可能。  けれど、答えを知るための足掛かりがあるかもしれない。  そこにあるのは、獣の木霊と、埃被りの本の山。そして―――。  ———勇敢なる誰かを待つ何か。
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